
キャリア
【キャリア解説】心療内科医が語る女性医療職のキャリアデザイン術:妊娠・出産・育児とキャリアの両立を目指して - vol.36(前編)
2025.11.30
「女性の医療キャリアに正しいワークライフバランスはあるのだろうか。」――
医療者の私たちは、いつも“誰かの人生”と“自分の人生”の間で揺れています。私たちにとって、仕事と家庭と妊娠・出産・育児の「両立」は決して簡単ではありません。
いま求められているのは「どちらかを我慢する」ことではなく、仕事と人生が互いに影響し合いながら成長していく"循環するキャリア"という新しい考え方です。仕事も家庭も中途半端に感じる瞬間こそ、実は自分でも気が付かない内に新しい力が育ち始めている時かもしれません。
本記事では、産業医として「健康経営」や「プレコンセプションケア」に取り組む心療内科医が、「ワークとライフを含めたキャリアに迷うあなたに届けたい視点」を紹介します。
大切なのは、仕事と生活を切り分けない「Work in Life」という生き方です。仕事でも家庭でも、あなたの努力はあなたの人生を支えてくれる力になります。
後編:心療内科医が語る女性医療職のキャリアデザイン術:妊娠・出産・育児とキャリアの両立を目指して - vol.36(後編)
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- この記事のまとめ
- この記事を読むと分かること
- この記事は誰に向けて書いているか
- キャリアシリーズ
- 執筆者の紹介
- 編集者
- 監修者
- 1. 働く世代を支える産業医・心療内科医
- 2. 人生をつくる診療:メンタルヘルスのプライマリケア
- 3. 女性の医療キャリアに正しいワークライフバランスはあるのか
- 【mJOHNSNOW入会受付中|7日間無料お試し】
- 4. "ほどほど"に生きたいわけじゃない――働く女性の"見えない壁"
- 5. 医療者だけじゃない"いつか"と"いま"の間で悩む私たち
- 【オンラインスクール mJOHNSNOW入会受付中:7日間無料お試し】
- 【YouTubeラジオコンテンツ 耳から学ぶシリーズ】
この記事のまとめ
この記事を読むと分かること
"いま"の仕事と"いつか"をつなぐ設計
プレコンセプションケアを人生に取り入れると、"いま"の生産性を上げ、"いつか"の妊娠出産の選択肢が広がり、健康寿命も底上げできる。Work-life BalanceからWork in Lifeへ
時間制約は集中と成果を生む。育児中にこそ育つ"キャリアの基礎体力"
子育ては、限られた時間と資源の中で動かすプロジェクト。どんな職場でも通じる"キャリアの底力"が育つ。
この記事は誰に向けて書いているか
患者さんのためにばかりで、「自分の人生を後回し」にしている感覚がある方
先輩をみて「未来に希望が持てない」、「妊娠や子育てとの両立が不安」と感じた方
産業医的視点による健康経営のプレコンセプションケアに関心がある方
キャリアシリーズ
新谷歩教授インタビュー
- Part 1:アメリカに燃ゆる執念、人事を尽くし教育した医療統計がここに
- Part 2:アメリカに燃ゆる執念、人事を尽くし教育した医療統計がここに
vol.8:ゆるふわセレンディピティと共に歩むふんわり仕事人生 - 40代意識低い系女医が夫と子供3人連れてアメリカへ行ってみた
vol.9:行政保健師、40代で大学院へ - 自治体の限界を超えEBPMで切り拓く地域保健の未来
vol.24:介護のお医者さん - ニッチを貫くわたしのキャリア論
執筆者の紹介

氏名:Kanata Tanaka
所属:産業医・心療内科医
自己紹介:「働く世代を支える医療」をテーマとし、ベスリクリニックでメンタルヘルスのプライマリケアを提唱した心療内科医。女性の心身に優しい薬に頼らない医療を目指し、ハーバード大学TMSコースを修了。予防医学を基盤とした企業の健康経営から、うつ病に対するTMS治療や休職者の復職支援、さらに女性のキャリアやライフプランの伴走まで幅広く関わっている。産業医としては、女性ホルモンと生産性の関係やDE&I推進に注力。コロナ禍では厚生労働省検疫科健康管理医として社会的課題に応じた医療にも携わり、臨床と経営の両面から「人の人生と健康」を支えている。著書「眠る投資 ハーバードが教える世界最高の睡眠法」「5人の名医が脳神経を徹底的に研究してわかった究極の疲れない脳」、監修「大人気レストラン「然の膳」の世界一美味しいカンタン薬膳ごはん」
編集者
氏名:菊池祐介
所属:mMEDICI株式会社
専門性:作業療法学修士。首都大学東京(現東京都立大学)・東京都立大学大学院を卒業後、病院勤務を経て専門学校・私立大学にて作業療法教育、地域共生社会の醸成に向けたリハビリテーション専門職の支援に対する研究に従事。現在は心身の健康とその人らしさの実現に向け、保険内外でのクライアント支援を展開している。作業療法の社会的意義向上を信念に、mMEDICI株式会社に参画。
監修者
氏名:廣瀬直紀
所属:mMEDICI株式会社
専門性:保健学博士・公衆衛生学修士。東京大学・東京大学大学院を卒業後、外資系製薬企業の疫学専門家として薬剤疫学・リアルワールドデータ研究を専門とする。日本・グローバルの双方で活動したのちに、全ての人がアクセス可能な一流の知のプラットフォームを作り、「知に繁栄を、辺野に豊穣を」実現すべく、mMEDICI株式会社を創業。
1. 働く世代を支える産業医・心療内科医
私は産業医・心療内科医として、「働く世代に対する医療」に携わっています。
調理師免許を持ち、「病気の治療よりも、生活に根ざした予防を実践したい」という思いから、医学部一年生の頃より未病を扱う漢方内科に関わってきました。
当時は総合診療や家庭医への注目が高まり、高齢者医療を担う人材が求められていました。しかし私は、「“いま働く世代”が元気でいられるように支えることこそ、将来的に医療を必要とする人を減らし、日本の経済を支える力にもなる」という別の角度から、超高齢社会の日本を医療で支えたいと考えていました。
また、心療内科医として仕事やプライベートに悩みながらも「いつか子供を授かりたい」という願いを持つ女性たちに向き合ってきました。一人の身体ではないからこそ、将来を見据えた"心と身体にやさしい医療のあり方"を追求したいと考えたのです。
当時はまだ保険診療にもなっていなかったTMS治療(磁気刺激による薬を使わないうつ病治療)を学ぶため、ハーバード大学のTMSコースを修了しました。
産業医チームでは、女性ホルモンと生産性に強みを持ち、DE&I(ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン)の担当をしています。最近ではDeNAさんで健康経営におけるプレコンセプションケアの講演会や、日本生産性本部での女性管理職向け研修会を担当するなど、働く人と組織の“これから”を支える取り組みに関わっています。
コロナ禍以降には、「社会が必要とする医療を」という思いで厚生労働省検疫所健康管理医なども務めるようになりました。
若さに任せて、365日24時間働き続けるような数年間を過ごし、まさに“ワークライフバランスを捨てた”といっていいほど、人生の重心を“ワーク”に傾け、働いて、働いて、働いて、仕事に没頭してきました。
2. 人生をつくる診療:メンタルヘルスのプライマリケア
心療内科・産業医の仕事は、メンタルヘルスのプライマリケアです。この仕事はまさに人生そのものに触れる仕事です。
「人生を真剣に生きる人ほど、心が疲れてしまう。」
頑張りすぎて燃え尽きてしまう人もいれば、「この道を進み続けてよいのか」と迷い、疲れ果てる人もいます。未来が見えなくなり、不安で動けなくなる人も少なくありません。
そうした方々が再び「自分の足で立てる」ように伴走していくことが、私の役割です。単に不調を診るだけでなく、「どう生きたいか」「どうありたいか」に向き合い、患者さんと共に人生を歩むことができます。

医療の枠を超え、社会・経営・組織など多角的な考え方やアプローチの可能性を持つメンタルヘルスのプライマリケア。臨床にとどまらず現場や社会に出て、人生のあらゆる経験や学びを仕事に還元できるこのフィールドが大好きです。
3. 女性の医療キャリアに正しいワークライフバランスはあるのか
私たちの妊娠や出産のタイミングは難しいです。動物としての"妊娠のリミテーション"と、職業としての"キャリア形成"の時期は重なりあっています。
生物学的に最も妊娠しやすい20代前半は、ちょうど国家試験を控えた学生の時期。部活やアルバイト、将来の進路、パートナーとの関係、経済的にも社会的にもまだ安定していないです。
しかし、20代後半になるとようやく臨床や研究の現場が見え始め、自分の進む道が形になってきます。ですが、この時期に出産や育児をすると、経験を積む貴重な期間を逃し、キャリアのレバレッジが効きづらくなります。
さらに、30代に入ると仕事が最も充実し、責任ある立場を任され始める時期に差し掛かります。真面目で仕事にも誠実な女性ほど、ライフプランもいつも間にか"仕事中心"になりがちになります。
仕事に脂がのっているからこそ「今は抜けられない」、「周りに迷惑をかけるくらいなら、もう少し先に」、けど周りはどんどん妊娠、出産をして幸せそう...。
「女なんだから早く子供産んだ方がいいよ」などと声をかけられ、「そんなことは自分が一番わかっている。」という想いを抱くこともあるでしょう。これだけ一生懸命やってる自分に、もっと頑張れといわれるような無責任な言葉にチクチクする...。
それでも妊娠のタイムリミットは待ってくれません。未来の選択肢が少しずつ狭まっていく感覚を覚え、今までの自分が嫌だった"ワークライフバランス"を取らないと妊娠・出産ができないのかと、戸惑いを覚える方もいることでしょう。
早く妊娠・出産をしても、別の葛藤があります。共にキャリアを積んできた仲間が先へ進んでいく中、取り残される孤独を感じたり、職場でも急な早退や欠勤への不安、働き方の制限、子供を誰かに託す葛藤がつきまとうものです。
仕事でも育児でも周囲に迷惑をかけている気がして、子供と離れて働く後ろめたさを抱えながら医療者として前に進まざるを得ないことや、「子供がいるから、"ほどほど"でいい。」と、「子供」を理由にどこかでブレーキをかけてしまう自分に引け目を感じる方もいるのではないでしょうか。
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4. "ほどほど"に生きたいわけじゃない――働く女性の"見えない壁"
女性キャリアには、"見えない壁"が存在します。
"いま"じゃないけれど、"いつか"妊娠・出産するかもしれない。そう考えると、一時的に仕事を離れる可能性を前提にせざるを得ず、無意識にキャリアの歩みに歯止めをかけてしまうのです。
「周りに迷惑をかけてしまうなら、"ほどほど"にしておいた方がいいのかもしれない。」そんな葛藤を抱えながら仕事をする人も少なくありません。
キャリアの視点では、強制的にブランクが生じるのはやはり女性だけです。男性の育休取得が進んできたとはいえ、多くの男性は子供を育てる立場になっても、仕事を中断せずにキャリアを積み続けられるのが現状です。
本当は手放しで仕事に集中したい。本当は新しい生命の誕生と成長を心から喜びたい。――どちらも素晴らしいことなのに、なぜか胸が詰まり、モヤモヤする感覚がある。男女共同参画、共育(トモイク)時代といえど、やはり女性のキャリアには見えない制約があるのです。
5. 医療者だけじゃない"いつか"と"いま"の間で悩む私たち
産業医として、女性キャリアの"明るくない未来"は医療者だけのものではないと考えます。
終身雇用は過去のものとなり、転職を前提にしたキャリアアップが当たり前。男女を問わず、"仕事も、家事も、育児も、介護も、自己実現も"、全てを同時にこなすことが求められています。
その結果、職場でも家庭でも、そして自分自身からも評価され続け、心身を疲弊してしまう人が少なくありません。
キャリアは「一つの会社で積み上げるモデル」ではなくなり、無数の選択肢の組み合わせになりました。「同じ道を歩いた先輩」が存在せず、むしろ"既存のロールモデル以上に頑張らねば"と感じさせられる時代です。
"いま"とは言えなくても、"いつか"は子供が欲しい。若いうちは、そのタイミングを深く考えず、目の前の仕事に全力で取り組めばいいかもしれません。けれど、気づけばその時期を逃すかもしれません。かといって、常に"いつか"を意識しすぎると、気持ちが定まらず、仕事もプライベートも中途半端になってしまいます。
キャリアが多様になった現代だからこそ、「妊娠・出産はいつか」、「家庭に重きを置くタイミングはいつか」といったプライベートの選択は、自分で管理しなければならないのです。
だからこそ、人生の"節目"ごとに「どうありたいのか」を問い直すことが、"いつか"につながる"いま"の仕事に集中し、自分らしいキャリアをデザインするための鍵となります。
後編では、ワークとライフを含めたキャリアに迷うあなたへ「健康経営としてのプレコンセプションケア」や「ライフデザインシートを使ったワーク」を通じて、"いま"安心して集中して走ることで、まだ見ぬ"いつか"の自分が自信をもって「自分のありたい人生を生きている」と胸を張れるヒントをご紹介します!
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