
【熱狂せよ、パブリックヘルス】医療や看護の価値をデータで語れるように - vol.3
2026.02.19
ICUで「エビデンスがある」という曖昧な言葉のもとに臨床判断が進んでいくことに違和感を覚える一方で、看護の価値が制度や政策の議論ではほとんど数値として示されていない現実に直面し、このままでは看護は正しく評価されないと感じました―――。
こうした出来事をきっかけとして、森田 光治良 氏(東京大学大学院医学系研究科 健康科学・看護学専攻 講師)は、公衆衛生大学院での学びを通じて臨床疫学やリアルワールドデータ研究の道に進み、大学院での学びと研究成果を医療現場や政策へ反映し続けています。
本記事では、臨床で感じた問いが、どのように研究となり、臨床現場や社会につながっていくのか。その活動に込める森田氏の思いや歩みを紹介します。
熱狂せよ、パブリックヘルス
本シリーズは、パブリックヘルスの領域で活躍するプロフェッショナルが初学者に向けて自らの専門性を語る自伝シリーズです。その専門性に出会った原点や、挫折の先に見つけた希望、そして今も燃やし続けている信念について、熱量を込めて語り尽くします。
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- この記事のまとめ
- この記事を読むと分かること
- この記事は誰に向けて書いているか
- 熱狂せよ、パブリックヘルスシリーズ
- 執筆者の紹介
- 1.リアルワールドデータを用いて、医療と看護の質、医療政策を評価する
- 2.曖昧な「エビデンスがある」に納得できなかった臨床の日々
- 「研究をやらなければならないが、やり方が分からない」
- 3.数値で示せるようになるために、公衆衛生大学院へ
- 臨床現場で感じていた違和感と制度の議論を見て感じた違和感が重なる
- 公衆衛生大学院への進学を決意
- 世界の見え方が変わる感覚 - 公衆衛生大学院での学び
- 4.臨床の問いを、データで検証する専門性を身につけるまで
- 公衆衛生大学院での基礎から体系的な学び
- 大学院での学びと研究で得た知見を、制度や現場へ反映する
- 5.結論ありきにしない研究を続けるために
- 【オンラインスクール mJOHNSNOW入会受付中:7日間無料お試し】
- 熱狂せよ、パブリックヘルスシリーズ
- 【YouTubeラジオコンテンツ 耳から学ぶシリーズ】
この記事のまとめ
この記事を読むと分かること
臨床の違和感が、研究テーマとキャリアにつながっていくプロセス
リアルワールドデータが、「現場」と「政策」をどうつなげるのか
研究テーマを選ぶときに大切にしている考え方(問いの立て方)
この記事は誰に向けて書いているか
臨床で「エビデンスがある」という言葉に違和感を覚えたことのある医療者
研究やリアルワールドデータに興味はあるが、何から学べばよいか迷っている方
医療や看護の価値や質を研究することで、現場や政策に与える影響に関心がある方
熱狂せよ、パブリックヘルスシリーズ
vol.1:RWDのおかげで親に仕送りできるようになりました(mMEDICI株式会社/廣瀬直紀)
vol.2:女性の健康における社会課題へ挑み続ける(産婦人科専門医/重見大介)
vol.3:(東京大学大学院医学系研究科 健康科学・看護学専攻 看護管理学/森田光治良)(本記事)
執筆者の紹介
氏名:森田 光治良
所属:東京大学大学院医学系研究科 健康科学・看護学専攻 看護管理学/看護体系機能学分野(所属HP)
専門性:集中治療・循環器領域での臨床経験を基盤に、診療報酬データやレセプトデータ、患者の診療記録など、実際の医療現場で日々蓄積されている「リアルワールドデータ」を用いて、医療や看護の質、そして医療政策を評価する研究を専門とする。現在は、大学での教育・研究に加え、特に看護分野におけるリアルワールドデータ研究の推進と、それを担う人材の育成にも力を注いでいる。また、臨床疫学の専門家として、様々な共同研究や教育活動にも携わっている。研究の始め方、論文の読み方、Evidence-Based Practiceやリアルワールドデータ研究をテーマに、講義・講演・研修を行っている。(researchmap)
著書:
・超絶解説 医学論文の難解な統計手法が手に取るようにわかる本
・医学論文、わからないのは統計だけ?肝心要の研究デザインがわかる本
・医学・看護論文を読み解いて臨床に活かす方法 Evidence-based Medicine/Nursingのすべて(書評はこちら)
Selected papers:
・Morita K, Nakagami G, et al. Int J Nurs Stud. 2026 Feb 6; 105371.
・Morita K, Nakagami G, et al. Nurs Outlook. 2025 Nov 24;74(1):102605.
・Morita K, Miyamoto Y, et al.Int J Cardiol. 2023 Sep 15;387:131145.
・Morita K, Matsui H, Ono S, Fushimi K, Yasunaga H.J Nurs Scholarsh. 2023 Mar;55(2):494-505.
・Morita K, Fukahori H, et al.Int J Geriatr Psychiatry. 2021 Sep;36(9):1386-1397.
・Morita K, Ono S, et al.J Am Geriatr Soc. 2018 Apr;66(4):728-734.
・Morita K, Matsui H, et al.J Crit Care. 2017 Oct;41:209-215.
・Morita K, Matsui H, Fushimi K, Yasunaga H.Health Serv Res. 2017 Jun;52(3):1005-1023.
その他、共著論文として、CirculationやEuropean Heart Journalをはじめ、Journal of the American College of Cardiology、Stroke、Radiology、Thorax、Journal of Allergy and Clinical Immunologyなど、国際的に評価の高い医学誌にも掲載実績がある。


ICUで「エビデンスがある」という曖昧な言葉のもとに臨床判断が進んでいくことに違和感を覚える一方で、看護の価値が制度や政策の議論ではほとんど数値として示されていない現実に直面し、このままでは看護は正しく評価されないと感じました。
その時、データで医療と看護を語る道に進む決意を固めました。
1.リアルワールドデータを用いて、医療と看護の質、医療政策を評価する
現在、私は東京大学大学院医学系研究科健康科学・看護学専攻看護管理学分野に所属し、教育と研究に携わっています。
専門は、診療報酬データやレセプトデータ、患者の診療記録など、実際の医療現場で日々蓄積されている「リアルワールドデータ」を用いて、医療と看護の質、そして医療政策を評価する研究です。

リアルワールドデータとは、研究のために新たに集められたデータではなく、日常診療の中で日々発生するデータを指します。こうしたデータを用いることで、臨床現場で行われている実践や制度の変化が、患者アウトカムや医療の質にどのような影響を与えているのかを、現実に即した形で検証することができます。
本記事では、集中治療室での臨床経験を出発点に、「エビデンスがある」という曖昧な言葉への違和感や、看護の価値が数値として語られにくい現実に直面した経験が、どのように研究への関心へとつながっていったのかを振り返ります。
さらに、公衆衛生大学院での学びを通じて臨床疫学やリアルワールドデータ研究の道に進み、研究成果が現場や政策にどのように還元されてきたのか、その過程を紹介します。
臨床で感じた問いが、どのように研究となり、臨床現場や社会につながっていくのか――
本記事が、臨床・研究・政策をデータでつなぐ専門性に関心を持つ読者にとって、一つの具体的な道筋を示すものになれば幸いです。
2.曖昧な「エビデンスがある」に納得できなかった臨床の日々
元々の出発点は、学生時代に感じていた看護師教育への違和感や不足感でした。
その想いから、卒後教育が充実し全国の大学から多様な教育背景を持つ看護師が集まる環境で経験を積みたいと考え、聖路加国際病院に入職しました。
当時は、まず臨床経験をしっかり積むことを最優先に考えていました。その先で「いつか看護師教育に関われたらよいな」と、漠然とした将来像を描いていました。
配属されたのは集中治療室でした。
ベッドサイドで患者さんに最も近い立場として、治療やケアの判断に日常的に関わる環境です。医師と議論し、その場で治療方針が変更されることも珍しくなく、意思決定のスピードが求められる現場でした。
その中で、頻繁に耳にしたのが、曖昧な「エビデンスがある」という言葉でした。しかし、その言葉を聞くたびに、次第に違和感を覚えるようになりました。
そのエビデンスは、どのような研究に基づくものなのか。どのような患者を対象にした研究なのか。そして、それは目の前の患者に本当に当てはまるのか――
そうした吟味が十分になされないまま、「エビデンスがある」という言葉だけで意思決定が進んでいくことがあります。そのように感じる場面が少なくなかったです。
患者さんと最も長く直接向き合う看護師として、その判断に責任を持たなければならない立場にいると考えます。それにもかかわらず、感じた違和感を自分の言葉で説明できないことに、強いもどかしさを覚えていました。
「研究をやらなければならないが、やり方が分からない」
同時に、学会発表に向けた課題研究に取り組む中で、別の壁にも直面しました。
「研究をやらなければならないが、やり方が分からない」という感覚です。
病院に存在した研究支援センターに相談した際、公衆衛生学修士(MPH:Master of Public Health)を持つ研究者が、私の臨床疑問をその場でPICO(研究の問いを整理する枠組み)に整理していく姿を目にしました。
疫学や統計の専門的な助言を受ける中で、研究には体系的に学ぶべき知識があることを実感しました。
同じ時期に、統計ソフトの使い方を学ぶセミナーに参加しても、手法をなぞるだけでは本質を理解できませんでした。そして、「理解しないまま使うことの危うさ」を強く意識するようになりました。
さらに、自身のキャリアの選択肢を考える中で、当時議論が始まった特定看護師の導入をめぐる厚生労働省の検討会にも目を向けるようになりました。そこで直面したのは、看護の質が制度や政策の議論の場で、ほとんど数値として示されていないという現実でした。
現場では、確かに価値のある実践が行われています。しかし、それが制度の議論の中では十分に言語化されていませんでした。このままでは、看護の価値は正しく伝わらないのではないか――
そうした言葉にならない危機感が、次第に自分の中で大きくなっていきました。
3.数値で示せるようになるために、公衆衛生大学院へ
臨床現場で感じていた違和感と制度の議論を見て感じた違和感が重なる
集中治療室での臨床経験を重ね、院内での学会発表や課題研究への取り組みが一つ区切りついた頃のことでした。
集中治療室で感じてきた違和感は、時間とともに薄れるどころか、むしろ強く残っていました。
「エビデンスがある」という曖昧な言葉だけで進んでいくことがある臨床判断に、違和感を覚え続けました。だからこそ、Evidence-Based Medicine(EBM)の本質を学びたいと思うようになりました。
同時期に、厚生労働省で進められていた特定看護師をめぐる議論も、継続して追いかけました。そこで交わされていたのは、「どのように制度化するか」という議論以上に、「そもそも制度として本当に必要なのか」という問いでした。
看護の実践が患者にどのような影響を与えているのか、その価値がデータや数値として示される場面は、ほとんど見当たらないままでした。
議論が進んでいく様子を見て、「数値で示されない議論は、解釈やその人の立場によって揺れやすいのではないか」と感じるようになりました。
「臨床の現場で感じていた違和感と、制度の議論を見て感じた違和感」それらが、自分の中で重なり合っていきました。
公衆衛生大学院への進学を決意
進路を考える中で、看護系大学院への進学も当然選択肢の一つでした。
しかし当時の私の関心は、「看護学をさらに深めること」そのものよりも、「臨床で生まれた問いを、きちんとデータで示せるようになること」に向いていました。
医療現場だけでなく、制度や政策の議論の場でも使われる「エビデンス」という言葉。「それを正しく理解し、必要であれば自分の手で示せるようになりたい」と考えました。
進路を具体的に考える過程で、病院の研究支援センターに所属する公衆衛生学修士(MPH:Master of Public Health)を持つ研究者との出会いが、強く印象に残っていました。
臨床で生まれた疑問を、研究の問いとして整理し、データで検証できる形に組み立てていくその姿を目の当たりにし、「自分に必要なのは、この体系的な力だ」と感じるようになりました。
臨床の現場で生まれた問いに、感覚や経験だけで向き合うのではなく、データを使って正面から向き合えるようになりたい。
そして、看護の価値を、数値として社会に伝えられるようになりたい。
その思いが、公衆衛生大学院への進学を決意する決定的なきっかけとなりました。
世界の見え方が変わる感覚 - 公衆衛生大学院での学び
公衆衛生大学院で学び始めて最初に感じたのは、「世界の見え方が変わる」という感覚でした。
疫学、生物統計学、医療経済学、医療政策学など、様々な学問体系に触れる中で、臨床現場では個別の経験として捉えていた出来事が、集団レベルの現象として整理されていきました。
そして、特に強く惹かれたのが、臨床疫学を中心とする研究分野でした。
臨床疫学は、理想的な条件下での効果を示すランダム化比較試験(RCT)だけでなく、実際の医療現場で起きていることをリアルワールドデータとして捉え、検証することも含む学問です。
また、臨床疫学は、Evidence-Based Medicine(EBM)を体系的に学ぶ学問でもあります。
「国内におけるリアルワールドデータ研究の第一人者である恩師・康永秀生先生のもとで、これらの手法を体系的に学びたい」と考えるようになったことが、この分野に進む決心を後押ししました。
4.臨床の問いを、データで検証する専門性を身につけるまで
公衆衛生大学院での基礎から体系的な学び
公衆衛生大学院に進学してからは、それまでの臨床経験を土台に、特に疫学や臨床疫学、生物統計学を基礎から体系的に学ぶことに力を注ぎました。
研究疑問の立て方や疑問の型の分類
研究デザイン
バイアスの考え方
因果推論
統計解析の選択と結果の解釈
いずれも、臨床研究を行う上で欠かすことのできない基盤となる知識です。
同時に、医療経済学やヘルスサービスリサーチといった分野にも触れました。これらは、医療政策や制度改革が、医療現場の行動や患者アウトカムにどのような影響を与えているのかを評価することを含む学問です。
特に印象に残ったのは、当時、医療分野でも応用され始めていた計量経済学分野の手法を用いた政策評価でした。
制度が変わることで、現場の行動や結果がどう変わるのか。その結果、患者や医療の質にどのような影響が生じるのか。「制度が変われば現場が変わる」という感覚を、データで確かめられることに強い魅力を感じるようになりました。
大学院での学びを通じて、私が一貫して重視するようになったのは、「リアルワールドデータを使うこと」そのものではないです。
全国規模の診療報酬データや患者データは、確かに強力な研究データ源です。しかし、決して万能ではありません。
どのような目的で集められたデータなのか。
どの集団を、どこまでカバーしているのか。
どの情報が含まれていて、どの情報が含まれていないのか。
さらに、診療報酬制度や医療保険制度といった制度的な背景と、実際の臨床現場の感覚。
その全てを理解していなければ、データの解釈を誤る危険が高いです。
リアルワールドデータを用いた研究では、まず臨床の問いを明確にする必要があります。そして、「この問いに、このデータで本当に答えられるのか」を慎重に検討します。
対象集団の特性
観察期間やデータの連続性
変数の定義や抽出方法
データの質と限界
「これらを一つ一つ確認し、できないことは無理にやらない。」
その判断力こそが、リアルワールドデータ研究において最も重要な専門性の一つであると考えます。
大学院での学びと研究で得た知見を、制度や現場へ反映する
こうした大学院での学びの一部は、大学院時代の仲間たちとともに、書籍という形でまとめてきました。
高度な統計手法については、「超絶解説 医学論文の難解な統計手法が手に取るようにわかる本」として出版しました。
研究デザインについては、「医学論文、わからないのは統計だけ?肝心要の研究デザインがわかる本」として出版しました。
また、臨床疫学で学んだエビデンスの考え方を現場にどう生かすかについては、「医学・看護論文を読み解いて臨床に活かす方法―Evidence-Based Medicine/Nursing のすべて」としてまとめることができました。
このように、大学院での学びと研究で得た知見を、研究者だけでなく、臨床現場にも届く形で共有することを、常に意識してきました。
その延長として、医学界新聞を通じて、自身の取り組みが医療者に広く紹介される機会にも恵まれました(医学書院 週刊医学界新聞 第3471号、2022年5月「リアルワールドデータを看護にどう生かすか」)。
リアルワールドデータを看護にどのように生かすかをテーマとした座談会に参加し、研究の考え方や実践上の意義について議論する中で、看護分野におけるリアルワールドデータ活用の重要性を社会に伝える一助となりました。
こうした基盤の上で取り組んだ研究のうちの一つが、博士論文の一部となった「ICUにおける認定・専門看護師配置と患者転帰」に関する研究です(Morita K, et al. Journal of Critical Care.2017;41:209–215)。
全国規模のデータを用いることで、個々の施設や経験だけでは評価が難しかった看護師の専門性の効果を検証しました。この研究は、多くの研究者や臨床家にも読んでいただき、声をかけてもらうきっかけとなりました。
さらに、診療報酬改定の議論の場で本研究が取り上げられ、議論の参考資料として参照されました(中央社会保険医療協議会 総会 第373回「入院医療(その7)について」p.98)。
その後、平成30年度の診療報酬改定では、集中治療室における専門の高い看護師配置が、特定集中治療室管理料の施設基準として位置づけられました(平成30年度診療報酬改定資料「概要(医科1)その1」p.46)。
研究成果が論文として発表されるだけでなく、制度や現場に反映されていくその瞬間を目の当たりにしたことは、私の研究姿勢を大きく形作りました。
「研究は、業績のためだけに行うものではない。現場で感じた問いに答え、その結果が現場や社会に還元されてこそ、意味を持つ」。
この考え方は、その後の研究テーマの選択や、教育・人材育成への関わり方にも、現在まで一貫して反映されています。
5.結論ありきにしない研究を続けるために
公衆衛生大学院で臨床疫学や医療経済学、ヘルスサービスリサーチを学び博士号を取得したあと、現在は看護管理学分野に身を置いています。
一見すると「公衆衛生分野から看護学分野へ移動した」ように見えるかもしれませんが、私自身の中では、専門性が変わったという感覚はありません。「リアルワールドデータ」を用いて、医療や看護の質、そして医療政策を評価するという関心は一貫しており、それらはもともと看護分野では看護管理学が扱う中核的なテーマです。
学問分野の名称や所属は変わりましたが、取り組んできた問いは、むしろ看護の文脈の中でこそ広がり、深まるものでした。
私が専門家として一貫して大切にしてきた信念は、「良い医療・良い看護とは何かを、データを用いて実証し、評価と改善につなげること」です。
臨床や政策の現場では、「重要そうである」と感じられている実践の多くが、十分に数値化されないまま議論されてきました。その結果、制度の議論の場で本来伝わるべき価値が、正しく共有されない現実を、臨床と研究の両方の立場から見てきました。
リアルワールドデータは万能ではありません。できることと、できないことがあります。
だからこそ私は、「その問いは臨床や政策にとって本当に重要なのか」「このデータで本当に答えられるのか」を、研究の出発点で徹底して考えることを重視しています。
良いテーマがなければ、良い研究にはなりません。「研究のテーマは、現場に転がっている」という恩師の言葉を常に大事にしています。
また、私は良い研究の問いとは、「研究結果が肯定的であっても否定的であっても、価値が変わらないテーマだ」と思っています。
結論ありきではなく、問いそのものの重要性や妥当性を大切にしたいです。
公衆衛生大学院に進学し、リアルワールドデータを活用した研究を始めた頃には、「それは看護研究ではない」と、看護分野から言われたこともありました。
しかし現在では、そのような言葉を向けられることはほとんどなくなりました。
専門家になる道は容易ではありませんが、「自分の信念を信じ、自分にできることと向き合い続けることが、何より大切だ」と感じています。
現在は、自身の研究に加えて、リアルワールドデータを用いた研究を看護分野でも推進するために、大学院での講義や他大学での教育活動、修士・博士課程での人材育成にも取り組んでいます。
こうした取り組みは、所属講座における教育・研究活動の延長線上にあり、看護分野におけるデータ活用の必要性や教育・研究の方向性を整理する過程を経て、協力講座として立ち上げられたナーシングデータサイエンス講座の開設構想や、その後の運営にもつながりました。
そして、所属する看護管理学分野とナーシングデータサイエンス講座が一体となって連携・協働しながら、リアルワールドデータを用いた研究と教育の推進に取り組んでいます。
今後も、看護におけるデータサイエンスをより一層発展させ、医療と看護の質を数値で示し、社会に伝え続けていきたいです。
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