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【東京大学SPH受験】看護師、金融業を経て二度目の転身へ:キャリアを横断して捉えた“働く人の健康” - vol.38 後編

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【東京大学SPH受験】看護師、金融業を経て二度目の転身へ:キャリアを横断して捉えた“働く人の健康” - vol.38 後編

2025.10.14

▼ 前半はコチラ
【東京大学SPH受験】看護師、金融業を経て二度目の転身へ:キャリアを横断して捉えた“働く人の健康”(前編)

前編では、看護師から企業への転職を経て、二度目のキャリアチェンジとして東大SPHを目指した歩みを振り返りました。

後編となる本記事では、受験期に焦点を当て、合格につながった勉強方法や使用した書籍、試験対策の工夫を詳しくお伝えします。

初めは自信がなくても、試験本番までに着実に力をつけて合格を掴んだ一つの成功体験が、同じ道を目指す方にとっての指針となれば幸いです。

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この記事のまとめ

この記事を読むと分かること

  • 東大SPHの受験対策の例

  • 一度臨床を離れた看護師が、公衆衛生の道を選ぶに至った過程

  • 自分がやりたいことを掴むチャンスはいつになってもあること

この記事は誰に向けて書いているか

  • 東大SPHの試験対策に興味がある方

  • SPHを受験する人のバックグラウンドに興味がある方

  • SPHに進学してみたいけど、躊躇している方

東大SPHをもっと深く知りたいあなたへ

受験のかたちは人それぞれ。東大SPHを目指す歩みには、十人十色の物語と、それぞれに合った勉強法があります。

大切なのは、自分自身にフィットする戦略を見出すこと――それこそが、合格への鍵となるのです。

ここでご紹介する体験記は、受験に向けた思考と準備のヒントに満ちています。
これから進む道の羅針盤として、ぜひ他の東大MPH受験記もあわせてご覧ください。

執筆者の紹介

氏名:Y.K
所属:病院(看護師)→ 企業(会社員)→ 東大SPH
自己紹介:看護大学卒業、看護師・保健師免許取得済み。大学卒業後は、看護師として都内総合病院の循環器病棟に従事し、急性期の冠動脈疾患や重症心不全の方々と接する。3年間看護師として働いたのち、金融業の会社員へ転職し6年間5ヶ月勤務。臨床看護師・会社員として働いた経験から、働きながら健康行動を選択することの困難さに課題を感じ、東大SPHの受験を決意。

編集者

氏名:菊池祐介
所属:mMEDICI株式会社
専門性:作業療法学修士。首都大学東京(現東京都立大学)・東京都立大学大学院を卒業後、病院勤務を経て専門学校・私立大学にて作業療法教育、地域共生社会の醸成に向けたリハビリテーション専門職の支援に関する研究に従事。現在は心身の健康とその人らしさの実現に向け、保険内外でのクライアント支援を展開している。作業療法の社会的意義向上を信念に、mMEDICI株式会社に参画。

監修者

氏名:廣瀬直紀
所属:mMEDICI株式会社
専門性:保健学博士・公衆衛生学修士。東京大学・東京大学大学院を卒業後、外資系製薬企業の疫学専門家として薬剤疫学・リアルワールドデータ研究を専門とする。日本・グローバルの双方で活動したのちに、全ての人がアクセス可能な一流の知のプラットフォームを作り、「知に繁栄を、辺野に豊穣を」実現すべく、mMEDICI株式会社を創業。

受験対策でやったこと

前提

1. 期間

東大SPHを受験すると決めた2025年3月から勉強を始めました。他の大学院は志望していません。

2025年3月〜7月半ばまでは会社員として勤務しながら、平日の朝と土日を活用して学習を進めました。7月半ば以降は退職を前提に有休を消化し、試験前の1か月間は院試勉強に専念しました。


2. 勉強開始時の実力

【英語】
大学入試以降は、気が向いた時に勉強したりニュース記事を読んだりする程度で、大学入試問題を正確に解ける自信はなく、英語論文もほとんど読んだことがありませんでした。

医学単語については業務上触れて覚えていたものもありましたが、初めて過去問を読んだ時は知らない専門用語があまりにも多く、頭を抱えました。

【統計】
統計学の本を読んだことがあり、問題に記載されている単語は理解できました。しかし、実際に手を動かして問題を解いた経験はほとんどなく、微積分に関しては全く覚えていないレベルでした。

【公共健康医学基礎・専門分野】
保健師国家試験受験以来、公衆衛生に関する事柄にはほとんど触れていない状態でした。


こちらは余談ですが…

会社員時代の資格取得勉強をしたり、いつかやりたいことに挑戦できるようになった時のために英語・統計をやってみたりと、何かを学ぶことは断続的に続けていました。

振り返ればですが、迷いながら、途切れながらも学び続けていたおかげで英語・統計などは早めにキャッチアップすることができました。また、勉強の癖を理解することで自分に合った学習プロセスを立てることができたと思います。

試験勉強全体に関して

まず、このmMEDICI Libraryの受験記をはじめとしたネット上にある受験体験記などで情報収集をしました。その上で、医療からしばらく離れていた私の場合、最初は知識の復習・インプットが必要であると考えました。

3月からはまず英語・統計・公共健康医学基礎の基礎固め、4月からは左記に加え専門分野に関連する書籍を読みはじめ、過去問は6月以降に着手しました。最後の1か月はGemini 2.5 Pro(AI)を活用して勉強を進める形をとりました。

各科目等の具体的な勉強方法・使用書籍を紹介します(※試験内容や形式の詳細は、受験要項をご確認ください)。

また、試験結果は以下となります。この点も踏まえて参考にしていただけますと幸いです。

統計以外の科目については、「何を問われているのか、どのような視点で考えるべきであるか」について意識して思考すること、そして思考するために不足している知識を身につけることを気をつけました。

以降は、科目ごとの対策をご紹介します。

英語

 基礎を復習 → 過去問を繰り返す&単語を覚える

近年は3題の文章に関して、各4〜5設問を筆記で回答する形式となっています。

私は英語が得意ではない上、大学受験以降ほとんど勉強してこなかったため、明らかにビハインドがある状態から基礎の復習を始めました。そのため、高得点は狙わず、確実に読める問題や得点できる問題を落とさないことを目標としました。

  • 英単語

大学入試レベルの基礎&応用の単語帳2冊で基本的な英単語を押さえ、医学用語は過去問を解いていて分からなかった単語のみを覚えました。

過去問で分からなかった単語は、Googleのスプレッドシートに一覧化したものをGeminiに読み込み、単語テストを作成し繰り返し解きました。

  • 英文法・英文読解

基礎的な英文法の本で復習した後、大学入試レベルの英文解釈の問題集を解きました。その後、過去問に取り組みました。


※LANCETやJAMA等から公衆衛生分野に文章を探して読むことも考えましたが、以下の理由で私はしませんでした。

・過去問だけでもそれなりの数の文章があるので、まずは過去問を全て解いて分からない単語をなくす方が自分にとっては試験対策になると考えた(結局、試験本番までに過去問全ては解ききれませんでしたが)。

・論文検索に慣れてない状態であり、適切な内容や量の文章を探す時間がもったいなく感じた。

・過去問の傾向から、ある程度の公衆衛生の基礎知識があれば、文章が英語であっても問われていることは十分に理解できる内容であると感じていたので、英語に特化して時間をかけなくても良いと考えた。

  • 耳で聞く

朝の準備時間や通勤中に、iPhoneのポッドキャストアプリで、英語の文字起こしを見ながら聞いていました。

過去問は4月に一度力試しで解きましたが、本格的に取り組むようになったのは6月以降でした。それまで文字起こしされた英文を追いながら音声を聞く練習を続けていたおかげか、問題にだいぶ取り組みやすくなったと感じました。

私が聞いていたポッドキャストは下記です(気になるトピックのみ)。 

朝日新聞AJW英語ニュース
PUBLIC HEALTH ON CALL
JAMA Medical News
THE LANCET Voice / THE LANCET Global Health
日経メディカル聞く論文

ちなみに、日経メディカル聞く論文のみ日本語のポッドキャストですが、他教科の勉強を進めると内容が理解できるようになってくるのを感じて楽しかったです。

統計

 基礎固め → 過去問を満点が取れるまで繰り返す

20問の5肢一択マークシートでの回答となるこの科目は、苦手と思う方も多い分野だと思います。私も本当に苦手でした。

業務では統計知識はほとんど使ったことはありません。過去に統計関連の本を読んでいたため、ゼロからのスタートではないものの、試験を受けた経験は大学時代の統計の授業のみで、微積分については全く記憶にない状態でした。

そのため、3月〜6月は微積分の復習と、Youtubeでとけたろうチャンネルの統計検定2級講座の動画を2周視聴したり、関連分野の問題を問題集で解いたりして基礎の復習・定着に重きをおきました

7月からは過去問に取り組みましたが、上記のおかげで、内容が全く理解できないという状況ではなかったと思います。


他にも、苦手分野はGeminiを駆使して特訓し、8月頭までは満点がとれるまで過去問を繰り返しました。勉強し始めた時点では一番苦手だった科目が、受験時点ではどの科目よりも「分かる問題は確実に点が取れる状態」になった上で試験に臨みました

出題基準は(私の受験時点では)統計検定2級程度となっていました。新しい内容が出ることもありますが、例年出題されている内容も多いので、過去問を確実に解けるようになることが先決だと思います。

◾️使用書籍
ふたたびの微分・積分(すばる舎)
統計学演習(培風館)

公共健康医学基礎

 基礎を復習 → 過去問から押さるべき知識を絞る → 知識のインプット&過去問を解く

統計と同じ試験時間に、20問を5肢一択マークシートで回答する形式です。

私は保健師国家試験以来の公衆衛生の勉強だったため、3月〜4月は『公衆衛生が見える(2024-2025)』を1周して知識を思い出す作業に充てました。

また、並行して過去問で問われているキーワードと出題回数を一覧化し、内容を分類の上、該当する内容を「公衆衛生が見える」で確認し(付箋をつける)、書籍に記載がないものはネットやGeminiで調べ、書き込めるものは書籍に書き込みました。

人口・死亡率等々の数字については、出題歴があるものや周辺の関連する内容について、厚生労働省などの刊行物を直前に確認しました。


専門分野の勉強と重なるところも多く、個人的には短期記憶勝負の方が点を取れそうだったため、勉強にかける時間については他の教科とのバランスをとるように気をつけていました

また、過去問は内容によっては現時点での回答が変わっているものもあります。そのため、傾向を掴むことや知識問題の復習として2周くらいまでにとどめ、他科目ほど時間はかけませんでした。

◾️使用書籍
公衆衛生が見える(2024-2025)(メディックメディア)

専門分野

関連する書籍を読む → 試験対策する分野を決める → 知識を深める&過去問を解く

9分野のうちの4分野に関する問題を筆記形式で回答する試験となります。

分野の選択は個々人のバックグラウンドで分かれると思いますが、私の場合は5分野(疫学、予防医学、健康教育、公衆衛生調査方法論、医療情報システム学)に絞り対策を行い、本番は疫学・健康教育・公衆衛生調査方法論・医療情報システム学を回答しました。


まずは様々な方の受験記を参考にして基礎知識のインプットのために読む書籍を選び、全て1周読んだ上で対策する科目を決めました。

医療情報システム学については、過去問の傾向からAI・データサイエンスの書籍をそれぞれ1冊と『公共健康情報学入門』を読みました。

過去問で取り扱っているテーマで書籍に記載のない内容や各分野の直近のトレンドなどは、ネットで調べたりGeminiのDeep Researchを使ったりして情報を追いました。

また、定義が固定化されており生成AIで間違える可能性が低そうな内容については、初学レベルからGeminiを使って学習しました。


過去問には7月半ばから取り組み始めました。設問に対する回答の方向性が合っていなければ、どれだけ長い文章を書いても得点につながらない可能性があると考えていました。

そのため、過去問に手をつける前に、基礎的な知識と思考力を焦らず身につけるようにしました

実際の試験本番でも、長文の回答をしていなくても8割以上の得点を取ることができたため、勉強の方向性は間違っていなかったと感じています。

◾️使用書籍
わかりやすいEBNと栄養疫学(同文書院)
社会と医学 健康格差解消に向けた統合科学的アプローチ(東京大学出版会)
実践 行動変容のためのヘルスコミュニケーション(大修館書店)
保健医療専門職のためのヘルスコミュニケーション学入門(大修館書店)
入門・医療倫理Ⅰ(勁草書房)
公共健康情報学入門(共立出版)
教養としてのデータサイエンス 改訂第2版(講談社)
これからのAI、正しい付き合い方と使い方 「共同知能」と共生するためのヒント(KADOKAWA)

※医療倫理は『入門・医療倫理Ⅰ』を読んだ上で選択しませんでしたが、他科目で問われることもある内容であり個人的には書籍を読んでおいて良かったです。

小論文

入学試験案内で事前に課題が示されており、内容を考えて覚えていきました。

内容の構想は既にあったため、8月に入ってから少しずつ着手し、試験の1週間前に完成させました。最終的には約1,700文字で、練習では平均45分で書ける分量に調整しました。推敲の段階ではGeminiを使用し、自分以外では夫にチェックしてもらいました。

結果は5割程度の得点で、改善の余地はあると感じています。ただ、受験時点での自分の実力としてはここが限界であり、他科目の得点に助けられた部分も大きかったと思います。

直前期と当日の様子

  • 直前期の勉強

看護師時代も会社員時代も、基本はPCで全ての作業を行なっていたため、これほど自分の手で文字を書き続けるのは、看護実習の記録か大学受験以来のことでした。

私は筆圧が強いこともあり、小論文を解く頃には腕が動かなくなってしまいそうだったため、試験日前の週に2回ほど、英語から小論文までを通して解く練習を行なって腕を慣らしておきました

  • 筆記試験当日

当日はお盆明けの月曜日だっため、都内の電車は連休明け・月曜日は遅れがちなことを踏まえ、早めに会場に着くようにしました

各教科の試験前には、どのような時間配分で回答するかを頭で整理して、落ち着いて問題に取り組むように気をつけました。

例えば、

・英語の場合は一番長い長文は最後に回し、残りの二つは各30分で回答をしきって、最後の長文が終わってから気になるものは戻って確認をする
・専門分野は1分野20分が目安なのでオーバーしそうな場合は一旦他の分野を解いてから戻る

などです。

とにかく、全ての問題に回答をする、冗長な回答にならないようにすることを気をつけました。

  • 面接対策と当日

一次試験の結果が分かってから、一般的に質問されそうな内容(東大SPHを志望する理由や小論文の内容など)について対策を行いました。

これまで面接で緊張することはなかったという自負がありましたが、憧れていた大学院の教授陣が10名ずらりと並ぶ光景は圧倒的で、面接開始直後からガチガチに緊張してしまいました。話しているうちに頭が真っ白になり、試験後は呆然と帰った記憶があります。

面接に進めるかどうかは分からなくても、ある程度余裕を持って準備しておくべきだったと反省しています。

  • その他

私は学習や過去問の回答作成にGemini 2.5 Proを使用しましたが、やはりハルシネーションはある程度発生します。

それを見抜けるのは自分だけなので、質問する内容についての基礎知識を持っていること、あるいは正しい情報源のおおよその見当をつけられる程度の自助努力は必要だと感じました。


とはいえ、かなりの精度で回答を作ってくれますし、繰り返し学習のサポートや(時々面白いツールを生み出してくれます)新しいことを勉強する時に道筋を立てることは得意です。

プロンプトが適当でも大抵のことは上手に拾ってくれるので、個人的にはストレスなく使って勉強を進めることができました。

ちなみにChatGPTではなくGeminiだった理由は、「使用する直前にGeminiのアップデートがあった」「個人的にGeminiの方がなんとなく会話がしやすかった」の2点です。時勢や好みに合わせて、上手に選び有効活用しましょう。

受験期に大変だったこと

仕事をしながら勉強していた時期は、時間の捻出が難しかったです。

平日は仕事で気力も体力も奪われ、帰宅してから勉強することはできなかったので、平日の朝と土日で勉強していましたが、それも毎日できていた訳ではありませんでした。

私は他の事情もあり、退職前提で有給を取るという方法で試験前に1か月の時間を作ることができましたが、誰よりもそれを許してくれた夫に感謝しています。

受験生に伝えたいメッセージ

どのようなキャリアであっても東大SPHの門をたたくことができるということを、私自身の経歴を通してお伝えしたいです。

これを読まれている方の中には、受験を迷われている方もきっといると思います。今は難しいかも、と思う方もいると思います。

私もここにくるまで、何年も迷って、何回も諦めて、遠回りをしてきたと思います。

しかし、どんな時でも一生懸命に、時に忙殺されながらも仕事に邁進した経験がなければ、強い意志を持って思い切って挑戦することはできませんでした

もちろん、挑戦することを心から応援してくれた夫には感謝しかありません。


そして、mMEDICI Libraryの受験記やその他の体験記は、周りにMPHホルダーがいないなか東大SPHを受験する私にとって道標のような存在でした。

合格するためのヒントが詰まった先輩方の受験記を、迷った時は読んでください。私はそうして、ここまでくることができました。

最後まで、諦めずに。私の経験が、少しでも誰かのお役に立てれば幸いです。

ここまでお読みいただき、ありがとうございました。

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