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【キャリア解説】理学療法士が遂げた実績ゼロからのキャリアチェンジ - vol.6

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【キャリア解説】理学療法士が遂げた実績ゼロからのキャリアチェンジ - vol.6

2025.02.01

病院勤務の理学療法士から疫学の道を志し、企業の研究職にキャリアチェンジした私が、データベース研究支援事業の内容と魅力、キャリアチェンジ時のエピソードを共有します。

mMEDICI Library | ひらけ、叡智の扉

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この記事のまとめ

この記事を読むと分かること

  • データベース研究の受託支援はどんなことをやっているか?

  • データベース研究の受託支援における疫学担当者の役割は何か?

  • 医療職から企業の研究職へのキャリアチェンジの実際

この記事は誰に向けて書いているか

  • データベース研究受託支援の業務に関心がある方

  • 疫学の専門性を企業で活かすキャリアに関心がある方

  • 病院の医療職から企業研究職へのキャリアチェンジに関心のある方

キャリアシリーズ

  • 医療職の非臨床キャリア戦略論:戦略コンサルタントが教える医療職の院外キャリアサバイブ術 

  • vol.1:キャリアは「資格」ではなく「意志」で選べ

  • vol.2:SNSでは見えない院外キャリアの光と影を映す

  • vol.3:医療職の病院外キャリアに不可欠な「三つのマインドセット」とは?

  • vol.11:専門性の獲得に遅すぎることはない - 二足の草鞋で極める生物統計家のキャリアパス

  • vol.19:40代療法士が病院にデータ分析室を作るまで:個人特性を活かしたキャリア転換

  • vol.22:医療データサイエンティスト:データの向こう側に人を視る

執筆者の紹介

氏名:若林諒三
所属:株式会社データック
自己紹介:博士(医学)。名古屋大学を卒業後、医療現場で理学療法士として臨床経験を積む。その後、社会人大学院での疫学の学びを経て、臨床研究支援を行う企業のリサーチャーになる。疫学担当者として多くのデータベース研究プロジェクトの計画、解析、論文化に携わり、現在は株式会社データックにてRWD研究戦略部のグループマネージャーを務める。

編集者

氏名:菊池祐介
所属:mMEDICI株式会社
専門性:作業療法学修士。首都大学東京(現東京都立大学)・東京都立大学大学院を卒業後、病院勤務を経て専門学校・私立大学にて作業療法教育、地域共生社会の醸成に向けたリハビリテーション専門職の支援に対する研究に従事。現在は心身の健康とその人らしさの実現に向け、保険内外でのクライアント支援を展開している。作業療法の社会的意義向上を信念に、mMEDICI株式会社に参画。

監修者

氏名:廣瀬直紀
所属:mMEDICI株式会社
専門性:保健学博士・公衆衛生学修士。東京大学・東京大学大学院を卒業後、外資系製薬企業の疫学専門家として薬剤疫学・リアルワールドデータ研究を専門とする。日本・グローバルの双方で活動したのちに、全ての人がアクセス可能な一流の知のプラットフォームを作り、「知に繁栄を、辺野に豊穣を」実現すべく、mMEDICI株式会社を創業。

今のキャリアについて

疫学者としてデータベース研究を支援する

私は病院勤務の理学療法士として社会人のキャリアをスタートした後、大学院を経て疫学の道を志し、企業の研究職にキャリアチェンジしました。

現在はデータベース研究の受託支援を行うヘルスケアベンチャー企業で、疫学担当者としての実務およびチームのマネジメントをしています。


私が所属する株式会社データックは、「医学の知の創出を加速する」というミッションのもと、製薬企業が行うデータベース研究を受託し、研究を支援する事業を行っています。

主な対象は、製薬会社のメディカルアフェアーズ(MA)部門が行う、リアルワールドデータ(RWD)を使用した疫学研究であり、研究の上流(研究戦略立案やコンセプト作り)から研究計画・解析計画・解析・論文化までを一気通貫で支援しています。

私たちが受託する研究は、顧客である製薬企業の医薬品や、その疾患領域に関連するテーマになります。

MA部門の研究は、現状の臨床プラクティスでは十分に対応しきれていない患者・医療者の課題やニーズ(Unmet Medical Needs)を可視化し、そのニーズを充足させるエビデンスを創出することを目的に行われます。

例えば、

・自社製品の発売前段階にリアルワールドで行われている治療の実態を記述する研究

・診療ガイドラインで推奨される治療と実際に行われている治療のギャップ(Evidence Practice Gap)を明らかにする研究

・異なるレジメン間で治療のアドヒアランスや継続期間を比較する研究

など、様々な目的・種類の研究が行われます。

これらの研究により蓄積されるエビデンスが、より適切な臨床プラクティスの普及や医薬品の潜在的な価値を必要とする患者さんに届けることに繋がります。


私たちは、このような研究を支援することでエビデンス創出に貢献し、その先に医学・医薬品の発展に寄与することを目指しています。

そのため、受託ビジネスという形態ではありますが、単に作業プロセスの一部を外注先として請け負うというイメージではありません。

研究成果の達成を共に目指す良きパートナーになれるように、臨床と疫学の専門性をベースに研究プロセス全般を支援することが私たちのサービスになります。

データベース研究支援事業における疫学担当者の役割

データベース研究支援の事業の中で、疫学担当者はサービスの中心的な役割を担います。

具体的には、リサーチクエスチョン・研究目的を明確化した上で妥当な研究デザイン・変数定義・解析手法を検討し、透明性・再現性が高く解析実施できるように研究計画書・解析計画書を作成します。

また、解析結果を臨床・疫学的視点から解釈して論文骨子の作成・論文執筆も行います。


私はこれまで疫学担当者として多くの案件に関わってきました。

研究プロジェクトは、顧客担当者の方と協議を重ねながら進めていくことになりますが、その中で私が重視していることは2点あります。

1点目は、研究の質を高めることに貢献することです。

プロフェッショナルとして受託している以上、疫学的な観点から研究目的に対してより妥当な研究デザイン・解析になるよう提案し、研究をより良いものにすることが求められると考えています。


2点目は、納得感のある意思決定を支援することです。

データベース研究は、研究デザインや変数定義の取り扱い方法が複雑で直観的にイメージしづらく、かつ様々なバイアスが生じやすい特徴があります。

そのため、研究デザインの検討や変数定義を決めるにあたって、図でイメージを共有することや、提案内容の理由・根拠を明示しながら議論を進めていくことを意識しています。

これらを通じて、顧客が納得できる意思決定の支援を積み重ね、質の高い研究を目指していくことが、私たちの取り組みになります。


また、研究支援において、疫学の専門性だけではなくプロジェクトマネジメントやクライアントワークのスキルも大切な要素になります。

製薬企業のデータベース研究は、関わるステークホルダーが多く、各種成果物(研究計画書、論文案など)のレビューのプロセスも厳格です。

プロジェクトも1年以上にわたる長期プロジェクトになります。

個々の疫学担当者は、このような研究プロジェクトを複数案件を同時進行で対応しています。

そのため、スケジュールやコストの制約の中で適切にプロジェクトをマネジメントしていくことも研究成果を出す上で重要な要因になります。

また、長期のプロジェクトを共にする顧客担当者の方とは信頼関係を築き、委受託の関係性を超えて成果を共に目指すパートナーの関係性となるようなコミュニケーションを行うことも重要です。

企業の研究を支援することでパブリックヘルスに貢献する

私たちは研究支援のサービスを通じて、医薬品に関連するエビデンス創出に貢献しています。

これは、「企業という立場からパブリックヘルスの向上に取り組む」ことを意味していると考えています。

医薬品に限らず、ヘルスケアの製品・ソリューションを提供する企業は、従来は満たされていなかった医療ニーズに対して新たな価値を提供することに取り組んでいます。

このようなHigh-valueなケアを必要な人に適切に届けることがパブリックヘルスの観点からも重要であり、そのための研究を支援することで私たちはパブリックヘルスの向上に参画していると考えています。


企業で行われる研究は製品に関連する研究であるが故に、アカデミアの研究と比べてビジネスの色合いが強い印象でみられる傾向もあるかと思います。

また、一般的には、企業の研究とパブリックヘルスを結び付けるイメージが湧かないかもしれません。

実際にビジネス上の制約があることも事実ではあります。

しかし、アカデミアの立場だから可能な研究・貢献があるのと同様に、企業の研究であるからこそ可能なパブリックヘルスへの貢献もあると考えています。

パブリックヘルスに関わるキャリアは様々だと思いますが、疫学やRWD解析の専門性を活かして企業の研究成果に貢献することも、その一つの選択肢になると考えています。

研究支援のサービス提供体制・仕組みづくり

私は現在、研究の実務に加えて疫学グループのマネジャーを務めています。

これまでの自身の経験も踏まえて、チームとして研究プロジェクトをより良く実施するための仕組み作り・ツール開発・組織作りを皆で取り組んでいます。

企業のデータベース研究プロジェクトは、まだ歴史も浅く、様々な課題があるとともに伸び代がある分野であると思っています。

この分野のベストプラクティスを作り、それを更新し続けていけるようなチームを目指しています。

私自身も、外部のセミナーやコミュニティで学び続けると同時にチームメンバーの経験や知識を集合知として積み上げ、高い品質でサービス提供できる仕組み・体制を作ることに励んでいます。


ヘルスケア企業の研究職にも様々な形がありますが、私たちのような研究受託のビジネスにおいては、疫学や研究方法論の専門性そのものが会社の提供価値の核である点が大きな特徴となります。

複数の製薬企業の多様な研究プロジェクトに関わる私たちだからこそ、発展途上であるデータベース研究という分野をリードして、より良いプラクティスを追究し、その成果を還元することを目標としています。

(続きはページの後半へ)

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なぜそのキャリアを選んだのか

大学院で疫学の魅力に出会う

私は病院勤務の理学療法士として社会人キャリアをスタートしました。

そんな私が企業研究職へキャリアチェンジに至ったきっかけは、社会人大学院生時代に恩師から受けた疫学のトレーニングにあります。

私は病院勤務時代、職場の先輩方の影響もあり、臨床業務と並行して院内の研究活動に携わり、学会発表や論文執筆もしておりました。

そのため、次第に研究のキャリアにも関心を持つようになり、公衆衛生学分野の教室に社会人大学院生として入学しました。

その時点で、公衆衛生に対する強い関心や明確なキャリアプランがあったわけではないですが、研究の方法論に強くなることが今後役に立つであろうと漠然と考え、疫学が専門の教授のもとで学ぶことを決意しました。


大学院に入学後、私は恩師である教授から疫学の講義・トレーニングを受ける機会に恵まれ、その魅力に引き込まれていきました。

先生は講義形式で教えてくださることもあったのですが、私の中で最も印象深かったのは、疫学研究論文のクリティカルリーディングの指導を受けたことです。

これは、先生がハーバード大学に留学していた際に受けたトレーニングであり、指定の論文を読み込み、予め用意された研究デザインや解析手法に関する方法の設問に回答するというものです。

この課題を事前に行い、講義で先生からフィードバックを受け、関連する概念や疫学的な考え方について教えていただきました。

このトレーニングを通して、「疫学って面白い」という気持ちが高まり、疫学的な事柄を考えている時に自分がなんだか活き活きしていることに気づきました。

私は、疫学とは「妥当な方法で数えること、妥当な方法で比較すること」を追究する学問で、あらゆる臨床研究の土台となるものであると考えています。

起こっている現象をデータから正しく捉えて、有効な対策を導くことを支える理論としての疫学に私は魅力を感じたのだと思います。

この経験から、疫学を仕事にしていく道に関心を持ち、キャリアチェンジすることを決めました。

臨床家としてのキャリアを諦める

それまでのキャリアを変えることを決めた背景には、5年間の病院勤務を経て、臨床家としてのキャリアとは別の道に関心を抱き始めていたこともあります。


病院勤務時代の臨床経験は、とても密度が濃く、多くのことを学び、経験をさせていただきました。

一方で、自分自身の性格や志向性から、この先も臨床家としてキャリアを積み重ねていく道には何か限界があるようにも感じ始めていました。

私は元々、ものごとのメカニズムや仕組み・理論に関心を持つ傾向があり、野球少年であった子供の頃も、バッティングやピッチング、トレーニングの理論書をよく読むタイプでした。

理学療法士の道を選んだのも、身体や運動のメカニズムを学んで、その知識・技術を活かす仕事に関心があったからです。

しかし、臨床はScience & Artとも言われるように、アートの側面も強くあります。

知識や理論だけではなく、個人の背景や環境要因なども考慮して、全人的に患者さんに関わる臨床は奥深いものであり、難しく感じる面も多くありました。

私自身はサイエンス寄りの志向が強い自覚があり、今後もずっと臨床に辛抱強く向き合って深めていけるかを考えた時に、やや難しい気持ちがありました。

自分の関心に従えば、よりサイエンスの色が強い仕事に関わる方が、結果的に世の中にできる貢献も大きくなるのではと思うようになりました。


このような背景もあり、臨床から離れて時が経過した現在においては、理学療法士としてのアイデンティティはやや薄いです。

理学療法と疫学の二つの専門性を掛け合わせている、というよりも前のキャリアを一旦手放して、研究・疫学の道に入ったという感覚が強いです。

キャリアチェンジ後から現在

疫学のキャリアを目指した私は、転職1社目で臨床研究支援を行う企業にリサーチャー / 統計解析担当者として就職しました。

そこでは、臨床医から依頼された研究やアカデミアとの研究プロジェクト、製薬企業のデータベース研究、質問票開発などの様々な研究プロジェクトの研究計画と統計解析を主に担当しました。

この会社での経験から、私の疫学担当者としての基礎の部分を鍛えてもらったと思っています。

疫学や統計学に関する知識や技術、企業における研究プロジェクト遂行など、多くのことを学ばせていただきました。

現職のデータックに入社した理由は、それまでの経験の中で感じていたデータベース研究プロジェクトにおける課題に対して、新たにデータベース研究支援事業を始めたベンチャー企業に入って、共にこの分野のベストプラクティスを作りながら顧客に貢献していきたいと考えるようになったからです。

そのキャリアにたどり着くために努力したこと

キャリアチェンジ

病院勤務から疫学を仕事にする道へのキャリアチェンジを志した私ですが、医療職から企業の研究職への転職は大きな変化であり、簡単にできることではありませんでした。


異なる専門分野に転職する場合、大きく分けると

  • 専門性を一定程度高めた上で企業に応募する

  • 専門性が低い状態から未経験ながらポテンシャル採用をしてもらう

ことが選択肢として考えられるかと思います。

私の場合は、どちらかと言えば後者のアプローチであり、研究実績がほとんどない修士課程在籍中に転職を決めました。

臨床研究・疫学の道を目指すと決めた以上、早い段階で実務経験を積むことが良いであろうと考えたからです。

未経験で実績もない中で企業に受け入れてもらうためには、意欲と成長見込みで勝負するしかありません。

私の場合、幸運にも所属する大学院の教室に前職である臨床研究支援の会社の代表の方が在籍しておりました。

私はこの会社で修行させてもらうのがベストだと思ったので、その方に直接連絡をして事業の話を聞く機会をいただきました。

そこでは、自分が疫学の方法論に関心が高く、臨床研究の仕事に携わりたいことを伝えました。

幸い、会社が採用募集をしている時期だったこともあり、その後に選考を経て採用していただきました。

私の場合、実績なしの未経験だったため、転職時には以前の報酬よりも低くなるという経験をしました。

迷いは全くなかったのですが、この点はある意味で苦痛を伴う選択であったと思います。

国家資格を持つ医療職から、何者でもない会社員になったという感覚があると同時に、これから生身の自分で勝負していかなければ、という決意が芽生えたように記憶しています。

転職する前に準備したこと

最初の会社に入社する前は、未経験の領域で戦力になることを意識してスキル習得に注力しました。

私は主に統計解析を担当するリサーチャーとしての採用だったので、最低限の統計学の知識があることを示せるように、統計検定2級を取得しました。

また、それまではプログラミングによる解析経験がなかったのですが、解析担当者として自立するためにSASによる統計解析プログラミングの学習を急ぎ、とにかく早く案件にアサインできるようにしました。

入社後

就職後も当然ながら、疫学や統計学、解析に関する専門知識の学習は継続的に行いました。

また、就職後も大学院には継続して在籍し、博士号も取得しました。

しかし、座学としての専門知識と業務の実践の中で活かせるレベルの知識・技術との間には大きなギャップがあります。

顧客に対して研究デザインや解析に関する提案の際には、個々の意思決定の理由を説明できる必要があります。

依頼者からは様々な質問を受けますし、解析結果のひとつひとつの数値の意味も正確に説明できる必要があります。

実際には、その都度調べたりしながら対応していましたが、説明できるレベルまで疫学や統計解析に関する理論や概念を理解することを通して、自分が鍛えられた面があると思っています。


また、医療職から企業への転職においては専門スキルだけではなく、基本的なビジネススキルの面が課題になります。

医療機関における業務と企業における業務は大きく特徴が異なるため、当初は社会人1年目のつもりで謙虚に学んでいく必要がありました。

私の場合、入社後にメール等の文章を上司に何度も直してもらっていたことを記憶しています。

入社前から、専門スキルの面で努力が必要なことは十分に理解していましたが、まさか基本的な文章やコミュニケーションで苦労することは想定していなかったので、苦い思い出として残っています。

受託事業の中での個人の実績づくり

研究者・専門家としての自身の実績を積み上げる、という点において、私たちのような受託サービスの場合はやや困難な側面があります。

最近では、ICMJEの著者基準に従い、受託企業のメンバーであっても要件を満たせば著者に入るケースが増えていますが、業務の中で自身が筆頭著者となる研究を実施することは難しいです。

そのため、研究プロジェクトを主担当した経験が数十件あっても、筆頭著者としての実績は積み上がらない点がキャリア上の難点であると思います。

そのような難しさはあるのですが、私の場合は、たまたまアカデミアとの産学連携プロジェクトに関わり、自分自身の研究テーマに取り組む機会を得ました。

そこで、データベース研究における研究デザイン設計の方法論に関する研究を発表することができました。

臨床研究だけではなく、研究の方法論に関する論文を出せたことは、疫学の専門性を活かすキャリアにおいて大事なポイントであったように思います。

当該論文は6件の引用、42,000件のアクセスを記録(2025年1月現時点)しており、また疫学やRWDの専門家の方々にも認知していただいた事もあり、自分にとって大きな成果であったなと思っています。

Wakabayashi R, Hirano T, Laurent T, Kuwatsuru Y, Kuwatsuru R. Impact of "time zero" of Follow-Up Settings in a Comparative Effectiveness Study Using Real-World Data with a Non-user Comparator: Comparison of Six Different Settings. Drugs Real World Outcomes. 2023 Mar;10(1):107-117.

そのキャリアを目指す人へのメッセージ

企業でデータベース研究を行うことは、疫学の専門性を活かしてパブリックヘルスに貢献するキャリアの一つだと思います。

その中でも、研究の受託支援の仕事は、疫学そのものが自社の提供サービスのコア部分になるため、専門性を発揮する機会が多くある環境です。

また、様々な疾患・治療領域・デザインの研究を経験できる点に魅力があります。

疫学が好きな方、研究方法論への関心が高い方にとって、データベース研究支援に携わることは、キャリア選択肢の一つになると思います。

また、次のキャリアへのステップアップの場として、データベース研究支援に携わる選択肢もあるかと思います。

アカデミアや製薬企業でのキャリアを目指す方にとって、様々な研究に関われることは専門性を高める良い機会になります。

リアルワールドデータやデータベース研究の分野は、まだまだ未成熟で、方法論やベストプラクティスが確立されているわけではありません。

私たちのような事業であるからこそ、この分野のベストプラクティスを作る一端を担い、業界に還元していくような貢献ができる可能性も秘めていると思っています。

今後も、この分野に情熱を持つ方々と共に、新たな可能性を切り拓いていけたら幸いです。

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