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【キャリア解説】医師が語る海外キャリアチェンジの実情とヒント - vol.10

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【キャリア解説】医師が語る海外キャリアチェンジの実情とヒント - vol.10

2025.03.03

研究&臨床のキャリアから、米国でグローバル製薬企業の臨床開発職に転身した医師・医学博士が、その経験を通じて得たキャリア戦略、実際の仕事内容、直面した課題など、海外で専門性を活かすためのヒントについてお伝えします。

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この記事のまとめ

この記事を読むと分かること

  • アカデミアからグローバル製薬企業へのキャリアチェンジの一例

  • キャリアチェンジに必要な準備&スキル&マインドセットのヒント

  • グローバル製薬企業における専門家の役割と実情

  • 海外キャリア構築への有益情報と具体的な注意点

この記事は誰に向けて書いているか

  • 将来のキャリアパスとしてインダストリーのポジションに興味がある方

  • グローバルな環境で、医療・製薬分野に貢献したいと考えている方

  • アカデミアでの研究経験を活かした海外でのキャリアパスに興味がある方

キャリアシリーズ

  • 新谷歩教授インタビュー

    - Part 1:アメリカに燃ゆる執念、人事を尽くし教育した医療統計がここに

    - Part 2:アメリカに燃ゆる執念、人事を尽くし教育した医療統計がここに

  • 医療職の非臨床キャリア戦略論

    - vol.1:「このままでいいのか」と悩むあなたへ - MPHホルダーのキャリアコンサルが"理論で導く自己理解"

  • vol.1:製薬企業で実践するパブリックヘルス - 疫学とエビデンスジェネレーションについて

  • vol.11:専門性の獲得に遅すぎることはない - 二足の草鞋で極める生物統計家のキャリアパス

執筆者の紹介

氏名:T.O
所属:製薬企業
自己紹介:医師・医学博士。国立大学医学部卒業後、内科での臨床の傍ら血液悪性疾患の基礎研究に携わる。母校の助教を務めた後、ボストンで5年のポスドク留学を経て、アカデミアからインダストリーにキャリアチェンジし、現地で製薬企業に就職。現在はグローバルの後期臨床開発に携わっている。

編集者

氏名:菊池祐介
所属:mMEDICI株式会社
専門性:作業療法学修士。首都大学東京(現東京都立大学)・東京都立大学大学院を卒業後、病院勤務を経て専門学校・私立大学にて作業療法教育、地域共生社会の醸成に向けたリハビリテーション専門職の支援に対する研究に従事。現在は心身の健康とその人らしさの実現に向け、保険内外でのクライアント支援を展開している。作業療法の社会的意義向上を信念に、mMEDICI株式会社に参画。

監修者

氏名:廣瀬直紀
所属:mMEDICI株式会社
専門性:保健学博士・公衆衛生学修士。東京大学・東京大学大学院を卒業後、外資系製薬企業の疫学専門家として薬剤疫学・リアルワールドデータ研究を専門とする。日本・グローバルの双方で活動したのちに、全ての人がアクセス可能な一流の知のプラットフォームを作り、「知に繁栄を、辺野に豊穣を」実現すべく、mMEDICI株式会社を創業。

今のキャリアについて

私は日本で内科医として研修を受けた後、血液悪性疾患の基礎研究に従事しました。その後にボストンへのポスドク研究留学を経て、現在は米国の製薬企業にてグローバルのポジションで医薬品開発、特にPhase3の臨床試験(Randomized Controlled Trial:RCT)に関わっています。

仕事内容としては、様々な職種のメンバーが所属するチームのキープレーヤーとして、研究デザインやプロトコルの作成、臨床試験の実施と管理、データ管理、戦略策定など多岐に渡ります。

グローバル部門のPhase3にはステークホルダーも多く、把握しなければならない事項も膨大で毎日が勉強です。

データの解釈や臨床試験のデザイン作成のためには疫学・統計学的な知見が必要であり、傾向スコアマッチ(MAIC)などの手法を用いることも多く、現場で学ぶこともあります。

mJOHNSNOWの講座はReal World Data(RWD)の視点から臨床研究を捉えたものもあり、体系的に勉強することのなかったRCTの手法を学び直す良いきっかけとなっています。

また、RCTを実施するフェーズは、治験の適応や安全性確認、治験実施施設とのやりとり等のオペレーションの部分に注力しなくてはならないことも多く、サイエンスに携わっている時間が少なくなってしまいます。

サイエンスとそれ以外の部分の時間配分は働く上での課題となっています。

(続きはページの後半へ)

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なぜそのキャリアを選んだのか

私のキャリアは明確なキャリアパスを描き、それに従って歩んできたというより、節目節目で自分が持つ選択肢の中でチャンスが大きくなるように修正をしてきたものであると思っています。

本章では、そのキャリアドラフトの過程を振り返っていきたいと思います。

大学卒業〜アカデミア

大学を卒業し、内科医として研修を終えた後、患者さん一人一人と向き合って臨床をしていくよりも新しい治療法を見つけることで医学に貢献をしたいと思いました。そして、血液系の分子生物学の研究室に入り、大学院生としてアカデミアの道を歩み始めました。

この研究室は特に遺伝子分野に強く、人工のがん遺伝子の作成や、世界でも有数の効率的な遺伝子導入法を用いた遺伝子スクリーニングのシステムの構築など、独創的な取り組みで有名でした。

中でも幹細胞の特性の一つである細胞周期が止まった状態の細胞を可視化する蛍光プローブを開発し、自分でしか捉えられない細胞の状態を観察できるようになった経験は、研究の醍醐味と言えるものでした。

大きな研究ではありませんでしたが、このテクノロジーが様々な副産物をもたらし、私にとっては打出の小槌のような存在になりました。このテクノロジーをもとに奨学金(上原記念生命科学財団持田記念医学薬学振興財団の海外留学助成)を獲得でき、諦めかけていた海外留学を叶えることができました。

また、多くの研究者の方から100件以上の依頼がありプローブを供与し、数百本の論文に引用され、感謝していただいたのも良い経験でした。

縁あって、グリーンカード取得時にはこのテクノロジーがきっかけで論文を引用してくださった研究者の方にお世話になりました。


奨学金が獲得できたこともあり、当時、関心のあった研究を行うためにボストンのマサチューセッツ総合病院の研究室へ留学しました。

当初は蛍光タンパクの発見やFRETなどの蛍光タンパク技術の開発でノーベル賞を受賞したロジャーチェン博士のような研究者として独立することを志していました。

留学中は新たにmTORというがん細胞シグナルの経路の不活性化を指標にする可視化プローブを作成し、このプローブを使って化学療法下での白血病細胞の生体内のシグナルの動向を解析するプロジェクトを立ち上げました。

生体内イメージング、Next Generation Sequencing、PythonとRのコーディングなど、当時としては学際的な手法を駆使して、白血病の治療抵抗性とは何か、最適な白血病治療法は何かという疑問を追求して、研究生活を謳歌していました。

しかし、博士号を取得してしばらくしてからの留学だったこともあり、次のステップが限られていることを実感し、キャリアについて悩み始めたのもこの頃です。(アメリカでは博士号取得後5-10年で研究者として独立することが求められます。)

アカデミアからインダストリーへ

私のこれまでのキャリアでのビッグステップは、アカデミアからインダストリーへキャリアチェンジをしたことです。

研究留学をしていたボストンはハーバードやMITという一流の研究機関を持ち、世界中から才能あふれる研究者や臨床家が集まってきます。また、最先端の情報も1番に入ってくるScience-orientedな環境でした。

留学後3-4年が経った頃、ボストンにもう少し長く居たいと考えながら転職活動を始めました。


私が転職活動をした当時は、アメリカでも日本でもアカデミアからインダストリーへの転職に否定的で「負け組」のような固定観念がありました。インダストリーへのキャリアパスをスターウォーズでジェダイの騎士がダースベーダー側に寝返ったことに喩えて、「ダークサイドに堕ちた」と揶揄する人もいました。

自分自身ではあまり意識していませんでしたが、恩師、先輩、同僚から「これまでのキャリアから離れるのは勿体無い」とアドバイスをいただき、転職を自分の中で腹落ちするまでに時間を要しました。

なお、最近ではハーバードの教授レベルが何人もインダストリーへキャリアを行ったり来たりしているので、ダークサイド云々の表現を聞くことは少なくなってきています。


転職活動をする上で、同じくアカデミアからインダストリーへ移り、上手くキャリアを構築された方々の話を聞きました。

その中でも、画期的な新薬を開発された方の「アカデミアできちんと研究をやった人が臨床開発で一番貢献できる」という言葉に背中を押され、転職を決断しました。

また、最初に入社した会社にはPhysician Scientist Acceleration Programがあり、最終的な就職部門を決める前にローテーション形式で色々な部署を経験することが可能であり、アカデミアからインダストリーへの移行しやすかったこと、職場にハーバードの助教や准教授から転職された方が多く、成長を期待できたことも転職を決断した一因でした。

転職の際にはずいぶん悩みましたが、臨床に近いところで最先端のサイエンスを使い、新しい医療を作っていくことのできる環境に身を置けていることは今でも感謝をしています。


ですが、こうしたキャリアの場合、往々にして体系的にスキルや経験値を構築できず、穴がある部分も少なくはありません。

自分でも臨床研究、英語でのコミュニケーション、リーダーシップスキル等、実践をする上で学ばなければいけないことが無数にあり、心が折れそうになることもあります。

また、人事の流動性も激しく、人事異動の度に環境に順応する臨機応変さが求められます。この辺りがインダストリーにおけるネガティブな部分です。

そのキャリアにたどり着くために努力したこと

自分のキャリア構築スタイルはキャリアドラフトなので、ゴールを決めて努力したというよりは、日頃より情報収集しておくこと、色々なチャンスに対してオープンであることを心がけていました。


そもそも、海外留学自体が研究助成を獲得できたことに始まり、海外就職については、ポスドクの留学時代に所属研究所のキャリア開発セミナーを通してアメリカでの就職に必要なグリーンカード取得の対処法、履歴書の書き方、就職面接対策を学んだことがきっかけでした。

最初に入った会社では、基礎研究から橋渡し的な研究のポジションを目指していたのですが、Physician Scientist Acceleration Programで臨床開発のローテーションを勧められ、そこから現在に繋がるポストをいただくことになりました。

一つのキャリアパスで確固としたキャリアを築くことも大切ですが、同時に機会損失にならないよう間口を広くしてチャンスを探り、多様な機会にオープンであることも重要であると実感しています。

そのキャリアを目指す人へのメッセージ

製薬企業のグローバルのポジションは日本人の存在感が薄く、もっと多くの仲間が欲しいと強く感じています。

日本からだと時差の問題もありポジションが取りにくいかもしれませんが、MPHや研究留学で海外での長期滞在を視野に入れているのならば、日本では見出せないチャンスも多くあります。

日本人としての良さが高い評価を受けることも多々あります。(トランプ次期大統領がグリーンカードの要件を大学、大学院留学生に対しては緩和するという話もあります)


最後に自分の情報収集で得た海外キャリアを築く上での有用情報についてご紹介しておきます。

― 海外研究留学助成:主要なもの
https://www.jsps.go.jp/j-ab/
https://www.ueharazaidan.or.jp/josei/josei_tsuite.html
https://www.astellas-foundation.or.jp/assist/abroad.html
https://www.mochidazaidan.or.jp/ryugaku.html
https://c-finds.com/images/2022/03/researchryugaku2022.pdf
https://www.ds-fdn.or.jp/support/studying_abroad.html
https://www.takeda-sci.or.jp/fellowship/study-abroad.php
https://kainagi.com/archives/1991

― 移民法弁護士:自分がお願いした方ですが、レスも早くサービスが手厚いです。

https://www.mylawyerwang.com

―  海外就職情報:有料のnoteが主ですが参考になりました。
https://note.com/honkiku1/n/n9b129dc926a7
https://note.com/kazki_arhai/n/n43fea5636d9b
https://note.com/hirokaigai/n/na238c35d4818

製薬企業のグローバルポジションとして海外で働くことを、ぜひ検討してみてください。

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シリーズ一覧

キャリアシリーズ

  • 新谷歩教授インタビュー

    - Part 1:アメリカに燃ゆる執念、人事を尽くし教育した医療統計がここに

    - Part 2:アメリカに燃ゆる執念、人事を尽くし教育した医療統計がここに

  • 医療職の非臨床キャリア戦略論

    - vol.1:「このままでいいのか」と悩むあなたへ - MPHホルダーのキャリアコンサルが"理論で導く自己理解"

  • vol.1:製薬企業で実践するパブリックヘルス - 疫学とエビデンスジェネレーションについて

  • vol.11:専門性の獲得に遅すぎることはない - 二足の草鞋で極める生物統計家のキャリアパス

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