
【健康格差を科学する】図書館があると健康になる? - 大規模データでひも解く、「住む街」と健康の関係とは - vol.5
2025.11.06
はじめに
健康は個人の努力だけでは決まりません。
例えば、住んでいるだけで自然と健康になれる街もあれば、不健康になってしまう街もあります。
それでは、都市環境のどのような要因が住民の健康を決定しているのでしょうか?
筆者らが最近発表した図書館と要介護リスクの関係に関する研究を含め、「都市環境と健康」に関する様々なエビデンスをご紹介します。
シリーズ紹介
連載記事「元官僚の医療経済学者、健康格差を科学する」は、“社会が人の健康にどんな影響を与えるのか”をやさしく読み解くシリーズです。
過労死で父を亡くし、東京大学経済学部を卒業後に厚生労働省の官僚となり、そしてハーバードSPHを経て医療経済学・社会疫学の研究者となった著者が、社会疫学という学問を一歩ずつ紐解いていきます。
仕事の合間に。夜勤明けに。育児のスキマに。「健康は、個人の責任ではないかもしれない」と気がつける、そんな学びをお届けします。
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- はじめに
- シリーズ紹介
- mMEDICI Library | ひらけ、叡智の扉
- この記事のまとめ
- この記事を読むと分かること
- この記事は誰に向けて書いているか
- 社会疫学シリーズ「元官僚の医療経済学者、健康格差を科学する」
- 執筆者の紹介
- 都市環境と肥満の因果関係
- ファストフード店が多い街に住むと太る?
- 都市環境のランダム化比較試験
- 東日本大震災の被災者と肥満の関係
- 歩きやすい街は健康に良い
- ウォーカビリティとは
- 大規模スマートフォンデータを活用した最新研究
- 日本のウォーカビリティ
- ウォーカビリティと認知症リスクの関係
- 【JAMA Psychiatry筆頭著者が教える】 システマティックレビュー&メタアナリシス入門
- 図書館があると要介護リスクが下がる?
- 図書館と要介護リスクの世界初の研究
- なぜ図書館があると健康になるのか?
- 図書館の恩恵を受けやすい人とは?
- 図書館研究の今後
- 参考文献
- 【オンラインスクール mJOHNSNOW入会受付中:7日間無料お試し】
- 【YouTubeラジオコンテンツ 耳から学ぶシリーズ】
この記事のまとめ
この記事を読むと分かること
都市環境が健康に与える効果
都市環境が健康に影響を与えるメカニズム
図書館や歩道整備など健康に良い都市環境のポイント
この記事は誰に向けて書いているか
まちづくり×健康に関心のある方
自分や家族の健康を住環境から整えたい方
図書館と健康の関係について知りたい方
社会疫学シリーズ「元官僚の医療経済学者、健康格差を科学する」
vol.1:経済学部卒の官僚が、ハーバードSPHを卒業して社会疫学者になるまで
vol.2:エリートほど長生きする?! 教育こそ最高の予防医療である
vol.3:お金で健康は買えるのか? 格差社会の健康科学
vol.4:労働は健康に悪い - 「人生100年時代」の不都合な真実
vol.5:図書館があると健康になる? - 大規模データでひも解く、「住む街」と健康の関係とは(本記事)
執筆者の紹介
氏名:佐藤豪竜(https://x.com/koryu0610)
所属:慶應義塾大学総合政策学部 専任講師
自己紹介:経済学博士、公衆衛生学修士。専門は社会疫学、医療経済学。東京大学経済学部を卒業後、厚生労働省に入省。保険局、老健局、総理大臣官邸等で12年間社会保障政策の企画立案に携わる。ハーバード大学公衆衛生大学院に留学後、京都大学を経て、現職。1986年生まれ、北海道札幌市出身。

都市環境と肥満の因果関係
ファストフード店が多い街に住むと太る?
住む場所は、私たちの健康にどのくらい影響を与えるのでしょうか?
米国ニューオーリンズの小学校教員866人を対象とした研究では、通勤経路上のファストフード店の数と、BMI(Body Mass Index)の関係を調べました(Dornelles, 2019)。
その結果、通勤経路上にファストフード店が一つ増えるごとに、BMIが0.80高まる傾向が示されました。帰り道にファストフード店があると、ついつい寄り道して何かを食べたくなる気持ちはよくわかりますね。
ただし、この研究が示した結果は、あくまで「相関関係」であって、「因果関係」ではありません。
「相関関係」と「因果関係」の違いについては、こちらの記事で解説しています。
【疫学専門家監修】交絡を徹底解説 - 結果を歪める、因果推論の最重要課題
例えば、ファストフードが好きな人は、わざわざファストフード店が多い街を選んで住むかもしれません。そして、ファストフードが好きな人は、肥満傾向の人が多いことでしょう。
ファストフード店の存在が直接肥満リスクを上げているのではなく、ファストフード好きな肥満傾向の人がその街に住んでいるだけかもしれません。
この場合、住む場所の好みが交絡因子(原因Xと結果Yの両方に影響を与える要因)として存在しています。ファストフード店と肥満の関係は、単なる「見せかけの相関」かもしれません。

交絡についてはこちらの記事で解説しています。
【疫学専門家監修】交絡を徹底解説 - 結果を歪める、因果推論の最重要課題
都市環境のランダム化比較試験
それでは、本当に都市環境が健康を変えるのでしょうか?
この問いに最も確実に答える方法は、ランダム化比較試験(RCT)です。
米国住宅都市開発省は、1994~1997年に貧困地域の公営住宅に住む母子家庭4,248世帯を対象に、Moving to Opportunity(MTO)と呼ばれる大規模なRCTを実施しました (Kling et al., 2007)。
研究者らは、無作為に選ばれた参加者の一部に、「非貧困地域に転居するために使える住宅補助券(バウチャー)」を配布しました。バウチャーを受け取った参加者のうち、47%が実際に非貧困地域に移住しました。
その後、5~8年後の肥満率を調べたところ、バウチャーを受け取った群では肥満率が5%ポイント下がっていました(ただし、この中にはバウチャーを受け取っても引っ越さなかった人も含まれています)。
バウチャーを使って実際に非貧困地域に転居したことによる効果を推定すると、肥満率を10%ポイント下げる効果があることがわかりました(リスク比では、21%の減少に相当します)。
このRCTの結果から、都市環境と肥満の関係は、交絡因子による「見せかけの相関」ではなく、一定の因果関係がありそうです。
東日本大震災の被災者と肥満の関係
RCTには莫大なコストがかかるので、常に実施できるとは限りません。代わりに、個人の好みによらず転居せざるを得なくなった状況を利用して、都市環境が健康に与える影響を調べた研究があります。
ボストン大学の芝孝一郎助教授らは、宮城県岩沼市に住む65歳以上の東日本大震災の被災者4,542人を調査しました(Shiba et al., 2020)。
2011年に発生した東日本大震災では、沿岸部の津波による被害が深刻でした。沿岸部に住んでいた人は、津波で家が流されてしまったため、市内中心部に設置された仮設住宅への移住を余儀なくされました。中心部は、沿岸部と異なり飲食店が密集しています。
そこで、芝助教授らは、仮設住宅に移り住んだ人のメタボリスクの変化を追うことで、都市環境が健康に与える因果効果に迫りました。
分析の結果、飲食店が少ない地域から多い地域に移り住むことで、BMIは0.64kg/㎡増え、LDL(悪玉)コレステロールも8.9mg/dL増え、HDL(善玉)コレステロールは3.6mg/dL減っていました。
飲食店が多い街に住んでいると、自然と太ってしまうようです。
歩きやすい街は健康に良い
ウォーカビリティとは
肥満に影響を及ぼすのは、ファストフード店や飲食店の存在だけではありません。近年、「ウォーカビリティ」という指標も都市環境において重要視されています。
人がたくさんいて、街に活気がある(Population Density)
安全で快適な歩行者にやさしい道路(Pedestrian-friendly Design)
徒歩圏内に様々な目的地・訪問先がある(Land Use Diversity)
これら三つの要素にはDが含まれているので、「ウォーカビリティの3D」とも呼ばれています。
次の地図は、左側はウォーカビリティが高い地域、右側はウォーカビリティが低い地域を表しています。

(出典)Berke et al. (2007) を抜粋
左側は、半径1km圏内にさまざまな施設が存在しており、歩いて用事を足すことができます。道は真っすぐに整備されており、歩きやすそうです。
一方、右側は1km圏内に施設がほとんど存在していません。道は曲がりくねっています。おそらく郊外の地域で、車がないと生活は難しそうです。
大規模スマートフォンデータを活用した最新研究
2025年にネイチャー誌に掲載された論文は、米国で取得された210万人以上のスマートフォンデータを分析し、ウォーカビリティが歩数に与える影響を調べました(Althoff et al., 2025)。
分析の対象となったのは、2013年~2016年の間に少なくとも1回転居した5,424人です。国勢調査によると、転居の理由の約8~9割は、家族や仕事の都合などウォーカビリティとは無関係のものです(転居した人に分析を限定することで、住む場所の好みによる交絡因子の影響を抑えることができます)。
スマホデータには位置情報が含まれているので、その人が住んでいる場所を特定することができます。研究者らは、ユーザーの居住地のウォーカビリティを0~100点でスコア化しました。
スマホデータのもう一つの利点は、スマホに内蔵された加速度計によって、歩数が正確に記録されていることです。研究者らは、転居前後の歩数を比較することで、ウォーカビリティと歩数の関係を明らかにしました。
その結果、ウォーカビリティが高い街に移り住むと、歩数が増えることがわかりました。
例えば、ニューヨーク市はウォーカビリティ・スコアが89点で、全米の中でも最も歩きやすい街の一つです。他の街(平均スコア48点)からニューヨーク市に移り住むと、平均歩数は1,400歩増加し、5,600歩から7,000歩になりました。逆に、ニューヨーク市から他の街に移住すると、平均歩数は1,400歩減少しました。
国際的な身体活動のガイドラインは、週150分以上の中~高強度の身体活動を推奨しています。居住地のウォーカビリティ・スコアが平均の48点の場合、この基準を達成できる人は21.5%と推定されています。一方、スコアが80点の都市に移り住んだ場合、基準を達成できる人の割合は約2倍の42.5%となります。
ウォーカビリティが高い街に住めば、自然と歩数は増え、健康になることができるのです。
日本のウォーカビリティ
ウォーカビリティは、日本でも測定されています。次の地図は、京都大学の埴淵知哉准教授らが作成したものです。赤い部分ほどウォーカビリティが高いことを示しています。東京・名古屋・大阪の3大都市圏で特にウォーカビリティが高いことがわかります。

(出典)Hanibuchi et al. (2015) を抜粋
ウォーカビリティと認知症リスクの関係
歩くことによって、肥満だけではなく、認知症予防につながることも期待されます。
東京科学大学の谷友香子准教授らは、日本の24市町村に住む65歳以上の76,053人を調査し、ウォーカビリティと認知症リスクの関係を調べました(Tani et al., 2021)。
ウォーカビリティは、地理情報システム(GIS)を用いて、歩道面積割合(全道路に占める歩道の面積の割合)を算出することで測定されました。
下の図は、歩道面積の違いを示しています。歩道面積が広い一番上の地域に比べて、一番下の地域では歩道がほとんど整備されていません。このような地域では歩行者と車の距離が近く、高齢者が出歩くには少々危険です。

(出典)Tani et al. (2021) を抜粋
分析の結果、歩道面積が最も大きい地域は、最も小さい地域と比べて認知症リスクが45%低いことがわかりました。歩道を整備してウォーカビリティを高めることは、地域の認知症予防につながる可能性があります。
(続きはページの後半へ)
【JAMA Psychiatry筆頭著者が教える】 システマティックレビュー&メタアナリシス入門

図書館があると要介護リスクが下がる?
図書館と要介護リスクの世界初の研究
「ウォーカビリティの3D」のうち、徒歩圏内に目的地があることも重要な要素です。
当時京都大学の医学部生だった大谷紗惠子さんは、「地元の図書館が高齢者にとって大切な外出の目的地になっているのではないか」と考えました。高齢者の外出は、要介護予防につながります。そこで、大谷さんと筆者は、図書館と要介護リスクの関係を世界で初めて定量的に分析してみました(Otani et al., 2025)。
分析の対象者は、日本の19市町村に住む要介護認定を受けていない65歳以上の73,138人です。対象者のデータを各自治体の介護保険データベースと接続することで、約7年間の追跡期間で新たに要介護認定を受けたかどうかを把握しました。
図書館といってもその規模にはばらつきがあります。大きな図書館ほど多くの高齢者を引き寄せるのではないかと考え、人口当たりの蔵書数と要介護リスクの関係を調べました。
分析の結果、図書館の蔵書が人口当たり1冊増えると、その地域の高齢者の要介護リスクが4%減少することに相当する相関関係(ハザード比=0.96)が確認されました。なお、人口当たりの図書館の数で見ても、同様の傾向が示されました。
「図書館が充実している街は、財政が豊かで、他の施設や行政サービスも充実しているから要介護リスクが低いのではないか?」と思われる方もいらっしゃるでしょう。しかし、筆者らの分析では、自治体ごとの財政力指数や人口密度の違いを考慮して、その影響を一定程度取り除いています。
また、図書館が充実している街には、社会経済的な状況が良好で、健康意識が高い人がもともと多く住んでいるかもしれません。そうした懸念に対応するため、年齢、性別、教育年数、世帯所得、婚姻状況、就業状況、社会参加の頻度の違いも分析では考慮しています。
興味深いのは、個人の読書習慣の有無を考慮しても、図書館と要介護リスクの間に関連が残ったことです。これは、読書によって認知的な刺激を受けるだけではない、図書館の存在自体が何かしらの「文脈効果(contextual effect)」を持っている可能性を示唆しています。
なぜ図書館があると健康になるのか?
仮に図書館の存在が要介護リスクを下げる因果効果が本当にあるならば、そのメカニズムは三つほどあると筆者は考えています。
一つ目は、図書館があることによって高齢者の外出頻度が増え、身体活動の機会を提供しているということです。
図書館にいるシニアを観察すると、全員が本を読んでいるわけではありません。寝ていたり、ぼーっとしていたり、新聞や雑誌を読んでいたりする方も多くいらっしゃいます。
この方々は、図書館が散歩の目的地になっているのでしょう。特に夏や冬は、無料で冷暖房が効いた室内でゆっくり過ごすことができるので、図書館は魅力的です。
図書館に行くためのウォーキングが、高齢者の閉じこもりを防ぎ、要介護予防と関連している可能性があります。
二つ目は、図書館では思いがけない本との出会いがあり、それが認知的な刺激となっていることが挙げられます。
書店では、ベストセラーや最新の書籍がずらりと並べられています。一方、図書館では、古い本やあまり売れていない本であってもジャンルごとに開架で並んでいます。お目当ての本を図書館に探しに行ったと時、近くの知らない本にふと目が留まって、手に取ってみた経験がある方は多いでしょう。
このような図書館での本との思いがけない出会いや新たな発見が、認知機能を維持するために役立っている可能性があります。
三つ目は、一部の図書館が社会参加の場や高齢者向けのサービスを提供していることです。
たとえば、八王子市図書館では、次のような高齢者向けの様々な活動が行われています。
地域の子どものために絵本を作る「手づくり絵本の会」
関心のあるテーマについて、図書館で調べ学び、その成果を発表する「千人塾」
随筆を書いて同人誌を発行し、朗読して合評する「エッセーの会」
発表者が推薦する本を紹介し、参加者全員の投票で「チャンプ本」を選ぶ「ビブリオバトル」
本の朗読や本の修理・配架、宅配などのボランティア活動
また、川崎市立宮前図書館は、認知症に関する取り組みで有名です。館内には、認知症に関する図書をまとめて展示する「認知症の人にやさしい小さな本棚」が常設されています。その他、認知症患者本人やその家族が書いた体験記などの企画展示や、地域包括支援センターと連携した一般市民向けの講座が実施されています。
スタッフは、「認知症サポーター養成講座」を受講し、認知症に関する正しい知識を習得しています。認知症が疑われる利用者が図書館に来たとき、地域包括支援センターと連携することで、図書館が地域の見守り機能を果たしているのです。
これらの図書館が提供する社会参加の機会やサービスが、高齢者にとって恩恵があることは言うまでもありません。
図書館の恩恵を受けやすい人とは?
筆者らはさらに、図書館と要介護リスクの関連が強い人はどのような属性を持っているのか分析を行いました。
その結果、以下のような場合において、要介護リスクが低いことがわかりました。
・「75歳以上」よりも「75歳未満」(ハザード比 = 0.97 対 0.95)
・「読書習慣がない人」よりも「読書習慣がある人」(ハザード比 = 0.98 対 0.95)
・「男性」よりも「女性」(ハザード比 = 0.97 対 0.95)
まず、比較的若い人の方が効果量が大きいのは、図書館に行くために足腰が弱っていないことが考えられます。自宅近くに図書館があったとしても、加齢のために行くことができなければ、効果はないでしょう。
読書習慣がある人の方が効果量が大きいというのも、わかりやすいです。たしかに、図書館に行って本を読まない人もいますが、図書館により強く引き寄せられるのは、本をよく読む人です。
男性よりも女性の方が効果量が大きいのは、社会参加の違いが原因ではないかと筆者は考えています。先ほど紹介した図書館のホームページに行くと、高齢者の会の活動報告が写真付きで掲載されています。
その写真を見ると、参加者のほとんどが女性であることがわかります。女性の方が、図書館のサービスを上手に活用しているのかもしれません。
図書館研究の今後
現在、多くの自治体で財政難から図書館サービスが縮小されています。
地域の分館の廃止や、新聞・雑誌購読の取りやめ、司書・スタッフの削減が行われています。しかし、筆者らの研究は、図書館やその蔵書の充実といった文化財への公共投資が、健康長寿のまちづくりに有効である可能性を示唆しています。長い目でみると、図書館サービスの縮小が、要介護者や介護費の増加としてはね返ってくるかもしれません。
一方で、今回の研究で示されたのは、あくまで「相関関係」であって「因果関係」ではありません。上述の通り、財政力指数や教育年数、世帯所得など、考えうる様々な交絡因子の影響を取り除いて分析しました。
しかし、観察不可能なものも含めて、すべての交絡因子を考慮できたとは言い切れません。交絡因子が残っていれば、結果にバイアスが生じます。したがって、今回の研究だけを根拠に、強い政策提言をすることはできないのが現状です。
このため、筆者らのチームでは、図書館に関する研究をさらに進めていく予定です。具体的には、認知症や死亡、うつ症状など、要介護以外のアウトカムについても調べるほか、媒介分析を用いたメカニズムの解明、操作変数法(連載第4回参照)を用いた因果関係の証明などを予定しています。
都市環境が健康に与える因果効果を推定するのは非常にチャレンジングな試みです。しかし、多くの人や政策に影響がある研究分野なので、今後ますます発展していくでしょう。
参考文献
Althoff, T., Ivanovic, B., King, A. C., Hicks, J. L., Delp, S. L., & Leskovec, J. (2025). Countrywide natural experiment links built environment to physical activity. Nature, 645(8080), 407–413. https://doi.org/10.1038/s41586-025-09321-3
Berke, E. M., Koepsell, T. D., Moudon, A. V., Hoskins, R. E., & Larson, E. B. (2007). Association of the built environment with physical activity and obesity in older persons. American Journal of Public Health, 97(3), 486–492. https://doi.org/10.2105/AJPH.2006.085837
Dornelles, A. (2019). Impact of multiple food environments on body mass index. PloS One, 14(8), e0219365. https://doi.org/10.1371/journal.pone.0219365
Hanibuchi, T., Nakaya, T., Yonejima, M., & Honjo, K. (2015). Perceived and Objective Measures of Neighborhood Walkability and Physical Activity among Adults in Japan: A Multilevel Analysis of a Nationally Representative Sample. International Journal of Environmental Research and Public Health, 12(10), 13350–13364. https://doi.org/10.3390/ijerph121013350
Kling, J. R., Liebman, J. B., & Katz, L. F. (2007). Experimental Analysis of Neighborhood Effects. Econometrica, 75(1), 83–119. Otani, S., Sato, K., & Kondo, N. (2025). Public libraries and functional disability: A cohort study of Japanese older adults. SSM - Population Health, 29, 101762. https://doi.org/10.1016/j.ssmph.2025.101762
Shiba, K., Hanazato, M., Aida, J., Kondo, K., Arcaya, M., James, P., & Kawachi, I. (2020). Cardiometabolic Profiles and Change in Neighborhood Food and Built Environment Among Older Adults: A Natural Experiment. Epidemiology (Cambridge, Mass.), 31(6), 758–767. https://doi.org/10.1097/EDE.0000000000001243
Tani, Y., Hanazato, M., Fujiwara, T., Suzuki, N., & Kondo, K. (2021). Neighborhood Sidewalk Environment and Incidence of Dementia in Older Japanese Adults. American Journal of Epidemiology, 190(7), 1270–1280. https://doi.org/10.1093/aje/kwab043
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