
【長崎大学MPH受験】2007年、青年海外協力隊から長崎大学MPHへ- 18年経っても色褪せない、MPHが教えてくれた「現場で考える力」-vol.43
2026.02.03
まだ日本国内でMPHという学位が一般的ではなかった2007年。
青年海外協力隊での現場経験をきっかけに、迷いながらも決意したのは長崎大学MPHへの進学でした。
長崎大学MPHの学びが、現在も海外フィールドでの調査活動に携わる筆者にもたらしたものとはー
18年の年月を経ても色褪せない、長崎大学MPHでの学びと体験を回想します。
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- この記事のまとめ
- この記事を読むとわかること
- この記事は誰に向けて書いているか
- MPHシリーズ
- 執筆者の紹介
- 編集者
- 監修者
- MPHを受験しようと思ったきっかけ
- なぜそのMPHを選んだか
- MPHでの経験
- 8ヶ月のフィールド滞在と、長崎の「ちゃんぽん」文化
- 受験対策でやったこと
- 「情熱」で乗り切った受験期
- 受験期に大変だったこと
- 「情報の少なさ」と「未知の状況への不安」
- 受験生に伝えたいメッセージ - 長崎大学MPHの魅力
- MPHで学んだ「見えない集団」のための疫学的視点
- 18年経っても色褪せない、「現場で考える力」
- MPHの受験から、卒後のキャリア形成まで一気通貫のサポートならmJOHNSNOW!
- 【YouTubeラジオコンテンツ 耳から学ぶシリーズ】
この記事のまとめ
この記事を読むとわかること
長崎大学MPHの魅力
受験を乗り越えるための「情熱」の大切さ
MPHでの学びが、その後の人生にもたらしたもの
この記事は誰に向けて書いているか
保健従事者以外でもMPHに興味がある方
MPHに興味はあるものの、語学に苦手意識をお持ちの方
MPHには興味がなくとも、将来のキャリアに悩んでいる方
MPHシリーズ
vol.12:【LSHTM受験】貧困支援のあるべき姿を問い続ける - ボランティアの真髄を照らすためのロンドンSPH進学
vol.16:【東北大学MPH受験】被災地域の保健師からアカデミアへ - シンデレラストーリーに隠された空白の5年間
vol.33:【長崎大学MPH受験】海外経験ゼロの看護師が開いた、国際保健への扉
執筆者の紹介
氏名:HⅠ
所属:大学の公衆衛生関連分野に勤務
自己紹介:医学博士・公衆衛生修士・獣医師。青年海外協力隊の獣医師隊員としてパラグアイ、ガーナで活動後、長崎大学で公衆衛生修士を取得後、長崎大学熱帯医学研究所で医学博士を取得、その後、長崎大学ベトナム拠点などを経て、現在、大学の公衆衛生関連分野に勤務し、フィールド研究を続けている。
編集者
氏名:菊池祐介
所属:mMEDICI株式会社
専門性:作業療法学修士。首都大学東京(現東京都立大学)・東京都立大学大学院を卒業後、病院勤務を経て専門学校・私立大学にて作業療法教育、地域共生社会の醸成に向けたリハビリテーション専門職の支援に関する研究に従事。現在は心身の健康とその人らしさの実現に向け、保険内外でのクライアント支援を展開している。作業療法の社会的意義向上を信念に、mMEDICI株式会社に参画。
監修者
氏名:廣瀬直紀
所属:mMEDICI株式会社
専門性:保健学博士・公衆衛生学修士。東京大学・東京大学大学院を卒業後、外資系製薬企業の疫学専門家として薬剤疫学・リアルワールドデータ研究を専門とする。日本・グローバルの双方で活動したのちに、全ての人がアクセス可能な一流の知のプラットフォームを作り、「知に繁栄を、辺野に豊穣を」実現すべく、mMEDICI株式会社を創業。
MPHを受験しようと思ったきっかけ
私がMPHを受験したのは2007年。すでに20年近く前の出来事になります。
ここに書くのは、あくまでも私自身の記憶と考えに基づいた回想です。年月を経て、美しい思い出はより鮮やかに、苦労は少し薄れているかもしれません。
そんな記憶の「ゆがみ」も含めて、これからMPHを目指す方へのささやかな道しるべとして読んでいただければ幸いです。
また、私はMPH修了後、そのまま博士課程(PhD)へと進学し、さらに長崎大学の海外拠点で勤務する機会にも恵まれました。
そのため、ここに記す内容は、当時の純粋な受験生の感情だけでなく、その後の長崎大学との深いつながりや、研究者としての経験が色濃く反映されています。
過去の記憶と現在の視点が交錯することになりますが、その両方を含めて「なぜMPHを選んで良かった点」を振り返ってみたいと思います。
MPH受験を志した最初の契機は、2004年頃から青年海外協力隊として活動していた日々に遡ります。
私は現地で「家畜管理」の活動をしていました。
そこで目の当たりにしたのは、衛生環境の不備や予防教育の不足が、人と家畜の健康に深刻な影響を及ぼしているという現実でした。
こうした経験から、個人だけでなく地域やコミュニティ全体の健康を包括的に捉え、課題に取り組む視点の重要性を痛感し、MPHへの挑戦を考えるようになったのです。
帰国後、進路について相談する中で日本国内の大学院への進学を勧められました。
当初は海外進学も選択肢にありましたが、語学スコアや奨学金の壁は高く、「一刻も早く勉強を始めたい」という気持ちが勝り、最終的には「日本でのMPH課程」を選択することにしました。
当時、日本国内においてMPHという学位はまだ一般的ではなく、制度も整備途上であったと記憶しています。だからこそ、自分がその新しい流れの一部となることに意義を感じ、挑戦することにしたのです。
なぜそのMPHを選んだか
長崎大学でMPHが開設されたのは2008年。当時は「国際健康開発研究科」という名称でスタートしたばかりでした。
東京の友人からは、「修士でわざわざ地方に行って何を勉強するの?」と少し懐疑的な反応をされたのを覚えています。(確かに、パンフレットには「国際協力の舞台でのパスポート」といったキャッチコピーが踊っており、正直に言えば、かなり怪しげな印象を受けました。)
それでも願書を準備していましたが、いざ郵送する段になって「本当にこれで良いのだろうか」という迷いが生じ、机の上で封筒を寝かせてしまったのです。
そんな折、協力隊時代の仲間との飲み会で、偶然隣に座った友人が「熱帯医学研究所(熱研)で3ヶ月間研修してきた」と話してくれました。
私が迷っている願書のことを打ち明けると、彼女は即座にこう言いました。
「熱研は面白すぎるから、絶対行った方がいい」
その一言で迷いは吹き飛び、受験を決意しました。
後から知ったのですが、当時、熱研とMPHは直接の組織的な関係はありませんでした。しかし、教員の多くが熱研とつながっており、学生は熱研の施設や資源を我が物顔で使い倒すこととなります。
これはMPH生特有の「鈍感力」のなせる業であり、関係者の皆さんにはかなりご迷惑をおかけしたに違いありません。
日本における唯一の熱帯医学研究所という存在が、迷っていた私の背中を力強く押してくれたおかげで、図々しくも有意義な時間を過ごすことができました。
今でも心から感謝しています。
MPHでの経験
8ヶ月のフィールド滞在と、長崎の「ちゃんぽん」文化
MPH課程で特に惹かれたのは、「8ヶ月間の海外フィールド滞在」でした。
長崎大学はケニアとベトナムに拠点を持ち、そこでの研究や調査には圧倒的な魅力がありました。「日本における国際保健の立ち位置」を学ぶ絶好の機会でもありました。
治安があまり良くない地域も含まれるため、安全には細心の注意が払われ、本物のプロフェッショナルによる安全対策セミナーも用意されていました。
拘束経験があるという海外の先生の話には、現場のリアリティがひしひしと込められていたことを思い出します。
学びの舞台は海外だけではありません。 長崎という土地も、関東育ちの私には一種の「異国」でした。魚の美味しさに驚かされ、同級生の家族からの差し入れが届くたびに感動する日々。
自然と学生、教員、事務の方々が酒を酌み交わす昔ながらの「飲みニケーション」が生まれ、学問と人間関係が融合する空間が形成されていました。
今振り返ると、長崎大学を選んだ理由は、長崎らしい「なんでもごちゃまぜで、なぜかおいしいちゃんぽん」のような気風に惹かれたからかもしれません。
学問も人間関係も、現場も日常も、全部が混ざり合ったこの場所での経験が、私にとってかけがえのない財産となりました。
受験対策でやったこと
「情熱」で乗り切った受験期
MPH受験を決めたものの、当初は具体的に何を準備すれば良いのか分かりませんでした。
英語力の基礎学習をする一方で、フィールド研究や国際保健の理解を深めるため、関連書籍を繰り返し読むことにしました。
特に『国際保健の優先課題 Priorities in Health(保健同人社)』は、当時の私にとって貴重な学びの源でした。
それ以外の対策は、特になし。基本的には「情熱」で乗り切るつもりでした。
不安や迷いはありましたが、「自分のやりたいことを実現するために進むべき道はここしかない」と決めると、不思議とその思いが強くなり、何とかなるだろうという気持ちで挑みました。
特に印象に残っているのは、MPHと同時に長崎大学熱帯医学研究所の「3ヶ月研修」にも志願し、その申請書類をひたすら手書きで書き続けたことです。
間違えては書き直し、まるで写経のように、自分の志望理由と向き合いながら文章を綴りました。
最終的に併願は不可だと知りましたが、ありがたいことにMPH入学後、熱研内の授業にも参加させていただくことができ、熱帯医学についてもどっぷりと学ぶことができました。
受験期に大変だったこと
「情報の少なさ」と「未知の状況への不安」
正直なところ、受験期の大変さを明確には覚えていません。多くの感情に混乱し、細かい記憶が残っていないのだと思います。 ただ振り返ると、最大の困難は「情報の少なさ」と「未知の状況への不安」にあったように感じます。
パラグアイとガーナでの活動を経て帰国した私は、強い「逆カルチャーショック」を経験していました。
海外ではマイノリティとしての孤独や無力さを味わい、帰国後はマジョリティとしての同調圧力に息苦しさを覚えるー
特にガーナでの活動後半は心身ともに疲弊しており、当時の私は人と関わることが煩わしくなっていました。
しかし、そんな体験があったからこそ、「現場で起こることや人々の状況をもっと深く理解したい」という気持ちが強まり、受験という目標を維持できたのかもしれません。
また、私は語学が得意ではないことに長らくコンプレックスを抱いてきました。それは今でも変わりません。
しかし、現場では語学力の高さだけでは仕事が円滑に進まないことも経験しました。相手の気持ちをどう察し、信頼関係を築くかの方が重要かもしれない。
未知の状況に直面した時でも、「現場への好奇心」を持ち続けられたことが、受験期の不安を乗り越える大きな力になっていたのだと思います。
受験生に伝えたいメッセージ - 長崎大学MPHの魅力
MPHで学んだ「見えない集団」のための疫学的視点
「現場で困難に直面した際には、学びに立ち返る姿勢が大切である」 これは、当時の学科長が教えてくれた言葉です。
その言葉通り、学ぶことで視野が広がり、自分の中に新たな選択肢や可能性が見えてくることを実感しました。
MPHを通じたフィールドでの経験は、まさにそうした「学び」と「実践」が結びついた貴重な機会であり、今に至るまでの活動の確かな礎となっています。
フィールドでの経験を通じて痛感したのは、疫学的視点において「どの集団にアプローチできるか」という点の重要性です。
調査や介入の射程から漏れてしまう「見えない集団」の存在は、公衆衛生上の大きな課題であり、健康格差を拡大させる要因となり得ます。
声をあげられない人々、自らの状況を問題と認識することすら困難な人々にどう気づき、信頼関係を築くか。これは研究者や実践者にとって常に問われる課題だと感じています。
私が、長崎大学のケニア拠点で調査をしていた頃、「風に立つライオン」という映画が撮影されていました。この映画は、1970年代にケニアでの医療活動に従事した長崎大学の医師のお話です。
同名の歌を聞くたび、現地に根付いた関係性の深さを感じるとともに、フィールドでの学びを思い出します。私が受験した頃、長崎大学MPHといえば「国際保健」「熱帯医学」のイメージが強い場所でした。
しかし現在では、「グローバルヘルス」という名称に変わり、その学びはより広く、深化しています。
グローバルヘルスとは、
「世界のすべての人々の健康の改善と、不公平な健康格差の是正に主眼をおいた、学問、研究、実践活動である」 (実践グローバルヘルス、日本国際保健医療学会編、杏林書院、2022年)
と定義される通り、現在の長崎大学MPHは多国間での構造的な課題にアプローチする視点が重視されています。
さらに近年では、「ワンヘルス」や「プラネタリーヘルス」、さらには宇宙人類学といった概念も注目されており、人間の健康を取り巻く環境や生態系との関係が、より広範かつ複雑に捉えられるようになっています。
長崎大学MPHは、こうした様々な領域が融合しながら、学びと実践がつながる点に魅力があります。
国内にいながら多様なバックグラウンドを持つ留学生と学ぶことができ、小さなコミュニティで議論や活動が進むことも多いため、少人数ならではの深い学びを得ることもできます。海外に目を向けつつ、日本の良さと課題にも気づく独特の視点を養われる場であると思います。
18年経っても色褪せない、「現場で考える力」
長崎大学MPHの経験から早18年。現在でも海外フィールドでの調査を続けることができているのは、間違いなくMPHで培った知識と経験のおかげです。
泥臭い長崎大学ならではの学びは、しつこく現場に食らいつき、現場の真実を探る姿勢を育ててくれました。あの時に身につけた「現場で考える力」が、今の自分の研究の根幹となっています。
あっという間に歳もとり、まだまだ経験も浅いまま、次の世代に何を伝えられるのかを考えるようになりました。現場での直感力、それに真摯に向き合う忍耐力。そして、現地の人の視点を歪めず、共に取り組む調査から現実をしっかりと発信できる力と、その大切さを知りました。
私が当時MPHで学んだ知見は、今では少し古くなっているかもしれません。しかし、今はmJOHNSNOWというプラットフォームが私にとって最新の知見を学ぶ場となり、大きな刺激を受けています。このような場を知ったことで、今後は、若い世代とともに、現場の声に耳を傾けながら、学び合い、支え合う関係を築いていきたいと強く思うようになりました。(先人達が築いてきた土台の上に、このプラットフォームが今の時代に合わせて柔軟に発展してゆくことを期待しています。)
「迷った時にこそ、MPHでの学びが次の一歩を導くきっかけになるのだろう。」心からそう思っています。
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