
キャリア
【キャリア解説】40代療法士が病院にデータ分析室を作るまで - vol.19
2025.05.10
私は、理学療法士として同じ職場で20年働き続け、35歳を超えてからプログラミングと統計を独学で習得し、それまで職場に無かった新たなポジションである「データ分析室室長」を切り拓きました。
年齢的問題や家庭を持っているために、時間・費用的に非常に難しく大学院進学をあきらめた中で、独学で一心不乱に学び続け、自らの強みを組織に還元し続けた過程をご紹介いたします。
キャリアの転換期に新しい挑戦を考えるすべての医療者や、独学での統計学の学びに苦戦しているすべての方に必見の記事です。
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- この記事のまとめ
- この記事を読むと分かること
- この記事は誰に向けて書いているか
- キャリアシリーズ
- 執筆者の紹介
- 編集者
- 監修者
- 今のキャリアについて
- データ分析室について
- 理学療法士として
- リーダー経験と「強み」の発見
- 統計とデータサイエンスの独学
- 自部署分析から法人全体への展開
- なぜそのキャリアを選んだのか?
- そのキャリアにたどり着くために努力したこと
- 強みの活用と仕事の取り方
- 独学の工夫と発信の意義
- 意思決定につなげる分析と分析手法
- なぜここまでできたのか?
- 得意だからストレスが少ない
- ゲーミフィケーション
- 自分の成果が組織の挑戦と直結している実感
- そのキャリアを目指す人へのメッセージ
- 先人の多様な知識と経験に学び、パブリックヘルスのキャリアパスを築くならmJOHNSNOW!
- 【YouTubeラジオコンテンツ 耳から学ぶシリーズ】
この記事のまとめ
この記事を読むと分かること
データサイエンスを独学で学ぶ具体的な方法と必要な心構え
自らの強みの活用方法
何歳からでも変わるきっかけを作ることができる
この記事は誰に向けて書いているか
医療従事者から新たなキャリアの可能性を探っている方
データサイエンスに興味はあるが、学び方に悩んでいる方
同じ職場で長く働き続けながら、新しい挑戦を考えている方
キャリアシリーズ
vol.3:越境キャリアのススメ - 障害福祉と公衆衛生の枠を超えて社会を変える
vol.6:理学療法士が遂げた実績ゼロからのキャリアチェンジ - 企業で働く疫学専門家のリアルを語る
vol.16:獣医学と臨床疫学の融合 - データサイエンスの力で動物を救う獣医師のキャリア
vol.19:40代療法士が病院にデータ分析室を作るまで:個人特性を活かしたキャリア転換
vol.22:医療データサイエンティスト:データの向こう側に人を視る
執筆者の紹介
氏名:光安 達仁(X:https://x.com/MITTI12101,note:https://note.com/mitti1210)
所属:福岡リハビリテーション病院
自己紹介:2002年福岡リハビリテーション病院入職。認定理学療法士(脳卒中)。臨床業務の傍ら2015年頃より臨床研究に興味を持ち始め、独学でプログラミングと統計を学び始める。学んだ知識を臨床業務や研究だけでなく、部署の垣根を超えた課題解決に活用し、2023年よりデータ分析室室長として法人全体のデータ分析を行う。統計に関しては福岡県理学療法士協会や日本神経理学療法士学会で統計のセミナーを実施。Xフォロワー5,000人超え、noteでの精力的な発信活動も行う。
編集者
氏名:菊池祐介
所属:mMEDICI株式会社
専門性:作業療法学修士。首都大学東京(現東京都立大学)・東京都立大学大学院を卒業後、病院勤務を経て専門学校・私立大学にて作業療法教育、地域共生社会の醸成に向けたリハビリテーション専門職の支援に対する研究に従事。現在は心身の健康とその人らしさの実現に向け、保険内外でのクライアント支援を展開している。作業療法の社会的意義向上を信念に、mMEDICI株式会社に参画。
監修者
氏名:廣瀬直紀
所属:mMEDICI株式会社
専門性:保健学博士・公衆衛生学修士。東京大学・東京大学大学院を卒業後、外資系製薬企業の疫学専門家として薬剤疫学・リアルワールドデータ研究を専門とする。日本・グローバルの双方で活動したのちに、全ての人がアクセス可能な一流の知のプラットフォームを作り、「知に繁栄を、辺野に豊穣を」実現すべく、mMEDICI株式会社を創業。

今のキャリアについて
私は、日韓ワールドカップがあった2002年に福岡リハビリテーション病院に就職し、現在も同じ職場で働いている理学療法士です。その中で様々なキャリアを経て、2023年より「データ分析室室長」としてデータ分析のサポートしています。
現在は医事課での業務時間の方が長くなっていますが、今でもリハビリテーション部のユニフォームを着ており、臨床も一部担当しています。理学療法士としての業務とは大きくかけ離れているかもしれませんが、ここまでに至るまでのキャリアについてご紹介したいと思います。
データ分析室について
まずは、データ分析室と言われると「依頼されたデータを分析して返す」のようなイメージをお持ちの方が多いかと思います。しかし、皆さんの想像とはかなり異なる業務を行っている為、先にご紹介いたします。

何かの意思決定をする方は、意思決定をするために十分な情報(情報の有無、所有者、媒体、更新頻度etc...)を求めているはずです。しかし実際には、限られた情報のみで意思決定することも少なくありません。
その為に「本当にそれでいいのか?」と悩むことが多い印象です。加えて多忙な意思決定者にはそういった情報を現地に赴き、情報を集める時間はもちろん、分析する時間もありません。
さらに病院は「サイロ化」が起こりやすい組織です。病院内でのサイロ化とは、院内の様々な部署で独自にデータを収集・管理しているために、自身の部署のみでしか使えず横断的に活用できないことを示します。
現場は現場で「日々の業務を行う」ことが大切です。そのため、使用しているデータが別の使用目的で収集されていなかったり、そもそも別の目的にも非常に価値があるデータだと気付いていないことも多いです。
サイロ化が起きると、「自部署内のデータを用いた自部署の視点だけの分析」といった個別最適化がされやすいです。その部署だけみると良い場合でも、全体でみると問題があるといった「全体最適化」の問題が生じます。
そこで、データ分析室は「データを上手く活用して意思決定できる組織文化を作る」という目的を持ち、ただ依頼された分析を行うのではなくコンサルティング的な業務も含む以下に挙げる様々な業務を行います。
意思決定者や現場が、どのような悩み・課題を持ち意思決定を行いたいのか?の調査
その判断を行うために必要なデータ・分析手法は何かを要件定義し直すこと
使えるデータがないか各所を回り探すこと
一見使用用途のない生データを、プログラミングを用いて使用可能なデータに整形すること
データの収集・分析を行うだけでなく、意思決定に必要な「インサイト」を探し出すこと
どのようにインサイトを伝えると、実際の判断・行動に繋げやすいか?といった戦略を練ること(必要であればプレゼン資料まで作る)
特に現場レベルでは過去の慣習が続き、実際にデータを使って検証や意思決定を行ってこなかった部署もあります。 そこで私が実際にデータ活用を見せることで「そういう考え方もあるのか!」といったいうきっかけ作りを行うこともあります。
分析依頼者は各部署、委員会、管理職、院長・理事長など多岐にわたります。
また、分析内容も集計システム作成、プログラミングによるDX支援、経営データの要因分析・仮説検証、事業計画のKPI作成、プレゼン、経営判断に使える様々なデータの掘り起こし・一元化・データベース化、BIツールによるダッシュボードの作成、研究の統計支援など、分析だけにとどまらない業務を行っています。
どれも「文化を作る」という意味では重要な業務だと考えています。
理学療法士として
2002年、当時はまだ少なかった回復期リハビリテーション病棟で、脳卒中のリハビリテーションを行うところからキャリアはスタートしました。
その影響もあり、多職種共同やTQM(TOTAL QUALITY MANAGEMENT)といった業務改善の内容にて、回復期リハビリテーション病棟関連の学会発表を行っていました。
この頃は、回復期リハビリテーション病棟自体がまだ全国で珍しい時代でしたので、回復期リハビリテーションとして必要な転棟時の申し送り内容や、転倒予防対策など病棟に関する活動を中心に行っていました。
しかし理学療法士として、臨床研究の発表は行っておらず、研究や統計に関してほとんどわからない状態でした。そしてリハビリテーション部内での部署異動を経て、7年目頃より初めてチームリーダーになりました。
リーダー経験と「強み」の発見
7年目にリーダーになったのですが、非常に困ったことが起こりました。
それは、診る疾患が異なる新しい部署に異動になったために、一番臨床経験の少ない私がチームリーダーになってしまい、自分の経験をほとんど活かせなかったことです。リーダーとして何をすべきかがわからず、まずは色々な書籍を読むことから始めました。
その中で大きなターニングポイントなったのが、ストレングスファインダーです。
これは、自分の強みを見つけるためのテストですが、その強みをどのようにリーダーシップに活かすかのヒントも書かれています。
私の強みは「回復志向」「分析志向」「学習欲」「内省」「収集心」で、要約すると「現場の困りごとに対し、あらゆるデータを集めて分析し、後方から支援するリーダー」と解釈しました。
この結果は自分の人生では衝撃的な発見でした。 ワンピースのルフィのような『俺について来い』タイプを目指さなくても、自分なりのリーダー像が作れるということを知る大きな機会となりました。
ただし、人の習慣を変えることは簡単ではありません。気付いたとしても、それまでそのように振る舞ったことがなかったため、実際に動けるかどうかは別問題でした。
そこで、書籍の内容をすべてスマホにメモし、少なくとも1~2年間毎日ことあるごとにそのメモを読み返しながら、「どう立ち回ればよかったか?」を考えるようにしました。
すると、徐々に 同じ業務内容でも視点や解釈を変えることにより強みを活かした立ち回りができること、その方がパフォーマンスが高いことがわかってきました。
職場の同期からも「変わったね。仕事が楽しそう」と言われるようになりました。その頃から、「苦手なものは仕方ない。でも自分の得意なことは自分から仕事をもらいに行こう」という考え方を持つようになりました。
統計とデータサイエンスの独学
臨床研究に関しては全く縁がなかったのですが、2015年頃より自部署でも研究を始めてみようということになりました。
しかしながら当時の私は統計について全く分からず、他部署で博士課程に通っていた後輩に相談してみたものの、本当に何を言っているのかさっぱり理解できませんでした。それどころか、「なぜこんな指摘をされているのか」すら分からず、自分で勉強しようと決意しました。
とはいえ、すでに35歳を過ぎ、妻は専業主婦で子どももいたため、大学院進学は時間・費用的に非常に難しく、あきらめる選択肢を取りました。まだChatGPTもない時代で、後輩に教えてもらった「ロジスティック回帰分析」を調べるためにgoogleでヒットした全サイトを読み込んだりもしました。
その中で出会ったのが、新谷歩先生のYouTubeでした。
さらに視聴を進める中で、先生がEdX(MOOC:Massive Open Online Courses)で統計講座を開講していることを知りました。EdXとは、オンライン講座プラットフォームの一つで、大学や企業が一般向けに無料で講座を提供しているサービスです(修了証は有料で取得可能です)。
これは大学院をあきらめた私にとって衝撃で、「これなら自分にも学べるかもしれない!」と考え、新谷先生の講座受講を決めました。先生の講義では、EZRというRのコードを書かずに統計を行えるソフトを使用しました。
それをきっかけに、Rやデータサイエンスにも興味を持ち始めました。
そこで、同じEdX内で開講されているハーバード大学が開講しているデータサイエンスの講座も受講することにしました。この講義は全9コースで、Rの基本やグラフの作成、統計や機械学習の基礎を学ぶことができます。
自分のペースで進められますが、私は平日の通勤時間に1時間ずつ動画を視聴し、帰宅後は毎日3〜4時間、休日には5時間以上学習を続け、約9か月で修了しました(本来は1年5か月程かかる設計ですので、ここまで詰め込む必要はないと思います)。
このコース修了後、「もう少しデータサイエンスを学びたい」と思い、東京大学グローバル消費インテリジェンス寄付講座のコースも受講しました。 このコースは通常学生向けですが、その年は社会人にも門戸を広げており受講のチャンスがありました。
pythonの事前学習も行い、なんとか受講することができました。 ここではpythonの課題に取り組みながら、プロのマーケターによる講義を受けたり、分析コンペに参加したりと、また異なる視点からデータサイエンスを学ぶことができました。
自部署分析から法人全体への展開
まずは誰に頼まれたわけでもなく、自ら自部署の分析を始めました。この1年半で得られた学びは多く、"ただ集計しているだけで、上手く利用できていないデータ"や、"記録されているだけで、活用できていないデータ"が多くあることに気が付き、自分の部署を改めて見直すきっかけとなりました。
自部署を見直して特に感じたことは、「昨年より増えました/減りました。要因は〇〇と考えられます(=分析者の主観で、データによる裏付けがない)」という報告で終わっているレポートが多いことでした。もちろん、以前は自分もそのようなレポートを作っていました。
その頃から、「集計だけではデータ分析としては不十分であり、意思決定につながらない分析は意味がない。結果の背景も分析すべきではないか?」という考えを持つようになりました。
どうのようなExcel構成にすれば、すぐに分析に繋げられるのか?
要件定義をする重要性(例:「忙しい」をどう定義するか?など)
全員にデータを入力してもらうことの難しさ、入力の有無を確認する難しさ
誤った箇所にデータが入力された場合のトラブル対応
「ネ申Excel」と呼ばれる分析に不向きなファイルの迅速な処理スキル
どのようなバイアスが紛れやすいか
このデータで「どこまで言えるか/どこからは言えないか」の判断
意思決定につながる「インサイト」の見つけ方
そのインサイトをどう伝えれば、相手が納得し行動に移しやすいか
そして、データを分析していく中で上記のようなことを学びました。これらの学びは、肌感覚がある自部署のデータを分析したからこそ得られたものだと思います。
また、自分がいろいろなスタッフの分析を手伝うようになると、思わぬ副産物も生まれました。 徐々に周囲から分析の相談が来るようになり、同時に苦手な仕事が振られにくくなってきたのです。
今振り返ってみると、「分析は光安に頼むと良い」というブランディングができてきたのだと思います。
自部署でのデータ分析を始めて数年が経った頃、リハビリテーション部の部長でもあり、法人の統括部長でもある上司から、「データ分析ができるらしいけど、こういう分析ってできる?」と相談を受けました。
今まで使われていなかった経営データを扱う必要があり、「考えている仮説はあるが、データ的にどうなのかを確認したい」という内容でした。
私は自分なりにデータを解釈し、「あの時に学んだ手法が使えるかも」とグラフを作成して提出しました。すると、「こういうのが欲しかった!」と言っていただき、それをきっかけに、上司や他部署、そして徐々に院長や理事長からも様々なデータ分析を依頼されるようになりました。
そして2023年度より、法人全体のデータ分析を担う人材として、「たった一人のデータ分析室」が誕生しました。
実際は「肩書」をいただいたという形です。しかし、色々な部署を回る際に、「リハビリテーション部の光安」ではなく、「データ分析室の光安」となったことで動きやすさは大きく変わりました。
当初、周囲からは「データ分析室?何かしてくれるの?」という状況でしたが、色々な部署・委員会と一緒に仕事をする中で少しずつ認知を得て、活動範囲を広げています。
なぜそのキャリアを選んだのか?
若い頃、「もっとこうだったらいいのに、なぜ上司はそうしないんだろう」と感じたことは、誰しも一度はあるのではないでしょうか。
20年間の間にうまくいったことも、うまくいかなかったこともたくさんありました。経験年数や立場からも、「そんなに単純ではない」という学びも得ました。
それでも、「誰かが行動しないと文化は変わらないし、誰かが行動してくれるはずと待っているともっと変わらない」とも思うようになりました。
同時に、40代というのは「これからのキャリア」を考える時期でもあります。 現場では、自分が尊敬するような後輩たちが、新しい時代をつくろうと奮闘している姿を目の当たりにし、「組織が代替わりできる文化のほうが健全なのでは」と思うようになりました。
そこで自分の強みを改めて見直したとき、ふと考えました。「あの時、『こうだったらいいのに』と思っていた課題を、今の自分なら解決できるのではないか? データを活用して、意思決定ができる組織文化に貢献できるのでは?」と。
自分の分析スキルで、「触媒」のように職場全体の能力を底上げするのような支援者になれるのでは?
さまざまな部署や若い世代が成果を出せるように、分析しやすい環境やノウハウを提供することで、今よりも大きな成果を出してもらえるのでは?
自分自身が成果を出すのではなく、次世代のスタッフが成果を出し、対外的に評価される方が、組織としてはより健全では?
自ら新しいキャリアを切り拓くことで、次世代にポストを譲るだけでなく、新しい働き方のモデルにもなるのでは?
もちろん、これらは臨床業務から少しずつ離れていくことも意味しておりとても悩みました。
しかし、上司が新たなキャリアの可能性を示してくれたこと、「失敗したら臨床に戻ればいいよ」と心理的ハードルを下げる言葉をかけてくれたこと(もちろん失敗するつもりはありませんが)、そして何より「仕事は好きなことより得意なこと」という自分の考えからも、データ分析を次のキャリアとして選ぶ決意ができました。
同じ職場で長く勤めているからこそ土壌があり、それが大きな強みになったと今改めて実感しています。理解ある上司・スタッフの中で仕事をさせてもらっており、本当に感謝しています。
そのキャリアにたどり着くために努力したこと
自身のキャリアを振り返る中で、個人的に"これが転機だった"と思えるきっかけがいくつかあります。
強みの活用と仕事の取り方
最近はMBTIなどの自己診断が流行していますが、1点気になっていることがあります。 それは、「自分の強みを知るだけではうまく活用できない」ということです。特に、「自分はこういう人間です」と伝えるだけでは相手からは見えにくいために不十分であると感じます。
ちなみに「人を巻き込む天性の強み」は残念ながら持ち合わせていませんが、「目の前の仕事をどう解釈すれば、自分の強みを活かせるのか?」を常に考えるようにしています。
前述したストレングス・ファインダーの診断結果である回復志向、分析志向、学習欲、内省、収集心を「データ分析」に当てはめて解釈した例を紹介します。
回復志向:現場の課題解決に優先的に取り組むことでのモチベーション上昇
分析志向:様々なスタッフの分析を手伝うことにより、「光安に任せればなんとかなる」というセルフブランディングへの活用
学習欲:わからないことは知りたくなる性格を活かし、新しい分析手法にも臆せず挑戦
内省:「ああでもない、こうでもない…」と一人で試行錯誤する時間が、分析そのものに活かせる
収集心:使えるデータがないからと諦めず、どうすれば集められるかを常に考え、新しい分析法にも好奇心をもって向き合う
これはあくまで一例です。同じ「データ分析」でも、強みによって立ち回り方は人それぞれです。人とつながることが得意な人なら、また別のアプローチで成果を出せるはずで、どちらが優れているかを比べるのはナンセンスだと感じています。
具体的には、話をする前に今あるデータから現状・課題となる箇所がないかを事前に網羅的分析をし、仮説を持って「こういう現場や課題ってありませんか?」と投げかけます。
そうすることで、「そうなのよ!実は…」と意気投合し現場の肌感や新たな情報を得て、仮説を修正できます。
現場の課題の見える化という立場で臨んでいれば、仮に仮説と外れていても、それが会話のきっかけとなることも少なくありません。そして、これはデータ分析に限らず、他の業務にも応用できる考え方だと思います。
通常であれば、自分の受け持つ業務を果たせば良いのでしょうが、得意なことに対しては、「私に任せてください!」と自ら仕事を取りに行く姿勢も意識してきました。
「私はこれが得意です」では仕事はそこまで来ないと感じています。周りからしたら仕事のえり好みをしているようにも取られ得ると感じたからです。
"自分から仕事を受け、相手の想像以上の成果を出す"ことは、自分が楽に仕事をするためではなく、より良いパフォーマンスをするためという姿勢であれば、周囲にも「強み」が伝わるのではないかと感じています。
決して楽な道ではありませんでしたが、得意なことを任せてもらえるようになるまでの「仕込みの時期」として、必要なプロセスであったと感じています。
また、データ分析でよくあることですが、分析にかける為の前処理が必要となるケースがほとんどで、データがそのまま分析に使用可能なケースはあまりありません。
そのため私は、データを貰う時は「生データをいただくだけで大丈夫です。あとは私が全部します」というスタンスで進めています。
私は、ある仮説があり検証をするために分析を行うのですが、その完成形は私の頭の中にしかありません。加えてその部署のための分析ではない場合には、相手に業務負担を強いることになります。
また、データ分析室も始まったばかりで、周囲からの認知が不十分な時期に「光安がくると仕事が増える」と思われることはリスクであると考えていました。
同時に生データでもらうことにより、以下のメリットもあります。
前処理の技術が上がるだけでなく、電子カルテの内部構造がイメージできたり、その部署がどんな意図を持ってこのデータを作成しているのかという点において理解が深まります。
独学の工夫と発信の意義
統計とデータサイエンスはメンターもおらず独学で学びました。独学で学ぶ難しさはいくつかあります。
1.続かない
MOOCのコースは、受講を始める人は多いものの、最後まで修了する人は少ないと言われています。MOOCでは、講義やテストは無料で受けられますが、修了証を得るには有料での発行申請が必要です。
私は「修了する覚悟を持つ」ために、あえて修了証を先に購入し、「これは無駄にはできない」という気持ちで受講に臨みました。
また、受講生同士でディスカッションできる場もあり、私は積極的に質問や回答を投稿し、コミュニティに参加することでモチベーションを保つようにしていました。
2.確認する手段がない
独学で最も困るのは、「自分の理解が合っていると思うけれど、本当に正しいのかを確認する術がない」ことです。
私は職場にメンターがいないからこそ、外部で関係性を築くしかないと考えました。 そのためには、トップランナーが集まるコミュニティに参加したり、彼らにとっても有益と感じてもらえるような情報発信を行う必要があると考えました。
ただ同時に、医療統計を独学で学んだ私が、SNSで情報発信をすることにはリスクもあると感じていました。
そこで、R言語に関する発信に特化することにしました。なるべく医療職の方がRに興味を持ってもらえるように工夫をし、生物統計家が困っているようなRの質問にも、積極的に回答するよう心がけました。
職場で仕事を自ら取りに行く姿勢と同じように、SNS上でも「自分がどのような価値を提供できるか」を考えながら活動しています。現在でもデータサイエンティストの勉強会で活動を報告しており、自分の立ち回りに対してアドバイスをいただいています。
意思決定につなげる分析と分析手法
データサイエンスの講座では、機械学習やAIなどの高度な分析手法も学びました。
しかし、現在はあえてそういった手法を多用しないようにしています。データで語る組織をつくるためには、いくつかのステップが必要です。

大企業は別として、多くの中小企業や医療機関では、「どこに、どんなデータがあるのか」すら把握できていないことが多いと感じています。
そのためにまずは、"どのようなデータが存在するのか"、"ステークホルダーは誰か"、"データの粒度や精度はどの程度か"といった基礎的な把握が必要です。
その上で、デジタル化できた部分から分析を始め、徐々に範囲を広げていくことにより意思決定につなげることが可能となります。
AIや機械学習といった高度な分析手法や自動化は、その次のステップです。
今あるデータでも、見た目上は「すごい分析」ができるように見えることもあります。しかし、それが実際の意思決定に役立つとは限りません。むしろシンプルな可視化のほうが、判断や行動につながることも多いと感じています。
そのために分析は手段であって目的ではないと自覚し、自己満足的な手法に頼らず、自分の身の丈にあった分析を行い意思決定につなげることを心がけています。
なぜここまでできたのか?
これまでに何度かキャリアについてお話しする機会がありましたが、「こんなのマネできない」と言われることもありました。
確かに、「気づいたら12時間プログラミングしていた」など合う・合わないはあると思います。ただ私は、「自分は要領が悪いから、愚直にやっているだけで、多くの人はもっと効率よくできるのでは?」と感じることもあります。
それでもここまで続けてこられた理由を、改めて振り返ってみたいと思います。
得意だからストレスが少ない
仕事量に対する負担や周囲からの期待によるプレッシャーは確かにあります。しかし「苦手」という感覚が少ないので、精神的なストレスは軽減されているように感じます。
自分の強みと業務がマッチしているからこそ、業務そのものに対するイメージが悪くないのだと思います。そのため、「自分の強みを知る」ことの重要性を実感いたします。
ゲーミフィケーション
子供の頃はかなりゲームが好きで、特にRPGの「やり込み要素」が好きでした。
自分で時間をかけて探索し行う宝箱探しや、レベル上げ等の地道な作業が苦にならないタイプでした。
強敵と戦う際も、何度も工夫をして挑戦し、(なるべく低レベル・低装備でのクリアを目指すなど)自分なりの答えを導き出して、本来倒せないはずの強敵に挑み攻略していました。
今のデータ分析やプログラミングも、「まだ見つけていないインサイトを探す旅」のように感じる点や、難しい課題に直面したときには「高難度ミッションが現れた!」と前向きに捉え、それを達成したときのレベルアップ感を楽しめている点などは、一種の“ゲーミフィケーション”かもしれません。
人によっては、こうしたゲーム的な感覚を仕事に活かすのも有効であると感じています。
自分の成果が組織の挑戦と直結している実感
「データ分析室」という部署は、従来組織の中には存在しておらず、似たような役割すらありませんでした。つまり、法人にとっては新しい取り組みです。
同時に、私が臨床という“直接的な収益を生む業務”から離れることになるので、これは法人にとっての投資でもあると感じています。
つまり私の成果は、自分だけにとどまらず、今後、私のような“尖ったキャリア”をどう評価していくか、"ジョブ型雇用的な新しい働き方を受け入れるかどうか"といった、組織としての将来にもつながっていると理解しています。
もちろん、誘っていただいた上司の期待に答えたいという気持ちもあります。ただそれだけではなく、臨床スキルに加えて個人の強みを活かせる職場文化を育てていくためにも、この取り組みは「どうしても成功させたい」と思っています。
そのためには分析を依頼してくれた人に対し、想像を超える成果を出し続ける必要性があります。「分析してくれて楽だから頼む」のレベルではきっと足りません。
分析のおかげで、「決断に必要な情報が得られた」、「今後のイメージが描けた」、「リスクや誤差がイメージできた」、「こうだと思っていたけれど、実は違うことに気が付けた」、「無駄な作業が減り、本来やりたかったことに集中できた」という積み重ねにより、意思決定を行う方にその先の価値を提供することが本当の成果であると考えています。
分析を依頼する方は長く知った方々ばかりです。自分のためだけではないからこそ、大変なことがあっても「ここは踏ん張りどころだ」と思えるのかもしれないと、この記事を書きながら改めて感じました。
そのキャリアを目指す人へのメッセージ
プログラミングやデータサイエンスに興味を持つ医療職の方は、コロナ禍以降、明らかに増加傾向にあると感じています。
ただし、勉強したからといって、そのキャリアに自然とたどり着けるわけではないということも実感しています。むしろ、「学んだことをどう組織に還元し、どんな実績をつくったか?」の方がずっと重要です。
そのためには、自分の強みを知り、自ら仕事を作りに行く姿勢が求められていると思います。
自分の本当の強みは、自分からは当たり前のように見えていても、相手からすると苦手で難しい・面倒と感じることもあります。そのため、自分の強みに気が付かないことも少なくありません。
そのギャップに気が付き、自分の得意を活かして周囲を支えることが新しいキャリアの入口になるのではないでしょうか。
私がプログラミングを学び始めたのは35歳を優に超えていました。ChatGPTもありませんでした。
いつから始めても遅いということはないと思います。この記事が誰かの背中を押すきっかけになれば幸いです。

まだ「リスキリング」という言葉が流行っていない時代でしたが、ストレングス・ファインダーで自分の強みを見つけたこと、20年間勤続し続けてきたこと、データサイエンスのコースを修了できたこと、認定理学療法士を取ったこと、どれもそれ単体で何かをなし得た訳ではないですが、どれか1つでもなければ今の自分はなかったのではないかと感じています。先人の多様な知識と経験に学び、パブリックヘルスのキャリアパスを築くならmJOHNSNOW!

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