
MPH
【慶應MPH受験】ICU看護師だった私が、慶應義塾大学MPHで学び、医業経営コンサルになるまで - vol.40
2025.11.19
医療従事者として日々命と向き合う中で、「自分は本当に患者さんの力になれているのだろうか」と感じたことはないでしょうか?
看護師としてICUに勤務していた筆者は、重症化してから病院に運ばれてくる患者さんを前にして、「健康の大切さは、健康を失ったときにしか感じられない」と痛感します。
臨床現場で感じた「もっと早く何かできていれば」という葛藤から公衆衛生を学び直すことを決意した筆者は、慶應義塾大学大学院の健康マネジメント研究科に進学。そこで身につけた専門性と「考える力・行動する力・社会を変える力」を原動力に、「もっと広い視点で医療に関わりたい」という思いから医業経営コンサルとしての新たなキャリアを切り拓きました。
「このままでいいのだろか?」とキャリアに悩む方に、「まだ間に合う。新しい世界に挑戦することができる」という勇気を与えてくれる大学院受験期です。
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- この記事のまとめ
- この記事を読むと分かること
- この記事は誰に向けて書いているか
- MPHシリーズ
- 執筆者の紹介
- 編集者
- 監修者
- MPHを受験しようと思ったきっかけ
- 「公衆衛生学」との出会い
- 医療現場での葛藤
- 「このままでいいのか?」という問い
- なぜ慶應MPHを選んだか
- 受験対策でやったこと
- 1. 事前面談
- 2. 志望動機の作成
- 3. 小論文試験対策
- 4. 面接対策
- 【mJOHNSNOW入会受付中|7日間無料お試し】
- 受験期に大変だったこと
- フルタイム勤務と並行した試験対策
- 孤独での挑戦
- 受験生に伝えたいメッセージ
- 転職 ― ネクストキャリアまでの経緯 ―
- 現在
- MPHで得られた学びがその後どのように活きたのか
- 受験を迷っているあなたへ
- MPHの受験から、卒後のキャリア形成まで一気通貫のサポートならmJOHNSNOW!
- 【YouTubeラジオコンテンツ 耳から学ぶシリーズ】
この記事のまとめ
この記事を読むと分かること
慶應MPHの特徴と、他のMPHとの違い
受験準備の具体的なステップと、働きながら進学するための工夫
医療職からMPHに進学後の、ネクストキャリアの築き方
この記事は誰に向けて書いているか
臨床の道を続けるか、公衆衛生に進むか迷っている医療職の方
慶應MPHの雰囲気や実際の学びについて、リアルな情報を知りたい方
働きながらMPHに通うことを検討している方
MPHシリーズ
vol.21:【東京大学SPH受験】看護実習でのモヤモヤから公衆衛生の道へ:介護現場の変革に挑戦するコンサルタントの原点- vol.21
vol.27:【慶應大学MPH受験】ジェネラリスト看護師 - 看護実践の基盤となる知識を求めて
vol.38:【東京大学SPH受験】看護師、金融業を経て二度目の転身へ - キャリアを横断して捉えた“働く人の健康”
vol.39:【順天堂MPH受験】父を看取ったあの日から:手術室看護師から、公衆衛生の現場へ
執筆者の紹介
氏名:鵜池歩美
所属:株式会社日本経営
自己紹介:都内の総合病院でICU看護師として勤務しながら、慶應義塾大学大学院健康マネジメント研究科にて公衆衛生学(MPH)を修了。また、「病院経営イノベーションコース」「医療経済評価コース」「ヘルスケアコース(経営管理研究科)」を修了した。 現在は株式会社日本経営にて、医業経営コンサルとして医療機関の看護部門を中心とした業務プロセス改善に従事。欧米やアジアの医療機関で成果を上げてきた「リーンマネジメント」の手法を、日本の看護部門向けに再構築。現場に根ざした形で導入し、ムリ・ムダ・ムラを取り除くことで、「患者への価値の最大化」と「病院運営の改善」を同時に実現し、進化し続ける組織づくりを支援している。
編集者
氏名:菊池祐介
所属:mMEDICI株式会社
専門性:作業療法学修士。首都大学東京(現東京都立大学)・東京都立大学大学院を卒業後、病院勤務を経て専門学校・私立大学にて作業療法教育、地域共生社会の醸成に向けたリハビリテーション専門職の支援に関する研究に従事。現在は心身の健康とその人らしさの実現に向け、保険内外でのクライアント支援を展開している。作業療法の社会的意義向上を信念に、mMEDICI株式会社に参画。
監修者
氏名:廣瀬直紀
所属:mMEDICI株式会社
専門性:保健学博士・公衆衛生学修士。東京大学・東京大学大学院を卒業後、外資系製薬企業の疫学専門家として薬剤疫学・リアルワールドデータ研究を専門とする。日本・グローバルの双方で活動したのちに、全ての人がアクセス可能な一流の知のプラットフォームを作り、「知に繁栄を、辺野に豊穣を」実現すべく、mMEDICI株式会社を創業。
MPHを受験しようと思ったきっかけ
「公衆衛生学」との出会い
公衆衛生学という学問に初めて触れたのは、看護学生時代のことでした。保健師課程の授業や看護実習を通して、「病気になる前に何かできることがあるのではないか」「心身ともに健康で、その人らしく生きることを支えるにはどうしたらよいか」と考えるようになりました。
病院では主に“治す”ことが目的となりますが、もっと手前で健康を支える介入ができたなら、人生の選択肢はもっと広がるのではないか。そう感じたことが、公衆衛生への興味の原点でした。
学部卒業後、そのまま大学院に進学することも一度は考えました。実際に複数の看護大学の教授にも相談しましたが、「まずは臨床の現場で経験を積み、自分がどんな課題意識を持っていて、何を研究したいのかを明確にしてから進学したほうがよい」とアドバイスを受けました。
当時の私はまだ「公衆衛生を学びたい」という漠然とした想いしか持っていなかったため、まずは看護師として現場に出てみようと思いました。
医療現場での葛藤
「健康の大切さは、健康を失った時にしか感じられない」――そんな言葉を、ICUでの勤務を通じて何度も痛感しました。重症化してから病院に運ばれてくる患者さんを前に、「もっと早く気づけていれば」「もっと早く何かできていれば」と感じる場面が多くありました。
命の最前線で働く中で、医療の力には限界があること、そして「病院に来る前の介入」こそが重要なのではないかという想いが、ますます強くなっていきました。
「このままでいいのか?」という問い
看護師としてのキャリアか、大学院進学か。
看護師として一通りの経験を積み、自分なりに「どこでも働いていける」という自信も持てるようになっていました。しかしある時、ふと立ち止まって、「私はこのまま、看護師として一生を終えるのだろうか?」と自問するようになりました。
現場で働く日々には確かなやりがいと充実感がありましたが、同時に、自身の成長曲線が徐々に鈍化していくことを感じ始めていたのも事実です。
もちろん、患者さんと関わることはとても好きで、「医療に関わり続けたい」という想いは変わりませんでした。しかし、臨床以外にも医療を支える道があるのではないか、もっと広い視点から社会に貢献できる可能性があるのではないかと考えるようになったのです。
そして、「今ならまだ間に合う。転職も含め、別の世界に挑戦することができる。」そう感じた瞬間に、公衆衛生学を学ぶために大学院へ進学しようという決意が固まったのです。
なぜ慶應MPHを選んだか
大学院進学を決めた際、私が重視していたのは、「都内という立地」、「学べる内容の幅広さ」、「柔軟なカリキュラム」、そして「卒業後のキャリア展開の多様性」でした。
まず一つ目は、都内で学べること。生活の基盤を大きく変えることなく通学できる環境は、働きながら学生をする私にとって、現実的かつ重要な条件でした。
二つ目は、幅広い領域を横断的に学べる環境が整っていること。私は特定の専門に絞り込むのではなく、学びながら自身の関心や問題意識を深めていきたいと考えていました。そのため、公衆衛生学の基本五領域+αの学びが用意されている慶應のカリキュラムは、大きな魅力でした。
三つ目は、卒業後の進路の多様性です。修了生の進路は行政機関、企業、NPO、研究機関など多岐にわたっており、自分のキャリアを狭めることなく、柔軟に将来像を描けると感じました。
さらに、私にとって大きな決め手となったのが、入学後に研究室を選べる柔軟な制度でした。入学時点で明確な研究テーマが定まっていなくても、学びの中で関心を深めてから進路を選べる仕組みは、現場経験を経て進学を決意した社会人学生にとって、非常に心強いものでした。
受験対策でやったこと
1. 事前面談
慶應義塾大学大学院 健康マネジメント研究科では、出願時に指導教員を事前に決定しておく必要はありません。そのため、他大学院によくあるような「出願前の個別面談」は原則ありません。
とはいえ、研究科の雰囲気や、自分が研究したい課題と教員の専門性がマッチしているかを相談してみることで、ミスマッチを防ぐことができると思います。
また、過去問も閲覧できるため、説明会への参加がおすすめです。
2. 志望動機の作成
出願書類では、志望動機・入学後の研究計画・修了後のキャリアプランをまとめる形式でした。
特に研究計画については書き方の基本がわからず、最初はどのように構成すればよいのか全く見当がつきませんでした。
そのため、修士課程を修了した職場の同僚に相談し、助言をもらいながら作成を進めました。
3. 小論文試験対策
小論文試験では、読解力・論理的思考力・問題解決能力・表現力が総合的に評価されます。
出題形式は毎年大きく変わらず、時間内に限られた文字数で論理的に答える力が求められます。
慶應の公式HPには、著作権保護の観点から一部モザイクにはなっているものの、過去二年分の出題例が掲載されています。試験傾向を把握するうえで、必ず確認すべき資料です。
英語長文の要約(A4で一〜二枚程度の分量)
文法や語彙の知識ではなく、英文の主張や構造を正確に読み取り、日本語で的確に要約する力が求められます。
紙辞書の持ち込みは可能ですが、時間が限られているため、あまり頼りにはできません。
私は学生時代に使用していた『英語長文問題精講』のテキストを引っ張り出し、英文構造に慣れるように読み直して感覚を取り戻しました。
また、辞書を使う時間を減らせるよう、基礎的な単語帳を復習しました。
新聞記事の要約
社会課題に関する日本語資料を要約する問題で、内容を正確に読み取り、簡潔にまとめる力が求められます。
グラフや表の読み取りと考察
統計データや図表をもとに、現状の傾向や特徴を読み取り、そこから何が言えるかを論理的に述べる力が必要です。
単にデータを説明するのではなく、背景や課題を考察し、問題提起につなげることが求められました。
なお、新聞記事の要約やデータ読解については、大学受験時に小論文対策を行っていた経験があったため、特別な試験対策は行いませんでした。
4. 面接対策
面接では、「なぜ慶應を選んだのか」「なぜ公衆衛生学を学びたいのか」「修了後はどのようなキャリアを考えているのか」といった基本的な質問が中心でした。
教授との和やかな雰囲気の中で進み、現場で感じた違和感や、それに対して何を変えたいと思っているのかを自分の言葉で伝えることができました。
(続きはページの後半へ)
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受験期に大変だったこと
フルタイム勤務と並行した試験対策
受験対策を始めた当時は、フルタイムで病院勤務を続けており、日々の業務に加えて受験準備の時間を確保することが最も大きな課題でした。
仕事終わりの限られた時間に小論文の練習や書類作成に取り組み、時間の使い方を工夫しながら勉強を進めました。
自宅に帰るとどうしても気持ちが緩んでしまうことが多かったため、日勤や夜勤の勤務後には院内の図書館に立ち寄ってから帰るようにしていました。
場所を変えることで気持ちにメリハリが生まれ、「ここで1時間だけ集中しよう」と時間を区切ることで、限られた時間でも効果的に学習を進めることができました。
疲れている中でも、少しずつ積み重ねることを意識し、無理なく継続できる工夫を大切にしていました。
一番大変だったのは、圧倒的に情報が少なかったことです。
孤独での挑戦
私が受験を決意したのは、看護師三年目のタイミングでした。
周囲には大学院進学を考えている同期もほとんどおらず、特に「看護の大学院」ではなく公衆衛生学修士(MPH)という異分野への進学を目指している人は皆無でした。
MPHという言葉自体があまり知られておらず、理解してもらうことが難しい場面も多く、相談できる相手がいないことに対する不安や孤独感を常に感じていました。
それでも、「自分の中にある違和感を放置したくない」という気持ちが、受験準備を続ける原動力になっていたと思います。
受験生に伝えたいメッセージ
転職 ― ネクストキャリアまでの経緯 ―
大学院卒業後に看護師として現場に戻る選択肢もありましたが、MPHで得た学びを活かせる場は病院には少ないと感じました。
もちろん「n=1の看護師」として目の前の患者さんに全力を尽くすことも尊いことです。
けれども、大学院という節目を迎えた今こそ、これまでの経験を糧にネクストキャリアに挑戦するべきだと決意しました。
入学前は予防医療に強い関心を持っていましたが、慶應MPHで病院経営を学んだこと、そして在学中も夜勤専従の看護師として現場に立ち続けた経験が、自分の進路を大きく広げてくれました。
「看護師としての経験を活かすこと」
「患者さんのためになること」
「大学院で学んだ知を活かすこと」
この三つを軸に、キャリアを選択するようになったのです。
大学院生として学びながら、同時に看護師として現場に立ち続ける“二足の草鞋”の生活は大変な時期もありました。
しかし、その両立こそが自分の視野を広げ、「現場」と「学問」の両方から課題を見つめ直す力を与えてくれたと思います。
だからこそ、「もっと広い視点で医療に関わりたい」という想いが、私を次のキャリアへと導いていきました。
現在
現在は、医業経営コンサルとして、主に医療機関の看護部門を対象に業務プロセス改善に従事しています。
欧米やアジアの医療機関で成果を上げてきた「リーンマネジメント」の手法を、日本の看護部門に適した形で再構築し、現場に根ざした形で導入。
ムリ・ムダ・ムラを取り除くことで、「患者への価値の最大化」と「病院運営の改善」を同時に実現し、進化し続ける組織づくりを支援しています。
この取り組みの本質は、単なる業務の効率化や数値目標の達成ではありません。
最大の目的は、「医療者が本来やりたかったケアにしっかりと向き合える時間を取り戻すこと」です。
物品探しや重複記録、非効率な申し送りを仕組みから見直し、現場の声を反映した改善を積み重ねていくことで、
患者の価値・医療の質・経営の健全性・医療者のやりがいを同時に高めていく――そんな持続可能な医療を支える仕事に挑戦しています。
今こうして病院の組織づくりに関われているのは、慶應MPHで得た視点があったからこそだと感じています。
MPHで得られた学びがその後どのように活きたのか
MPHで得られたものは、すぐに明確な形で「これに役立った」と結びつくわけではありません。
むしろ、「答えがない中で、自分の頭で考え続ける力」を身につけられたことこそが最大の収穫です。
先行きが不透明で変化の激しいVUCAの時代においては、正解を探すよりも、問いを立て、自ら考え抜き、行動に移す力が求められます。MPHでの学びは、その「考える力」を日常的に鍛え直す機会でした。
もちろん私自身も、今なお「MPHで得た学びをどう生かしていくか」と悩み続けています。
ただ、悩みながらも問いを立て続けることこそがキャリアを形づくるプロセスであり、社会に変化を生み出す第一歩なのだと思います。
受験を迷っているあなたへ
社会人として進学を決めるのは簡単なことではありません。
時間的・経済的な制約、家庭や仕事との両立、キャリアへの不安。そのすべてが進学の前に立ちはだかります。
私自身も、出願を決めるまでに何度も迷いました。
それでも最後に背中を押してくれたのは、「なぜだろう?と現場での疑問を解き明かしたい」「あるべき姿に社会を近づけるにはどうすればよいのだろうか?」という想いでした。
慶應MPHには、医療・行政・企業など、多様なバックグラウンドを持つ仲間が集まっています。
互いの経験や視点が交わる中で、自分一人では決してたどり着けなかった“問い”や“気づき”に出会えるはずです。
もし今、あなたが「このままでいいのだろうか」と迷っているなら、
その迷いこそが次に進むためのサインです。
慶應MPHは、その想いを受け止め、未来を切り拓く力へと変えてくれる場所だと、私は確信しています。

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