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【キャリア解説】データサイエンスの力で動物を救う獣医師 - vol.16 

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【キャリア解説】データサイエンスの力で動物を救う獣医師 - vol.16 

2025.04.16

高校時代から好奇心の向くまま研究をしてみたいという気持ちの反面、純粋な研究者として生きていく不安のあった私が、いかにして獣医師になる道を進み、臨床で役立つ研究をしたいと考えるようになったのか。

様々な学びの中で辿り着いた小動物臨床と臨床研究の二足の草鞋を履くまでの経緯をご紹介いたします。

獣医学のため、愛おしい動物に還元するために臨床研究者を目指すべくがむしゃらに走り続けたお話です。

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この記事のまとめ

この記事を読むと分かること

  • 日本の若手小動物臨床獣医師のキャリア

  • 臨床疫学を学ぶ方法

  • 臨床と研究を両立するキャリア作り

この記事は誰に向けて書いているか

  • 将来のキャリアに悩んでいる方

  • 獣医師のキャリアに興味がある方

  • 獣医学 ✕ 臨床研究に興味がある方

キャリアシリーズ

  • vol.20:語られぬ現場を論文に綴る:”その人らしさ”を支援する精神科作業療法士の使命

  • vol.22:医療データサイエンティスト:データの向こう側に人を視る

  • vol.24:介護のお医者さん - ニッチを貫くわたしのキャリア論

  • vol.26:「見えない価値」から「見える価値」へ:向き合い続ける臨床薬剤師の確かな一歩

  • vol.29:食品メーカーの企業研究者:栄養疫学で、企業に価値を、人々に健康を

執筆者の紹介

氏名:匿名
所属:動物病院、大学院
自己紹介:小動物臨床獣医師(5年目)。都内の動物病院で犬猫を対象とした総合診療に従事。2023年4月より二次動物総合病院への転職と同時に、社会人大学院生としてデータサイエンス系大学院の博士前期課程に進学、首席卒業。臨床獣医師として働きつつ臨床研究を実施。今年4月より同大学院博士後期課程進学予定。

編集者

氏名:菊池祐介
所属:mMEDICI株式会社
専門性:作業療法学修士。首都大学東京(現東京都立大学)・東京都立大学大学院を卒業後、病院勤務を経て専門学校・私立大学にて作業療法教育、地域共生社会の醸成に向けたリハビリテーション専門職の支援に対する研究に従事。現在は心身の健康とその人らしさの実現に向け、保険内外でのクライアント支援を展開している。作業療法の社会的意義向上を信念に、mMEDICI株式会社に参画。

監修者

氏名:廣瀬直紀
所属:mMEDICI株式会社
専門性:保健学博士・公衆衛生学修士。東京大学・東京大学大学院を卒業後、外資系製薬企業の疫学専門家として薬剤疫学・リアルワールドデータ研究を専門とする。日本・グローバルの双方で活動したのちに、全ての人がアクセス可能な一流の知のプラットフォームを作り、「知に繁栄を、辺野に豊穣を」実現すべく、mMEDICI株式会社を創業。

今のキャリアについて

私は、犬や猫を対象とする小動物臨床獣医師として働き始めて5年になります。

獣医師は毎年1000人しか誕生しないレアな職業のため、関わり合いがある方も多くないのではと思います。まずは簡単に獣医師の職業を説明し、その後私自身のキャリアについてお話しようと思います。

獣医師とは?

獣医師は、人以外の動物を診療対象とするいわゆる動物のお医者さんですが、大学六年間ではすべての動物を網羅できないので、主に愛玩動物(犬、猫)と産業動物(牛、馬、豚、鶏)について勉強します。

低学年では、分子生物学や細胞生物学といった細胞レベルの生命現象の理解から始まり、生理学、病理学、薬理学、比較解剖学といった臓器〜個体レベルにScopeを拡大していきます。

その後、臨床解剖学、臨床薬理学、獣医内科学、獣医外科学といった臨床科目を学びます。

公衆衛生分野(特に食中毒やエボラ出血熱、狂犬病などの人獣共通感染症)も獣医師がカバーする重要な領域ですので、衛生学、公衆衛生学、疫学も学びます。(学生当時、疫学を含めた公衆衛生科目は入眠時間でほとんど記憶はありませんが、、、笑)

動物種によって解剖の構造や薬物代謝のメカニズムが異なります。例えば、犬や猫は人と同じ胃が一つの単胃動物ですが、草食動物である牛は四つの機能的に異なる胃を持っていたり、馬は胆嚢がなかったり。

その生理学/解剖学的な違いから、動物種ごとになりやすい病気や適応可能な治療法が大きく異なることが、獣医学の面白い点であり、難しい側面でもあると思います。

このように、動物種差が非常に大きく、一人の獣医師がすべての動物種を網羅的に診察することは難しいため、卒後臨床に進む獣医師は、対象とする動物種を絞ります

ペットを診る小動物臨床獣医師(約半数がこの道に進みます)は、主に犬猫を対象としていますが、兎や鳥、エキゾチックアニマル(ハムスター、ハリネズミ、亀、蛇など)を専門で診る獣医師もいます。

また、大動物臨床獣医師として、肉牛や乳牛、養豚、養鶏を専門的に診る獣医師、競馬を診る獣医師などもいますし、動物園や水族館でライオンや象、イルカなどの診察や健康管理を生業とする獣医師もいます。

欧米(最近ではアジアでも)には特定の診療科の専門医制度もあり、そのような専門医たちは、犬、猫、牛、豚、馬、フクロウ、キリン、蛇といったあらゆる動物種を診ることが要求されます。

いずれにしても、とんでもない勉強量・知識量です。

臨床以外にも国家(地方)公務員、企業(動物実験で化合物の安全性を評価する非臨床研究職や、実験動物管理獣医職が多いと思います)、アカデミアなどに進まれる方もいます。

獣医師は多種多様な職域で活躍する場があり、世間的にはよくイメージされる”(町の)動物のお医者さん”だけが仕事ではないという点は、意外に思われる方も多いのではないでしょうか。

卒後、臨床獣医師の道へ

次に、私自身のキャリアについてお話します。

私は卒後三年間、犬猫を対象とする小動物臨床獣医師として都内の一次動物病院に就職しました。

予防健診、内科、眼科、歯科診療、救急対応、入院管理、内視鏡処置/検査、精巣摘出、子宮卵巣摘出術などの軟部外科の執刀、整形外科、神経外科の助手など、いわゆる総合診療を行っていました。

日本の小動物臨床獣医師の大半は、内科外科問わず総合診療的に幅広い疾患を対象としています。一次病院で手に負えない疾患や外科手術が必要な場合には、専門科を有する二次動物医療施設に送ることもあります。

就職した病院は地域の中核病院であり患者数も多く、言葉を話せない犬猫たちが様々な症状で来院していました。飼い主への問診、五感と各種検査結果に基づき多様な疾患を鑑別しなければなりません

急患で来た患者を素早く的確にアセスメントし治療する臨場感。

教科書通りではない、患者ごとの飼育環境や性格を考慮して理想的な獣医療と現実の落とし所を見つける臨床的判断。

先程まで死の淵にいた患者が劇的に良くなる外科手術。

自分の判断と技術で命を救うやり甲斐、辛そうな動物たちが尻尾を振り、ご飯を食べられるようになる姿を見る嬉しさ、どれもが面白く臨床の魅力でした。

入職してからは趣味は勉強!という勢いで日々がむしゃらに働いていました

上手く行かないことや力不足を痛感することも多くありましたが、目の前の患者を診断/治療するために教科書や論文、セミナー動画を見て、それを臨床に還元する工程は、実体を伴った生きた勉強であり、成長を感じました。

また、臨床だけでなく学術活動にも取り組んでいました。後述しますが、就職した時点で臨床疫学に興味があり、臨床研究をしたいと思っていました。

ただ、町の動物病院では現実的に臨床研究を行う基盤を整えるのは難しかったので、臨床におけるEvidenceの最小単位であるCase report論文を書くことにしました。

それまで論文は書いたことがありませんでしたが、非常勤で来ていただいていた獣医学博士を持っている先生のご指導や論文、書籍”必ずアクセプトされる医学英語論文”を参考にしながらなんとか形にしていきました。

朝起きて論文を書き、日中は臨床を行い、外来の合間でカルテ書きつつ教科書で勉強、家に帰ったら夜中までその日診た疾患の勉強か論文執筆、休みの日は臨床と疫学の勉強、論文執筆という生活を三年間続け(もちろんたまに遊んで息抜きしたり、家でゴロゴロもしていました)、国際学術誌に三本の筆頭英語論文を出版することができました。


初めてPubmedに自分の名前がヒットしたときは感激し、何度もエゴサしました。笑
とはいえ、論文出版はスムーズではなく、多くのRejectを経験し時間もかかりました。

三本の出版した論文全てで必ず一回はRejectを喰らいました。Editor rejectも、Major revisionからのRejectも、査読者がつかないからWithdrawnしてくれという査読システムの破綻を示唆するようなRejectもありました。

それでも、Editorや査読者からのコメントは非常に示唆深く、一つ一つのコメントが大変勉強になり、次の執筆の糧になりました。

手元にある事実だけで、どのように論理的にストーリーを展開して妥当な結論に落とし込むか、という科学的過程をCase reportの執筆を通して養うことができましたし、現在行ってる臨床研究で、Feasibility(実現可能性)のあるResearch Questionを考える時に、この思考過程(いわゆる逆算の思考)が活きていると感じます。

転職と大学院進学

元々、将来は臨床獣医師ではなく研究者を生業にするつもり(詳細は後述します)でしたので、三年間臨床現場で働いたら大学院に行くと決めていました。

そのため、一次動物病院で三年間勤務したあと、二次動物医療施設への転職と同時に、社会人大学院生としてデータサイエンス系大学院に進学しました。

フルタイムでの大学院進学も考えていましたが、その頃に結婚をして家庭を持ったこともあり、収入ゼロに近い状態で博士号取得はリスクが高いと判断し、社会人大学院生になることを決断しました。

進学にあたっては、臨床疫学系の大学院進学を目指していたため、東大SPHや海外大のオンラインMPHなども検討しました。

しかし、フルタイムで働きつつ博士号取得を目指せることや学費の安さ、現地で学べる利点アクセスの良さを考慮してデータサイエンス研究科のある大学院に決めました。

データサイエンスと臨床疫学は、ともに現実世界のデータから真実を追求するという点でアプローチが共通しています。

私が進学した大学院は、データサイエンスの技術的側面だけでなく、生物統計学や臨床研究方法論といった臨床疫学分野も重視したカリキュラムとなっていたため、臨床研究に関連したスキルを学ぶにはうってつけでした。

また、臨床獣医師は狭いコミュニティで生活しているので視野が狭くなりがちですが、大学院に進学し、医師やコメディカルスタッフ、企業研究者と同期になり、各業界の課題とそれに対する研究テーマを知ることができ、視座が広がった点は思わぬ恩恵でした。


現職では、臨床:研究=7:3くらいの割合で業務をこなしています。
臨床業務としては、内科、外科の重症患者のICU管理を主に行っています。

研究業務は、所属病院の臨床研究を主導して(とはいえまだ観察研究がメインですが)論文を執筆することや、他スタッフの行っている研究の支援(研究デザイン提案、データマネジメント、統計解析)を行っています。

現職場はある手術分野で世界的にリードしている施設であり、年間数百件、特定の外科手術を行っているため、多くの貴重な臨床データが蓄積されています。

私自身はそれらの臨床データを用いて、術後の予後予測研究、バイオマーカーに関する企業共同の臨床研究、周術期輸血に関する研究などを行っています。

大学院で臨床研究方法論、Rを用いたデータハンドリング/解析スキルを学び、それらを職場の研究で応用、そして研究上の課題や疑問は大学院で解決

上記のように、インプットとアウトプットが上手く循環する環境に身を置くことができているため、効率的に臨床研究のスキルを習得することができています。

結果的に、フルタイムで臨床を継続しつつ、臨床研究も業務として行い(ついでに転職前よりも収入増)、さらに社会人大学院生としてデータサイエンス/臨床疫学を学ぶことができており、望んでいたキャリアに乗ることができたと思います。

今年の3月には大学院の博士前期課程を卒業し(運良く首席を取ることができました)、4月からは同大学院の博士後期課程に進学する予定です。

なぜそのキャリアを選んだのか

今の私は、小動物臨床と臨床研究の二足の草鞋を履いています。

ただ、最初からこのキャリアを見据えていたわけではなく、高校から大学に至るまでの様々な学びの中で今のキャリアに行き着きました。

知的好奇心の赴くがままに研究したいけれど、、、

高校の頃受けた生物の授業がとても面白く(生物の先生には感謝です)、生物学の研究者を目指そうと思っていました。

その頃から日本のアカデミアの暗い話は見聞きしていたので、純粋な研究者として生きていく不安もありましたし、父親からも食いっぱぐれがない進路を考えた方がいいのではと言われていました。

生命科学系の学科の受験も検討していましたが、国家資格である獣医師免許の受験資格を得られること、人以外のあらゆる動物を細胞レベルから集団レベルまで様々な階層で学ぶことができる、という理由で獣医学科を受験することにしました。

獣医学科1~2年生の頃は、生物の進化を数学的に解き明かす進化生物学研究者のブログを読むのが好きで、進化生物学を生業にした研究者になりたいと思っていました。

「キリンの首はなぜ長いのか?シマウマはなぜ縞々模様なのか?孔雀の羽はなぜ派手なのか?」といった子供の頃からの生物の謎を、数学を用いて遺伝子の適応的な戦略の観点からエレガントに解き明かしていく理論生物学に憧れていました

複雑怪奇で一見不合理にさえ見える生命の謎を、統一的な進化理論で説明する、そんな研究がしたい!と思っていました。

ただ、将来それで生きていけるのか?という不安も持っていました。

臨床で役に立つ研究を

時は流れ大学3年生。私の大学では、大学3年生から6年生までの4年間、研究室に所属して卒論研究をみっちり行います。

私が所属した生理学研究室の教授は厳しくもサイエンスに実直な面白い先生で、魅力的に実験科学の奥深さを教えてもらいました。

その先生は獣医師ですが、長年企業で創薬研究を行っており、そこからアカデミアに戻って臨床の先生と共同で研究を行っていました。

臨床現場での”痒いところに手が届く”研究を連発しており、臨床の先生が唸るような魅力的な研究テーマを見つけ、研究疑問に落とし込み、独創的なアイデアで巧みに実験系を構築して謎を解明する、といった科学を体現する先生でした。

Think a bit beyond your interest

その先生がよく仰っていた研究のポリシー(座右の銘?)です。

自分の知的好奇心の赴くがままに研究するだけじゃなく、世の中にどう役立つかを考えよう、そういう意味と理解しています。

先生が体現してくれた実践的な科学に触れて、自分も臨床現場で役に立つ研究をしたい、と思うようになり、進化生物学の研究から、医学/獣医学研究に興味がシフトしていきました。

とはいえ、元々、数学を使って生命現象の本質を理解するという科学的営み自体に魅力を感じていたので、数理モデル ✕ 臨床科学を融合させた研究分野を目指すようになりました。

システム生物学(細胞内エネルギー代謝と腫瘍の数理モデル)、感染症数理疫学(感染症伝播の数理、ウイルス進化の数理モデル)、臨床疫学(因果推論)などの分野に興味を持ち、複数の大学院に見学に行きました。


かなり悩みましたが、最終的にはせっかく両親に学費を払ってもらい獣医学部に通い、獣医師免許も取得するなら、一度は小動物臨床の世界を学んで、その経験を糧にして研究のキャリアに行くのがいいと思うようになりました。

また、一度臨床の経験をしていれば潰しが効くという打算的な側面もありました。

臨床の経験を活かして研究をするとなると、テーマはかなり臨床に寄ったものになります。上述の中だと、臨床疫学がうってつけでした。

臨床疫学といってもカバーする領域は広く、根幹にある疫学の理論体系をほとんど知らなかったので、まずは勉強する必要があると思いました。

そこで、大学を卒業してから4月の仕事が始まるまでの間、EdXという海外の有名大学の授業をオンラインで受講できるサービスで、Miguel Hernán先生(Harvard大学)の因果推論のDAG講座を受講してみることにしました。

臨床疫学の導入として、いきなり因果推論、さらにピンポイントでDAGを(しかも英語で)学ぶという暴挙に出てしまいましたが、なんとか修了してCertificationを得ることができました。

この講座は非常に質が高く丁寧に作り込まれており、現実世界のFuzzyなデータからどうやって因果関係を推定していくのかという概念的な話をわかりやすく掘り下げてくれたおかげで、因果推論の面白さを知ることになりました。

因果推論をどんどん調べていくと、統計解析以上に研究デザインが重要であることを知りました。

思い返せば、学部時代の生理学研究室の教授も実験系のデザイン構築の重要性を常々説いており、なんとなくわかった気になっていましたが、ここにきてその発言の真意がストンと腑に落ちました。

そして、臨床疫学の理論は学問横断的に必要な科学的思考の共通基盤なのだと理解しました。

臨床疫学の道へ

そこから、臨床疫学の勉強にも熱を入れるようになりました。

就職してから、休みの日にCoursera(EdXと似たようなオンライン教育サービス)で海外大学の臨床疫学に関連する授業をコツコツ受講していました。

を受講し、Certificationを取得しました。

どちらもオンラインですが、インタラクティブに参加できる工夫が随所に盛り込まれていました。

例えば課題論文を読んでレポートを書き、学生同士でお互いのレポートを採点し合う授業があったり、掲示板上で疑問点について昼夜問わず議論もできました。

欧米、アジア問わずグローバルに学生が集い一つの科目について真剣に議論するという過程は新鮮で面白かったです。

この経験を通じて、なんとなくオンラインMPHの良さがわかった気がしました。

そのようにして臨床疫学に関する基礎的知識を学んでいましたが、やはり実際に自分で臨床研究をやってみないと真の意味でスキルは身につかないなという気もしていました。

一次動物病院では来院する患者数も限られ、日頃は臨床に忙殺されているので臨床研究をやる余力は(病院にとっても自分にとっても)ありませんでした。

元々、三年間臨床を経験したら大学院進学することを計画していましたので、大学院進学のタイミングで臨床研究もできる大規模臨床施設に移ることを考えていました。

専門科を有する総合病院であれば臨床データが集積しやすく臨床研究を行っているところが多いと思い、大きめの総合病院を中心に探していました。

とはいえ、大学院に通いつつ、臨床と研究両方が出来る理想的なポジションはネットをいくら探しても見つかりませんでした。

(実は、大学の特任教員として研究をしながら大学病院の臨床科に所属するポジションはあり連絡をしましたが、制度上同時に社会人大学院生となることはNGだったので選択肢から外れていました)

現職の募集要項にも当然そのようなポジションはありませんでしたが、ホームページに臨床研究を推進しているという文言があったこと、データサイエンス系大学院に進学しているスタッフが在籍していたこともあり思い切って連絡を取ってみました。

臨床研究を推進したいけど、臨床と臨床研究の方法論や生物統計学双方の専門性を持つ人材がいない、さらに臨床科の人手が足りないということで、私の希望とニーズが合致することが判明しました。思わぬ偶然でした。

さらに、社会人大学院生として学びながらフルタイムでは勤務できる体制を整えていただける配慮をしていただけることになりました。

やりたいことを全部叶えられる魅力的な条件で転職することが叶いました。

このキャリアに至るまでに、やりたいことの変遷が複数回ありましたが、根源には、数理の力で生命現象を解き明かしたいというモチベーションがありました。

その上で、自分の好奇心のままに研究するのではなく、Think a bit beyond your interestという恩師の言葉を胸に、 獣医学のため、愛おしい動物に還元するために臨床研究者を目指すようになり、今に至ります。

そのキャリアにたどり着くために努力したこと

現職では、臨床研究をそれぞれ業務として行いつつ、さらに大学院の兼ね合いで変則的な業務シフトを許容していただいております。

元々そのようなポジションは有りませんでしたので、柔軟で特殊な待遇を受けていることになります。

自分の希望と職場のニーズがマッチしていたという幸運がありましたが、それだけではこのキャリアを得られず、そこに至るまでの努力がチャンスを掴む期待値を上げたのではと思います。


その努力の一つ目は、自分のやりたいことを明確にするために四方にアンテナを張り、能動的に動いたことです。

私の場合には、数理の力で生命の謎を解くという根源的な興味がありましたが、それを叶える目標は一意ではありませんでした。

自分が身を置いた環境と本質的な興味がマッチする学問分野がないかアンテナを張って模索していました。

面白そうな研究者や研究室のブログ、SNS、HPをフォローして周回しているうちに、これは、と思うキーワードに出会えます。さらに深掘りしていくことで興味の幅がどんどん広がっていきます。

面白そうだと思ったら本や論文を読んでみたり、学会に足を運んでみたり。日本語だけだと情報量が少ないので、英語を主軸にしたことも情報網を効率的に広げる重要な要素だったと思います。


二つ目は、定めた目標に対して必要な準備をしたことです。

臨床疫学研究をしたいという目標に対して、その環境で出来る準備をできるだけしてきたつもりです。

臨床業務の傍らで臨床系の論文(Case report)を複数本出版し、海外大学のオンライン臨床疫学講座のCertificationを取得することで、臨床疫学研究に必要な知識とスキルの土台を固め、客観的なアピールとなる実績を作ることができました。(論文もCertificationもCVに書くことができます)


三つ目の努力は、粘り強く諦めなかったことです。

論文を書いても、最初は中々上手いこと文章を書けませんでした。半年かけてようやく書き上げ、渾身の一作として投稿したとしてもすぐにはアクセプトはされませんでした。Rejectもたくさん経験しました。

ただ、Rejectはあくまでその論文に対するその査読者の評価であり、手元のデータに価値がないことを意味しません。そこで執筆を諦めたら、努力しただけで終わってしまいます。

Rejectで得た知見、なにより闘病した動物たちの頑張りを世に出すぞ、という気持ちで執筆を続けたことが成果に繋がったと思います。

やりたいことに対して、やる気を主張するだけでなく、それを叶えるために必要な準備をし続けること、そして小さくてもいいので成果を出すことが、キャリアを切り拓く武器になると思います。

そのキャリアを目指す人へのメッセージ

やりたいことを100%成就させる方法はないかもしれませんが、期待値を上げることはできると思います。

虎視眈々と準備をして実績を積み、四方にアンテナを張りつつ、興味があることには恐れず能動的に突入してみることが、やりたいことを見つけ、チャンスを掴む確率をあげる重要な要素だと思います。

案外、自分が何に興味があるのかは実は自分でもわからないのだと思います。こだわらずにたくさんの情報に接すると、意外なところに自分の興味の共通点を見いだせるかもしれません。

なによりも、やりたいことを見つけて、それを全力で楽しむことが重要なんだと思います。

前述のセクションではキャリアのために努力したこと、と書いてありましたが、私個人としてはやりたいことをやっていただけなので、辛かったという気持ちはありません。

やっていて楽しいことを将来の目標にして夢中で走り続けること、走り続けられる目標を探すことが一番大事なのかもしれません。

是非、私と同じように獣医師を目指している人もそうでない人も、興味の赴くがままに色々見て体験してみてください。

これは、と思うものが見つかったら、楽しみながらも、小さくてもいいのでコツコツと目に見える成果を出してみてください。

きっとそれが自分のキャリアを切り拓く武器になると思います。

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