
研究
【JAMA Psychiatry筆頭著者が徹底解説】システマティックレビュー&メタアナリシス入門 - Part 4:5つの実例で学ぶ SR&MA リサーチクエスチョンのつくり方 - ゼロから学ぶ医学研究デザイン
2025.10.29
シリーズ紹介
本連載では、主にランダム比較試験(RCT)を対象としたシステマティックレビュー&メタアナリシス(SR & MA)に焦点を当て、SR & MAの基礎から実践手順、そして論文の実例について、全4回にわたって徹底解説します。
臨床家にとってSR & MAは「自分でも実施することのできる最強のエビデンスレベルの研究法」です。RCTが「因果推論における最強の研究デザイン」といえますが、SR & MAによってさらに精度が高く、外的妥当性の高い結果を得ることができます。
このシリーズの最終回である本記事では、筆者がこれまで取り組んできた五つのSR & MAの実例を紹介し、日々の臨床の中からどのようにSR & MAのリサーチクエスチョンを見つけ、実践したかについて紹介します。
皆さんの「SR & MAのはじめの一歩」の参考になれば幸いです。
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- シリーズ紹介
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- この記事のまとめ
- この記事を読むと分かること
- この記事は誰に向けて書いているか
- ゼロから学ぶ医学研究デザインシリーズ
- 執筆者の紹介
- 研究の実例紹介
- 実例1.うつ病に対する増強療法としての抗精神病薬の用量は、どの程度が適切か?
- 実例2.市中肺炎の抗菌薬治療期間は何日間がよいか?
- 実例3.不眠の認知行動療法(CBT-I)は、どの要素が効くのか?
- 実例4 .不眠の認知行動療法と睡眠薬、どちらが効く?組み合わせた方が良い?
- 実例5.抗精神病薬の副作用“アカシジア”をどうしたものか?
- “SR & MAを読んで学ぶ”ために
- ROBIS
- Phase 1:どの程度の関連性があるか(任意の項目)
- Phase 2:レビューのプロセスにおける懸念を特定する
- Phase 3: バイアスリスクの判断
- 最初に取り組むリサーチクエスチョンの決め方
- 【本記事を執筆された古川先生のSR&MA入門リバイバル配信のご案内】
- 【開催概要】
- 【医学研究を学ぶならオンラインスクールmJOHNSNOW】
- 【YouTubeラジオコンテンツ 耳から学ぶシリーズ】
この記事のまとめ
この記事を読むと分かること
SR&MA実施のためのステップ
リサーチクエスチョン作成・プロトコル作成時のコツ
チーム構成で気をつけること
この記事は誰に向けて書いているか
医学研究を初めて学ぶ医療職・研究職
SR & MAの実施フローについて学びたい医療職・研究職
SR & MAに取り組みたいと考えている医療職・研究職
ゼロから学ぶ医学研究デザインシリーズ
vol.1:システマティックレビュー&メタアナリシス入門
- Part1:論文を正しく集め、読み、統合する技法とは?
- Part2:これだけは押さえておきたい SR&MAの基礎知識
- Part3:教科書が教えてくれない SR&MA実践のための9ステップ
- Part4:5つの実例から学ぶ SR&MA リサーチクエスチョンのつくり方(本記事)
執筆者の紹介
氏名:古川 由己(Yuki Furukawa)
関連リンク:ブログ、Google scholar, Research Map, X (Twitter)
所属:東京大学 大学院医学系研究科 脳神経医学専攻 臨床精神医学教室 / ミュンヘン工科大学医学部精神科・心理療法科
自己紹介:日本専門医機構認定精神科専門医、精神保健指定医。臨床と並行してメタアナリシスを中心とした臨床研究を主導。筆頭著者として、JAMA Psychiatryなどのトップジャーナルに論文を発表。著書に『ねころんで読める(けどねころんじゃいけない)不眠症』。不眠の認知行動療法 (CBT-I) などの心理療法や、精神科疾患の薬物療法について、臨床で抱いた疑問に取り組んでいる。mMEDICI mERASMUSで「【JAMA Psychiatry筆頭著者が教える】 システマティックレビュー&メタアナリシス入門 ~論文を正しく集め、読み、統合する技法~」の講師を務める。
研究の実例紹介
本記事では、筆者がこれまでに取り組んできたSR & MAの五つの実例を題材にしながら、「どのような視点でリサーチクエスチョンを見つけ、SR & MAを実践したか」についてご紹介します。
これまでの記事でも解説しているように、「SR & MAのはじめの一歩」は、良きリサーチクエスチョンを立てることから始まります。
これからご紹介する事例は、いずれも皆さんに共感していただけるような「臨床でふと感じた疑問」を研究として形にしているので、SR & MAのリサーチクエスチョンを見つけるための参考にしていただけますと幸いです。
実例1.うつ病に対する増強療法としての抗精神病薬の用量は、どの程度が適切か?
うつ病に対する薬物療法として、抗うつ薬で十分に効果が出ない場合、抗精神病薬と言われるタイプの薬剤を追加することがあります。しかし「どれくらいの量を追加したら良いのか」という判断は議論が分かれるところです。
筆者は、日本で行われた臨床試験において、低用量と高用量を比較して効果が変わらなかったという結果を知っていました。しかし、臨床研修中に中等用量以上の用量を処方されている方を複数名経験しました。
また、とある勉強会を聴講した際に、講師が「高用量を用いた方が効果的である」と解説されていましたが、筆者は当時、いま一つ納得することができませんでした。
もちろん、個別の事例を見れば高用量にした時により大きな改善を見せることはあると思いますが、“原則として高用量を推奨すべき”とまでは思えなかったのです。
そこで、用量反応メタアナリシスという手法を使って検討することにしました。
この手法を簡単に説明すると、用量をX軸、治療効果をY軸として各臨床試験の結果をプロットし、曲線で結ぶことで「用量反応曲線」を求める手法です(これが、筆者にとって精神科医として初めてのメタアナリシスになりました)。

初めてのSR & MAということで苦労もありましたが、無事にBritish Journal of Psychiatryに掲載されました。研修先の精神科病院がこの雑誌を購読しており、紙に印刷された自分の論文を見ることもでき、感慨もひとしおでした(でもなぜか表紙の名前はFurukawaではなくFuruwakaになっていました。手入力なのでしょうか)。この研究事例のように、自分が知る臨床研究の結果における知見と、慣習的に正しいとされる知見との間に齟齬があり、「どちらのほうが妥当かを検証するための知見がない(適切なメタアナリシスが見当たらない)」という場面に遭遇した時にこそ、自分でSR & MAを実践してみるチャンスかもしれません。
実例2.市中肺炎の抗菌薬治療期間は何日間がよいか?
論文
初期研修医として市中病院に勤務していた当時、筆者の仕事の多くは市中肺炎の治療でした(COVID-19流行よりも前の時代のことです)。
抗菌薬の治療期間は概ね1週間が標準的とされていました。しかし、患者さんの中にはもっと早くから症状の改善を認める人もいました。「抗菌薬の治療期間が実際にどれくらいで良いのか」というのは、初期研修医の1年目から気になっている疑問でした。
当時、JAMA Internal Medicineに掲載されたランダム化比較試験で、短期(5日間)の抗菌薬治療と長期(10日間)の抗菌薬治療を比較すると、短期の方が長期に比べて非劣性であることが示されていることを知っていました。
メタアナリシスの結果も存在しましたが、同じ治療期間でも、ある臨床試験では短期、ある臨床試験では長期の方に分類されているなど、あまり納得することができないものでした(例えば、同じ5日間の治療でも、10日間と比べていれば短期間、3日と比べていれば長期間に分類される)。
また、ほとんどの臨床試験が非劣性試験という点も気になっていました。短期治療が長期治療よりも“非劣性(劣っていない)”というのは、必ずしも治療効果が同程度であることを意味するわけではなく、治療負担なども考慮すると短期治療が長期治療よりも「悪くはない」ということを意味するだけです。
そのため、例えば
① 10日間治療と7日間治療を比べて、7日間治療が非劣性
② 7日間治療と5日間治療を比べて、7日間治療が非劣性
③ 5日間治療と3日間治療を比べて、3日間治療が非劣性
だったとしても、「10日間治療と3日間治療を比べると、10日間治療の方が治療効果が高い」ということは十分あり得ます。
そこで筆者は、用量反応メタアナリシスを応用し、X軸に治療期間、Y軸に治療効果をとることで治療期間―治療効果関係をメタアナリシスで分析するというアイデアを思いつきました。
その結果、異なる治療期間同士を比較した複数の臨床試験について、治療期間を「長期・短期」のように恣意的に分類せずに、連続変数のまま取り扱ってメタアナリシスを行うことに成功しました。
結果はとても興味深いものでした。市中肺炎の抗菌薬治療期間が3日から10日の全ての組み合わせにおいて短期間が非劣性であり、かつ、3日間の治療期間が10日間の治療期間よりも治療効果が良い可能性さえあることを示しました。

左下が用量反応メタアナリシスの結果、右上が直接比較の結果。
数字は臨床的改善のオッズ比で大きいほど列で規定された介入が行で規定された介入よりも良いことを示す。薄緑は非劣性であることを示す。投稿過程で苦戦し、初稿が完成してからアクセプトまでに1年以上かかりましたが、JAMAの総説論文やLancet Infectious DiseaseのUmbrella reviewでも引用されました。
この事例のように、「臨床に従事し始めてすぐに抱いた疑問」はとても大切です。長く臨床に従事している方でも、学生や研修医、後輩の質問がヒントになることがあるかもしれません。
「当時は疑問を感じていたけど、いつの間にか“そういうもの”だと受け入れてしまっていた」、そんな経験は誰しもあるのではないでしょうか?
このように、“はっきりとしたエビデンスのない慣習”に向き合ってみると、リサーチクエスチョンの種が見つかるかもしれません。
(もちろん、臨床では明確なエビデンスのないことも数多くあります。“まずは慣習に従っておく”という考え方も大切ですね。)
実例3.不眠の認知行動療法(CBT-I)は、どの要素が効くのか?
初期研修の間にも不眠症の患者さんを数多く診ていましたが、精神科に進んでからはさらに多くの不眠症の方を診ることになりました。
精神科の患者さんの中にはすでに数多くの薬を処方されており、これ以上薬を増やすというのは妥当ではないと思われる方もたくさんいます。それでも不眠症状が強く、とても苦しんでいるという方が多くいます。
治療法を模索する中で出会ったのが、(日本以外の)ほぼ全ての国で不眠症治療の第一選択とされている不眠の認知行動療法でした(不眠の認知行動療法について詳しく知りたい方は筆者のブログもご参照ください)。
うつ病の認知行動療法もそうですが、認知行動療法といわれるものは複数のテクニックが組み合わされた、いわば”幕の内弁当”のような治療法です。
よく行われている不眠の認知行動療法の手法(臥床時間制限や刺激統制と言われるテクニック)を実践すると、たしかに多くの方が改善しました。しかし、不眠の認知行動療法といわれるものの中で、「具体的にどの手法が実際に効いているのか」というのがとても気になりました。
不眠の認知行動療法に含まれる手法について一つ一つの有効性を確認することができれば、よりシンプルで、それでいて有効な治療法を作ることができると考えました。
そこで筆者は要素ネットワークメタアナリシスという最新のメタアナリシスの手法を用いて不眠の認知行動療法の有効な要素を検討することにしました。
要素ネットワークメタアナリシスは、複数の要素からなる介入について、様々な組み合わせで効果を比較することで、各要素の効果を推定する手法です。事前の調査ではアメリカ睡眠医学会のシステマティックレビューを参考に「少なくとも100例のRCTが見つかるだろう」と踏んでいました。実際にシステマティックレビューを行うと、最終的に241例ものRCTが見つかりました。
非常に多くの文献が見つかり、システマティックレビューをしっかり行うということがいかに大事かということを改めて実感した事例でした(ただし、前もって200以上も見つかると見込まれていたら、その大変さからプロジェクトに着手できなかったかもしれません。結果的には恵まれました)。この研究は多くの共同研究者の協力のもとで無事に完遂することができ、JAMA Psychiatryに掲載されました。さらに公開直後から多く引用され、上位0.1%の論文に認定され、ホットペーパーというものにもなりました。
このプロジェクトを通じて、「新しいSR & MAの手法を知っておくことで、自分の抱える臨床疑問を解決する切り口が増える」ということを学びました。
(ただし、このように規模が大きいプロジェクトは、SR & MA初心者の方が最初に取り組むものとしては推奨されません。まずは規模が小さいものから取り組み、SR & MAの実践に慣れるのがおすすめです。)
実例4 .不眠の認知行動療法と睡眠薬、どちらが効く?組み合わせた方が良い?
次に取り組んだのが、不眠の認知行動療法と睡眠薬、そしてそれらを組み合わせた併用療法のいずれが有効かというものです。
一次研究の数自体はあまり多くなかったのですが、
① 薬物療法単独よりも不眠の認知行動療法の単独が有効
② 薬物療法と不眠の認知行動療法の併用がより有効
③ 不眠の認知行動療法に薬物療法を追加しても、不眠の認知行動療法単独よりも有効性は特に向上しない
ということが明らかになりました。
長期的には不眠の認知行動療法の方が良いということはすでに言われていましたが、短期的(6~8週時点)でも不眠の認知行動療法の方が良いことが明らかになりました。
前の章の研究では、不眠の認知行動療法とされるものの中で「どの要素が有効か」を検討しましたが、この研究では「不眠の認知行動療法と睡眠薬(とそれらの併用)」を比較しました。
このように、関心のある治療方法について「どの要素が効果的なのか」について深く検証するのか、「他の治療法にも視野を広げ、比較を行う」のか、様々な視点から捉えることで新しい研究テーマのヒントが見つかるかもしれません。
実例5.抗精神病薬の副作用“アカシジア”をどうしたものか?
抗精神病薬の副作用にアカシジアがあります。これは“じっとしていられなくなる症状”のことで、とても不快なものです。日本語で静座不能と表現されることもあります。
せっかく抗精神病薬が有効であっても、このような副作用が出てしまうとその薬剤の処方を続けることができなくなってしまいます。
アカシジアへの対応としては、減量や他の薬への切り替えの他に、経験的にいくつかの薬が追加で使われることが多いですが、「どの薬が有効なのか」は明らかになっていませんでした。
そこで筆者たちは、システマティックレビューとネットワークメタアナリシスを行うことでこれを明らかにしようとしました。
結局は十分な数と質の一次研究が見つからず、かなりの不確実性が残るという結論でした。しかし、Lancet Psychiatryに掲載された国際的なガイドラインで筆者たちの研究が引用されるなど、一定の評価をいただきました。
この事例において印象的だったのは、前後して発表された同様のテーマのネットワークメタアナリシス(Price, 2024)と比較して、より控えめな結論を出したことを評価してもらえたことです。
SR & MAをきちんと行い、その結果として質の高い結果が導き出せないのであれば、そのように誠実に結論づけることで評価され得る、という一例です。
あまり良い一次研究が存在しないのに、SR & MAを実施したからといって“強力なエビデンスがある”かのように結論づけないように注意しましょう(特に、3つ以上の介入を同時に比較するネットワークメタアナリシスでは、一次研究の結果が最終的な結論にどう影響しているかが見えづらくなるため、結論の示し方にはより一層の注意が必要です)。“SR & MAを読んで学ぶ”ために
ここまで筆者が取り組んできた五つの研究事例をご紹介してきました。このように臨床の疑問からSR & MAのリサーチクエスチョンをつくり、実践するためには、数多くのSR & MA論文を読み、慣れ親しむことがとても大切です。
ただし、質の低いSR & MAも多数あるので、まずはトップジャーナルに掲載されたSR&MAを優先して読むのが良いでしょう。それでは、SR & MAを読む時にはどのようなことに注意したら良いのでしょうか?
SR & MAを読む時に、その質を評価するツールとして提唱されているものは複数あります。
有名なものはA MeaSurement Tool to Access systematic Review (AMSTAR 2)やRisk Of Bias In Systematic reviews (ROBIS)です。(AMSTAR 2については日本語の解説論文もあります。)
この記事ではROBISについて紹介します。(AMSTAR 2もROBISも、その内容に大きな違いはありません。)
補足
PRISMAという報告ガイドラインがありますが、これは論文を書く時に網羅すべき項目のリストです。読む時の評価項目と重複する部分も多く含まれますが、やや趣旨が異なることに注意が必要です。ROBIS
ROBISは次の3段階に分かれています。
Phase1では、そのシステマティックレビューとメタアナリシスが読者の関心にどの程度合致するかを評価します。
Phase2では、4つの領域におけるバイアスのリスクを評価します。
Phase3では、Phase1、2の内容と、メタアナリシスの結果からどのように結論を出しているかということをもとに、SR & MA全体の質を評価をします。
Phase 1:どの程度の関連性があるか(任意の項目)
Phase1では、そのSR & MAが読者の関心にどれだけ合致するかを評価します。この段階は任意とされています。
具体的には、読者の関心のあるPICOとSR & MAが取り上げたPICOがどの程度類似しているか、また、異なる時にそれがどの程度、読者の関心のある臨床疑問に影響するかを評価します。
Phase 2:レビューのプロセスにおける懸念を特定する
Domain1:研究の適格基準
Domein1では、まず研究の適格基準(Eligibility criteria)について評価します。
適格基準について確認し、除外の条件が決まっていたか、「レビューの目的や適格基準が事前に定められていたという客観的な証拠」があるかについて評価します。
具体的には下記の評価をします。
レビューは、事前に定められた適格基準を遵守しているか
適格基準は、事前に定められたレビュークエスチョンに適切か
適格基準は曖昧ではないか
研究の特徴による適格基準の制限は適切か。例えば、実施年月日、サンプル数、研究の質、アウトカムなど
情報源に基づく適格基準の制限は適切か。例えば、出版形式や言語による制限、データが入手可能かどうかによる制限
例えば、「診断基準が明確に規定されているか」を確認します。
うつ病であれば、「DSMやICDといった正式な操作的診断基準」のみに限定するのか、「PHQ-9などのうつ病尺度が一定の点数以上という場合」も組み入れるのかを事前に規定していることが望ましいです。
最も広範囲な定義では「一次研究の著者による定義に従う」という方法もあります。この場合は、より厳密な基準が使われた研究に限定して感度分析を行なっていることが望ましいでしょう。
また、「介入に関して具体的に規定されているか」も確認します。
例えば、薬物療法であれば「用量や内服回数などの条件があるか」などがあります。また、「超高用量が用いられている臨床試験もあるか」などを確認する必要があります。これらを組み入れることが妥当かどうかは、リサーチクエスチョン次第です。
心理療法においては、同じ名称の治療法であっても、多くの場合においてその中身は千差万別です。例えば「認知行動療法」と名乗っていたら認知行動療法とみなすのか、特定の要素が含まれていることを条件とするのか、回数の条件はあるのか、アプリでの提供は含まれるのか、などを事前に細かく規定しておく必要があります。
Domain 2:研究の特定と選択
Domein2では、スクリーニングの過程について評価します。
検索は、適切な数の発表されたもしくは未発表の情報をカバーするデータベースを含んでいたか
関連する文献を見つけるために、データベースの検索以外の方法も用いられたか
検索の際にとられた戦略(単語や検索式の構造)が、できるだけ多くの適格研究を見つけることができると思われるか
日付や出版形式、言語等による制限は妥当か
研究の選択におけるエラーを最小化するための努力が行われたか
システマティックレビューでは、データベースの検索以外に、レジストリーや規制当局のウェブサイトを調べること、関連する論文の引用文献リストを調べること、関連する研究者に他に重要な臨床試験がないかを聞くことなど、複数の方法を取ることが望ましいとされています。
「エラーを最小化するための努力」としては、ペアで行っていれば良いでしょう。
Domain3:データ収集と研究の評価
Domain3では、「どのようにデータが収集されたか」「どのように研究からデータが抽出されたか」、もしくは「研究以外の方法からデータが集められたか」「バイアスのリスクがどのように評価されたか」、そして「バイアスのリスクの評価のためにどのツールが用いられたか」などを評価します。
データ抽出のエラーを最小化する努力が行われたか
研究の特徴に関して、十分な情報がレビューの著者およびレビューの読者に提供されて、結論の解釈を可能にしているか
統合に用いるために、すべての関連する結果が収集されたか
適切な基準を用いて、公式にバイアスのリスクや研究方法の質が評価されたか
バイアスのリスクを評価する際にエラーを最小化する努力が行われたか
バイアスのリスクの評価ツールとしては、RoB2などのツールを用いていれば良いでしょう(RoB1という旧版を用いていても問題ありません)。
バイアスのリスクの評価(RoB2)については、Part3の記事「リスクオブバイアスの評価(RoB2)」で解説しています。
システマティックレビュー&メタアナリシス入門 - Part 3:教科書が教えてくれない SR&MA実践のための9ステップ
Domain4:統合と結果
Domain4では、データの統合、すなわちメタアナリシスについて、以下の六つの視点から評価します。
組み入れられるべきすべての研究が統合に含まれていたか
事前に定められた解析がすべて報告されているか、または変更点が説明されているか
包含された一次研究の特徴、リサーチクエスチョンの類似性、研究デザイン、アウトカムなどを踏まえて、統合が適切に行われたか
研究間のばらつき、すなわち異質性が最小限か、もしくは統合に当たって考慮されたか
結果は一貫していたか。例えばfunnel plotや感度分析によって示されたか
一次研究のバイアスが最小限であったか、もしくは統合に当たって適切に考慮されたか
Phase 3: バイアスリスクの判断
Phase3では、これまで行ってきた全ての評価を踏まえて、SR & MAの全体の評価を行います。「その論文の結論は、SR & MAの結果に基づくものか」について確認します。
結果の解釈において、Phase2のDomain1〜4で特定された懸念がきちんと考慮されたか
一次研究がどの程度レビューの研究疑問に関連するか、適切に考慮されたか
統計学的有意差を根拠に結果を強調することを避けたか
一つのSR & MAで複数の統計解析が行われることはよくあります。その中から、統計学的有意差が認められたものだけを強調するというのは好ましくありません。
きちんとしたプロトコルがあれば、主解析が何かというのが規定されているはずです。主解析についての結果と解釈を最優先しているかどうかも確認しましょう。
最初に取り組むリサーチクエスチョンの決め方
ここまで全4回にわたりSR & MAの基本から実践フロー、そして様々な研究事例について解説してきました。
ここまで来れば、あとはリサーチクエスチョンを決め、SR & MA実践への一歩を踏むだすのみです。
初めてのSR & MAで 「どのようなリサーチクエスチョンを選んだら良いのか」について解説し、連載を締めくくりたいと多います。
初めてSR & MAを行う場合は、着実に実践できるテーマを選ぶということも大切です。そのためには、「あまり作業の分量が多くないもの」を選ぶことも一考です。例えば、事前に類似のSR & MAを下調べし、「およそ5〜10本程度の臨床試験を組み入れられそうなもの」に取り組むこともおすすめです。
また、リサーチクエスチョンのつくり方としては、臨床的な疑問をPICOで整理し、そしてPICOを少しずつずらしながら“新規性があり臨床的意義があるテーマ”を探すのことがおすすめです。
リサーチクエスチョンのつくり方については、Part3「1.リサーチクエスチョンづくり」でも解説しています。
システマティックレビュー&メタアナリシス入門 - Part 3:教科書が教えてくれない SR&MA実践のための9ステップ
さて、「PICOをずらす?」と疑問に思われた方もいらっしゃると思いますので、もう少し具体的に解説しましょう。
例えば、重要な疾患/症状に対する重要な介入と、その主要なアウトカムについては、おそらく既に調べ尽くされているものが大半です。
※もしまだ検証されていないのであれば、それは素晴らしい研究テーマの発見です!
そこで少しアウトカムを“ずらして”考え、「主要なアウトカムではないが、重要なアウトカム(例えば副作用やその他の重要な心理尺度など)」に目を向けるのも狙いどころです。他にも「長期的な効果・超短期的な効果」という風にアウトカムの計測時期をずらすということも一つのアイデアです。
さて、たとえSR & MAが比較的簡単にできると言われているとしても、実践するためには少なくとも100時間以上はかかります。また、前回の記事(Part3)でも解説したように、SR & MAはチーム戦です。つまり、他の研究者の時間をも費やして実施する必要があります。
それだけの労力をかける価値があると、自分が心から信じることができる課題に取り組むことが、「初めて取り組むリサーチクエスチョンの決め方」においてとても大切です。
本記事をお読みになっった皆さんが、よきリサーチクエスチョンに出会い、SR & MAを実践なさることを心から応援しております。
【本記事を執筆された古川先生のSR&MA入門リバイバル配信のご案内】
【開催概要】
開催日:2025年11月30日(日)16:00~19:00
申込締切:2025年11月29日(土)23:59まで
※当日はvimeoライブ配信にて実施いたします。
見逃し配信:2025年11月30日(日)~12月14日(日)
※2週間の見逃し配信期間があるからいつでも何度でも観られる(当日不参加もOK)!
価格 一般:5,000円
学生:2,500円(※社会人学生を除く)
※請求書・領収書は数クリックで発行できます。
受講証発行:有(受講証に、各受講者の個人名は掲載されません)
※研究費等でご参加の方を含め、全ての方に受講証を発行いたします。
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