
MPH
【広島大学MPH受験】命のその先に挑む救急医:フルタイム勤務×育児×大学院の両立術 - vol.29
2025.07.14
救急の現場で患者を救うことにやりがいを感じつつ、やがて「地域全体の健康」に目を向け始めた救急医。
度重なる救命の経験、災害支援、そしてパンデミックでの苦悩。
一人一人の命を救うだけでは届かない現実から公衆衛生の重要性を痛感し、働きながらMPHへの挑戦を決意しました。
大学院や留学を選ばず、10年以上臨床ひとすじに歩んできた一人の救急医。そんな私が、なぜ公衆衛生という新たな道に踏み出したのか。フルタイム勤務と家庭を抱えながら、どうやって受験や大学院生活を乗り越えたのかについて等身大の実体験をお届けします。
臨床経験を持つ医療者だからこそ、公衆衛生の学びには深い意味がありました。
公衆衛生に興味があるが仕事や子育てで忙しい方、臨床に行き詰まりを感じている医療従事者の皆さんへ。
“もう一歩先”を模索するあなたにとって、この記事が何かのヒントになれば幸いです。
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- この記事のまとめ
- この記事を読むと分かること
- この記事は誰に向けて書いているか
- MPHシリーズ
- 執筆者の紹介
- 編集者
- 監修者
- MPHを受験しようと思ったきっかけ
- 医師になりたての頃に芽生えた、救急患者という集団への意識
- 救急外来が“群”へ果たしている役割への気づき
- 患者のその先へ - 予防と保健の重要性への気づき
- パンデミックでの危機的状況 - ついにPublic Healthの世界へ
- なぜそのMPHを選んだか
- 広島大学MPH
- 【mJOHNSNOW入会受付中|7日間無料お試し】
- 受験対策でやったこと
- 事前面談と試験の概要
- 外国語(英語)
- 口述試験
- 受験期に大変だったこと
- 広島大学MPHのカリキュラムと学びの特徴
- カリキュラムの例
- 受験生に伝えたいメッセージ
- 働きながら学ぶ方へ
- 家庭と両立しながら学ぶ方へ
- 地元で学びたい方へ
- 日本に居ながら国際的な環境で学びたい方へ
- MPHの受験から、卒後のキャリア形成まで一気通貫のサポートならmJOHNSNOW!
- 【YouTubeラジオコンテンツ 耳から学ぶシリーズ】
この記事のまとめ
この記事を読むと分かること
広島大学の特徴と受験のポイント
広島大学への入学に向けた対策
広島大学でのキャンパスライフについて
この記事は誰に向けて書いているか
医療従事者の方(特に救急医)
地方在住でフルタイムの仕事を続けながらMPHを取得したい方
日本にいながら国際的な環境で学びたい方
MPHシリーズ
vol.7:【京大SPH受験】パブリックヘルスと臨床実践の交響を求めて - 政策提言を志す救急集中治療医の不断の挑戦
vol.8:【ジョンズホプキンスMPH受験】臨床と家庭の両立と断念した現地留学 - オンライン海外MPHが拓く選択肢
vol.10:【京大SPH受験】患者に寄り添う集中治療の共通地平を築く - 疫学がもたらす臨床と研究の共創
vol.19:【東京大学SPH受験】場末の救急医、パブリックヘルスを志す - 命と向き合った原点から、社会の健康を見据えて
執筆者の紹介
氏名:匿名
所属:病院勤務
自己紹介:医師。これまで10年以上にわたり、地方の中核病院で救急医療に従事してきた。災害医療やCOVID-19対応に携わるなかで、臨床の限界と公衆衛生の重要性を痛感。一人ひとりの救命の先にある「地域全体の健康」に目を向ける必要性を感じ、広島大学MPHコースに進学。フルタイム勤務と家庭を両立させながら、臨床疫学や公衆衛生の実践的知識を学び直している。今後は、救急医療と公衆衛生の架け橋となるような取り組みを目指している。
編集者
氏名:菊池祐介
所属:mMEDICI株式会社
専門性:作業療法学修士。首都大学東京(現東京都立大学)・東京都立大学大学院を卒業後、病院勤務を経て専門学校・私立大学にて作業療法教育、地域共生社会の醸成に向けたリハビリテーション専門職の支援に関する研究に従事。現在は心身の健康とその人らしさの実現に向け、保険内外でのクライアント支援を展開している。作業療法の社会的意義向上を信念に、mMEDICI株式会社に参画。
監修者
氏名:廣瀬直紀
所属:mMEDICI株式会社
専門性:保健学博士・公衆衛生学修士。東京大学・東京大学大学院を卒業後、外資系製薬企業の疫学専門家として薬剤疫学・リアルワールドデータ研究を専門とする。日本・グローバルの双方で活動したのちに、全ての人がアクセス可能な一流の知のプラットフォームを作り、「知に繁栄を、辺野に豊穣を」実現すべく、mMEDICI株式会社を創業。
MPHを受験しようと思ったきっかけ
医師になりたての頃に芽生えた、救急患者という集団への意識
2008年に医師となり、初期研修後に救急医療に従事しました。
当時、日本の救急外来の多くは、例えば消化器内科医のような臓器専門医が診療を行うスタイルが一般的で、すべての救急疾患を横断的に診療する医師はほとんどいませんでした。
そして私は当時初期研修医で、救急外来で働く専門医の姿を見てきました。日中は専門医、夜間は当直医として地域の命を守る姿勢に頭が下がる思いでした。
日本の救急医療は、こうした献身的な働きに支えられていると感じました。
一方で、救急システムには疑問もありました。
救急外来は病院の入り口であり、患者は診断も治療もされていない最も不安定な状態にあります。にもかかわらず、その状態に見合った医療が提供されていないと感じたのです。
実際、救急患者の9割は一次・二次医療機関を受診します。歩いて来院したからといって軽症とは限らず、致死的な疾患である場合もあります。
日本では専門医療が発達している一方で、救急外来で初期診療を専門とする医師はごくわずかです。このギャップに強い違和感を抱いていました。
今振り返ると、私は一人の患者だけでなく、地域の救急患者“群”を意識していたのだと思います。
そこでこうした思いから、私は救急医療の専門家を目指して研修を受け、専門医資格を取得しました。
当初は一人の患者に対し、早期の診断と治療で予後を大きく改善できることに大きなやりがいを感じていました。しかし、ほどなく救急外来の役目はそれだけではないことに気が付きました。
救急外来が“群”へ果たしている役割への気づき
まず、救急外来は単に救急患者の診断・治療を行う場ではありませんでした。
自殺未遂、家庭内暴力(DV)、小児・高齢者虐待やネグレクト、独居高齢者の孤立、徘徊中に負傷した認知症患者など、社会的な課題と直結したケースにも日常的に対応しています。
こうした現場に立つ中で、救急外来は「社会のセーフティネット」としての“群”を支える役割も担っていると強く実感するようになりました。
救急車の受け入れ困難はコロナ禍でも深刻な問題となりましたが、こういった問題に対応するのも救急医と“群”との接点の一つです。
基幹病院の救急医は、搬送先が見つからないケースの相談を受けることも多くあります。その際は、自院で受け入れて診断・治療を行いながら、より適切な医療機関への転送を調整し、地域全体のアウトカム最大化に貢献しています。
このような経験を重ねる中で、「目の前の一人」を超えて「地域全体の健康と安全」を意識するようになりました。そして自然と、集団への視点が強まっていきました。
しかし、年次を重ねるにつれ、研修医時代に感じた救急外来の体制そのものを、社会の仕組みとして改善できないかと考えるようになりました。
自分の勤務地域には救急医がいますが、そうでない地域ではどう救急医療を提供するのか。そうした課題意識が、次第に強くなっていきました。
患者のその先へ - 予防と保健の重要性への気づき
救急医療を長年続ける中で、何度命を救っても、生活習慣や嗜好、心理社会的状況が変わらず、再び同じ疾患で搬送され、最終的に救えない方がいることに気づくようになりました。
年次が上がるにつれ、こうした繰り返される疾患や、その背景にある社会的要因に目が向くようになりました。
「どうすれば再発を防げるのか」
「早期の介入でそもそも救急外来に来なくて済んだのではないか」
——そうした問いが、私の中で少しずつPublic Healthへの関心を芽生えさせていきました。
さらに、私は災害医療援助隊(DMAT)の一員として、災害現場での医療活動にも携わってきました。
平成29年7月の西日本豪雨では、保健医療活動に参加し、この経験がPublic Healthへの関心を一層強める契機となりました。
災害の初期には外傷患者への対応が中心になります。しかし、日を追うごとに感染症の拡大や慢性疾患の悪化といった問題が顕在化していきます。
この段階には医療の力で対応できますが、被災地が日常を取り戻す「回復期」には医療だけでなく保健の力が不可欠です。
現地で保健所職員とともに活動する中で、私は次第に「自分は“保健”を十分に理解していなかったのではないか」と気づくようになりました。
パンデミックでの危機的状況 - ついにPublic Healthの世界へ
そして、COVID-19パンデミックにより、私のPublic Healthへの関心は決定的なものになりました。
デルタ株が海外で猛威を振るっていたころ、私の勤務する救急外来にも、連日重症患者が搬送されてきました。
一医療者として現場に立ち続ける中で、病院単位・地域単位の対応では到底立ち行かない現実に、公衆衛生の重要性をあらためて強く認識しました。
私は本来、思い立ってすぐ行動するタイプではなく、どちらかというと現状に甘んじてしまう傾向があります。MPH進学への「伏線」は以前からあったものの、漫然と臨床を続けていました。
しかし、デルタ株の流行がすべてを変えました。
重度の低酸素血症にもかかわらず歩いて受診しそのまま集中治療室へ入る例が続出していたある日。
初老の男性が「少し息苦しい」と言って歩いて受診。酸素飽和度は60%台。「またか!」と心の中で思わず叫びました。
意識も混濁し、即座に挿管、ICU収容を試みたものの、すでに院内は満床、県内でも搬送先がなかなか見つからない。酸素投与と人工呼吸を継続しながら、半日後にようやく受け入れ先が見つかりました。
このとき「一人一人の命を救うだけでは届かない現実」を突きつけられました。
「一人の医療者ができることには限界がある。けれど、せめて『どうすれば疾病を制御できるのか』という知識は持っていたい」。そう強く思い、Public Healthを学び直す決意を固めました。
その一方で、医学部卒業後に大学院へ進学する人の多くは卒後10年以内の若手が多いため、私には「少し遅すぎるのでは」とためらいもありました。
そんなときMPHを取得した先輩医師に相談したところ、「チャレンジに遅すぎるということはない。何歳になっても学び直しはできる」と背中を押されました。
さらに、広島大学の卒業生から話を聞く中で具体的なイメージが持てるようになり、進学を決意しました。
なぜそのMPHを選んだか
優先順位は➀無理なく通学可能 ➁フルタイムで仕事が続けられる ③学費 ④実績
私の場合は大学院選択には家庭の事情が大きく影響しました。子どもが病気を抱えており、育児への関与が欠かせませんでした。遠方への転居や長距離通学を伴う学びは現実的ではなく、「通学可能な範囲であること」が必須条件でした。
次に経済的理由と仕事の継続性のため、フルタイムで働くことを優先しました。
「大学院に行きたい!」と中年のおじさんがいきなり言い出しても、正直、家の中では全く歓迎されません(笑)。 妻の反対理由も理解できました。
共働きではないため、家のローンや子どもの教育費など経済的な理由からも、働き続ける必要がありました。議論を重ね、「収入は現状維持、家のこともするから行かせてください」と言ってようやくGOサインをもらいました。
これは入学後になって感じているのですが、臨床医としての仕事や研究の継続性も大事ではないかと思います。
臨床を続けながら大学院の講義を受けることで、臨床医の視点を忘れることなく、公衆衛生の視点をバランスを保って対比しながら考えることができます。さらに得た知識を忘れないうちに臨床現場に生かすことができます。
加えて、臨床医は少しでも現場を離れるとすぐにその感覚が鈍り、復帰するためには「リハビリ」が必要になります。仕事を辞めるまたは非常勤になると仕事の引継ぎも必要になります。
さらに、病院で行っている研究を継続するためには常勤でなければならない規定もありました。その点、常勤であれば収入面はもちろん社会保障面でも安心かもしれません。
このように「地元から通えること」「現在のキャリアを継続できること」は、私の大学院選びにおいて欠かせない条件でした。
しかしながら、中国地方に住んでいる私にとって、無理なく通学が可能でフルタイムで働ける大学院の選択肢は多くありませんでした。
海外のオンライン大学院か近隣の大学、頑張っても関西までの大学に絞られました。
海外大学院への進学は学費が高く、私の情報収集能力では学費に対してどこまでそのメリットがあるのか、当時は判断できる情報がありませんでした。
京都大学SPHはフルタイム勤務は難しいという出身者からの情報があり、子どもの事情もあり通学も難しいと感じました。
そこで近隣の大学が選択肢に残り、そのMPHコースを調べることから始めました。
広島大学MPH
広島大学は私の出身校でもあり、学生時代には「慢性肝炎の撲滅」に向けた研究を授業で学んだ経験があります。
当時から、日本のウイルス性肝炎対策を牽引してきた疫学・疾病制御学教室の取り組みに感銘を受けていました。
「何が」起きているかを可視化し、「なぜ」起きているかを考察し、「どうすれば」解決できるかを提案する——そんな疫学のシンプルかつ強力なアプローチが、国の政策医療をも左右することを実感しました。
さらに、改めてMPHコースを調べる中で、疫学・疾病制御学教室の活動を再確認しました。
アジアやアフリカから多くの国費留学生を受け入れ、WHOの掲げる肝炎撲滅に向けた国際共同研究に取り組むなど、国際的にも高く評価されていることを知りました。
また、新型コロナ対策では広島県の政策立案を主導し、2020年8月には全国に先駆けて自治体主導で県全体で抗体検査を実施。こうした実践的な公衆衛生活動にも強く惹かれました。
研究成果にとどまらず、社会実装や行政との連携が図られている点は、臨床医である私の感覚にも自然にフィットしました。
「現場感覚を保ったまま学びを深められる場」として、広島大学は候補になりました。
最終的には教室の面談を通して、社会人でも問題なく学習できることが確認できました。
過去に西は九州、北は島根県、東は京都府から社会人で入学していたと知り、ここであれば自分もやっていけそうだと感じました。また、教授の方針としても社会人入学に対してリベラルな考えを持たれていたので、広島大学への進学を決断しました。
(続きはページの後半へ)
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受験対策でやったこと
事前面談と試験の概要
事前に所属となる教室へ連絡を取り、面談の日程調整を行います。
試験ではないものの、入学のために非常に重要な面談だと思います。ここで、入学してある程度やっていけるかどうか教員の方々は判断されていると思います。
また、試験は基本的には落とすためというよりは、「学士相当の学力があるか確認するための試験」という印象を持ちました。
老舗の有名な公衆衛生大学院の入試と比較し、それほど対策に時間をかける必要はないかと思います。大学院を目指した動機、経緯、どんな研究をしたいか、卒業後はどうするのかなど、おそらく通常聞かれるであろうことに答えられれば問題ないと思います。
これらを文章化することで整理をして、聞かれたときに答えられるようにしておきました。
外国語(英語)
2025年現在、外部の英語試験が必須で内部の英語試験はなくなっています。したがって、試験に通過していないと出願資格がないので早めに受けておく必要があります。
私が試験を受けた当時は、外部英語試験もしくは英語筆記試験を選択して受けることができ、私は英語筆記試験を受けました。
過去問は撮影、複写ができないため図書館で閲覧のみ行いました。
普段は臨床医学論文を中心に読んでいるため特段の対策は不要であると思いました。しかし、医学論文で使われないような一般的な大学生レベルの英単語を忘れている可能性がありました。
そこで、TOEIC L&Rのアプリを利用し、電車の通勤時間中に単語や文章に慣れるようにしました。
さらに医学論文はいわゆる四大ジャーナルの公衆衛生に関係する論文を1年分読みました。それ以外の特別な対策は行いませんでしたが、試験では回答をできるだけ多く書くようにしました。
口述試験
研究室から発表されている代表的な論文を読みました。
志望動機や経緯、研究内容、卒後の進路などについて明確に答えられれば問題ないのではないかと思います。圧迫面接ではなく和やかな雰囲気の中で行われました。
受験期に大変だったこと
まず、試験対策は必要なのか、何をしたらよいのかといった情報がないことが大変でした。
試験の過去問は現地の大学図書館で閲覧のみが可能であったので、教室に挨拶に行った際に過去問も閲覧しておきました。
次に、フルタイムの勤務の合間に出願書類の準備等を行いました。出願書類の準備がややわかりにくいので、学生支援室に問い合わせながら提出し、出願手続きに思いのほか時間がかかりました。
さらに、試験や勉強そのものよりも、三交代勤務の中で対面での面談の日程を調整することが困難でした。そのため、夜勤明けか休みの日を面談に充てることとなり、家族に迷惑をかけたかと思います。
広島大学MPHのカリキュラムと学びの特徴
国際基準に基づき、以下の5分野の教育を体系的に行っています。
疫学(Epidemiology)
生物統計学(Biostatistics)
社会科学・行動科学(Social and Behavioral Sciences)
保健行政・医療管理学(Health Services Administration)
国際保健・環境保健学(Environmental Health Sciences)
卒業要件は、上記を含む30単位の取得に加え、修士論文の作成・発表および審査に合格することです。
6年制学部卒業者は、1年コースの選択も可能ですが、1年コースは非常にタイトなスケジュールとなります。教員からは、フルタイムで働きながら学ぶ場合、1年コースよりも2年コースを勧められました。
私自身、フルタイムの臨床業務に加え、病院内での診療以外の仕事や家庭内での病児の育児もあるため、授業の密度や修士論文の計画・作成などを考慮し、2年コースを選択しました。なお、3年以上かけて履修したい方は、長期履修制度を利用することも可能です。
夜の2コマ目(19時40分から21時10分)は、子育て世代にとって忙しい時間帯ですが、多くの授業がオンデマンド受講に対応しており、提出物も1週間以内でよいものがほとんどでした。
そのため、夜の2コマ目は授業がない日や通勤時間帯に聴講することで、無理なく夕食や入浴などの子どもの世話、寝かしつけを行うことができました。
土曜日には週1回の抄読会・勉強会があり、年間を通して論文を精読します。
オンラインでの参加が可能ですが、発表者は英語での発表となり、他の学生とのやり取りも英語で行われます。私は英語の会話が得意な方ではありませんが、最初は苦労しつつも次第に慣れていきました。
疫学・疾病制御学では、肝炎ウイルスやCOVID-19の血清疫学研究を行っており、希望に応じてWet(実験系)とDry(データ解析系)の両方の研究が可能です。職場には事情を説明し、通常は三交代で夜勤もありますが、大学の授業がある時期は日勤に専従としてもらいました。また、業務の終了時間にも配慮してもらいました。
カリキュラムの例
-平日-
18:00-19:30
国際感染症概論、生物統計学・臨床統計学基礎論、臨床法医学概論、生命・医療倫理学A、医療政策・国際保健概論、多職種連携A、総合医療実践学特論
19:40-21:10
予防医学・健康指導特論A・B、環境保健学概論、研究方法論A、医療情報リテラシー、臨床医歯学総論、臨床研究方法論
-土曜日-
10:30-16:05
疫学基礎論、疫学調査分析演習、医学統計学パッケージ演習
-1日のスケジュールの例-
平日
6:30-7:15
移動中にオンデマンド動画を視聴
7:30-17:30
勤務
18:00-18:45
帰宅途中に残りのオンデマンド動画を視聴し、課題を実施・提出
1日1コマ(90分)の授業が基本だったので、家事や子どもの世話もこなしつつ、可能な限り20時までには終えるようにしていました。遅い時間にオンライン参加が必須の授業が入っている場合は、妻に事前に伝えておきました。
土曜日
10:30 – 16:05
(タームによって演習が入ることがあります。1年目の第一タームには疫学統計学集中講義・演習があり、月に2回程度通学が必要になります。これらを含めても、年間を通して登校したのは10回以内だと思います)
15:00 – 16:00
抄読会、セミナー
受験生に伝えたいメッセージ
働きながら学ぶ方へ
学びたいことがあっても働き続けなければならない方や、遠方への通学が難しい方もいるでしょう。経済的な理由や、さまざまなハンディキャップを抱える方もいるでしょう。
働き続ける理由は人それぞれで、計り知れない事情があります。
しかし、現場に居続けるからこそできる研究や学びも確実に存在すると思います。
家庭と両立しながら学ぶ方へ
家庭との両立は正直、想像以上に大変でした。ある日、子どもに「大学院なんか行かずに公園に行こうよ」と言われ、思わず笑ってしまいました。
「うまいこと言うな」と感じた反面、ハッとさせられました。
子どもにとって大学院とは、親の時間を奪う“暗黒組織”のような存在だったのです。それ以来、どんなに忙しくても週末は必ず公園に行く時間を確保するようにしました。
あわせて、家庭内でのルールも明確にしました。週末の料理・皿洗い・掃除は私が担当し、そのぶん、オンライン授業や勉強の時間を確保させてもらいました。
妻とも話し合い、「午前中は子どもと公園、午後は勉強に集中する」などといった交代制のスケジュールを組むなど、お互いが無理なく協力できる形を模索しました。
こうした積み重ねが、家庭と学びを両立させる鍵になったと感じています。
地元で学びたい方へ
通学をそれほど必要とせず、費用を抑え、子育てや仕事と両立したい、卒業後もつながりを保ちたい方には、地元に近いMPH(公衆衛生学修士)コースも選択肢に入るのではないでしょうか。
臨床研究の指導者がいない場合や、卒業後も臨床を続ける予定の医療従事者には、近隣の大学も選択肢となるでしょう。
日本に居ながら国際的な環境で学びたい方へ
広島大MPHの同教室にはアフリカ・アジアのPublic healthに関心を持ち、ウイルス性肝炎の根絶を目指す国費留学生が多く在籍しています。
大学院生の大半が留学生であり、日本にいながら、留学経験のなかった私にとってまるで海外留学しているかのような国際的な雰囲気の中で学ぶことができ、視野を広げる貴重な体験でした。
卒業後も、共同研究や臨床研究セミナーに参加できるなど、つながりが役立っています。
彼らはC型肝炎などの血清疫学研究に取り組み、帰国後は母国と広島大学との国際共同研究に従事しています。
また、彼らの情熱、ハングリー精神、誠実さからは多くのことを学びました。
国ごとに公衆衛生の課題は異なり、毎週の抄読会では、互いの視点の違いに何度も驚かされました。特に、日本の公衆衛生環境がいかに恵まれているかに気づかされる貴重な学びの場でもありました。
ガーナ、ブルキナファソ、ウズベキスタン、バングラデシュ、ミャンマー、カンボジア、ベトナムの計7か国から来た医師・看護師・研究者たちとディスカッションできたことは貴重な経験になりました。
さらに、日本人の理学療法士、作業療法士、臨床工学技士、臨床検査技師、歯学部の研究者など、さまざまなバックグラウンドを持つ医療従事者とともに学んだ経験を通じて、自分の視野が確実に広がったと実感しています。
同教室は2024年度から新任教授が着任しましたが、前任の教授も引き続き在籍しており、これまでのウイルス性肝炎関連の研究も継続可能です。
さらに、因果推論に基づく大規模ヘルスデータを用いた研究や、臨床疫学研究、メンデルランダム化研究など、Wetラボ(実験室)を活用した研究が拡充される予定です。
学びへのアクセスは、本来すべての人に広く開かれるべきだと思います。
広島大学MPHコースは、発展途上国の学びへのアクセスに困難を抱える学生を多く受け入れています。その関係もあるのか、社会人大学院生にも比較的寛容だと思います。
その方の生活環境によって適したMPHコースは変わると思います。
どこのMPHコースに行っても基本的な部分は共通していると思います。大切なのは学習したい意欲が高い時に、とにかく自分に合った所を選択するのが良いのではないかと思います。
“Where there is a will, there is a way.”
の精神でとにかくあきらめずに、一歩前に踏み出すことが重要だと思います。
ご自身に最適なMPHコースが見つかることを祈っています。
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