
【元厚労省薬系技官が教える 薬価のしくみ入門】ジェネリック医薬品は「安かろう悪かろう」なのか - vol.4
2026.04.25
はじめに
「ジェネリックでのご用意となります」
薬局で薬剤師からこのような説明を受けたことのある方は、少なくないと思います。 後発医薬品(ジェネリック医薬品)は、いまや数量シェアで約9割に迫っています。 日本の医療を支える基盤の一つと言って差し支えないでしょう。
一昔前までは 「安い薬は、やっぱりそれなりなのでは」という不安があったと思います。それでも、今では医療現場にも患者さんにも広く浸透しています。
前回(vol.3)では、薬価がどのように下がっていくかを見てきました。
今回は、そもそも後発品とは何か、なぜ安いのか。そして、 その薬価はどう決まり、どう変わっていくのか。薬価制度の観点から整理していきます。
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- はじめに
- mMEDICI Library | ひらけ、叡智の扉
- この記事のまとめ
- この記事を読むと分かること
- この記事は誰に向けて書いているか
- 元厚労省薬系技官が語る 薬価の仕組み
- 執筆者の紹介
- 後発品・バイオシミラーとは何か
- 後発品(ジェネリック医薬品)の定義
- バイオシミラーとは
- いつ発売できるのか(特許と再審査期間)
- 二つの壁
- 実際の発売時期
- 普及促進と医療費削減効果
- 国の普及促進策
- 医療費削減効果
- 後発品の薬価の初収載のルール
- 先発品の0.5掛け
- バイオシミラーは0.7掛け
- 改定時の価格集約と企業指標
- 後発品も市場実勢価改定
- 三つの価格帯
- 安定供給を評価する企業指標
- 供給不安の問題
- なぜ供給不安が起きているのか
- 産業構造の課題
- 原薬の海外依存
- AG(オーソライズド・ジェネリック)
- まとめ
- 参考文献
- 【オンラインスクール mJOHNSNOW入会受付中:7日間無料お試し】
- 【YouTubeラジオコンテンツ 耳から学ぶシリーズ】
この記事のまとめ
この記事を読むと分かること
後発品、バイオシミラーとは何か
後発品の薬価算定はどうなっているのか
供給不安の問題はなぜ起こっているのか
この記事は誰に向けて書いているか
薬価に馴染みのない医療従事者、医療機関事務員の方
製薬などのヘルスケア関連企業に在籍していて、薬価に馴染みのない方
薬価改定のニュースをより深く理解したい方
元厚労省薬系技官が語る 薬価の仕組み
vol.1 薬の値段は「誰が」決めているのか
vol.2 なぜ3億円の薬が生まれるのか - 薬の値段の決まり方を徹底解説
vol.3 あの薬はなぜ"うまい棒"よりも安いのか
vol.4 ジェネリック医薬品は「安かろう悪かろう」なのか(本記事)
執筆者の紹介
氏名:間宮弘晃(https://x.com/MamiyaHiroaki)
所属:立命館大学薬学部 准教授
自己紹介:薬科学博士(東京大学)、公衆衛生学修士(ハーバード大学)。岐阜薬科大学卒業後、厚生労働省に入省。医政局経済課(当時)で薬価の専門官として200品目以上の新薬の算定、診療報酬改定に携わる。その後、医薬局にて新型コロナウイルス感染症時の審査調整官、京都大学iPS細胞研究所への出向等を経て、2023年3月に厚生労働省退職。2025年4月より現職。1985年生まれ、岐阜県出身。

後発品・バイオシミラーとは何か
後発品(ジェネリック医薬品)の定義
後発医薬品とは、先発医薬品(新薬)の特許や再審査期間が切れた後に、同じ有効成分・同じ投与経路・同じ効能効果で承認される医薬品です。
「ジェネリック(generic)」は「一般的な」という意味の英語です。 先発品が商品名(ブランド名)で呼ばれるのに対して、後発品は有効成分の一般名で呼ばれることが多いことに由来します。
先発品の開発には、基礎研究から臨床試験(治験)まで、長い年月と莫大な費用がかかります。 一方、後発品は有効成分の有効性・安全性がすでに確立されているため、先発品と同等であることを示す試験(生物学的同等性試験)を行えば承認を得ることができます。
具体的には、先発品は1成分あたり数百億円~数千億円に対して、後発品については約1億円といわれています 1)。
この開発コストの差が、薬価の差に反映されています。
また、後発品のポイントは、「同じ有効成分」であることです。 添加物や製造方法は異なることがありますが、有効成分そのものは同一です。 例えば湿布では、後発品は先発品と添加剤や製法が異なることがあるので、貼り心地などは違うと言われることはありますが、有効成分としては同一の抗炎症薬となっています。
バイオシミラーとは
一般的な医薬品の多くは、化学合成で作られる「低分子医薬品」です。 後発品は、この低分子医薬品について成り立つ仕組みです。
一方、近年急速に市場が拡大しているのが、バイオ医薬品(生物学的製剤)です。 抗体製剤やホルモン製剤など、生きた細胞を用いて製造される医薬品を指します。
バイオ医薬品は分子構造が大きく複雑で、化学合成のように「まったく同じもの」を作ることができません。 そのため、先行バイオ医薬品と「同等/同質」であることを科学的に検証した医薬品を、バイオシミラー(バイオ後続品)と呼びます。
「シミラー(similar)」は「類似の」という意味です。 後発品が「同一(ジェネリック)」であるのに対し、バイオシミラーは「同等/同質(シミラー)」であるという違いがあります。
バイオシミラーの開発には、低分子の後発品よりも多くの試験が必要になります。 品質特性の比較に加え、非臨床試験や臨床試験も求められるため、開発期間も開発費用も大きくなります。 この違いが、後述する薬価算定のルールにも反映されています。
いつ発売できるのか(特許と再審査期間)
二つの壁
後発品やバイオシミラーは、先発品の発売と同時には出せません。 発売までには、大きく二つの「壁」があります。
①特許
医薬品には、物質特許・用途特許・製法特許など、さまざまな特許が存在します。 物質特許の期間は出願から20年です(最長5年の延長あり)。 これらの特許が存続している間は、後発品を製造・販売することができません。
②再審査期間
新薬が承認されると、一定期間の再審査期間が設定されます。 通常の新薬で8年、希少疾病用医薬品で10年です。後発品は、原則としてこの再審査期間が終了した後に承認されます。
実際の発売時期
実務的には、特許や再審査期間などの保護が切れた後に、後発品が市場に登場することが多いです。発売の時期をめぐって、一部、製法特許や用途特許で先発品企業と後発品企業の間で訴訟が行われることもあります。
後発品の薬価収載は年4回行われています。 かつては年2回でしたが、後発品の早期上市を促進する観点から、収載の機会が増やされてきました。
普及促進と医療費削減効果
国の普及促進策
後発品の使用促進は、国の医療費適正化政策の柱の一つとなっています。
2007年に「後発医薬品の安心使用促進アクションプログラム」が策定され、その後2013年に「後発医薬品のさらなる使用促進のためのロードマップ」が作成されました。 数値目標が順次引き上げられてきた結果、現在では数量シェアが約9割と過去最高を更新しています 2)。
現在は、数量について全都道府県で80%以上を主目標とし、副次目標としてバイオシミラーが80%以上を占める成分数が、全体の60%以上(2029年度末まで)、後発品の金額シェアを65%以上(2029年度末まで)と、継続した目標設定がされています。
これまでの「数量」だけでなく「金額」の目標が加わったことが、新しいロードマップの特徴です。
診療報酬上も、後発品の使用割合が高い医療機関・薬局に対する加算が設けられており、経済的なインセンティブが付けられています。
また、2024年10月からは、先発品(長期収載品)を患者が希望して使用する場合に、後発品との差額の一部を選定療養として患者負担とする仕組みが導入されました。当初は価格差の4分の1が特別の料金とされていましたが、2026年6月からはこれが価格差の2分の1に引き上げられます 3)。
この選定療養の導入が、数量シェア90%超えの大きな要因となっています。
医療費削減効果
後発品は先発品よりも安い場合がほとんどなので、患者にとっても窓口負担を直接的に軽くするメリットがあります。
加えて、後発品の普及による医療費削減効果は大きなものとなっています。
現在では、後発品の使用促進によって医療費削減効果は1.6兆円とされています 4)。
後発品の薬価の初収載のルール
先発品の0.5掛け
初めて薬価収載される後発品の薬価は、原則として先発品の薬価×0.5です。つまり、先発品の半額からスタートします。
ただし、内用薬で同時に収載される後発品の銘柄数が一定数を超える場合は、先発品の薬価×0.4となります。この基準はかつて10品目超でしたが、令和6年度改定で7品目超に引き下げられました 3)。
このルールは、一つの先発品に対して後発品が乱立しすぎるのを抑える目的で設けられています。市場規模の大きい先発品には、10銘柄、20銘柄と後発品が名乗りを上げることも珍しくありません。
銘柄が増えすぎると、医療機関や薬局の在庫管理が煩雑になり、かえって後発品の普及を妨げかねないことや、製薬企業による少量の非効率な生産体制を防ぐためです。ちなみに、この「0.5掛け」も、最初から0.5だったわけではありません。
かつては先発品の0.9掛けだった時代もあり、0.8→0.7→0.6→0.5と段階的に引き下げられてきました 。後発品の市場実勢価格が収載直後に大きく下落する実態を踏まえたものです。
バイオシミラーは0.7掛け
バイオシミラーの初収載薬価は、先行バイオ医薬品の薬価×0.7です。
通常の後発品(0.5掛け)よりも高く設定されています。 これは、バイオシミラーの開発には低分子の後発品よりも多くの試験が必要で、研究開発費・製造コストが高いことを反映しています。
さらに、臨床試験の充実度合いによっては、10%を上限とした加算がつく場合もあります。
改定時の価格集約と企業指標
後発品も市場実勢価改定
vol.3で解説したとおり、薬価は市場実勢価格に基づいて定期的に引き下げられます。 後発品もこのルールの例外ではありません。
新薬と比べて価格競争もあり、薬価と納入価の価格差が比較的大きく、改定時に大きく薬価が下がることも珍しくありません。また、後発品には一つの成分に多数の銘柄が存在するため、銘柄ごとにバラバラの薬価をつけると、医療現場が混乱するとして、価格帯集約の仕組みが導入されています。
三つの価格帯
有効成分などが同一の後発品は、市場実勢価格に基づく算定値に応じて、次の三つの価格帯に集約されます。
①先発品薬価の50%以上の後発品
②先発品薬価の30%以上50%未満の後発品
③先発品薬価の30%未満の後発品
それぞれの価格帯で加重平均値が計算され、同じ価格帯に属する後発品は同一薬価となります。
改定を重ねるごとに、多くの後発品は下位の価格帯に移行していきます。さらに、自社品の価格乖離だけでなく、他社の価格乖離の影響を受けるため、自社の価格乖離が小さくても加重平均で価格が下がりやすくなっています。
安定供給を評価する企業指標
ここまで見てきたように、価格帯集約では後発品の価格は下がる方向に進みやすい仕組みです。 しかし、令和6年度薬価改定で新たに導入されたのが、安定供給を評価する企業指標です。
これは、後発品メーカーの安定供給体制等を一定のルールに基づいて評価し、企業をA〜Cの区分に分類する仕組みです。 そのうえで、A区分(安定供給の評価が最も高い区分)と評価された企業の品目については、通常の3価格帯とは別枠で価格帯集約を行うこととされました 5)。
この区分については、薬価とは別に、安定供給ができる企業として、医療機関での採用に影響を与えることになるかもしれません。
供給不安の問題
なぜ供給不安が起きているのか
少し薬価の話から離れますが、2020年、後発品メーカーの小林化工で治療薬に睡眠導入剤の成分が混入するという重大な問題が発生しました。翌2021年には業界最大手の日医工が不適切な品質管理を繰り返していたとして業務停止命令を受けています。
品質不正が発覚した企業の生産が止まると、その分の需要が他の後発品メーカーに集中します。 しかし、もともと生産余力が限られている中小メーカーが多い業界構造のもとでは、短期間での増産は困難です。
結果として、供給不安が連鎖的に広がりました。
後発品以外も供給不安が起きているため、後発品だけの問題ではありませんが、限定出荷・供給停止が長期化しており、医療現場では必要な薬が入手しにくい状態が数年にわたって続いています。
一義的には品質の問題が発端となっていますが、後発品の低薬価の問題や産業構造の課題が指摘されています。
産業構造の課題
後発品産業では、少量多品目生産や企業の乱立による生産効率の低下が指摘されています 6)。
一つの成分を多数の企業が供給する過当競争の状態が常態化し、企業ごとの生産効率が上がりにくい構造です。
薬価は国が決めるため、供給不足が起きても価格で調整することができません。vol.1で触れたとおり、これは国が価格を決めることのトレードオフです。
改定ごとに薬価が下がり続ける中で、採算割れの品目を抱えながらも「一度収載した薬は簡単にやめられない」(安定供給義務と薬価削除手続きの制約)という事情も重なっています。
そのため、先ほど紹介した企業指標によるインセンティブや、業界再編の促進など、複数の方向性の施策が行われています。
原薬の海外依存
さらに、後発品の原薬(有効成分の原料)は海外からの輸入に大きく依存しています。
コスト面や環境規制の違いから、世界的に原薬製造がアジアに集中する傾向がありますが、経済安全保障の観点からも供給リスクとして認識されるようになっています。
AG(オーソライズド・ジェネリック)
後発品の中でも特殊な位置づけにあるのが、AG(オーソライズド・ジェネリック)です。 AGとは、先発品メーカーから許諾(オーソライズ)を受けて製造・販売される後発品のことです。
有効成分だけでなく、原薬・添加物・製造方法まで先発品と同一であることが多く、患者さんにとっても医療者にとっても切り替えのハードルが低いとされています。そのため、これまでの後発医薬品の使用促進に一役買ってきた面があります。
ただし、AGについては2026年改定で薬価算定上のルールに重要な変更がありました。 この点は、vol.6「2026年改定」の回であらためて詳しく解説しますが、今後AGを新規で薬価収載するインセンティブは、ほぼなくなっています。
まとめ
今回は後発品の薬価から産業構造の課題まで解説しました。
後発品は先発品と同じ有効成分の医薬品であり、バイオシミラーは先行バイオ医薬品と「同等/同質」の医薬品であること。
開発コストの差が薬価の差に反映され、後発品は先発品の0.5掛け、バイオシミラーは0.7掛けで収載されること。
後発品の数量シェアは約9割に達し、医療費適正化に大きく貢献している一方、供給不安を背景に少量多品目の産業構造の転換などが求められていること。
後発品は「安いから質が低い」というものではなく、価格が低い主な理由は、先発品に比べて研究開発費が小さいことに起因します。
その一方で、国の促進策もあり広く浸透してきましたが、安定供給の課題もあり制度と産業構造のあり方が問われています。
参考文献
1.厚生労働省. 「医薬品産業の現状」.
https://www.mhlw.go.jp/content/10807000/001036959.pdf
2.厚生労働省「後発医薬品(ジェネリック医薬品)及びバイオ後続品(バイオシミラー)の使用促進について」.
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/kouhatu-iyaku/index.html
3.厚生労働省.「後発医薬品のある先発医薬品(長期収載品)の選定療養について」.
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_39830.html
4.厚生労働省. 「薬剤費に及ぼす薬価改定等の影響分析」.
https://www.mhlw.go.jp/content/10808000/001344742.pdf
5.厚生労働省.「令和6年度薬価制度改革について」.
https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001238906.pdf
6.厚生労働省.「後発医薬品の安定供給等の実現に向けた産業構造のあり方に関する検討会 報告書」. 2024年5月22日.
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_40330.html
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元厚労省薬系技官が教える薬価のしくみ入門 - なぜ薬価はさがるのか、そして諸々
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