2025.7.1

【科研費 申請書書き方のコツ】科研費とは何かを知り、スタートで差をつけろ:複数採択歴のある研究者が解説 - vol.1

    科研費の獲得は豊かな研究生活のための大きな助けとなる一方で、獲得にハードルの高さを感じる方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。

    更に、申請書の書き方は研究室や医局の内部でのみ受け継がれていることが多く、所属する環境によりスタートラインが大きく異なります。

    「採択者が語る科研費獲得のコツ」シリーズでは、複数回の科研費採択歴のある筆者たちが、その書き方のコツを全7回にわたり徹底解説します。


    この記事では、初めての科研費獲得を目指す人に向けて、科研費の基本情報としてのエッセンスをお伝えします。

    実践に活かせる具体的な内容は、この章に続く第2章以降でご紹介することになりますが、ここでは導入として全体像をつかむことを目的にしています。

    まずは、「科研費とは何か?」について、その目的・種類・申請の流れを説明します。

    次に、「申請前にやるべき準備」について紹介します。

    最後に、「落ちる申請書の特徴」について不採択事例を見て、2章以降の学びへと繋げていきます。


    さて、科研費の審査というものは、その客観性や厳密性が担保されていることが大前提でありますが、審査をしているのは「人」であるということはおさえるべき重要なポイントです。

    そのため、申請書を書く際には研究者側の視点だけでは片手落ちとなってしまいます。色々と思い悩むことがあるとは思いますが、いちど審査委員側の視点に立って攻略法を考えてみましょう。

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    この記事のまとめ

    この記事を読むと分かること

    • 科研費の基本情報と申請の流れ

    • 若手研究者におすすめの研究種目

    • 採択に向けたヒント(最初の一歩)

    この記事は誰に向けて書いているか

    • 科研費をはじめて申請する方

    • 科研費の申請はしたが、採択がまだの方

    • つぎこそは採択をめざしたい方

    採択者が語る研究助成金・奨学金申請書書き方のコツ

    【研究助成金 申請書書き方のコツ】

    • vol.1:科研費とは何かを知り、スタートで差をつけろ - 複数採択歴のある研究者が解説(本記事)

    • vol.2:「審査員の視点」で申請書を徹底解説 - 複数採択歴のある研究者が解説

    • vol.3:採択確率を上げる第三者チェックという裏ワザ - 複数採択歴のある研究者が解説

    • vol.4:具体例で学ぶ「採択される研究計画調書」の書き方 - 審査員経験者が徹底解説

    • vol.5:科研費「不採択」から再挑戦するあなたへ - 「採択される」戦略を徹底解説 

    • vol.6:具体例で学ぶ「採択される予算計画」の書き方 - 審査員経験者が徹底解説

    • vol.7:科研費を継続して獲得するための「具体的戦略」 - 採択経験者が徹底解説

    執筆者の紹介

    氏名:匿名
    所属:大学教員
    専門性:博士(保健学)・看護師・保健師。大学院を卒業後、病院での看護師勤務を経たのちに看護基礎教育ならびに看護教育・看工連携・看護の質向上と安全に関する研究に従事する。現在は、安全で質の高い看護ケアシステムの創成を目指し、看護管理の視点から医療施設に限定することなく広く地域コミュニティーに貢献できるよう専心するとともに、看護学領域の教育研究者・看護管理者などの人材育成にも取り組んでいる。科研費は研究代表者6件、共同研究者5件の計11件を獲得。他にも厚労科研の取得や学会の査読委員、書籍の執筆も行う。

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    1.科研費の基本情報

    科研費ってなに?

    科研費(科学研究費助成事業)は、日本の学術研究を支える最も重要な「研究助成制度」の一つです。

    所管は文部科学省と日本学術振興会(JSPS)で、研究分野は問わず基礎から応用までのあらゆる研究が対象です。

    つまり、志がある研究者であれば、誰でも応募することができる研究助成金です。

    科研費の種類

    科研費にはさまざまな研究種目がありますが、研究内容やキャリアに応じて適切な種目を選ぶことが重要です。

    以下は実際に公募をされている科研費の種目になります。

    • 特別推進研究

    • 学術変革領域研究

    • 基盤研究(S)

    • 基盤研究(A)

    • 基盤研究(B)

    • 基盤研究(C)

    • 挑戦的研究(開拓・萌芽)

    • 若手研究

    • 研究活動スタート支援

    • 奨励研究

    *上記以外にも、研究成果公開促進費・特別研究員奨励費・国際共同研究加速基金などがあります。

    それぞれ科研費種目採択歴のある著者が申請書内容の具体例について解説した、「採択者が語る研究助成金・奨学金申請書書き方のコツ」も併せてご確認ください!

    https://www.jsps.go.jp/j-grantsinaid/contents.html#u20230222021759

    ここでは若手研究者に適した、「若手研究」「基盤研究(C)」について説明し、最後に「研究活動スタート支援」にふれます。


    若手研究

    若手研究は、「年齢が若い人」のための種目ではありません。

    キャリア支援が目的であり、「博士の学位取得後8年未満の人」が対象となります。年齢は問われないので、学位を取得したらまずはこの種目に応募しましょう。

    論文などの業績が十分でなくても、研究計画書の内容で勝負できます。また、博士課程で習得あるいは修得した知識・スキル・人脈などが研究計画の実現可能性に説得性を持たらします。

    これらを意識して書いてみるのもいいかもしれません。

    採択率は40.1%(令和6年度)と非常に高いので(文部科学省 2025)、条件に合う人はぜひ応募しましょう。

    文部科学省 (2025). 科研費(補助金分・基金分)配分状況一覧(令和6年度 新規採択分). https://www.mext.go.jp/content/20250321-mxt_gakjokik-000040929_1.pdf

    ただし、受給できる回数に制限があり、チャンスは2回までとなります。


    基盤研究(C)

    「若手研究」で実績をつんだら、つぎは「基盤研究(C)」に挑戦するといいでしょう。

    この種目は、これまで実施してきた研究をさらに発展させたい場合に適しています。

    採択率は27.5%(令和6年度)と若手研究に比べると厳しくなりますが(文部科学省 2025)、4人に1人は採択されると考えると十分めざせます。

    文部科学省 (2025). 科研費(補助金分・基金分)配分状況一覧(令和6年度 新規採択分). https://www.mext.go.jp/content/20250321-mxt_gakjokik-000040929_1.pdf

    研究活動スタート支援

    「研究活動スタート支援」とは、その名のとおり、研究機関に採用されたばかりの研究者や育児休業等から復帰した研究者をサポートするものです。

    そのため、これだけ他の種目と公募期間が異なります(3月〜5月)。

    採択率は36.4%(令和6年度)と高いので(文部科学省 2025)、採用や復帰が決まったら、すぐに準備しましょう。

    文部科学省 (2025). 科研費(補助金分・基金分)配分状況一覧(令和6年度 新規採択分). https://www.mext.go.jp/content/20250321-mxt_gakjokik-000040929_1.pdf

    なお、若手研究と基盤研究(C)の公募時期は、7月〜9月になります(日本学術振興会HP)。

    日本学術振興会 科学研究費助成事業(科研費)制度概要 スケジュール. https://www.jsps.go.jp/j-grantsinaid/01_seido/02_schedule/index.html

    審査方法について

    審査は、同じ分野の研究者によるピア・レビュー方式で行われます。

    審査グループごとに、審査委員が研究計画書を2段階にわたって審査します。これを2段階方式といい、1段階目と2段階目を同じ審査委員が担当します。

    審査は年末ごろ、採択結果は2月末ごろに開示されます。研究費の交付内定が4月にあり、交付申請を経て、実際の交付決定は6月になります。

    審査は、同じ分野の研究者によるピアレビューと述べましたが、具体的には大学などの研究機関に所属する研究者であり、なおかつ多くが科研費を複数回獲得して研究実績を有する者が多いと思われます。

    審査委員の選考は、「科学研究費助成事業の制度を理解し、かつ当該学術研究分野に精通し、公正で十分な評価能力を有する者であること」という条件のもと、年齢構成バランスなど様々な事項に配慮した上で行われます。

    どのように審査を行なっているかは、研究種目により異なりますが、今回例示した「若手研究」や「基盤研究(C)」では以下のようになります。

    • 1段階目の書面審査は、1課題あたり、審査区分である小区分ごとに配置された4名の審査委員が評価基準に則って申請書類を相対的に評価することで実施します。 評価は、基準別の評点と総合評点をつけるだけでなく、審査意見をフリーテキストで入力します。

    • 2段階目の書面審査は、1段階目の書面審査の集計結果をもとに、他の審査委員の個別の審査意見も参考にしつつ、主にボーダーライン付近の研究課題を対象に評点を付すことで、採択課題の決定を行なっていきます。

    https://www.jsps.go.jp/j-grantsinaid/01_seido/03_shinsa/#u20230310132656https://www.jsps.go.jp/j-grantsinaid/01_seido/03_shinsa/#u20230310132656

    2.申請前から勝負は始まっている

    採択されやすい分野やテーマを見定める

    科研費の応募申請数はとても多いため、採択されるのはほんの一部です。

    そのため、「どの分野で、どんなテーマが通りやすいのか」など、確実に勝てる場やテーマを探ることが戦略の第一歩となります。

    私自身は、採択率の高さではなく、テーマにより応募区分を決めています。

    例えば、私は管理や教育が研究の主軸となりますので、科研費の審査区分(小区分)ですと、「58060 基礎看護学関連」となります。

    しかしながら、病棟における急変時対応の看護実践のプロセス評価とその管理について、看護管理の視点から研究しようとテーマ設定をする場合、この研究の意義を高く評価してくれそうな人は誰でしょうか。

    考えてみると、審査してもらいたい相手は救急看護学や周術期看護学の専門家となります。

    なぜなら、病棟看護師が急変に気づいた患者の対応を実際にするのは救急看護の認定資格を有する看護師であり、急変が生じるリスクが高いのは、ICUから病棟に移行した周術期患者であることが多いからです。

    つまり、彼らこそが一般病棟における看護実践の質管理を希求する対象であるとターゲットを絞ると、小区分としては「58060 臨床看護学関連」を選択することになります。

    実際、テーマの中の主要なキーワードである「急変」を過去の採択課題から検索すると、出現頻度が高いのは明らかに「58060 臨床看護学関連」となります。

    また、人材管理や情報管理、人間工学関連のテーマですと、経営学・心理学・社会学・工学との親和性も高くなるため、内容によっては同じ中区分である「58 社会医学、看護学およびその関連分野」の中でも遠くに位置する「58010 医療管理学」や、そもそも中区分を越えることもあり得ます。

    以上、個人レベルの具体例を示しましたが、つぎに一般的にはどうすればいいかを考えていきましょう。

    採択実績データベースを活用

    まずは、採択率の高い審査区分やテーマを把握しましょう。

    審査区分ごとの科研費の配分状況が毎年公開されています。

    日本学術振興会 科研費データ Ⅲ.科研費の配分状況 (1)研究種目別配分状況 2)審査区分別配分状況(令和6(2024)年度).https://www.jsps.go.jp/file/storage/kaken_27_kdata_g_2827/3-1-2_r6_1225.pdf

    また、過去の採択課題を検索できるデータベースも公開されています。

    科学研究費助成事業データベースhttps://kaken.nii.ac.jp/ja/

    申請区分を見定める際には以下の五つのポイントに注目をしましょう。

    1. 自分の研究の関心領域に近い審査区分を複数選択して比較する

    2. 自分が申請予定の研究種目で、どんなテーマが採択されているか?

    3. キーワードや用語の傾向は?
      (時代により流行がある、例:AI, VR, SDGs, サプライチェーンなど)

    4. 採択された研究代表者の所属や専門分野

    5. 研究チームの構成(例:医学+看護学+心理学+経営学+疫学など)

    以下のような表にまとめてみるのもいいと思います

    年度

    研究種目

    キーワード

    採択率

    研究代表者・チーム編成

    2023

    若手

    地域包括、DX

    約●●%

    博士後期課程学生の採択

    2025

    基盤C

    AI、医療コミュニケーション

    約■■%

    初回申請者あり、他領域研究者で構成された研究チームが多い

    このように眺めてみると、通りやすい領域や過密な領域、逆にニッチな領域も見えてきます。

    3.競争率の高い分野で勝つために

    目に止まる申請書を作る

    まず最も大切なのは「いかに目立つか」です。

    膨大な数の申請書の中で埋もれることなく、審査委員の目に留まるにはどうすればいいのでしょう。

    競争率の高い人気分野では、特に差別化が極めて重要になります。 他とはちがう「きらりと光る何か」です。

    そのためには以下の三つのポイントがあります。

    1. 方法の新規性 
      例:既存研究では用いられていない手法の導入

    2. 対象の独自性 
      例:既存研究では取り上げられていない対象

    3. 枠組みの工夫 
      例:理論の拡張(既存研究では理論Aや理論Bが別々に適用されていたが、これらを統合して新たな理論モデルを構築)

    研究するからには、発見(discovery)や発明(invention)を目指したいかもしれません。 しかし、現実的にはそれらは難しく、多くの研究では革新(innovation)を見据えたものになっています。

    これまでとは違う新たな切り口や捉え方、新たな活用法など、「新機軸」がどこにあるかを探りましょう。


    では、その新機軸はどのように見つけていけばいいのかを考えていきましょう。

    差別化は、先行研究レビューに基づいて行います。

    最近では、AIツールを用いて効率的な文献レビューが可能になっています。

    すきとほる. 【保存版】AIツールで文献検索 〜 Consensusで爆速AI文献レビュー!https://nothing-without-poison.com/hack19/

    先行研究で何がどこまで明らかになっており、まだ残された課題がどこなのかを明示しましょう。

    例:「これまでに●●のようなアプローチが多くなされてきたが、■■に課題があることから、本研究では▲▲に着目することで新たな切り口での課題解決を図る」

    このように記載をすることで、既存研究との違いが審査委員に伝わりやすくなります。

    研究アイディアを整理する

    科研費申請の核となるのが「研究計画書」です。

    ここでは、次の3点が一貫して矛盾なくつながっていることが大前提です。

    • 目的(RQ: Research Question):何を明らかにしたいのか?

    • 方法:目的を達成するためにどうやって調べるのか?

    • 意義:それをすることがなぜ大切なのか?

    あなたの申請書のストーリー展開には無理がありませんか?

    これらの主張が論理的に展開されており、研究のストーリー構成として筋が通っているかを確認しましょう。

    革新(イノベーション)的なアイデアの発想法とその整理の方法に、デザイン思考とシステム思考があり、そこでは様々な手法が提案されています。

    ここでは、ブレインマップとアウトラインを紹介します。


    Step 1:ブレインマップの作成

    自由にキーワードを書き出し、関連づけることで、アイデアを発散させるとともにそれらの発想を可視化します。

    ブレインマップの例

    * miro (https://miro.com/ja/) で作成


    Step 2:論理フレームに沿ったアウトラインの作成

    次に研究計画書のフレーム(背景、目的、方法など)などの流れに沿って箇条書きで整理

    ここまでできたら、いちど第三者に説明し、自分の意図した内容が伝わるかを確認することをお勧めします。

    また、見てもらう相手としては、自分の領域に近い人だけでなく、できれば全く別の領域の人にお願いするといいです。

    私は、これまでに看護学だけでなく、医学・工学・心理学・経営学・数学の申請書を見せてもらえる機会に恵まれました(もちろん内容はほとんど理解できませんでしたが)。

    また、医学・工学・数学の人に説明する機会があり、論理展開の未熟さを痛感しました。

    論理的思考の訓練ができているのは、物理・数学・哲学の人たちなので聞き手として適任だと思います。

    多くの大学には研究費申請書の相談窓口がありますが、まわりに異なる視点からのアドバイスをもらったり相談できる人がいない場合には、研究者コミュニティに参加するのも一つの手です。

    X(旧Twitter)などSNSでは、ありがたいことに有志で「質問箱(マシュマロ等)」を受け付け丁寧に回答してくれる研究者がいます。

    また、 オンラインスクールmJOHNSNOWのコミュニティSlackでは、さまざまな背景・分野のスペシャリストからフレッシュな若手までが、垣根をこえて自由にやりとりをしています。

    mJOHNSNOW. https://mmedici.co.jp/mjohnsnow

    このようなコミュニティを通じてチャットコンサルをお願いするのもいいかもしれません。

    場合によっては共同研究に発展する可能性もあります。


    他にも、最近ではAIの利用も選択肢の一つに入ってきました。

    研究計画書をネット上にあげるのはアイディアの流出という点でリスクが高いので推奨はしませんが、科研費の研究種目や評価基準を示した上で批判的に吟味してもらうようなプロンプトを入れることで、AIが問題点と適切な改善策を提示してくれるかもしれません。

    このような、第三者のチェックについては以降の記事で解説をいたします。



    少し話がそれましたが、アウトラインに沿ってアイデアの整理ができたら、次はパラグラフライティングで文章化していくことになります。

    この段階で言語化できないアイデアや筋の通っていないアイデアは、その後、文章化しても審査委員には伝わりません。

    審査委員に伝わり、読みやすい文章を作成するための方法は今後の記事で解説をしていきます。

    4.こんな申請書は落ちる!まずは落ちない申請書を作ろう

    なぜ科研費申請で不採択となってしまうのか。

    科研費申請で落ちる最大の原因は「わかりにくさ」です。

    どれだけ面白い研究でも、それが伝わらなければ意味がありません。

    毎年数多の応募申請がありますが、審査委員は、これらを読み、評定基準に基づき、限られた枠の中でふるいにかけることが求められます。

    日本学術振興会. 科学研究費助成事業(科研費) 制度概要 審査・評価について:審査における評定基準等(令和6(2024)年度). https://www.jsps.go.jp/j-grantsinaid/01_seido/03_shinsa/#u20230310132656

    だからこそ「減点されない書き方」が重要です。

    つまり、「通る書き方」以前に「落ちない書き方」を知る必要があります。

    詳しい申請書の書き方については以降の記事で解説をしていきます。

    この記事では、実際の不採択経験や審査委員の意見をもとに、落ちる最大の理由である「わかりにくさ」を中心に、よくある六つのミスと改善策を紹介します。

    皆さんもどこが悪いのか、一緒に考えていきましょう。

    本文を読む気にならない概要

    科研費の審査は年末の短期間で多くの申請書を読んで判定します。

    多忙な審査委員は、まず「概要」を読んで、おおまかな判定をすることが多いです。

    この10行に研究の魅力やエッセンスが凝縮されており、いかに「本文を読んでみようかな」という気にさせるかが勝負になります。

    概要は「10行程度」で書くとの指示がありますが、理想は「8行」とも言われます。

    ここがしっかり書けていないと、それ以降は真剣に読んでもらえないかもしれません。

    改善策:

    • 文章は短い方が伝わる

    • 時間をかけて執筆し、推敲を重ね、客観的に見直す

    • 概要の8〜10行に熱量(魂)をこめて、研究の価値を凝縮する

    目的が曖昧すぎる

    • 「○○について考察する」

    • 「□□を分析して、△△の可能性を探る」

    このような表現は、ゴールが不明瞭で、何をする研究なのかが伝わりません。

    「考察する」ことによって、また「可能性を探る」ことによって、「この研究で具体的に何が得られるのか」を、審査委員は知りたいのです。

    改善策:

    • 動詞は「〜を明らかにする」「〜を開発する」など成果を明示

    • 研究対象・方法・期待される成果などを目的の文章に含める

    • 目的は原則一つとし、1文で端的にまとめる(例:本研究は、○○における□□のメカニズムを、△△の手法を用いて解明することを目的とする)

    計画がざっくりしすぎている

    計画が雑すぎると、「この研究は、ほんとうにできるの?」と疑われます。

    大切な国家予算を分配するのですから、どんなに良いテーマでも、実現可能性の低い計画は落とされます。

    審査委員の方が自信を持って採択できるような実現可能性のある具体的な研究計画を立てましょう。

    改善策:

    • 年度ごとに具体的な作業内容を書く(例:2025年度 ○月 ○の目的で○人にインタビュー、○月 ○○分析)

    • 研究計画はいくつかのサブテーマに分けて記載

    • 使用ツール・対象・サンプル数・分析方法なども記載

    • 研究計画を遂行するための研究体制を記載

    • 研究計画のタイムテーブルやスケジュール表の図表があるとわかりやすい

    • 初年度の計画は、特に念入りに記載

    • 既に研究に着手している場合は、ある程度のデータが出ていること等もアピールする

    • 研究が当初計画のとおりに進まないときの対応を記載

    独創性が弱く、差別化できていない

    「これのどこが新しいの? 誰でもやってるのでは?」と思われたらそこまでです。

    既存研究との違いを示せないと採択は厳しいです。

    改善策:

    • 先行研究レビューの要点を2〜3の文献を簡潔に紹介することでまとめる

    • これまでの未解決課題に対し、「自身の強みに裏付けられた新たな切り口や着眼点で挑む点で独創的」であると、差別化のポイントを明示

    • 先行研究と本研究の比較が可能な表や図も有効

    審査委員に対して不親切

    専門用語の多用、長文、カタカナ・alphabet・漢字の多さ、など読みづらさは不利になります。

    審査委員は同じ領域の研究者であるとは限りません。

    そのような人が年末の多忙な時期に大量の申請書を読んでいる様子を想像してみてください。


    よくない例:

    • ネオリベラリズムの時代における都市リストラクチェアリングとジェントリフィケーション

    • aging scienceに関わるhealth care literacyについてmodifiedすると…

    • 保健医療情報及び保健医療情報通信技術国際化に向けた組織的取組実態

    改善策:

    • 専門用語には注釈や言い換えをつける

    • 1文40字程度とする

    • ひらがなを多めにし、適度な余白を設ける

    • 文字ばかりでなく図表*を使用する

    • 論理的なストーリー構成とする

    *図表作成のヒント

    小野英理. 京都大学 平成31年度科研費申請対策説明会 申請書グラフィックデザインセミナー. https://ocw.kyoto-u.ac.jp/course/373/

    予算が適当

    予算配分が雑で非現実的な内容だと、「まじめに取り組んでいないな」と思われてしまいます。

    よくない例:

    • 旅費や謝金が突出して多い

    • 必要性の低い備品に高額設定

    • 曖昧な表現での記載(例:一式◯◯円)

    改善策:

    • 科目ごとに具体的な金額と内訳を書く

    • 予算内容および予算額と研究内容との整合性をはかる

    5.おわりに

    科研費の準備は、申請書を書く以前から始まっています。

    • 採択された研究のリサーチ

    • 差別化のデザイン

    • 研究計画のロジック構築

    この三つを丁寧に積み重ねることが、「ただ書くだけ」から「通る申請書」へと変わるカギです。

    また、審査委員の心情に思いをはせ、形式の不備などの減点ポイントを避けることで採択の可能性は上がります。


    ここまで読まれた方の中には、申請書の書き方について不安を感じ始めた方もいらっしゃるのではないでしょうか。

    ご安心ください。「採択者が語る科研費獲得のコツ」シリーズでは申請書の書き方を徹底解説していきます。

    まずは、科研費とは何かを知ることができれば本記事での目標は達成です。

    次回予告

    次回の記事では「科研費申請書のフォーマットと何を記入すべきか」を解説します。

    まだ、科研費申請書を見たことが無い方にも分かりやすく解説がされています。

    乞うご期待ください。

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    • vol.1:科研費とは何かを知り、スタートで差をつけろ - 複数採択歴のある研究者が解説(本記事)

    • vol.2:「審査員の視点」で申請書を徹底解説 - 複数採択歴のある研究者が解説

    • vol.3:採択確率を上げる第三者チェックという裏ワザ - 複数採択歴のある研究者が解説

    • vol.4:具体例で学ぶ「採択される研究計画調書」の書き方 - 審査員経験者が徹底解説

    • vol.5:科研費「不採択」から再挑戦するあなたへ - 「採択される」戦略を徹底解説 

    • vol.6:具体例で学ぶ「採択される予算計画」の書き方 - 審査員経験者が徹底解説

    • vol.7:科研費を継続して獲得するための「具体的戦略」 - 採択経験者が徹底解説