
MPH
【帝京SPH受験】東大SPH不合格を乗り越えて:挫折が拓いた行き先で内科医が得た学び - vol.36
2025.09.14
SPH受験に挑むも不合格となり、もう一度チャレンジすべきか迷っている受験生は少なくないのではないでしょうか。特に、臨床や研究、家庭と両立しながらの受験は挫折を経てなお再挑戦することに大きな不安を伴うでしょう。
本記事では、東大SPHで不合格を経験した後も挑戦を続け、最終的に帝京SPHで合格を勝ち取った総合内科医が受験体験を振り返ります。自身の経験をもとに「挫折から合格までのプロセス」と「帝京SPHで得られた学び」を振り返り、再挑戦の道のりを具体的にご紹介します。
SPHでの学びを諦めたくないすべての方に届けたい体験記です。
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- この記事のまとめ
- この記事を読むと分かること
- この記事は誰に向けて書いているか
- MPHシリーズ
- 執筆者の紹介
- 編集者
- 監修者
- MPHを受験しようと思ったきっかけ
- 日常に潜む「マンネリ感」との向き合い
- 臨床研究への憧れと挫折感
- MPHとの運命的な出会い
- なぜそのMPHを選んだか
- 東大SPH挑戦と挫折
- 帝京SPHとの出会い
- 帝京SPH選択の決め手
- 【オンラインスクール mJOHNSNOW入会受付中:7日間無料お試し】
- 受験対策でやったこと
- 受験スケジュールと事前準備
- 提出書類の準備
- 面接対策と実際の面接
- 受験期に大変だったこと
- SPH修了後のキャリアと気づき
- 予想を超えた学びの広がり
- 産業保健の学びが診療に与えた影響
- 仕事・育児との両立の工夫
- 受験生に伝えたいメッセージ
- MPHの受験から、卒後のキャリア形成まで一気通貫のサポートならmJOHNSNOW!
- 【YouTubeラジオコンテンツ 耳から学ぶシリーズ】
この記事のまとめ
この記事を読むと分かること
東大SPH不合格から帝京SPH合格までのリアルな軌跡
ギリギリでの受験準備と実際の対策方法
帝京大学SPHの特色と入学後に得られる学び
この記事は誰に向けて書いているか
一度の失敗で諦めず、再挑戦を考えている受験生
働きながらSPH受験を検討している医療従事者
帝京大学SPHの実際の受験プロセスを知りたい方
MPHシリーズ
vol.6:【聖路加SPH受験】基礎研究から製薬企業へ転身した薬学研究者のキャリアデザイン
vol.14:【神奈川県立保健福祉大学MPH受験】無気力の先に見出した問い - 行動変容を支援する産業医の視点
vol.15:【国際医療福祉大学SPH受験】企業人材にもたらす"疫学"の可能性 - 業務と家庭、研究を妥協しない非医療資格者の邁進
執筆者の紹介
氏名:匿名
所属:病院勤務 → 帝京SPH
自己紹介:総合内科医師。医学部卒業後、市中病院で研修を行い総合内科専門医取得。その後、大学病院の総合診療科に従事している。日々の臨床業務をこなす中で、病院でできることの限界や、患者一人ひとりの価値観を尊重したヘルスケアプランの実現の難しさを実感。より広い視点から健康を捉え、臨床研究のスキルも体系的に学びたいと考え、SPHへの進学を決意した。
編集者
氏名:菊池祐介
所属:mMEDICI株式会社
専門性:作業療法学修士。首都大学東京(現東京都立大学)・東京都立大学大学院を卒業後、病院勤務を経て専門学校・私立大学にて作業療法教育、地域共生社会の醸成に向けたリハビリテーション専門職の支援に関する研究に従事。現在は心身の健康とその人らしさの実現に向け、保険内外でのクライアント支援を展開している。作業療法の社会的意義向上を信念に、mMEDICI株式会社に参画。
監修者
氏名:廣瀬直紀
所属:mMEDICI株式会社
専門性:保健学博士・公衆衛生学修士。東京大学・東京大学大学院を卒業後、外資系製薬企業の疫学専門家として薬剤疫学・リアルワールドデータ研究を専門とする。日本・グローバルの双方で活動したのちに、全ての人がアクセス可能な一流の知のプラットフォームを作り、「知に繁栄を、辺野に豊穣を」実現すべく、mMEDICI株式会社を創業。
MPHを受験しようと思ったきっかけ
日常に潜む「マンネリ感」との向き合い
私は総合内科医として、ひたすら日々の臨床業務をこなしていました。
指導医としての仕事もこなせるようになり、ある程度のルーティンが確立されていました。
しかし、キャリアを振り返る中で、「現在行なっていることを繰り返しているだけでは新たな刺激がない」という想いが次第に強くなっていきました。
臨床現場では、エビデンスがあることは調べれば分かる上、実践することもそれほど大変ではありません。
しかし、エビデンスがないことは、いくら調べても答えは見つからず、その都度もっともらしい対応を行うしかないというのが現実でした。
また、個人の健康への価値観が大きく異なり、一律にエビデンス上良いとされる方向に強制していくことの限界も感じていました。
臨床研究への憧れと挫折感
転機となったのは、恵まれた指導医との出会いでした。
手取り足取りで臨床研究を指導していただき、論文化まで経験できましたが、正直に言うと、ほとんどを理解できないまま進んでいったというのが実情でした。
「臨床研究をある程度一人で実践できるようになりたい」と考え、関連書籍を読んだりしていましたが、手を動かさないと分からない部分も多く、実感が湧きませんでした。
40歳に近くなると新しいことを始めるのが億劫になり、「臨床研究もやりたいな」と思うだけの日々が続いていました。
MPHとの運命的な出会い
一般的な医師のキャリアとして、医学系の大学院へ進学し博士号を取得することが多く、周りの友人も大学院に進学する人が多くいました。
しかし、医学系の大学院は基礎研究が中心であることが多く、私には基礎研究があまり魅力的には感じられませんでした。
MPHへの進学を考え始めたのは、以前の職場の先輩医師が東大SPHへ入学し、たまたま話をする機会があったことがきっかけでした。
先輩から大学院での様子を聞く中で、「総合内科という分野は、医療者として関わる人の健康をどう改善するかという点で、公衆衛生との相性が良さそう」と感じました。
さらに、臨床研究に重要な疫学や生物統計について体系的に学べるチャンスでもあると感じ、SPH受験を決意しました。
なぜそのMPHを選んだか
東大SPH挑戦と挫折
「SPHといったら東大と京大?」という単純な発想で、先輩の通っていた東大SPHの受験を決めました。
当時は東大と京大にあるくらいしか認識がなく、他のSPHについてそれほど熱心に調べたわけでもありませんでした。
東大SPHの過去問は手に入れていたものの、日々の診療の忙しさを言い訳に、十分な準備をせず時間が流れていきました。
直前に慌てて問題を解いたところ、自分が勉強に割ける時間と必要な勉強量を考えた時に、明らかに間に合わないと感じていました。
受験の結果は予想通り不合格。
その時は「勉強し直して1年後に受験かな」くらいに軽く考えていました。
帝京SPHとの出会い
進路を相談していた先輩に不合格の報告をした際、「共通の知人が帝京SPHを卒業したらしいから、一緒に話を聞いてみよう」と提案をもらいました。
今でも、この素敵な先輩と巡り合えたことに感謝しています。
話を聞く中で、「SPHごとの雰囲気の違いはあれど、MPHとして習得できることは大きく変わりがなさそう」という印象を受けました。
帝京SPH選択の決め手
帝京SPH選択には、実務的な要因と教育内容への期待という二つの大きな理由がありました。
実務的な面では、来年度に向けて職場での仕事の調整を既に行っており、このまま来年度の入学を迎える方が職場への影響も最小限に抑えられスムーズだと判断しました。
また、職場からの通いやすさも重要なポイントでした。
働きながらの通学を考えると、アクセスの良さは日々の負担を大きく左右します。
さらに、東大SPHと同様に教育訓練給付制度が利用でき、経済的な負担を抑えられることも魅力的でした。教育内容への期待も決定的な要因でした。
授業内容を伺った際、本人の健康行動をどのように変えていくかのヘルスコミュニケーションや、臨床研究で必要な生物統計学の講義は充実しているように感じました。
臨床現場で即座に活用できる知識とスキルの習得が期待できました。
また、社会人学生が多いという特色を踏まえ、Zoomでのオンライン授業など働きながら学べる柔軟性のあるプログラム設計がされていることも重要でした。
(続きはページの後半へ)
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受験対策でやったこと
受験スケジュールと事前準備
帝京SPHの受験日程は年4回に分けて実施されており、途中で定員に達した場合には募集終了となります。
私が受験を決めたタイミングは3回目の募集期間中でしたが、特に定員に達しているというアナウンスはありませんでした。
ギリギリの決断に至った心境
募集が終了していないことに安心して、業務の合間に準備をしていました。
しかし、まとまった時間を作るのが難しい中で、研究計画書を書き上げるには当時の自分には足りないものが多いと感じていました。
なかなか作業が進まず、時間だけが過ぎていきました。
きちんと仕上げることも重要だが、このままでは、せっかくの機会を逸してしまう。
「今の自分で書ける精一杯のもので臨もう」と決断ました。
事前面談
受験のために、希望する専門領域の指導教員との面談が必要でした。
6月と11月に開催される研究科説明会に参加すれば条件は満たすとのことでしたが、仕事の都合がつかなかったため、Zoomでの面談を申し込みました。
公衆衛生の分野は、大きく5領域(生物統計学、疫学、社会行動科学、産業環境保健学、保健政策・医療管理学)に分けられており、希望する領域の指導教員との面談となります。
実際に受験を準備していた時には、恥ずかしながら違いをよく分かっていなかったので、特に希望はせず、日程が合う先生と面談を優先してお願いしました。
医師では医学博士を取得する方が多い中で公衆衛生を選んだ理由や、具体的に大学院で学びたいことを伝えました。
この面談では、このまま大学院へ進んだ場合に学生の希望とマッチするかに焦点があるように感じ、特に採点には影響はなかったと思います。
提出書類の準備
必要書類は下記の通りです。
志望理由書
研究計画書
英語資格の成績証明書
志望理由書
これまでの臨床経験と、それに基づき学びたいことをを中心に記載しました。
特に誰かに添削をしてもらったわけではありませんが、日を置いて自分が記載した内容に矛盾がないか、魅力的であるかを確認しました。
研究計画書
入学後に実施したいと考えていた研究計画を、これまでに作成した研究計画書を参考にして作成しました。
統計学的な手法を十分に理解していたわけではなかったので、解析に関しては正直に「入学後に学びたい」と記載しました。
なお、入学後にこの研究計画はほとんど原型をとどめないほどに修正され、より実現可能性の高いものへと変更になりました。
英語資格
当時の願書では任意とされていたため最初は提出しませんでしたが、後に事務から英語での加点分があるためできれば提出したほうが望ましいと連絡がありました。
認められている英語資格は、TOEFL iBT、IELTS Academic、TOEIC L&R 公開テストのいずれかでした。
私は直近で受験できたTOEFLを申し込んで受験しましたが、もともと英語が得意ではない上、準備不足のため点数は芳しくありませんでした。
それでも無事合格でしたので、英語自体の配点はそれほど高くないように思われます。
現在は英語が必須とされており、上記の英語資格がない人のためにCASECという英語試験を帝京大学で受験するようになっています。
面接対策と実際の面接
書類提出後に面接が行われました。
実際に準備したこととして、志望動機を明確に答えられるようにし、また研究計画書が1ページ程度だったため不足している箇所を補完できるよう準備をして試験に臨みました。
面接では志望理由と研究計画に沿って質問されました。
終始和やかな雰囲気で進行し、自分の目指すことを伝えて「頑張ってください」という雰囲気で終了しました。
受験期に大変だったこと
時間管理の困難さ
ギリギリになって受験を決断したため、勤務の合間を縫って準備するのが大変でした。
志望動機や研究計画については「これでいいのだろうか?」と思いながら記載していました。
先輩や上司に確認してもらうのが困難なほどギリギリで作成する状況だったため、早めの準備に越したことはありません。
現在であれば生成系AIでの校正も活用できると思います。
英語対策の不安
英語に関しては全く時間が取れず、最後まで不安を抱えながら受験に臨みました。
入学後も周囲の学生と得点の話はしていないので、何点程度あれば安心かは分かりませんが、勉強して臨む方が心の安寧は得られると思います。
教育訓練給付制度の手続き
入学前にハローワークでキャリアコンサルティングを受ける必要がありましたが、居住地のハローワークの面談予約に空きがなく、結局教育訓練給付制度は利用せずにSPH入学を迎えました。
私立の大学院の授業料も安くはないため、こちらも早めに準備しておけばよかったと悔やんでいます。
SPH修了後のキャリアと気づき
予想を超えた学びの広がり
入学時には「自分で臨床研究を行えるようになればいい」と考えていました。
疫学と統計学だけでも十分だと思っていましたが、帝京大学SPHは産業保健との連携が強く、これが予想外の収穫でした。
働く世代の方と病院で出会うのは、健康診断で受診が促された場合が多くなりますが、型通りの生活指導が必ずしも効果を上げていない現実を痛感させられました。
健康に対する行動変容を促すことも医師として必要なスキルだと思いましたが、実践できている人は限られているなと感じます。
また、治療が必要な状態であっても多くの人が病院を受診していない現実を知り、わざわざ病院まで来てくれるだけでもすごいことであると思うと日々の診療での向き合い方も変わりました。
たとえ病気のコントロールが悪くても、「きちんと来院してくれてありがとう」「自分の指導の結果で病院嫌いにさせてはいけない」という思いが出てきました。
産業保健の学びが診療に与えた影響
帝京大学で産業医研修会が開催されるとアナウンスがあったので、研究科長へお願いし受講させていただきました。
そこでは日常診療で、何気なく見ている病気が働く人たちの生産性をいかに下げているかを改めて認識しました。
プレゼンティーイズム(※)への気づき
片頭痛やアレルギー性鼻炎など、対症療法として薬を処方して満足している自分がいました。
症状が抑えられない人も多かったですが、仕方がないとも考えていました。
実際にどれほど生産性に影響しているかは意識できていませんでした。
また、女性特有の月経前症候群にどれだけ悩まされている人がいるのか、低用量ピルの内服で救われる人が多いことも十分に把握できていませんでした。
それは普段の診療ではあまり意識しないことでした。保険診療の中ですべてを賄えるわけではありませんが、医師の立場として働いている人たちがいかに負担なく過ごせるかも重要なのだと改めて気づかされました。
産業保健から学んだ働く人たちの健康維持は、現在の診療を行っていく上で非常に重要な知見となりました。
※プレゼンティーイズム:病気や不調を抱えながらも出勤・勤務を続ける状態を指し、集中力や効率の低下により生産性が損なわれること。
仕事・育児との両立の工夫
社会人大学院生として職場に許可申請をお願いして受験に臨みましたが、子供が生まれたこととも重なり、医師・学生・親としてどこまで頑張れるか不安がありました。
最終的には上司とも相談し休職をさせてもらい、仕事に関しては一部外来を継続するのみにしました。
疫学や生物統計の課題には時間を要したので、業務、授業、育児の合間にいかに学習時間を作るかを考えていました。
音声学習の活用
生物統計の授業はZoom録画されているものが共有されるので、家事や育児の合間に手が塞がっていても耳から復習を行っていました。
mMEDICI Channelの「耳から学ぶシリーズ」は学生時代にはありませんでしたが、家事や育児をしながらでも学習できる良いコンテンツだと思います。
移動時間の活用
通学・通勤は電車だったので、その移動時間も課題をやる時間にしていました。
Rのコードが上手く書けず、エラーの修正に奮闘しているうちに乗り過ごしてしまったのはいい思い出です。
同級生との助け合い
子供の体調によって日中に時間確保ができなかった場合には、睡眠時間が削られることもありました。
また、グループで課題をこなすことも多いため、同級生に助けてもらうこともありました。子供を持つ同級生も多かったので、みんなで助け合いながら課題をこなせたのも良かったと思います。
SPHへの入学を検討される方の中に、ライフステージとして育児が重なる方も少なくないと思います。自分の時間を作ることと、育児を両立させることは振り返っても難しいなと思います。
ただ、それを乗り越えて得られたものは大きかったと思います。
受験生に伝えたいメッセージ
挑戦することの価値
専門職学位課程であり、自身のキャリアを見つめ直す中でSPHを目指す方も多いかと思います。
実際の学生には、仕事や育児と並行しながらキャリアアップやキャリアチェンジを目指す方が数多くいらっしゃいました。
学業との両立は決して容易ではありませんが、それを乗り越えた時に得られるものは計り知れません。
帝京SPHの魅力
教員の先生方は常に学生一人ひとりを丁寧に指導し、熱心にサポートしてくださいます。
同じ志を持った多様なバックグラウンドの同期と切磋琢磨できる環境は、社会人になってからはなかなか得られない貴重な経験です。
生成系AIの台頭で、今後どこまで解析のコードを書ける必要があるかは分かりませんが、生物統計の課題はかなりタフでしたので、Rの扱いにはかなり親しみを持てるようになります。
産業保健など、臨床現場では触れることの少ない分野にも触れられます。
失敗を恐れずに
私自身、東大SPH不合格という「失敗」を経験しましたが、結果的により自分に合った帝京SPHとの出会いにつながりました。
一度の失敗で諦める必要はありません。
完璧な準備を待つより、ある程度の準備ができたら挑戦する勇気も大切だと思います。
東大受験は完全に準備不足でしたが、SPHを目指すという行動の結果、帝京SPHとの出会いがあり、MPHを取得するために頑張れた自分があったと思います。
受験する前から完璧な研究計画書が作成できるのであれば、わざわざSPHで学ぶ必要はないと思います。
受験段階ですべてを理解しておく必要はなく、入学後に深く学べばよいのです。
最後に
自分自身を大きく成長させるために、ぜひ挑戦していただければと思います。
SPHでの学びは、きっとあなたの人生とキャリアに新たな扉を開いてくれるはずです。
※帝京大学SPHの最新の受験要項や詳細については、必ず大学の公式ホームページでご確認ください。
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