
MPH
【岡山大学MPH受験】理学療法士から医療研究プロジェクト管理室へ:理学療法の意味を問いづつけた軌跡 - vol.32
2025.08.05
理学療法士は、けがや病気、高齢による身体機能の低下に対して、主に運動療法を用いて回復を支援する医療専門職です。
医療という厳しい現場の中で、リハビリテーションという“希望の医療”に携わることで、人の人生に寄り添いながら、自分自身も成長することができました。
しかし、学生時代の臨床実習で、指導者からかけられた一言がきっかけで、私は「理学療法の意味」に疑問を抱くようになりました。
私は、その意味を求めて様々な旅を続けてきました。 そんな中で出会ったのが、疫学や公衆衛生学でした。学びを通じて、少しずつではありますが、「理学療法の意味」を再び見つけ出せるようになってきました。
そしてそれは、新たな旅の始まりでした。私は今、公衆衛生大学院の知見を活かし、リハビリテーション医学のさらなる発展に貢献するため、臨床現場を一度離れる決意をしました。
臨床の現場で違和感を抱く理学療法士や、研究への一歩を踏み出したいと考える臨床職の方にぜひ読んでいただきたい内容です。
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- この記事のまとめ
- この記事を読むと分かること
- この記事は誰に向けて書いているか
- MPHシリーズ
- 執筆者の紹介
- 編集者
- 監修者
- MPHを受験しようと思ったきっかけ
- 理学療法の意味を問い続けて
- リハビリテーション学専攻の大学院での数々の失敗
- 研究の理想と現場の現実、その狭間で
- 気づかぬうちに始まっていた、公衆衛生活動と観察研究の第一歩
- 批判の先に見えた、公衆衛生大学院への道
- なぜそのMPHを選んだか
- 理解できない会話で気づいた、自分に足りないもの
- 縁がつないだ、新たな学びの場との出会い
- 【オンラインスクール mJOHNSNOW入会受付中:7日間無料お試し】
- 受験対策でやったこと
- 事前面談の重要性
- 英語試験への備え
- 当日の面接試験について
- 公衆衛生大学院で学んだこと
- 理学療法士が疫学を学ぶことで得た視点
- 公衆衛生大学院修了後 今後の展望
- 臨床とデータをつなぐ、医療RWD分析の最前線へ
- 臨床現場を離れて新たな道へ ーmJOHNSNOWとの出会い
- 自分の可能性が開いた瞬間 ー転職支援サービス mDAVINCI
- 旅路の分岐点で、私は「未知の行き先」を選んだ
- MPHの受験から、卒後のキャリア形成まで一気通貫のサポートならmJOHNSNOW!
- 【YouTubeラジオコンテンツ 耳から学ぶシリーズ】
この記事のまとめ
この記事を読むと分かること
理学療法士が疫学を学ぶことの重要性
臨床研究における大学院と臨床現場のギャップ
岡山大学大学院 疫学・衛生学分野(MPHプログラム)入学に向けて
この記事は誰に向けて書いているか
リハビリテーション専門職で公衆衛生大学院の進学を考えている方
リハビリテーションと公衆衛生学の接点を知りたい方
理学療法士の臨床現場以外へのキャリアチェンジに興味がある方
MPHシリーズ
vol.5:【東大SPH受験】妻とともに乗り越えた、2度の不合格から合格までの不橈なる軌跡
vol.18:
(前編)【東京大学SPH受験】“臨床の限界”が導いた越境:若手理学療法士が目指す“健康が自走する社会”の構築
(後編)【東京大学SPH受験】“臨床の限界”が導いた越境:若手理学療法士が目指す“健康が自走する社会”の構築vol.26:【京都大学SPH受験】産婦人科医から製薬転職のリアル:人生を変えたSPHという学び舎
vol.29:【広島大学MPH受験】命のその先に挑む救急医:フルタイム勤務×育児×大学院の両立術
執筆者の紹介
氏名:岡本 貴幸
所属(執筆時):倉敷リハビリテーション病院 リハビリテーション部
自己紹介:理学療法士(リハビリテーション学修士・公衆衛生学修士)。脳卒中と栄養管理に強い関心を持つ。病棟主任として、臨床業務に加えて他職種を含むチームのマネジメントにも携わる。現在は、医療リアルワールドデータ活用人材プロジェクト 東京大学履修コースで、実臨床に根ざしたデータをもとに、疫学的視点から医療の実態や介入効果を明らかにする力を磨く。今後は、臨床現場を離れ、医療研究開発センターで勤務予定。治療効果を正しく評価する方法を探り、現場からの膨大なデータを整理し、還元することで、リハビリテーション医学の更なる発展に貢献したいと考えている。
編集者
氏名:菊池祐介
所属:mMEDICI株式会社
専門性:作業療法学修士。首都大学東京(現東京都立大学)・東京都立大学大学院を卒業後、病院勤務を経て専門学校・私立大学にて作業療法教育、地域共生社会の醸成に向けたリハビリテーション専門職の支援に関する研究に従事。現在は心身の健康とその人らしさの実現に向け、保険内外でのクライアント支援を展開している。作業療法の社会的意義向上を信念に、mMEDICI株式会社に参画。
監修者
氏名:廣瀬直紀
所属:mMEDICI株式会社
専門性:保健学博士・公衆衛生学修士。東京大学・東京大学大学院を卒業後、外資系製薬企業の疫学専門家として薬剤疫学・リアルワールドデータ研究を専門とする。日本・グローバルの双方で活動したのちに、全ての人がアクセス可能な一流の知のプラットフォームを作り、「知に繁栄を、辺野に豊穣を」実現すべく、mMEDICI株式会社を創業。
MPHを受験しようと思ったきっかけ
理学療法の意味を問い続けて
専門学校1年生の頃、私は「U-30」と呼ばれていました。35人中30位以下の学生につけられる称号です。
理学療法士は自ら選んだ道でしたが、学業では成果が出ず未熟さを痛感しました。成績不振で担任から呼び出され「このままではいけない」と決意し腹を括りました。
次第にリハビリテーション医学の魅力に引き込まれ、勉強に熱が入りました。国家試験前の全国模試では基礎科目で全国30位になり、自分にこの道は向いていると感じるようになりました。
しかし、その高揚感とは裏腹に、就職活動には身が入りませんでした。長期臨床実習中の指導者の一言が、理学療法士としての意欲を揺るがせたのです。
実習で担当した脳出血の患者さんは、実習中に歩行が自立し、自宅に退院しました。
私は、実習中に工夫した運動プログラムや指導が功を奏した結果だと考え、課題のレポートに「自分の介入がこの成果につながった」と記しました。
ところが、指導者からは 「これは、あなたの介入の効果ではないよ。自然回復だから。“効果があった”と書かず、“自然回復”を前提にレポートを書き直してください。」と言われました。
その言葉に、私は、「自然回復で済むなら、理学療法なんていらないのでは…?」と考えるようになり、理学療法そのものへの熱が一気に冷めてしまいました。
就職への意欲も薄れ、周囲の勧めに流されるまま採用試験を受けました。
そしてご縁があり、現在の回復期リハビリテーション病棟で働くことになったのです。
当時は、新人教育の一環として、症例報告や学会発表が積極的に求められていました。
しかし、時間をかけて考えた私のプログラムや考察に対しても、
「回復期なんだから、時間が経てばよくなるのは当たり前」
「その患者にたまたま合っただけで、他では通用しない」
といった辛辣な指摘を受けました。
「理学療法に本当に意味はあるのか?」 この問いは、日に日に強くなっていきました。
そして私は、もう一度「理学療法とは何か」を深く問い直すために、リハビリテーション学を専門とする大学院への進学を本気で考えるようになったのです。
しかし、専門学校卒ではそのまま大学院に進めません。通信制大学で学士号を取得し、臨床5年目に大学院を受験。翌年から大学院生活が始まりました。
リハビリテーション学専攻の大学院での数々の失敗
大学院には、最先端機器がそろっており、私は「現場と先端技術をつなぐ橋渡しになろう」と意気込んで研究に取り組んでいました。
指導教授から「次の中間発表までに●●例のデータが必要です」と言われ、私は「それだけでいいんですか?このような素晴らしい機器なら、患者さんだって使いたがるはず。余裕で集まる!」と楽観していました。
ところが、実際に現場で患者に協力をお願いすると、「よくわからない機器は使いたくない」「いつものリハビリに加えて、それもしなきゃいけないの?」と断られることが多く、理想と現実のギャップに直面しました。
やっと協力者が見つかっても、「高価な機器を使うから、いつも以上に頑張ります!」という反応が出てしまい、これでは効果の評価が歪んでしまいます。
また、対照群の患者のリクルートや説明にも苦労しました。
ようやく測定に慣れてきた頃には、「初期のデータは正確に取れていたのか?」という不安に襲われ、自分のデータにすら自信が持てなくなりました。
「もう、何が正しいのか分からない。」
迷いの中で、続けてきた研究をストップせざるを得なくなりました。 すでに修士論文の提出期限まで、残りわずかでした。
研究の理想と現場の現実、その狭間で
結局私は、健常成人を対象としたプレテストをベースに、修士論文をまとめるしかありませんでした。
知人に被験者をお願いしてデータを集め、最後に統計ソフトに入力して、「解析」ボタンをポチリ。
「もう期限が迫っているんだから、有意差よ、出てくれ…!」
そう願った瞬間、我に返りました。
「これは何のための研究?」
結果を“出したい”と祈る時点で、それは科学ではない。
他の院生が成果を論文化し、次のステップへ進んでいく中、私は臨床研究への意欲を失いました。修士課程は修了しましたが、論文はそのままお蔵入り。臨床の現場へ戻ることになりました。
そして、大学院を離れてようやく気づいたのは、あの場がいかに“特別”だったかということです。
あの環境だからこそ使えた先端機器や高性能な測定装置、そして高価な統計ソフト。大学院という“特別な場”と、私の主戦場である“臨床現場”との間には、想像以上のギャップがありました。
病院では、先端機器も統計ソフトも導入されておらず、最新バージョンが出るたびに買い替えるような予算も体制もありません。
あれほど熱心に継続していた学会発表も、気づけばすっかり途絶えていました。
気づかぬうちに始まっていた、公衆衛生活動と観察研究の第一歩
大学院修了直後の2011年に、職場で「栄養サポートチーム(NST)」への参加を依頼されました。栄養管理には関心がなく、「理学療法士に何ができるのか」と半信半疑でした。
その中で出会ったのが「サルコペニア」という言葉です。初耳でしたが調べるうちに、欧州サルコペニアワーキンググループ(EWGSOP)から定義と診断基準に関するコンセンサス論文が発表されていたことを知りました。
その論文を読むと、二次性サルコペニアの要因として「活動の低下」「疾患の影響」に加え「栄養不良」が明記されていました(Cruz-Jentoft et al., 2010)。
参考文献:Cruz-Jentoft, A. J., Baeyens, J. P., Bauer, J. M., Boirie, Y., Cederholm, T., Landi, F., Martin, F. C., Michel, J. P., Rolland, Y., Schneider, S. M., Topinková, E., Vandewoude, M., Zamboni, M., & European Working Group on Sarcopenia in Older People (2010). Sarcopenia: European consensus on definition and diagnosis: Report of the European Working Group on Sarcopenia in Older People. Age and ageing, 39(4), 412–423. https://doi.org/10.1093/ageing/afq034
当時、どうしても回復が遅い患者さんが複数いて、運動量や疾患、活動量に配慮しても思うように改善が見られず悩んでいました。そこで「栄養状態の不良が要因かもしれない」と仮説を立てました。
そこで、その年に入院した患者全員について、必要栄養量と摂取量の差や体重変化の調査を開始しました。
さらに、独自の栄養データベースを立ち上げました。グラフや簡単な統計処理を行い、院内への啓発活動や学会発表にまでつなげました。
ただ当時の私は、あくまで「NSTの活動報告」だと思っており、これが「観察研究」という臨床研究のひとつであることや、「公衆衛生活動」であることに気づいていませんでした。
批判の先に見えた、公衆衛生大学院への道
NSTの調査結果を発表するうちに、さまざまな意見が寄せられるようになりました。
「●●%が低栄養だといっても、たまたま重症患者が多かっただけでは?」
「本当に低栄養が原因? 年齢や認知機能、麻痺の影響は?」
「状態が悪い人のほうが悪いのは当然でしょ」
また、こんな指摘ばかり…と気力が削がれていきました。
ある時、東京で開かれた栄養管理に関する勉強会の懇親会で、同じテーブルに座ったのはリハビリテーション科の医師でした。
これまで自分が取り組んできた臨床研究の失敗や、院内調査の経験について話していると、その医師がこう言いました。
「公衆衛生大学院ってご存じですか? あなたの疑問に向き合うには最適の場です。」
「公衆衛生…? リハビリとは別の分野では?」と戸惑う私に、
「私もリハビリ科の医師ですが、30代で東京大学のSchool of Public Health(SPH)に進学して人生が変わりました。あなたにも合っていると思いますよ。」と。
このやりとりをきっかけに、公衆衛生という分野を知ることとなったのです。
なぜそのMPHを選んだか
理解できない会話で気づいた、自分に足りないもの
懇親会をきっかけに、その医師の研究チームに参加し、チームの一員として論文投稿にも関わることができました。しかし、実際にチームに入ると、会話の内容がまったく理解できませんでした。
「バイアス?」「交絡因子?」「回帰分析?」「オッズ比?」「感度分析?」
飛び交う専門用語はどれも初耳で、私はチーム内で浮いた存在になりました。
「このままでは次の声はかからない…」
焦りから独学を始めたものの、何から手をつければよいのか分からない。
そんなとき、「公衆衛生大学院」のことを思い出しました。
東京大学のホームページからSPHの過去問を入手できることを知り、取り寄せて勉強を始めました。受験のことは誰にも相談せず、ひっそりと勉強を始めました。
ただ、「合格しても、今の仕事は?生活費や学費は?東京での2年間の生活は?子どももいるのに…」と現実的な問題にぶつかりました。
縁がつないだ、新たな学びの場との出会い
そんな折、地元・岡山大学大学院にMaster of Public Health(MPH)課程があることを知り、説明会に参加しました。
教員や在学生と話す中で、「あなたの問題解決には、うちの教室がピッタリです。一緒に頑張りましょう」と声をかけていただき、大きな励みになりました。
研究室全体が前向きな雰囲気で、専門知識を深めながら実践的に学べる環境だと感じ、ここで学ぼうと決意しました。
「ただし、現在教授が不在で後任が未定です。それでもよければ」という説明もありました。教授が誰であれ関係ないと思い、迷わず受験を決めました。
(つい最近、その新任教授が、私に公衆衛生大学院を勧めてくれたリハビリテーション科医師の高校の同級生だったと知り、不思議な“縁”を感じました。)
(続きはページの後半へ)
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受験対策でやったこと
私が受験したのは2019年です。現在と状況が異なる可能性もありますので、参考程度にお読みください。
事前面談の重要性
岡山大学大学院 医歯薬学総合研究科「疫学・衛生学分野」のMPHプログラムでは、受験前の事前面談が重要です。
なぜ今、MPH課程への進学が自身のキャリアに必要なのか
現在取り組もうとしている研究に、どのような意義があるのか
活用可能な臨床データは存在しているのか
修了後の進路やキャリアビジョンは明確か
いずれも、曖昧な回答では通用しません。準備が不十分な場合は、受験を見送るよう助言されたり、他の研究室を勧められたりすることもあります。
私自身、比較的気軽な気持ちで面談に臨んだため、撃沈しかけました。しかし、過去の経験が、想定以上に大きな支えとなり、どうにか乗り越えることができました。
厳しい指摘をされる面接担当者がいますが、それは受験者の覚悟と志を見極めるためのものです。厳しい質問の真意が、「受験生に対する愛」であることは、入学後にはっきり理解できます。
英語試験への備え
大学院の説明会終了後に英語の過去問題を閲覧する機会があり、「英文を正確に読み解く力」が重視されているという印象を受けました。
試験では辞書の持ち込みが可能であっても、語句を調べながら解く余裕はないと判断しました。大学受験向けと医学英語に特化した英単語帳の2冊を購入し、語彙力の強化に努めました。
当日の面接試験について
事前面談で十分な議論を重ねていたこともあり、当日にあらためて専門的な知識を問われる場面はありませんでした。
「仮に合格した場合、入学までの期間にどのような準備を進めるか」といった今後を見据えた対話が中心でした。
公衆衛生大学院で学んだこと
理学療法士が疫学を学ぶことで得た視点
大学院では、とくに疫学に多くの時間を割きました。シラバスを見ると、1年目の前半はほとんどが疫学関連の授業でした。「疫学って感染症の話でしょ?こんなに時間使うの?」と不安になりましたが、それは思い過ごしでした。
疫学とは、人々の健康や病気の発生状況、その分布や原因を科学的に解明する学問です。データの収集・測定・解析・解釈を通じて、健康や医療の実態を明らかにしていきます。
中でも重要なのが、研究結果の信頼性を損なう「バイアス」をどう防ぐか。疫学では、こうしたバイアスを避けるために、研究計画の段階から緻密に設計し、分析の工夫を重ねていきます(私も、リハビリテーション学専攻の大学院に入学する前に、これらの事を詳しく知っておきたかったです…)。
また、私が特に魅力を感じたのは疫学の中の「因果推論」という分野でした。「この介入が本当に患者の改善につながったのか?」という問いは、まさに学生時代から抱えていた違和感そのものでした。
個人に対して「その回復は実施した治療の効果なのか?」と断定することはできません。しかし、「個人への効果を推定するために集団を評価する」というアプローチを知ることで、臨床における見方が大きく広がりました。
目の前の患者を「個」として診る視点に加え、「集団の一員」として捉える視点、そして「集団全体を評価する」視点が得られたことで、臨床で感じていた疑問が少しずつ整理されていきました。
今では、疫学は私にとって、リハビリテーション医療の本質を深く理解するための大切な道具です。長く付き合っていく学問になると感じています。
公衆衛生大学院修了後 今後の展望
臨床とデータをつなぐ、医療RWD分析の最前線へ
大学院修了後、医療リアルワールドデータ(RWD)活用人材プロジェクト・東京大学履修コースに選抜され、現在は疫学と統計解析の応用力を高めています。
医療RWD分析とは、電子カルテやレセプト、健診情報など、本来は診療目的で収集されたデータを二次的に活用し、治療の実態や地域差、費用対効果などを明らかにする手法です。特殊な環境ではない現場のリアルを分析するということに大きなやりがいを感じています。
数十万件規模のデータを扱うためには、独特の倫理的配慮や、適切な解析手順などの「お作法」が欠かせません。現在は経験豊富な指導者のもと、これらを体系的に学んでいます。
疫学や公衆衛生活動を通じて実感しているのは、集団データの活用が、個人の医療の質も確実に高めていけるということです。
まだこの分野の人は少ないので、理学療法士だからこそ見える現場のリアルをデータの解釈や活用に反映させることで、より実践的で意味のある医療につなげていきたいと感じています。
臨床現場を離れて新たな道へ ーmJOHNSNOWとの出会い
病院では、病棟主任という立場上、日々の診療に加えて、組織運営や人材管理など、さまざまな問題に直面します。しかしそれらは、大学院で学んだ疫学や公衆衛生学とは別軸の課題ばかりです。気がつけば、せっかく得た知識が錆びついていくのを感じていました。
そんな悩みを妻に相談したときのこと。
「何のために、方向性を変えてまで大学院に行ったの?」 「何にも役に立っていないなら、あの進学は我が家にとって一番の無駄金。役に立たない投資は浪費!」
もっともな言葉でした。けれども、それは残酷な現実でした。
中途半端なままで終わらせたくない。知識を磨き直したい。しかし、博士課程に行っても、またその後に「浪費」と言われてしまうのでは…。
踏み出すには躊躇がありました。
そんなときに出会ったのが、公衆衛生に特化したオンラインスクール mJOHNSNOWでした。
mJOHNSNOWは承認制のオンラインスクールなので、なぜ入会したいのか、動機を書いて提出する必要があります。
そこに 「現在はリハビリセンター長のポストが目前ですが、パブリックヘルスマインドを活かせる新たな道に挑戦してみたい」と書いたのです。
幸い、入会が許可されました。
mJOHNSNOWには、「安心して学び合う場をつくるため、自らの経歴や所属、専門性をオープンにする」というルールがあります。
私が入会した頃には、すでに800名を超える仲間たちが集っていました。画面越しに見えたのは、それぞれ全く違う道を歩んできた、多様で刺激的な人たちの姿でした。
国内外で公衆衛生を武器に活躍する人、不安定な契約職でも自分の専門性を発揮している人。 「公衆衛生を学んだ先に、こんなにも多くの選択肢があるのか」と、目が覚めるような感覚でした。
そして残りの人生では、公衆衛生の学びを活かして生きていきたいという想いが、いっそう強く胸に根を張っていきました。それまで心の片隅にあった思いが、仲間たちの姿を通して、はっきりとした決意に変わっていったのです。
とはいえ、「40歳を過ぎた理学療法士に、他の道があるのだろうか?」「病院の外で働ける場所など存在するのか?」と感じていました。
自分の可能性が開いた瞬間 ー転職支援サービス mDAVINCI
そんな不安を抱えていたとき、「mJOHNSNOW」の運営会社 mMEDICI が新たに始めた転職支援サービス mDAVINCIの存在を知りました。
「医療職の企業転職に強い」と書かれていたその言葉に背中を押され、思い切って登録しました。
正直に言うと、心のどこかで”登録したくない自分”もいました。「病院以外では通用する場所は無い」と突きつけられるのが、怖かったのです。
そんな私に、転職コンサルタントの方は開口一番、
「転職のバリューがあります」「一緒に頑張りましょう!」と言ってくださいました。
その言葉が、迷いの中にいた私に「進んでいいんだ」と教えてくれました。あの言葉がなければ、一歩を踏み出せていなかったと思います。
さっそく支援をお願いしたところ、最初に言われたのが、「今までの職務経歴書、見せてください」と。
「今までに何度か転職活動をしたことがあるので、その時に使った職務経歴書です」
……沈黙。
「これでは、書類で落ちます。」
「企業に、自分という人間を惚れさせるんだよ!」
「相手が、自分を欲しがるにはという目線で戦略的に書きなさい!」
と指導していただき、書き直した職務経歴書は一生の財産です。
コンサルタントからの様々な職種の提案には、地方の小さい病院で働いているだけでは聞いたことがないものがたくさん含まれていました。自分に、このような職につける可能性があるのかというのは驚きでした。
旅路の分岐点で、私は「未知の行き先」を選んだ
そして幸いなことに、医療研究開発センターのプロジェクト管理室に採用され、新たな環境で実務をスタートすることが決まりました。
医師主導治験の試験の計画立案段階から試験終了までのプロジェクトマネジメント、モニタリング、研究事務局などの研究者の支援が主な業務です。
社会人になって、ちょうど20年。迷い、悩み、もがきながらも歩んできた、私なりの旅路でした。
元々の旅の行き先は、「病院のリハビリセンター長」。
その行き先に向かいながら築いた20年のキャリアを脇に置き、私はあえて“未知”への方向転換をしました。
今後は、多職種が連携する先進的な研究現場に身を置き、自らの視野と専門性をさらに高めていき、将来的には、臨床現場と多様な研究者をつなぐ架け橋となり、リハビリテーション医学の発展に貢献していきたいです。
異業種への転職。
最終面接で「あなたに何ができるんですか?」と投げかけられた問いが、今でも耳に残っています。
理学療法の意味を求めたところから始まった旅路は、ここからが第2章です。
「私に何ができるのか」、その答えを、これからの歩みで示していきたいです。
この記事が、同じように悩みながらも前に進もうとしている誰かの背中を、少しでもそっと押せたなら。それ以上に嬉しいことはありません。
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