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【東京大学SPH受験】看護師、金融業を経て二度目の転身へ :キャリアを横断して捉えた“働く人の健康” - vol.38 前編
2025.10.12
キャリアチェンジや公衆衛生分野への進学を考えている医療職・社会人の方へ。
看護師から企業へと転職した経験を持つ筆者が、二度目のキャリアチェンジとして東大SPH進学に挑戦した体験記をお届けします。
医療現場と企業、異なる立場から人と関わる中で、個人の力だけで健康を維持することの難しさを痛感。病気になる前の段階で人々を支えたいという思いから、東大SPHの門を叩きました。
中学・高校時代に出会った公衆衛生の分野に、二つのキャリアを経て再びたどり着いた筆者の決断と歩みをぜひご覧ください。
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この記事のまとめ
この記事を読むと分かること
東大SPHの受験対策の例
一度臨床を離れた看護師が、公衆衛生の道を選ぶに至った過程
自分がやりたいことを掴むチャンスはいつになってもあること
この記事は誰に向けて書いているか
東大SPHの試験対策に興味がある方
SPHを受験する人のバックグラウンドに興味がある方
SPHに進学してみたいけど、躊躇している方
東大SPHをもっと深く知りたいあなたへ
受験のかたちは人それぞれ。東大SPHを目指す歩みには、十人十色の物語と、それぞれに合った勉強法があります。
大切なのは、自分自身にフィットする戦略を見出すこと――それこそが、合格への鍵となるのです。
ここでご紹介する体験記は、受験に向けた思考と準備のヒントに満ちています。
これから進む道の羅針盤として、ぜひ他の東大MPH受験記もあわせてご覧ください。
看護師、金融業を経て二度目の転身へ:キャリアを横断して捉えた“働く人の健康” - 前編(本記事)
執筆者の紹介
氏名:Y.K
所属:病院(看護師)→ 企業(会社員)→ 東大SPH
自己紹介:看護大学卒業、看護師・保健師免許取得済み。大学卒業後は、看護師として都内総合病院の循環器病棟に従事し、急性期の冠動脈疾患や重症心不全の方々と接する。3年間看護師として働いたのち、金融業の会社員へ転職し6年間5か月勤務。臨床看護師・会社員として働いた経験から、働きながら健康行動を選択することの困難さに課題を感じ、東大SPHの受験を決意。
編集者
氏名:菊池祐介
所属:mMEDICI株式会社
専門性:作業療法学修士。首都大学東京(現東京都立大学)・東京都立大学大学院を卒業後、病院勤務を経て専門学校・私立大学にて作業療法教育、地域共生社会の醸成に向けたリハビリテーション専門職の支援に関する研究に従事。現在は心身の健康とその人らしさの実現に向け、保険内外でのクライアント支援を展開している。作業療法の社会的意義向上を信念に、mMEDICI株式会社に参画。
監修者
氏名:廣瀬直紀
所属:mMEDICI株式会社
専門性:保健学博士・公衆衛生学修士。東京大学・東京大学大学院を卒業後、外資系製薬企業の疫学専門家として薬剤疫学・リアルワールドデータ研究を専門とする。日本・グローバルの双方で活動したのちに、全ての人がアクセス可能な一流の知のプラットフォームを作り、「知に繁栄を、辺野に豊穣を」実現すべく、mMEDICI株式会社を創業。
SPHを受験しようと思ったきっかけ
東大SPHとの出会い
私が公衆衛生、そして東大SPHの存在を知った時期は、中学・高校時代まで遡ります。
当時、鳥インフルエンザ(H5N1)の発生が問題視される中、とある医師がその最前線で働かれていることを知り、その時漠然と「私も公衆衛生分野でいつかは働きたい」と強く思いました。
14歳の私が、なぜそこまでこの学問に興味を持ったのか、今でもそれを言葉にすることは難しいのですが、惹きつけられるものがあったのだと思います。
そんな気持ちを抱え進路を探す中で、当時立ち上がったばかりだった東大SPHに辿り着きました。…が、もちろん大学院なので高校から直接進学することは叶いません。
その後、紆余曲折あり看護大学へ進学し看護師・保健師免許を取得。大学卒業時点では、大学院進学や保健師という選択肢は選ぶことはなく、「とにかく3年は看護師として働いて、社会で生きていける方法を身につける」という気持ちで臨床に進みました。
臨床から企業へ転じて実感した、健康に生きることの難しさ
新卒では病棟の看護師として、主に冠動脈疾患の周手術期や重症心不全の患者さんを担当するチームで働いていました。
そんな中で、いわゆる働き盛りと言われる年代の患者さんたちから「働き過ぎてしまった」という言葉を何度も聞きました。
当時の私は、患者さんたちのその言葉には後悔や葛藤が滲んでいるように感じていましたが、いくら想像を膨らませても「命を脅かすほど働かなければならないとは、どういうことなのだろうか?」という疑問を拭えませんでした。
しかし、目の前にある業務に追われて患者さんの背景や社会的要因まで目を向ける余裕はなく、それ以上何かを考えることはできませんでした。
その後、目標であった3年間看護師として働き、病院を退職しました。
この時に進学を考えることはできたのかもしれませんが、心身ともに疲弊していた当時の私は、大学院のことを考えたり受験勉強をしたりする気力や余裕はありませんでした。また、しばらく医療から距離を置きたい、というのが当時の正直な気持ちでした。
そんな中でご縁があり、金融業の企業の総合職会社員へ転職をしました。
企業では、部署の定常業務以外に後進の教育・プロジェクト・社外折衝など、中堅になるにつれ任える仕事と責任が増え、恵まれた環境の中でやりがいを持って働いていました。
しかし、4年目を過ぎた頃から時折、病院で接してきた患者さんの「働き過ぎてしまった」という言葉が頭をよぎるようになりました。
私が担当していた業務は、責任が上がるほど時に大きな金額を扱えるようになり、常に早く・正確に数をこなすことへのプレッシャーがありました。また、できることが増えるにつれ他の業務も任され、次第に長時間の勤務が当たり前になっていきました。
しかしそれは、人や仕事内容にはよるけれども自分だけがしているわけではない。周りには、無茶な働き方をする人が何人もいました。
また、会社という組織自体が、働いていた病院とは全く違う環境でした。
社会は個々人の集まりであり、人それぞれに価値観・考え・生き方があります。さらに、働くということには想像以上にさまざまなストレス要因があることも知りました。企業で働き始めてから、そうしたことを学び、感じる機会があまりにも多かったのです。
親族に看護師が多い環境で育ち、看護大学へ進学し、病棟看護師として経験を積んできた私は、知らぬ間にせよ比較的心地のよい集団の中だけで生きてきたのだと感じました。
そして何よりも、働きながら健康行動を選択し、自分自身の健康を維持することの困難さ、率直に言えば「難しかったよね、無理だったよね」と思わざるを得ない現実を、身をもって感じました。
同時に、患者さんと接していた当時の自分には想像力が足りなかったことを、深く痛感しました。
二度目のキャリアチェンジへの挑戦
会社員としてのキャリアを重ねていく中でも、公衆衛生への興味や、東大SPHのことは頭の片隅にありました。
ただ、一度医療から離れ、会社員として忙しくも充実した日々を送っていたため、ふと思い出して「いつか受験できる時のために」と少し勉強をしても、しばらくすると「きっと縁がなかったのだろう」と思って気持ちに蓋をしてしまうー
そのようなことを何度も繰り返していました。
しかし、それでも次第に、病気になる前に人々を支えることを仕事にしたいと思うようになりました。
全ての病気が防げるわけではないですが、予防できる健康悪化・病気があることも事実。 病院で接してきた患者さんたちの姿は、何年経っても決して忘れられるものではありません。
一生懸命に働き、生きる人々が、頑張った先で苦しい思いをすることがないようにしたい。 そのために、自分は何ができるだろうか?そのためには、何を学べば良いのだろうか?
私個人の経験から感じることはあるものの、あまりにも漠然とした課題感しか言語化できない知識と技術、そして王道でないキャリアを歩んできた私にとって、SPH進学は必至でした。
そして、東大SPHのアドミッションポリシーを読んだ時、看護師と会社員という両方の経験を強みに挑戦すれば、この先自分のやりたいことが実現できるかもしれないと改めて思いました。
さらに、過去問を取り寄せて実際に見た時に、「今ならこの試験に全力で挑戦できるかもしれない」と思えたことが大きな決め手となりました。こうして私は、東大SPHを目指すという二度目のキャリアチェンジに挑戦することを決意したのです。
なぜそのSPHを選んだか
下記の理由で、東大SPH受験を決めました。
1. 自分が学びたいこととカリキュラムが合致していた
公共の健康、すなわち社会全体としての健康医学を考えるために学ぶべき内容と、その実践についての科目が揃っている点に魅力を感じました。
さらに、会社員としての経験からデータの取り扱いやシステム構築の作業に興味を持つようになっていたため、医療情報システムやその利活用について学べる環境にも強く惹かれました。
2. 入試制度&入学後の研究室配属のシステム
正直なところ研究室見学のシステムがよくわからない、御作法もわからないというのが受験を決めた段階での状態で、仕事をしながら様々な大学の研究室見学をすることも現実的に難しいと感じていました。
そんな私にとって、東大SPHの入試は一次試験が筆記試験の学力勝負となるため、対策がしやすいと考えました。
また、やりたいことはあるけれど興味の幅が広いという今の状態ではなく、少し学んだ状態で研究室を選べるシステムの方が自分には合っていると考えました。
3. インターンの機会&一定の博士課程進学の実績があること
インターンの機会があること、卒業生の方に進学や研究者という実績が一定あることは、キャリアチェンジを前提に進学する私にとって魅力的でした。
4. 都内&学費が抑えられる&設備の良さ
卒後の選択肢がなるべく広げられる大学院であること、できれば都内で進学でき学費が抑えられるところ、何より周りの人から聞く同大の施設・学術環境の良さを考えると、私の中では東大しかありませんでした。
5. ここで学びたいという気持ち
いろいろ理由はありますが、一番の理由は、ずっとここで学んでみたいと思っていた気持ちです。「今チャレンジした方が人生において後悔しない!」と考えました。
前編は以上となります。
後編では、実際に行なった試験対策を、科目ごとに詳しくご紹介します。勉強する上での大事なポイントや使用書籍にくわえ、直前期や当日の様子も振り返りましたので、ぜひご覧ください。
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