
【論文執筆のためのAI活用術】最新AIで「Discussionの“Spin”」を回避せよ! - そのまま使えるプロンプトで“言い過ぎ表現”を徹底対策 - vol.9
2025.12.26
自分の研究結果については、つい「これは臨床に効く」「こう解釈できる」と熱く語りたくなりますよね。
しかしその情熱とは裏腹に、Discussionで「言い過ぎてしまう」事こそが、論文執筆で陥りやすい落とし穴です。
観察研究の報告ガイドラインであるSTROBE(日本語版)でも、以下のように注意喚起されています。
考察の中心は研究結果の解釈である。過剰な解釈は、一般的に人間にありがちなことである。
そう、私たちは無意識のうちに「過剰解釈」してしまうのです。そして、この過剰な主張は、読者に誤解を与える「Spin(誇張報告)」とみなされ、リジェクトの直接的な引き金になり得ます。
特に研究に慣れていない研究者は、「どこまで踏み込んで言及して良いのか」の線引きが難しく、つい筆が滑りがちです。
そこで頼りになるのが、”客観的なチェック要員”としてのAIです。 AIに適切な指示を与えることで、論文の「目的 → 結果 → 解釈」の整合性を冷静にチェックさせることができます。
この記事では、生成AI(以下、AI)を活用してDiscussionに潜む「言い過ぎ」を予防し、アクセプトに近づくための具体的な手順を、コピペで使えるプロンプト付きで解説します。
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- この記事のまとめ
- この記事を読むと分かること
- この記事は誰に向けて書かれているか
- 論文執筆のためのAI活用術シリーズ
- 執筆者の紹介
- 編集者
- 監修者
- Discussionで陥りやすい「Spin」とは
- Spin とは?
- 研究デザインによって異なる「起こりやすい Spin」
- 非ランダム化研究の鬼門「因果関係」への言及
- なぜ「不適切な因果表現」はなくならないのか?
- 実践:AIで「結果の過大解釈」をチェックする方法
- 用意するもの
- 手順1:Spin 検出プロンプトを実行する
- AIの出力例
- 手順2:見つけた Spin を“安全に”直す
- AIの出力例
- Spin を見抜くために、どのAIを使うべき?
- Wordに直接「赤入れ」してもらう時短テクニック
- AIの出力例
- まとめ:アクセプトへの近道は、「言い過ぎ」を減らすこと
- 補足:情報漏洩のリスクを正しく理解する
- 医学研究を学ぶならオンラインスクールmJOHNSNOW
- 講座紹介|新時代の統計解析 AIコーディング講座
- 【YouTubeラジオコンテンツ 耳から学ぶシリーズ】
この記事のまとめ
この記事を読むと分かること
Discussionにおける「言いすぎ(Spin)」の境界線
研究デザインに応じた主張・解釈の適切な言い換え
AIで「言いすぎ」をチェックし、適切な表現へ修正する具体的プロンプト
この記事は誰に向けて書かれているか
論文を書き始めたばかりで、Discussionの書き方に自信がない
Discussionで effect / improve / impact / leads to などをつい使ってしまう
結論や臨床的含意を「少し強めに書きたい」という自覚がある
論文執筆のためのAI活用術シリーズ
vol.1:最新AIで書く「論理的なIntroduction」作成ガイド
vol.2:最新AIで書く「国際ガイドライン準拠のMethods」そのまま使えるプロンプトで簡単作成!!
vol.3:最新AIで書く「図で魅せるResults」手書きメモが一瞬で図に!!
vol.4:最新AIで書く「明快なDiscussion」リミテーションにおけるバイアスの整理方法
vol.5:最新AIで書く「投稿規定に沿った論文」確認作業をAIで時短!!
vol.6:最新AIで叶える「スマートな文献検索」最短ステップ
vol.7:最新AIで書く「Methodsの難所:統計解析パート」攻略方法
vol.8:最新AIで叶える「効率的なResults執筆術」図表から一瞬で文章生成する方法
vol.9:最新AIで「Discussionの“Spin”」を回避せよ! - そのまま使えるプロンプトで“言い過ぎ表現”を徹底対策(本記事)
執筆者の紹介
氏名:わたヤク(SNSアカウント名)
所属:病院勤務
自己紹介:病院に勤務する傍ら、臨床研究支援組織にて研究コンサルタントとして活動する薬学博士。様々な臨床研究のデザインや統計解析に携わる。他、筆頭論文が国際的ながんサポーティブケア学会のガイドラインに引用され、自らもシステマティックレビュー委員としてガイドライン作成に携わるなど、研究活動や社会活動も積極的に行っている。その専門知識を活かし、臨床研究におけるAI活用の情報をSNSやブログで積極的に発信。𝕏アカウントは開設から100日で4,000フォロワーを突破し、ブログではAIを活用したデータ解析に関する記事で主要キーワード検索1位を多数獲得。AIと研究を繋ぐ第一人者として、mJOHNSNOWのセミナー講師も務める。
𝕏:https://x.com/ai_biostat
AI医療統計(ブログ):https://ai-biostat.com/
Note:https://note.com/ai_biostat
編集者
氏名:菊池祐介
所属:mMEDICI株式会社
専門性:作業療法学修士。首都大学東京(現東京都立大学)・東京都立大学大学院を卒業後、病院勤務を経て専門学校・私立大学にて作業療法教育、地域共生社会の醸成に向けたリハビリテーション専門職の支援に関する研究に従事。現在は心身の健康とその人らしさの実現に向け、保険内外でのクライアント支援を展開している。作業療法の社会的意義向上を信念に、mMEDICI株式会社に参画。
監修者
氏名:廣瀬直紀
所属:mMEDICI株式会社
専門性:保健学博士・公衆衛生学修士。東京大学・東京大学大学院を卒業後、外資系製薬企業の日本・グローバルにおいて疫学専門家として薬剤疫学・リアルワールドデータ研究に従事。その後、全ての人がアクセス可能な一流の知のプラットフォームを作り、「知に繁栄を、辺野に豊穣を」実現すべく、mMEDICI株式会社を創業。
Discussionで陥りやすい「Spin」とは
Spin とは?
学術論文における Spin とは、一言で言えば 「実際の結果よりも有利に、または好意的に見せる書き方」のことです。
Spin の詳細はこちらの記事でも解説しています
【初学者にも書ける医学英語論文】
型で攻略するIMRADの書き方:一貫性のあるDiscussionを書くコツ
論文のDiscussionにおいて問題となる Spin は、必ずしも意図的な誇張や不正のみを意味するものではありません。
例えば、論文の Discussion を書いている際に、「この結果、もう少し強調してもいいのではないか」「ここまで言ってしまっても、大丈夫だろうか」と迷った経験はないでしょうか?
Discussion は、自分の言葉で研究の意義を語る重要なセクションです。「ここでちゃんと意義を伝えたい」「せっかくここまでやったのだから、価値を示したい」そう思うのは、ごく自然なことでしょう。
一方で、どのように表現するかについて試行錯誤した末に、言葉の選び方一つによって無自覚のうちに「言い過ぎてしまう」ことで、Spin が生じてしまうのです。
研究デザインによって異なる「起こりやすい Spin」
Spin は、研究デザインによって発生しやすいパターンが異なります。
1)RCT(ランダム化比較試験)でよくある Spin
RCTで主要評価項目(Primary Endpoint)が非有意だったときに、「主要評価項目は非有意だったのに、有意差が出た副次評価項目やサブグループ解析の結果だけを強調してしまう」
もちろん、副次評価項目やサブグループ解析の結果そのものを報告することは問題ありません。
ただ、読者や査読者に対して「結論の重心が、いつの間にかPrimaryからズレていないか」と捉えられる懸念があります。結果として、研究の印象を実際の結果よりも誇張しているように見え、Spin と判断されてしまうのです。
2)観察研究でよくあるSpin
観察研究で特に起こりやすいのは、本来は「関連(association)」までしか言えないのに、「因果関係(causation)」を示唆する言葉を使ってしまうパターンです。
例えば次のような単語は、つい使用してしまう表現です。
・effect / efficacy
・improve
・leads to などこれらは「書きながら自分では気づかない」タイプのミスであることが多く、とても厄介な問題です。
非ランダム化研究の鬼門「因果関係」への言及
特に、コホート研究・横断研究・単群介入試験などの非ランダム化研究において難しいのが、Causal language(因果関係を示唆する表現)の扱いです。
以下の図をご覧ください。左側(赤枠)の表現が Causal language ですが、Discussionでよく使っている表現はありませんか?

図:因果関係に関わる英語表現の使い分け
Olarte Parra, C., Bertizzolo, L., Schroter, S., Dechartres, A., & Goetghebeur, E. (2021). Consistency of causal claims in observational studies: A review of papers published in a general medical journal. BMJ Open, 11(5), e043339.
これらの表現について、JAMA の投稿規程では、次のように明記されています。
“Causal language (including use of terms such as effect and efficacy) should be used only for randomized clinical trials.”
つまり、因果を示す表現はランダム化比較試験(RCT)に限って用い、それ以外の研究デザインでは association / correlation の範囲にとどめる、という方針です。
※近年は、観察研究でも、目的・仮定・設計を明示したうえで強い仮定が妥当と考えられる場合には因果的解釈が可能になり得る、という議論も存在します。
Dahabreh, I. J., & Bibbins-Domingo, K. (2024). Causal inference about the effects of interventions from observational studies in medical journals. JAMA, 331(21), 1845–1853. doi:10.1001/jama.2024.7741
なぜ「不適切な因果表現」はなくならないのか?
実際、観察研究のアブストラクトを調査した報告では、半数以上で因果関係を示す言葉が使われていたとされています。
Chiu, K., Grundy, Q., & Bero, L. (2017). “Spin” in published biomedical literature: A methodological systematic review. PLOS Biology, 15(9), e2002173.
この現状には、書き手として共感する方も多いのではないでしょうか。 「因果関係を明示する言葉」を全て封じられると、使える動詞が極端に制限され、文章が非常に窮屈になったように感じるからです。
観察研究で不適切な表現がなくならない背景には、主に三つの要因があると考えられます。
・Causal language の厳密な使い分けが浸透していない
・自身の研究デザインで、因果効果にどこまで言及できるかの見極めが難しい
・結果の意義を強調したい心理
このように、心理的な要因に加えて、「適切な表現を見つける難しさ」そのものがハードルになっています。
だからこそ、AIという第三者の目を使い、客観的にチェックさせるプロセスが極めて有効なのです。
実践:AIで「結果の過大解釈」をチェックする方法
ここからは、実際にAIを使ってDiscussionの Spin をあぶり出す手順を紹介します。
用意するもの
論文の原稿データ
Discussion単体だけでは、結果との整合性が判断できず、AIも「言いすぎ」を見抜けません。
できれば全文推奨ですが、無ければ書かれている範囲のテキストだけでもOKです(重要度が高い順に Discussion > Results > Methods > Introduction)。
手順1:Spin 検出プロンプトを実行する
原稿をAIにアップロード(または文章をペースト)し、以下のプロンプトを入力してください。
そのまま使えるプロンプト(コピペでOK)
この論文原稿を読み、Discussionの解釈や主張に誇張(spin)が懸念されるものを最大10件抽出して一覧化してください。
【出力フォーマット】
- まず「疑いリスト」を箇条書きで提示する(最大10件)。
- [重大度] [カテゴリ] 該当する箇所
- 懸念される理由:詳細に
- 最後に質問を1つだけ提示する:「次に、修正案まで作成しますか? 」ポイント
出力フォーマットを指定しておくことで、「修正リスト」として機能する構造化された回答を出しやすくなります。

AIの出力例
ChatGPT 5.2(Extended)Thinking(一部抜粋)

Gemini3Pro(一部抜粋)

手順2:見つけた Spin を“安全に”直す
リストアップされた指摘に納得できたら、修正案を作ってもらいましょう。同じチャットスレッドで、続けて以下のように入力します。(たった一言でOKです)
修正案を作成してください。AIの出力例

一見すると、この修正案は「英語表現が少し控えめになった」だけのように見えるかもしれません。
しかし実際には、Discussionで問題になりやすい Spin を、論文の文脈に沿って整えるような丁寧な修正が行われています。
実際にどのように改善されているのか見ていきましょう。
① 「安全である」と断定する表現から、結果に基づく「丁寧な表現」へ
手順1では、「安全性が保証されている」といった断定的な言い回しが指摘されていました。
一方、修正案では、
“impaired renal function was not associated with a higher incidence of adverse events”
“These findings suggest that routine dose reduction may not be necessary”
というように、表現のトーンが変えられています。
「安全である」と結論づけるのではなく、「今回のデータでは、有害事象の発生率が高いとは言えなかった」、その結果として「減量が必ずしも必要とは限らない可能性が示唆される」という書き方です。
このような表現の変更によって主張は控えめになっていますが、その分、観察研究として無理のない範囲にきちんと収まった表現になっています。
因果関係を断定してしまう典型的な Spin を避けるための重要な修正がしっかりと実行されています。
② 「どこまでの話か」が、はっきり分かるようになっている
手順1では、「安全性」という言葉が、どの時点の、どの有害事象についての結論なのかが、やや読み取りにくいことが指摘されていました。
修正案では以下の点が明示されています。
• 第1コース(during the first course)
• 初期毒性(early-cycle toxicities)
• 具体的な有害事象名(悪心、嘔吐、好中球減少など)
これにより、「この研究で見ているのは、治療初期に起こりやすい、特定の有害事象に限った話である」ということが、結論の段階で自然に伝わるようになっています。
この修正によって、読み手が「全ての治療期間で安全」「全ての有害事象について問題ない」といった過剰な一般化をしてしまう余地が抑えられているのです。
③ 「分からないこと」を、結論の中で先に伝えている
修正案の後半では、“cumulative toxicities and rare events were not assessed and warrant further study”と、累積毒性や稀な有害事象については、今回の研究では評価していないことが明記されています。
結論の中にこの一文を入れることで、「この結果を、どこまでなら当てはめて考えてよいのか」という適用可能な範囲を適切に表現しています。
このように、手順1で Spin が懸念される表現を抽出し、「修正案を作成してください」と言うたった一言の指示で、ここまで丁寧に修正してくれることがよくわかります。ぜひ、Spin を避けて適切な主張を実現するための心強いパートナーとしてAIを活用しましょう。
※もちろん、最終的な決定権は著者のあなたにあります。AIの提案を「壁打ち」の材料として活用しつつ、最後は必ずご自身の専門的知見に基づいて、納得のいく表現に仕上げてください。
Spin を見抜くために、どのAIを使うべき?
Discussionの Spin を見抜くには、文章表現だけでなく、研究デザインや統計結果との論理的整合性までを読み解く高い推論能力が必要です。
そのため、ChatGPT/Gemini/Claude 等のどのAI使う場合でも、できるだけ推論能力が高いモデルを選びましょう。
以下はこの記事の執筆時点での推奨ですが、今後も目まぐるしくアップデートされていくはずですので、できる限り最新のモデルを使用することをお勧めします。
推奨モデル例:(2025年12月時点)
・ChatGPT 5.2 (Extended) Thinking
・Gemini 3 Pro
・Claude Opus 4.5
Wordに直接「赤入れ」してもらう時短テクニック
ここまで紹介した「チャットでのリストアップ」も有用ですが、修正箇所が多いと、チャット画面と手元のWordファイルを何度も行き来することになり、少し手間がかかりますよね。
そこで、AIにWordファイルへ直接コメントを書き込んでもらう方法を紹介します。
この方法を使えば、まるで指導医や共著者から原稿に赤ペンが入るのと同じ感覚で、原稿の該当箇所に「吹き出し」で指摘が入ったファイルが返ってきます。
※この作業の推奨モデルについて
この作業には高度なファイル編集能力が必要です。 2025年12月時点では、ChatGPT 5.2 (Extended) Thinking の使用を推奨します。他のモデルでは、コメント機能が正しく追加されなかったり、Wordファイルの出力に失敗する場合があります。
そのまま使えるプロンプト(コピペでOK)
原稿のWordファイルをアップロードした状態で、以下のプロンプトを入力してください。
添付した論文原稿を読み、解釈や主張に誇張(spin)が懸念される箇所にコメントを追加した修正版原稿(.docx)を出力してください。
## コメントのフォーマット
・重大度
・カテゴリ
・懸念される理由:詳細にAIの出力例
以下のようにWordの右側にコメントが並んだファイルが生成されます。

いかがでしょうか?
こうしてWordに直接「赤入れ」してもらうことで、「どこが言いすぎなのか」が一目瞭然になり、修正作業の効率が劇的に上がります。ぜひお試しください。
まとめ:アクセプトへの近道は、「言い過ぎ」を減らすこと
Discussionで最もつまずきやすいのは、「自分の結果をどこまで強く主張してよいか」という”さじ加減”です。
特に「因果関係を示唆する言い回し」や「非有意結果の解釈」は、無意識に Spin を生じてしまうこと多く、一方で査読者からは厳しくチェックされるポイントです。
書き上げる
AIで Spin をチェックする
修正する
この3ステップをルーティンにするだけで、Discussionの科学的妥当性は格段に向上します。
まずは手元の原稿で、紹介したプロンプトを試してみてください。Spin について万全を期して、堅実に論文のアクセプトへと近づきましょう。
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補足:情報漏洩のリスクを正しく理解する
ChatGPTやGeminiといった生成AIに入力したデータは情報漏洩のリスクが伴います。
例えば、ユーザーが入力したプロンプトやアップロードしたファイルの内容が、AIモデルの学習や品質改善のために利用されることがあります(モデル学習利用のオプトアウト方法は以下で説明)。
また、サービスによっては不正利用の監視などを目的に、人間のレビュワーが入力内容を確認する場合もあります。これにより、入力内容が意図せず第三者の目に触れてしまう可能性もゼロではありません。
機密情報は原則入力しないことを留意するとともに、情報漏洩リスクを抑えるためAIの学習に利用させない設定(オプトアウト)を確認するなど、各サービスの利用規約やプライバシーポリシーを必ず確認しましょう。
ChatGPTでは以下の手順で入力データがモデルの改善・学習に使われないようオプトアウト設定ができます。(詳細はこちら)
1.左下のアイコンから設定画面を開く

2.「データコントロール」タブの「すべての人のためにモデルを改善する」をオフにする

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