
キャリア
【キャリア解説】歯学博士の言語聴覚士:凡庸を武器に変える力- vol.23
2025.06.10
言語聴覚士は、「コミュニケーション」や「食べる」機能の障害を抱える方々の、全人間的復権を支援する職種です。
私は病院勤務のセラピストとして一般的な道を歩んできましたが、「食べる」ことにこだわって目の前の課題に向き合い続けた結果、思いがけないキャリアの道が拓かれていきました。
安定を手放して飛び込んだ大学病院での臨床や研究の経験を経て、現在は養成校の教員として、学生教育や摂食嚥下リハビリテーションに関する基礎研究に従事しています。
「この道にたどり着いたのは、至ったのは偶然、あるいは運だった?」
「圧倒的な先人たちを前にした時に、凡庸なりの仕事への向き合い方を模索し、たどり着いた結論は?」
この記事は、社会人大学院生として、家庭・仕事・研究をどうマネジメントし、それをキャリアへとどう繋げてきたのか。どんなマインドセットが必要であったかの備忘録です。
再現性は高くないかも知れませんが、誰かのお役に立てれば嬉しく思います。
臨床から教育、研究職へのキャリアチェンジを考えている医療職の方や、結婚・育児といったライフイベントと社会人博士課程の両立に悩む方にとって、何かヒントになるものがあれば幸いです。
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- この記事のまとめ
- この記事を読むと分かること
- この記事は誰に向けて書いているか
- キャリアシリーズ
- 執筆者の紹介
- 編集者
- 監修者
- 今のキャリアについて
- リハビリテーション専門職、言語聴覚士(ST)とは
- 理学療法士に憧れた高校時代
- 臨床の面白さに夢中となり、研修会マニア化
- 思わぬ母校での勤務
- 結果を出すという姿勢
- 【オンラインスクール mJOHNSNOW入会受付中:7日間無料お試し】
- なぜそのキャリアを選んだのか
- そのキャリアにたどり着くために努力したこと
- 凡庸なりの戦い方
- 社会人博士の仕事と研究と育児
- これからの目標
- 私と似たキャリアを目指す人へのメッセージ
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- 【YouTubeラジオコンテンツ 耳から学ぶシリーズ】
この記事のまとめ
この記事を読むと分かること
言語聴覚士の職責について
凡庸さを自覚した上でのセラピストのキャリア形成
セラピスト社会人博士の乗り越え方と心の整え方
この記事は誰に向けて書いているか
市中病院勤務から教育、研究職へのキャリアを考えているセラピストの方
キャリアアップ、チェンジをしたいと思っているけれど、何から始めたら良いかわからない病院勤務の方
結婚、育児等のライフイベントと大学院博士課程が重なった社会人博士課程の方
キャリアシリーズ
vol.2:産業医が書く実践と研究の往復書簡 - 資本主義の次なるモデルを目指して
vol.5:非MPHホルダーの薬剤師、薬剤疫学に邁進す - 医療現場を支えるエビデンス創出のために
vol.8:ゆるふわセレンディピティと共に歩むふんわり仕事人生 - 40代意識低い系女医が夫と子ども3人連れてアメリカへ行ってみた
vol.9:行政保健師、40代で大学院へ - 自治体の限界を超えEBPMで切り拓く地域保健の未来
vol.17:地域に育てられた保健師 - 行政とアカデミアを往還し導く公衆衛生の答え
執筆者の紹介
氏名:匿名希望
所属:言語聴覚士、博士(歯学)、修士(保健医療学)
自己紹介:A大学を卒業後、神経内科を主体とした回復期リハビリテーション病院に勤務。ふとしたきっかけで、養成校教員となり、その後国立大学歯学部の大学院へ進学。大学病院で摂食嚥下分野の臨床業務に従事しつつ、歯科医師の指導のもと、食品企業等との共同研究にも携わり、咀嚼・嚥下と食品科学に関する基礎研究に取り組む中で、博士(歯学)の学位を取得。現在は再び養成校勤務となり、学生教育と咀嚼嚥下に関係する研究活動を継続。併せて通所施設や特別養護老人ホームを巡回し、食支援やスタッフ指導を行っている。博士課程修了が見えてきたものの、実力不足を痛感。基礎研究に加えて、データベース等を活用した疫学的研究のスキルを学び、言語聴覚士の立場で最後まで「話すこと」「食べること」が楽しめる社会の実現に、針先くらいでも貢献したいと思っていたところmJOHNSNOWを発見し、入会、現在に至る。
編集者
氏名:菊池祐介
所属:mMEDICI株式会社
専門性:作業療法学修士。首都大学東京(現東京都立大学)・東京都立大学大学院を卒業後、病院勤務を経て専門学校・私立大学にて作業療法教育、地域共生社会の醸成に向けたリハビリテーション専門職の支援に対する研究に従事。現在は心身の健康とその人らしさの実現に向け、保険内外でのクライアント支援を展開している。作業療法の社会的意義向上を信念に、mMEDICI株式会社に参画。
監修者
氏名:廣瀬直紀
所属:mMEDICI株式会社
専門性:保健学博士・公衆衛生学修士。東京大学・東京大学大学院を卒業後、外資系製薬企業の疫学専門家として薬剤疫学・リアルワールドデータ研究を専門とする。日本・グローバルの双方で活動したのちに、全ての人がアクセス可能な一流の知のプラットフォームを作り、「知に繁栄を、辺野に豊穣を」実現すべく、mMEDICI株式会社を創業。

今のキャリアについて
mJOHNSNOWのフェローの皆様は、素晴らしいキャリアを歩まれている方ばかりで、自分の書いた文章やキャリアがどなたかの参考になるのか、全くもって自信がありません。
ですが博士課程を修了するタイミングでお声がけ頂きましたのも、これまでの振り返りの機会と新たなご縁であると思い、誠に恐縮ながら執筆をさせていただきます。
リハビリテーション専門職、言語聴覚士(ST)とは
言語聴覚士は種々の疾患により「話す」「聞く」「読む」「書く」「食べる」といった側面に障害をきたした方を対象に、広くリハビリテーションを提供することを生業にしている専門職です。
リハビリテーションといえば理学療法士というのが、世間の多くの方が描くイメージかと思います。マイナーですが言語聴覚士という資格があり、有資格者は4万人程度とまだまだ少ない状態です。
言語聴覚士の多くが医療機関に勤務をしていますが、介護保険分野や障害福祉分野での需要も高まり、絶対的な必要数が不足しているのが現状です。またアメリカでは多くの言語聴覚士が学校に配置をされているなど、本邦でも学校教育分野へのさらなる広がりが期待されています。
私は、回復期リハビリテーション病院、歯学部を有する大学病院での勤務を経て、現在は言語聴覚士養成課程を有する四年制大学で勤務をしています。
「食べる」機能の障害である摂食嚥下領域を中心に、学部生の教育に取り組むとともに、咀嚼嚥下機能の基礎研究を主に行ない、さらに介護保険領域における臨床や調査研究にも着手しています。
今でこそ、朝ドラに名前が登場するほど関心が高まりつつありますが、私が言語聴覚士を目指そうと考えた20年前は、周囲の知人や親族に話をしても、知っている人は皆無でした。
医療職なら看護師が良い、リハビリなら理学療法士、といった声も聞こえてくる中で、なぜSTを選んだのか。それは、「偶然」です。
理学療法士に憧れた高校時代
私は部活での怪我をきっかけに担当の理学療法士に憧れ、志していました。
意気揚々と大学のオープンキャンパスへ行き、キラキラと輝く在学生の説明を受けた私は、初めて見る最新の機材を目の前に憧れの気持ちを強くしました。
しかしながら、構内を歩いていたら呼びかけられたのです。
「言語聴覚士って知っていますか?」
答えはノーでしたが、目には見えない「言葉」という事象の再獲得を支援するという、未知の世界に触れてみたい気持ちの高まりを感じたことを覚えています。
リハビリテーションに携わりたいという気持ちと、少し変わったこともしてみたいという天邪鬼な思考と偶然の導きで、気がついたら言語聴覚士になることを決めていました。
臨床の面白さに夢中となり、研修会マニア化
大学四年間の課程で言語聴覚士の国家資格を取得し、私は回復期リハビリテーション病院での勤務を開始しました。
勤務先は神経内科を母体としていたため、神経難病や脳卒中の方を中心に、様々な臨床経験を積むことができました。
言語聴覚士の臨床はコミュニケーションを対象にするため、言葉や表情を通して情感豊かに対象者と関わりながらも、同時に頭はフル回転。症状から病態メカニズムを考え、仮説を立てて訓練プログラムを提供し、その効果検証まで行います。
うまくいかないことが多い中でも、一連の臨床プロセスの中で、わずかでも手応えを感じられた時や、対象者や支援者の生活に何らかの福音がもたらされた時に、やりがいを感じる日々でした。
しかしながら同時に、どんなに尽力しても変えられない事象があることに虚しさも感じる日々でした。
保険診療下のリハビリテーション医療では、経験年数や技術に関係なく診療報酬の単価は一律です。
「自分が担当をしなければ、もっと良くなったかも知れない。同じお金が発生しているのに、こんな不合理なことはないだろう」
と言う気持ちを紛らすために、救いを求めるように、土日は全国各地の研修会や学会に参加をするようになりました。
少しでも自分が必要だと思うこと、患者さんの顔が浮かぶことは全て知りたい。その一心で、土日にマラソン大会か研修会が入っていないと、サボっているのではないかという、やや異常な観念に襲われる日々でした。
当然、お金はなく、移動は高速バス一択。宿泊が必要な時は、深夜0時を過ぎてから漫画喫茶に入り、6時間1,200円のフリーパックで夜を明かして研修会に向かっていました。
ある時、地方の学会に参加するのに費用捻出ができず、森林公園で野宿をして、公衆便所でスーツに着替えて学会会場に向かったのも今では良い思い出です。
振り返ってみると、「対象者のために勉強をしている自分」というイメージに酔い、自己効力感を感じたかったのではないかなと思います。ですが、このような無鉄砲な時間を過ごした中で、その後のキャリアを大きく変えることになったのは、出向く先での偶然の「人」との出会いでした。
2年目の時に参加した学会で、嚥下の神経生理に関するシンポジウムを拝聴しました。半分も理解できませんでしたが、自分が感じている臨床での疑問を、こうやって突き詰めて考えている先生がいるのだと深く感銘を受けました。
当時すでに、嚥下診療のニーズは非常に高く、「食べる」という営みが対象者のQOLに直結することから、その支援を担う臨床の広がりに面白さを感じていた当時の私にとって、そのシンポジウムでの経験は、大きな転機となり、より一層、摂食嚥下リハビリテーションの世界にのめり込んでいくことになりました。
思わぬ母校での勤務
少し自信を持って臨床業務にも臨めるようになった頃、気がつけば、上司よりも後輩の方が多くなっており、病棟での仕事はやりやすくなる一方で、形容し難い物足りなさを感じるようになりました。
そんな折、母校から教員としてのお誘いを受けました。在学中に目立った実績を残したわけでもなかったので「なぜ私が?」という思いでしかなかったことを覚えています。しかしながら、この機会を逃せば二度と教員として教える側にまわることはないのかなと思い、チャレンジすることに決めました。
しばらくは未来の言語聴覚士を育てるということにやりがいを見出しながら日々を送りました。仕事は大変でしたが、頑張っていけばどうにか食べることに困らない程度に大学での職を継続できるのかなとも感じていました。
しかし時を重ねるごとに、6年程度の自身の経験値では学生に伝えられることは限定され、教育者としてどこかで限界を迎えてしまうのではないかという恐れも感じるようになりました。
大学教員と言えば、一般的には民間病院よりも給与水準が高いかも知れません。大学生活を過ごした母校ですから、職員も私のことを理解してくれる環境です。
それでも、10年先の自分の姿を想像した時に、高い学費を支払って入学してくる学生に、その価格に見合う学びを、自身と誇りを持って提供できるのかと考えると、胸を張ることができませんでした。
そんなある時、臨床現場にいた頃にご縁のあった先生から連絡を頂きました。私が臨床2年目の頃に感銘を受けた前述のシンポジウムで登壇されていた先生の研究室で、STを探しているというのです。夢のような話でした。
ただし、任期はあり、安定した職から離れることになります。当時は結婚1年目。安定が求められる時期であり、このまま慣れ親しんだ地でキャリアを積む方が負担も少ないことは分かっていました。
それでも、「どうしてもそこで勉強をしたい」という思いを抑えることはできませんでした。家族にも背中を押され、ご縁のなかった土地で「歯学部の言語聴覚士」という新たなキャリアを選択しました。
結果を出すという姿勢
憧れの教室での生活は、新鮮でした。大学院博士課程へ進学し、日中は大学病院で臨床に従事し、様々な診療科からの依頼に対応していました。
臨床業務を終えると、社会人大学院生としてラボでの実験が始まります。企業との共同研究にも参画をさせて頂き、様々な研究に携わりながら日々を過ごしました。
365日昼夜問わず、誰かが「知」を創造しようと、必死に汗水を流していました。厳しく結果が求められる世界で、黙って手を動かし続け、圧倒的な結果を出すために努力を惜しまない姿勢を、先生方の背中から学びました。
非常に充実した時間を過ごし、これ以上ない環境に満たされる一方で、経済的には現実的な課題に直面していました。
当時博士課程1年生であった私は、第二子が誕生したばかりのため、一馬力の家計です。退院時の写真は喜びの反面、今後の生活について心配の色が隠せていない、引き攣った家族写真であったのは言うまでもありません。

「これからどうしていこう」
「ここで失敗したら終わってしまうかも知れない」
そんな思いが頭をよぎる毎日。それでも、それを振り切るように研究と臨床に没頭し、生活費や学費を補填するために介護施設でのアルバイトも掛け持ちしていました。
35歳という年齢は、業界での市場価値がある程度定まってくる年齢です。
実験を終えて、解析をすませ、深夜に洗い物を終えた排水溝の掃除をしながら、自分は同世代と比べ、家庭を顧みず時間を使い、しかも不安定な状況であるという事実に押しつぶされそうになる夜が度々ありました。
しかし職場に戻れば、毎日が刺激的な環境で、「確かに自分のやりたいことはこれなんだ」と再認識する日々の繰り返しでした。
そして、多くの先生方のご協力もあって学位取得がなんとか現実的に見えてきた頃、再び知人から大学教員のお誘いを頂きました。
悩んだ末、再び言語聴覚士養成教育に従事するキャリアを選択し、今に至ります。
節目で様々な人に出会い、導いてもらった偶然の連続であったように思います。
(続きはページの後半へ)
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なぜそのキャリアを選んだのか
回復期リハビリテーション病院での臨床、養成校での教育、大学病院での研究とそれぞれのフェーズで経験を重ねていく中で、自身のキャリアで何を実現していきたいかを考えた時に出てきたのは「社会還元」でした。
キャリアの分岐点や、仕事の判断の軸として、「何らかの形で社会に還元していけるのか」という視点を持つことで、迷うことがなくなりました。
再び養成校の教員として勤務をしているのは、教育や研究、社会活動を通じて、還元できる機会が一番多いのではないかと感じたからです。
リハビリテーションの目的は、「全人間的復権」であり、その人らしい生活を取り戻すための支援です。臨床が最もダイレクトにその過程に取り組むことができて、セラピストとしての醍醐味であると今でも感じています。
しかし、言語聴覚士は必要とされる場に十分に配置されているとは言えないのが現状です。先人の先生方が築いてくださった道のりを歩んでいるわけですが、言語聴覚療法に関する研究成果やエビデンスは他職種と比べ、少ないと言わざるを得ません。
適切なデータを持ち、臨床やそれを支える基礎的知見を自ら社会に向けて発信をしていく人が増え、他職種から適切に認められるような実績を積み重ねていかなければ、この業界は先細りしてしまいます。
「コミュニケーション」や「食べる」という人間にとって本質的な側面から社会に還元していく職種として、言語聴覚士は必要であるという信念があります。
そのために、未来を担う人材の育成、継続的な研究力の向上、社会的認知へのアプローチから「全人間的復権」を支えていくことができるのではないかと感じ、いずれにも関与出来る大学教員と言う立場を選択しました。
とはいえ、こうした考えに至り現在の立場があるのは、正直なところ「運」の要素が最も大きいように思います。
目の前の患者さんに何かできることがないかと、研修会や学会参加に明け暮れ、夢中になった日々に出会った方々から、次のポジションに向かうためのきっかけを頂き、今があります。
そのキャリアにたどり着くために努力したこと
凡庸なりの戦い方
私は極めて凡庸な人間です。特別な技能や能力はなく、人付き合いも不器用です。
周囲には、素晴らしい臨床推論を展開し、驚くような閃きとリサーチクエスチョンを導き研究業績を継続的に挙げている方が沢山いらっしゃる環境で仕事をさせていただく機会が多かっただけに、より一層自身の凡庸さを実感してきました。
では、そういった強者が沢山いる中で、どのように受け入れてもらい、協業していくか。私がまず意識しているのは、「準備」と「マナー」です。
仕事の依頼は不意に頂くことがほとんどです。そのためいつでも「はい」といって受け入れられるように常に準備をしておくことが重要なように思います。
信頼関係は築くのに時間がかかる一方で、失ってしまうのは一瞬です。そのためにも、その環境や文化で求められる態度やマナーを心掛けるということも大切なように思います。
与えられた作業が退屈に感じたり、「なんで自分が」と不条理さを思わず感じてしまうことも時にあるかも知れません。しかし、これまでのキャリアを振り返ると、初期の段階では、与えられたことで結果を出さない限り、自分のやりたいことはできないと感じています。
地味な作業でも腐らず、全力で結果を出すように努める。
公私ともに様々なタスクがある中でも、適切に準備をして、最終的になんとかすること。
この5年間で、関連全国学会の事務局やプログラム委員を3回務めましたが、そうした機会を頂けたのも、与えられたことに対して自分なりに結果を出そうと、その時に出せる最大限の力で日々を積み重ねていた姿を、どなたかが見てくれていたからかも知れません。
社会人博士の仕事と研究と育児
大学教員にとって博士号の取得はおおよそ必須です。
私は30代半ばで社会人博士課程が開始となりました。父親としての社会的役割、金銭的問題など様々なマネジメントが求められました。
仕事や研究がうまくいかない日でも、自宅に戻れば家族がいます。
解析の時間を作りたい、今日中にあの抄録を作成しておかなくちゃいけない、そんな焦りが頭を占めていても、子どもにも色々な出来事があり、宿題もあり、名前のない家事がたくさんあり、週末にはアンパンマンミュージアムにも連れて行かなくてはいけないわけです。
余裕をなくして苛立ってしまうこともありますが、子どもは想像以上にその変化を敏感に感じ取り、家庭の雰囲気に影響を与えます。未だに反省することが多々あります。
「上機嫌でいることは作法である」と記した本があります。
家族や関係のない人が自然と話しかけてくれるような余裕を持つ努力、そして自分自身の機嫌をマネジメントしていくことが、中長期的に非常に大切だと感じています。
仕事を通じて社会還元をしていくことは大きな目的ですが、身近な人に対して安定と安心を提供することも、自分の責務です。
アカデミアにいると、周囲の勢いや、結果を追い求めるがためにその感覚が時に麻痺してしまうのですが、一番大切なものについてはしっかりと碇をおろしつつ、仕事は修羅、家庭では菩薩のような生活を送っていくようにしていきたいと心がけています(自戒をこめて)。
大学院の修了式に娘が「参加したい」と来てくれたのは、そのような姿勢を少なからず感じとってくれていたからかも知れません。
こういった、仕事での成果、家庭の維持、大学院生活のマネジメントをしていく上で、根本的に重要だと感じているのが「体力」です。
「無理をしない、させない」という社会の風潮がありますが、目標達成のために無理をしなくては行けない局面があります(他者には絶対に強制はさせません)。
ちょっとした無理や負荷の先に、自分でも気づかないほどの、わずかな成長があるものだと考えています。そういった行為を支えるために、単純にフィジカルの強さというものに救われたように思います。
仕事や家事を終えてから、深夜に研究計画書の構想を練るにも、思考の体力が必要です。そして体力的に余裕がないと、家庭や職場において些細なことも「疲れているのになんでこんなことをしなくてはいけないのか」と、周囲への気遣いや心の余裕も失われていきます。
単純に体力があることで、手を動かす、考えるといった営みを継続することができて、そういったことはカバーできると感じています。
怪我をきっかけに学生時代から走り続け、100マイル(162km)の山岳ウルトラマラソンを3回完走するほどのランニング中毒だった時期に培った体力に、気が付かないうちに支えられているように思います。
日々の体調管理と体力作りは、継続的に成果を出すため、そして中長期的なキャリア形成のためにも、大切な観点であるように思います。
これからの目標
今後は後進の育成に加え、大学院で行なってきた咀嚼嚥下運動の生体計測等を通じて、食品のテクスチャー(物性)と口腔機能の関連性や訓練効果について、広く基礎研究を進めていきたいと考えています。
現在は、いくつかの介護保険施設で食支援に関する助言者として携わっています。
近年、介護保険下においてもLIFEデータベースが導入され、「科学的介護」の推進が力強く進められています。一方で、現場では人員や教育の問題から、日々の業務に追われ、科学的介護の観点にまで視野を広げる余裕がない状態であるように思います。
言語聴覚士として、口腔・嚥下・コミュニケーション機能の側面で貢献できることは大きいと感じますが、介護保険領域への参画は非常に少ないのが現状です。
今後は、LIFEデータベースも含む介護保険現場での実態を踏まえた食支援、介護予防、介護者負担軽減につながる調査研究を進め、継続的に支援が必要な人に、どのような環境でも効果的なサービスが提供できる仕組み作りに、少しでも貢献できたらと考えています。
また、大学院在籍中は、厚生労働省の自立支援機器イノベーション人材育成事業に参画する機会を得ました。現場のニーズに即した自立支援機器の開発において、リハビリテーション職種は、工学分野や企業との連携を通じて、さらに社会的価値をもたらすことができると感じています。
現在は、こうした取り組みを生涯教育の分野に落とし込む活動にも関わっています。将来的には、自身でも、現場のニーズを解決できるソリューションを生み出していける研究者になっていきたいと感じている次第です。
私と似たキャリアを目指す人へのメッセージ
ご存知の方も多いかと思いますが、「計画的偶発性理論」というキャリアに関する理論があります。これは、ビジネスパーソンとして成功した人のキャリアを調査したところ、そのターニングポイントの8割が、本人の予想しない偶然の出来事であったことから端を発した理論です。
成功した人々の行動を分析すると、キャリアの転帰は下記の3点が関与することが明らかになっています。
予期せぬ出来事がキャリアを左右すること
偶然の出来事が起きたときに行動や努力によって新たなキャリアにつながること
何かが起きるのを待つのではなく、意図的に行動することでチャンスが増えること
私自身、まだまだ誇れるキャリアではありませんし、参考になるものではありません。ですが、振り返った時にこの理論に納得させられる部分があります。
その時々で夢中になって全力を注いでいたことが、偶然の出会いに恵まれ、自分でも全く予期していなかったキャリアを歩むことになりました。
今、やりたいことがぼんやりとしている方でも、少しでも興味があることや大切にしたいことがあれば、腐らずに愚直に取り組んでみると、思わぬ道がひらけてくるかもしれません。
運は、行動の数に比例するような気がしています。差し出された手は、その時につかんでください。遠回りに見えても、不安に感じる道であっても、自らコンフォートゾーンを抜け出し、自分の感性を大切にして飛び込んでみることをおすすめいたします。
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