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【JAMA Psychiatry筆頭著者が徹底解説】システマティックレビュー&メタアナリシス入門 - Part 2:これだけは押さえておきたい SR&MAの基礎知識- ゼロから学ぶ医学研究デザイン

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【JAMA Psychiatry筆頭著者が徹底解説】システマティックレビュー&メタアナリシス入門 - Part 2:これだけは押さえておきたい SR&MAの基礎知識- ゼロから学ぶ医学研究デザイン

2025.10.08

シリーズ紹介

システマティックレビュー & メタアナリシス(Systematic Review and Meta-Analysis, SR & MA)は、複数の一次研究(主にRCT)を体系的に収集し、結果を批判的に吟味し、統計的に統合することで強力なエビデンスを創り出す研究手法であり、従来からエビデンスの頂点と位置付けられてきました。

本連載では、主にランダム比較試験(RCT)を対象としたSR & MAに焦点を当て、SR & MAの基礎から実践手順、そして論文の実例について、全4回にわたって徹底解説していきます。

Part1では、SR & MAの概要と、その対象となるRCTの基本を押さえた上で、なぜSR & MAが必要なのかその強みや魅力、限界や注意点について解説してきました。

Part2となる本記事では、システマティックレビューとメタアナリシスの基本と、よくある誤解や落とし穴について徹底解説します。

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この記事のまとめ

この記事を読むと分かること

  • SR(システマティックレビュー)がなぜ重要か

  • SR(システマティックレビュー)の実施におけるポイント

  • MA(メタアナリシス)でどのように結果を統合するか

この記事は誰に向けて書いているか

  • 医学研究を初めて学ぶ医療職

  • SR & MAを聞いたことがあるが、どのような研究か、なぜ重要かがわからない初学者

  • SR & MA論文をどのように読めば良いかわからない初学者

ゼロから学ぶ医学研究デザインシリーズ

vol.1:システマティックレビュー&メタアナリシス入門
  - Part 1:論文を正しく集め、読み、統合する技法とは?
  - Part2:これだけは押さえておきたい SR&MAの基礎知識(本記事)
  - Part3:教科書が教えてくれない SR&MA実践のための9ステップ

執筆者の紹介

氏名:古川 由己(Yuki Furukawa)
関連リンク:ブログGoogle scholar, Research MapX (Twitter)
所属:東京大学 大学院医学系研究科 脳神経医学専攻 臨床精神医学教室 / ミュンヘン工科大学医学部精神科・心理療法科
自己紹介:日本専門医機構認定精神科専門医、精神保健指定医。臨床と並行してメタアナリシスを中心とした臨床研究を主導。筆頭著者として、JAMA Psychiatryなどのトップジャーナルに論文を発表。著書に『ねころんで読める(けどねころんじゃいけない)不眠症』。不眠の認知行動療法 (CBT-I) などの心理療法や、精神科疾患の薬物療法について、臨床で抱いた疑問に取り組んでいる。mMEDICI mERASMUSで「【JAMA Psychiatry筆頭著者が教える】 システマティックレビュー&メタアナリシス入門 ~論文を正しく集め、読み、統合する技法~」の講師を務める。

1.なぜシステマティックレビューが必要か

メタアナリシスの論文タイトルを見てみると、なぜか毎回「systematic review and」という文言が入っています。

冗長だと感じる方や、なぜこの文言を入れる必要があるのか、疑問に思った人もいるのではないでしょうか?

実は、メタアナリシスの妥当性の大前提として、質の高いシステマティックレビューを実施することは、欠かせないものなのです。

まずは、システマティックレビューがなぜ重要か、そしてどのようにシステマティックレビューを行ったら良いのかについて解説します。

システマティックレビューとは

よく目にする「レビュー文献」は、関連文献を収集してその全体像を示したものです。

その分野の第一人者が行うことが多いナラティブレビューは、著者の経験や関心に基づき関連文献を選び、背景や全体像を解説する総説です。

その分野の概要をつかみやすく柔軟な構成が可能ですが、文献の選定や解釈に主観が入りやすく、網羅性や再現性は低くなります。


一方、システマティックレビューは、あらかじめ設定した研究疑問や選定基準、検索式に基づき、複数のデータベースから文献を網羅的に収集し、質を評価してまとめます。

SRでは、文献の選定手順を明確にして再現性を担保し、バイアスを最小限に抑えられるため、医療ガイドラインの根拠としても利用されます。ただし、実施には時間と労力がかかります。

ナラティブレビューと系統的レビューの違い

SRでチェリーピッキングを防ぐ

多数の症例の中から自分の主張に都合の良い症例だけを選別してまとめても、その結果は信用に足るものにはなり得ません。

このように研究者にとって都合の良い結果だけを集めてくることチェリーピッキングと言います。同じことはメタアナリシスでも起こり得ます。

メタアナリシスは、複数の研究をまとめる一つの統計学的手法にすぎません。まとめる元々の研究が、何らかの都合に合わせた偏ったものだけ選ばれていたら、メタアナリシスの結果も当然偏ったものになります。

チェリーピッキングを防ぐためには、そのSR & MAで対象とする疑問に答えるRCTの全てを網羅的に見つけ出す必要があります。そのための方法がシステマティックレビューなのです。

出版バイアスに注意

臨床試験の実施者は自分の主張に沿ったものほど積極的に出版し、そうではない結果に終わったものは出版に消極的になることが知られています(これは製薬会社に限ったことではなく、心理療法などについても指摘されています)。

そのため、一部の臨床試験が、主張に沿わない結果のために出版されない傾向にあるというものを出版バイアスと言います。

システマティックレビューでは、公表されている論文のデータベースだけでなく、臨床試験のレジストリやFDAなどの規制当局の情報など、複数の情報源を網羅的に調べることが推奨されています。

できるだけ漏れなく、全ての該当研究を見つけられるようにします。

私はこれまで複数のSR & MAを実施してきましたが、その全てにおいて先行研究(メタアナリシス)に組み入れられた研究以外の研究が見つかりました。

このように、システマティックレビューを徹底的に、網羅的に、丁寧にやるというだけでも、大きな差別化要因になり得ます。

2.システマティックレビューを徹底せよ!

それでは、システマレビューを徹底するには、具体的にはどのようにしたら良いのでしょうか?ここでは四つのポイントをご紹介します。

2 - 1.二つ以上のデータベースを検索する

まず大切なのが、複数のデータベースを検索するということです。

コクランハンドブックでは最低限、MEDLINEとコクランのCENTRALというデータベースを検索することが推奨されています。

もし検索できるのであればEmbaseも推奨されていますが、大学でも契約していないところが多いのが実情です。

他にも心理系であればPsycINFO、看護系であればCINAHLなど、「この分野であればこのデータベースを追加した方が良い」とされるものもありますので、分野ごとに検討しましょう。


ちなみにおなじみのPubMedはデータベースではなく、MEDLINEを主なデータベースとして文献検索ができるインターフェイスです。

厳密にはPubMedとMEDLINEは区別すべきであり、PubMedMEDLINEを検索する場合は「MEDLINE via PubMed」などと表現すべきです(私はシステマティックレビュー全体として網羅的に探せるように工夫されていれば主目的は果たせるので、「PubMedCENTRALを検索した」という表現で大きな問題はないと考えています)。


コクランのCENTRALは、MEDLINEEmbaseを含む数々のデータベースに加えて、レジストリなど様々なソースから臨床試験の情報を収集しています。

一見して、理屈の上ではCENTRALを調べるだけでも良さそうですが、アップデートにタイムラグがあり、抜け漏れのリスクもあるため、単体で使うわけにはいきません。

(これまで協力してもらったライブラリアン/医療情報スペシャリストの中には「このデータベースはあまり役に立たないから除外して良い」という人もいたくらいです。)

CENTRAL以外にMEDLINEEmbaseを含む複数のデータベースを検索するのであれば除外も選択肢かもしれません。とはいえ、コクランハンドブックで推奨されている以上は除外しにくいと思います。

PubMedは誰でも無料で使うことができますが、その他のデータベースは原則有料です。そのため、自分自身で検索できない場合には、データベースにアクセスできる共同研究者が必要です。

2 - 2. レジストリを調べる

ランダム化比較試験(RCT)をはじめとした臨床試験では、近年、事前登録が推奨されています。

そのような事前登録がされているレジストリを調べることも検討しましょう。代表的なものにClinicaltrials.govWHO ICTRPがあります。

ただし、古い研究の場合はそもそも制度が存在しなかったため登録されていないこともあるため、難しい問題です。

2 - 3. 規制当局のウェブサイトを確認

薬物に関しては、規制当局に書類を提出した上で臨床試験を実施し、その結果に応じて保険収載されるかどうか判断されます。規制当局のウェブサイトを確認することも重要です。

また、製薬会社は自社製品について、主導した臨床試験だけでなく医師主導試験も把握していることが多いため、問い合わせができるのであれば有用です。

2 - 4. 灰色文献も参考に

学会発表の抄録やポスター発表などの記載も参考になります。

学会発表資料以外にも、未出版の研究、報告書、学位論文、政府による調査研究など、一般的な学術論文の流通経路に乗らない資料を灰色文献(グレー文献)と呼びます。

灰色文献も参考になりますが、多くの場合きちんとした査読を経ていないことに注意が必要です。

3.システマティックレビューの徹底がバイアスをもたらすリスク

ここまではシステマティックレビューをいかに徹底的に、いかに網羅的に行うかということについて述べてきました。

ここでは、システマティックレビューを徹底的に行うことが、むしろバイアスをもたらしてしまうリスクがあるという点についてお話しします。

例えば、筆者が行った心理療法に関するシステマティックレビューでは、学会発表や学位論文なども含めて多くの文献を調査しました。

しかし、それらの記載内容は非常に乏しく、実際に心理療法として行われた内容をきちんと評価するには不十分でした。また、学会発表抄録の多くは、その後に発表された論文と関係すると思われましたが、どれがどれに対応するのか明確ではありませんでした。

つまり、学会発表抄録の結果を全てメタアナリシスに組み入れると、同じ臨床試験の結果を何度も組み入れてしまうリスクが生じたのです。そのため、結局私たちは組み入れる文献は査読された論文に限るという条件を付け加えました(このアプローチは、うつ病に対する心理療法のRCTデータベースでも採用されています)。

また、文献の使用言語についても、限定しない方がより網羅的です。私も一切言語的な制約をかけずにシステマティックレビューを行うことがあります。

しかし、残念ながら、非英語文献に付随する短い英語抄録を見るだけでも、その質が疑わしいものが多く見受けられました。英語以外の特定言語で検索する強い妥当性がない限りは、英語だけ、もしくは英語+共同研究者の母語といった、ある程度自信を持って使える言語に限定して良いのではないかと思います。

原則として、システマティックレビューはより網羅的に、より徹底的に行った方が良いです。しかし、場合によってはある程度の制限を加えることが妥当な場合もあるのです。

4.システマティックレビューのよくある間違い

システマティックレビューで行われる、よくある二つの間違いについてお伝えします。

ここで間違えてしまうと、その後のメタアナリシスをいかに厳密に行ったところでその意味がなくなってしまうので、注意が必要です。

4 - 1. アウトカムを検索式に入れてはいけない!

システマティックレビューでは、データベース検索を行います。この際、検索式に「アウトカムの名称」を入れてしまうことがよくありますが、これは誤りです。

その理由は、データベース検索の仕組みにあります。データベースの検索は基本的にタイトルとアブストラクトを対象に行われるため、本文は検索対象に含まれません。

したがって、もし検索式にアウトカム名を含めてしまうと、そのアウトカムについて実際には調査・報告している文献であっても、タイトルやアブストラクトに明示されていなければ検索結果から漏れてしまいます。

その結果、重要な研究を見逃してしまうリスクが生じるのです。

コクランハンドブックでも、検索式にはアウトカムを入れないように明記されていますので、しっかりと念頭に置くようにしましょう。

4 - 2. NOT式を検索式に入れてはいけない!

もう一つよくある間違いが、対象外となるものをNOT式で検索式に組み込んでしまうことです。

例えば、小児を対象としたレビューをする場合に「NOT adult」と検索式に入れたくなるかもしれませんが、これは誤りです。

なぜでしょうか。

タイトルにadultと入っている可能性は低いかもしれませんが、アブストラクトにadultという単語が用いられている場合、そのような論文も除外してしまうからです。

例えば、小児についてのランダム化比較試験でも、アブストラクトに「成人ではこう言われているが、小児についてはまだよくわかっていない」と書かれることも、あり得ることですよね?

このような理由から、NOT文は検索式に入れないようにしましょう(コクランハンドブックでもNOT式を使わないように明記されています)。

SR&MA以外でもシステマティックレビューは有効

このシリーズでは、最終的にメタアナリシスに組み入れる臨床試験を見つけるために行うシステマティックレビューについて解説しています。

しかし、システマティックレビュー自体は、何らかの目的に関連する文献を網羅的に全て見つけるという手法です。

これは介入研究でなくても、人間を対象とした研究でなくても、実はとても意味のあることだと思います。

「目的に関連する文献を網羅的に全て見つける」という取り組みは、臨床試験のみならず基礎系の研究でも有効なのものではないでしょうか?ぜひ、ご自身の分野に応用して、システマティックレビューを実践してみてください。

5.メタアナリシスで複数の研究を統合しよう

ここからは、システマティックレビューを通して見つかった臨床試験を、メタアナリシスでどのようにまとめるかについてお話します。

さて、メタアナリシスと言えばforest plotが有名ですね。

forest plot

手早く文献を集め、ガガッとforest plotを作れるようになりたいと思う方も多いのではないでしょうか?

しかし、メタアナリシスにおいて有名な教科書であるコクランハンドブックのメタアナリシスの章には、最初に「ここから始めるな」と明記されています。

なぜでしょうか。

その理由は、システマティックレビューとメタアナリシス全体のプロセスの中で、メタアナリシスの統計学的処理はごく一部に過ぎず、それ以外の部分がおろそかだと、全く意味がないどころか有害でさえあるからです。

ここまで解説してきたように、SR & MAではまず臨床疑問を定式化し、行うべきシステマティックレビューとメタアナリシスの内容を具体化してプロトコルにまとめ、事前登録をします。そして、システマティックレビューで関連する臨床試験を網羅的に徹底的に全て洗い出すことではじめて、妥当なメタアナリシスの実施とforest plotの作成が成立するのです。

この章では、まずは複数の研究結果のまとめ方について、その基本となる考え方を丁寧に理解していきましょう。

複数の研究結果からどのように結論を導き出すか

では、システマティックレビューを通して見つかった臨床試験をどのようにまとめるかについてお話します。

「ある介入が有効である」というランダム化比較試験がある一方で、「差は明らかではなかった」というランダム化比較試験もある時(ほとんどの場合はそうです)、その介入が有効かどうか、どう判断しますか?

少し立ち止まって、複数の研究結果を統合するためのいくつかの方法について考えてみましょう。

① 多数決

複数の臨床試験を統合して結論を出すための、一番シンプルで直感的な方法の一つが多数決です。

見つかった臨床試験のうち、いくつで有効という結論に達したか、または無効という結論に達したかを数えて集計します。

圧倒的多数で有効性が示された場合を除き、多くの場合は「有効性が明らかではなかった」という結果の臨床試験が多数を占めるのではないでしょうか?

コクランのロゴの事例では、七つの臨床試験のうち有効性を示せたものは二つに過ぎず、残りの五つでは明らかに有効とは言えないという結論になっていました。

引き分けをノーカウントとして有効とみなす人もいれば、より慎重に「大多数の研究が引き分けなので現時点ではまだ結論は出せない」と考える人もいるでしょう。

② 単純に足す

それでは、臨床試験の結果を単純に足すというのはどうでしょうか。

コクランのロゴの事例では、死亡率の減少を見ていたので、介入群と対照群それぞれで全体で何人いたのか、何人亡くなったのかを計算できます。

これでもざっくりとしたおおよその傾向はつかめるでしょう。

しかし、単純に足し算をしただけでは、一つ一つの臨床試験の結果と全体の合計の結果が異なった方向になる、いわゆるシンプソンのパラドックスという現象が起きることがあります(下表)。

表の事例では、試験1でも試験2でも介入Aの方が介入Bよりも有効率が高いのですが、単純に足し合わせて有効率を計算すると介入Bの方が有効率が高くなります。

このようなパラドックスが起きるのは基本的には例外的な出来事ではありますが、単純に足すだけではうまく結論が出せないことがあるという点は覚えておいてください。

シンプソンのパラドックス

③ メタアナリシス

メタアナリシスは、臨床試験の結果一つ一つを重み付けしたうえで足し合わせます。

介入群ごとに全体の数とイベント数を合計するのではなく、試験ごとの介入効果(相対的な効果)を計算して合計することで、シンプソンのパラドックスを回避します。

やや乱暴な言い方をすれば、「洗練された足し算」程度に捉えておいても間違いではありません。

メタアナリシスの前提となるモデルには、大きく分けて固定効果モデルランダム効果モデルの二つがあります。どちらのモデルを使うかは事前に決めてプロトコルに明記します。

原則としてはランダム効果モデルを用いるのが妥当な場合がほとんどです。

例外としては、レアイベントについて固定効果モデルを用いた方が良いとされている場合くらいでしょう(よくある誤解として、結果を集めて分析した後に異質性の検定を行い、その結果に応じて固定効果モデルかランダム効果モデルかを選択するという考え方があります)。

・固定効果モデル

メタアナリシスで最初に開発された固定効果モデルは、メタアナリシスに組み入れられる全ての臨床試験において、真の介入効果の値は一つであるという前提に立っています。

当然、それぞれの臨床試験において観察される介入効果にはばらつきがありますが、それはあくまでも真の値からのランダムな誤差によるものと仮定します。

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【疫学専門家監修】ランダム誤差を徹底解説 -研究結果は「運」で歪むのか?

固定効果モデルに従うと、臨床試験の数が増えれば増えるほど誤差は少なくなり、結果として最終的には真の値一つに収束することになります。

多くの場合、このような仮定は不適切であると考えられています。

仮に全く同じ条件で臨床試験を実施したとしても、実際に組み入れられる参加者の年齢・性別・重症度などが全く同じということはありえないからです。

・ランダム効果モデル

実際には、全ての臨床試験において介入効果が一つの値に定まるとは考えづらいでしょう。
効果修飾因子が一つ一つの臨床試験において、ある程度異なると考えられるからです。

効果修飾の徹底解説はこちら
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効果修飾因子は、例えば重症度ということもあるかもしれませんが、それ以外にも人種や年齢といった個人差、プライマリーケアかセカンダリーケアかといった臨床セッティングの違い、他にも用いられたアウトカム測定指標や測定時期の違いなども考えられます。

こうした効果修飾因子の分布が異なることを前提としたモデルが、ランダム効果モデルです。

ランダム効果モデルでは、臨床試験一つ一つの観察された介入効果は、その臨床試験における真の値からランダムな誤差があり、さらにその真の値自体も組み入れられた研究全体の中で、ある程度の幅をもってばらついて分布していると仮定します。

ランダム効果モデルの中にも、異質性をどのように評価するかによって複数のモデルがありますが、十分なデータ量がある場合、それらの間の違いはほとんど無視してよいとされています。

・信頼区間と予測区間

ランダム効果モデルでメタアナリシスを行うと、信頼区間(Confidence interval)だけでなく、予測区間(Prediction interval)といったものが算出できます。

信頼区間は、これまでの研究における平均効果量の推定を表しています。

一方、予測区間は、これまでの臨床試験に見られた研究ごとのばらつきを踏まえて、今回のメタアナリシスに含まれるような同様の臨床試験を次に行った場合に、その介入効果の点推定値がどの区間に入ることが予測されるかを表したものです。

メタアナリシスとしての効果判定は、信頼区間に基づいて行われることが多いです。しかし、臨床的には「次の患者さんにとってどのような介入効果が期待できるか」という点の方が重要です。

そのため、予測区間の方が臨床的にはより重要であると言えます。予測区間を示していないメタアナリシスも多いですが、ぜひ自分で実施する場合には予測区間も計算して報告するようにしてください。

メタアナリシスのまとめ

メタアナリシスはシステマティックレビューにおいて見つかった、特定の臨床疑問に答えることのできる臨床試験の結果を統合して、一つの結果を出す統計学的な手法です。

ものすごくざっくりと言うと、洗練された足し算です。

臨床試験ごとに効果修飾因子のある程度のばらつきが想定されるので、基本的にはランダム効果モデルを使うのが良いとされています。

(固定効果モデルを使うのはレアイベントにおけるメタアナリシスなど限定的な場面においてのみです。異質性の検定の結果に応じてモデルを選択するのではないということを覚えておきましょう。)

おまけ】
ペアワイズ・メタアナリシスをウェブ上で実施してforest plotとfunnel plotを作成するツールを作りました。メタアナリシスの計算を実施すること自体は簡単であることを実感していただけたらと思います。

まとめ

本記事では、システマティックレビューとメタアナリシスの基本と、それぞれの注意点について解説してきました。

前回の記事から本記事までをお読みいただければ、SR & MAの基本的な考え方についてひと通り理解できるようになっているはずです。

次回からはいよいよ、SR & MAの実施フローに関する具体的な解説、いわば実践編へと進んでいきます。一つ一つ丁寧に学んでいきましょう。

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