2025.11.25

【採択者が語る科研費申請書書き方のコツ】科研費 スタート支援:基礎医学研究およびその関連分野 - vol.5

    博士課程修了後にポスドクとして研究を続ける筆者は、基礎医学研究として硬組織発生のメカニズム解明に取り組んでいます。

    本記事では、研究者としての第一歩として申請した「科研費 研究活動スタート支援」が採択に至るまでの準備や工夫を紹介します。

    博士課程からポスドクへの橋渡しとなる科研費申請のリアルを、これから挑戦する研究者の方々へお届けいたします。

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    この記事のまとめ

    この記事を読むと分かること

    • 研究活動スタート支援の申請条件

    • 採択者が申請書を書く際に意識している点

    • 採択される申請書の書き方

    この記事は誰に向けて書いているか

    • 研究助成金の申請をしようと考えている方

    • 申請書の書き方に悩んでいる方

    • 採択された方の経験談を知りたい方

    獲得ノウハウシリーズ

    【研究助成金】

    • vol.1:科研費 スタート支援 - 社会医学、看護学およびその関連分野

    • vol.5:科研費 スタート支援 - 基礎医学研究およびその関連分野

    • vol.10:科研費 スタート支援 - 社会医学、看護学およびその関連分野

    • vol.11:科研費 若手研究 - 内科学一般およびその関連分野

    • vol.14:科研費 スタート支援 - 社会医学分野

    • vol.15:科研費 スタート支援 - 社会医学分野

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    申請者情報

    氏名:匿名
    所属:非公開
    職位:ポスドク
    専門分野・領域:基礎医学

    助成金情報

    助成金名

    科研費 研究活動スタート支援

    助成団体の種類

    科研費

    助成団体名

    日本学術振興会

    助成制度・助成団体の理念

    人文・社会科学から自然科学まで全ての分野にわたり、基礎から応用までのあらゆる「学術研究」(研究者の自由な発想に基づく研究)を格段に発展させることを目的とする「競争的研究資金」であり、ピアレビューによる審査を経て、独創的・先駆的な研究に対する助成を行うもの。

    URL

    https://www.jsps.go.jp/j-grantsinaid/index.html

    応募対象の条件

    年齢に条件あり、保有学位に条件あり、雇用形態に条件あり

    最大助成金額・期間

    300万円以下×1~2年

    実際に支給された助成金額・期間

    • 1年目:143万円

    • 2年目:156万円

    募集頻度・時期

    毎年決まった時期に公募

    研究内容

    申請時の研究タイトル

    硬組織の発生における遺伝子XXと遺伝子YYの共役メカニズムの解明

    研究概要

    これまで我々は、某硬組織の遺伝子疾患の原因を究明するために研究を行っている。硬組織の発生に関与する遺伝子XXに注目し、世界で初めて遺伝子XXのノックアウトマウス(XX-KO)の作製に成功した。XX-KOでは重度の硬組織障害を有した。

    また、XX遺伝子と同様に組織の発生に関与する遺伝子として、遺伝子YYがある。そこで本研究は遺伝子XXと遺伝子YYとの関連性について検討し、硬組織の発生メカニズムを解明する。

    申請までの経緯

    助成金を知ったきっかけ

    上司・同僚からの紹介

    この助成金を選んだ理由

    一番の理由は最も有名な助成金だったことです。

    私の講座では、大学院を卒業したら全員がスタート支援を必ず申請する流れがあり、医局員は全員必ず科研費を申請していました。

    また、ほぼ全員が科研費を取得しており、私自身も研究者のスタートとして自分の研究費が欲しかったため、申請に対して理由を考える余地は特にありませんでした。

    逆に、私の講座では、他の助成金についての情報はほとんどありませんでした。大学内の助成金や所属学会の助成金などの非常にローカルな助成金に申請する医局員もいましたが、そのような医局員も基本的に科研費は必ず申請していました。

    科研費は必ず採択されるわけではないので、今後の研究活動を中断させないためにも、複数の助成金に申請することは保険として有用です。

    年齢制限のある若手研究者向けの助成金の存在を知ったのは、mJOHNSNOWに入会してからです。現在はもう申請要件を満たさないので、当時申請しなかったことに対してもったいなかったと思うことがしばしばあります。

    応募に至るまでのストーリー

    申請にあたっては、講座の先輩方や同期たちと同様、博士論文の内容をメインで記載しました。

    同期も全員スタート支援を申請していたので、応募に至るまでの特別なストーリーはありません。

    苦労した点として、スタート支援は締切が非常に短く大学院在籍中から申請書を作成しました。指導教官とは何回も書類のやり取りをして、綿密に添削してもらいました。

    指導教官は複数名のポスドクの指導を担っていたので、その期間は非常に多忙でした。


    今振り返ると、卒業後すぐにスタート支援を申請することは既定ルートだったので、博士論文と同時並行でスタート支援の準備をすればタイパもコスパもよかっただろうと反省します。私自身も指導教官も短期間に負担が集中して非常に疲弊した記憶があります。

    現在大学院の卒業準備をされており、今後も研究を継続される方々は、スタート支援の準備も並行して行うことを強く推奨します。

    申請ノウハウ

    募集要項で特に注目した点

    過去の採択者情報

    申請準備で実施したこと

    過去の採択例の収集・分析、他者に研究計画書の添削依頼、申請書に挿入用の図表の作成、助成金獲得に関するセミナー・書籍の購入

    申請書に記載が求められる項目

    研究目的・背景、研究方法、スケジュール、研究の独自性・新規性、研究の社会的意義、予算の使用用途

    各項目の記入分量

    1. 研究目的、研究方法

    分量に関しては、当時の要項に従いました。

    スタート支援に限らず、科研費は分量の規定が厳密です。更に、頻繁に要項や様式が変更になります。必ず申請前によく要項を確認しましょう。

    この申請書作成に際しては、研究の概要を10行程度で簡潔に記入しました。論文のabstractを執筆するのと同様で、申請書全体を完成させた後に作成しました。

    ※以下は、申請当時の要項における文量に基づき記載したものです。

    本文は、
    (1)本研究の学術的背景、研究課題の確認をなす学術的「問い」
    → A4で2/3程度

    (2)本研究の目的および学術的独自性と創造性
    → A4で1/3程度

    (3)本研究で何をどのように、どこまで明らかにしようとするのか
    → A4で2/3程度

    2. 本研究の着想に至った経緯
    → A4で1枚程度

    構成・ストーリーについて意識したポイント

    構成については、指導教官から『申請書の1ページ目は「顔」になる』と指導され、ビジュアル的なインパクトを重視しました。

    具体的には、概要が伝わるような図を作成しました。本文を読まなくても図を見れば概要が伝わるように何度も作図を修正しました。作図が一番工夫し苦労しました。


    また、非常に特徴的なノックアウトマウスを使った実験だったので、マウスの写真や硬組織疾患の写真を使用し、ビジュアル面で訴えました。

    ストーリーについては、研究の概要は院生時代の延長でしたので、博士論文の概要のような内容を記入しました。


    特に当時はiPS細胞などで再生医療に関して注目が集まっていたので、申請のタイミングもよかったと思います。

    講座自体が物質的にも人材的にも非常に恵まれた一流の研究環境だったので、そこを最大限にアピールしました。

    具体的には、物質的に関しては、大変高価な最新の実験機器や完全オリジナルな細胞・マウス・試薬を複数有していることや潤沢な研究費があることなど、大変恵まれた実験環境であることを強調しました。

    人材的に関しては、研究能力に非常に長けた教授を筆頭に、有名ジャーナルに複数本論文を持つ教員について示し、指導環境は万全であることを強調しました。


    また、海外の研究室や当時マスコミなどで有名だった教授と複数のコネクションがありました。それらのコネクション先の業績も引用し、研究の現実性や遂行能力についてもアピールしました。

    『スタート支援では業績はあまり問われない』
    が通説ですが、やはり業績があるに越したことはありません。

    大学院生時代から逆算的に思考し、計画的に論文執筆や学会発表を行いましょう。

    当時の私はそこまで考えや実力が及ばず、決して業績が多い方ではありませんでした。

    それでも無事に採択されたので、業績が少なくても諦めずに積極的に申請しましょう。

    独自性や社会的意義でアピールしたポイント

    この領域をリードする講座だったため、研究の独自性が非常に高かったです。

    また、留学経験のあるスタッフも多く、留学先の研究室との共同研究も盛んだったこともアピールポイントでした


    そして、社会的意義として基礎研究だったので、「細胞やマウスの実験で人体の再生のメカニズムが解明されると、ヒトへの臨床応用に繋がる」ことを強調しました。

    実際にヒトの疾患で現れる症状と関連があったので、臨床への貢献に関連付けて社会的意義は書きやすかったです。

    文章表現の工夫

    図書館にあった、羊土社の「科研費獲得の方法とコツ」を読んでから書類を作成しました。

    要所を太字や下線を引いて、重要な部分を目立つように工夫しました。また、明朝体の太文字は読みにくいため、太字はゴシック体、地の文は明朝体にしました。

    文量に関しては「1パラグラフで1センテンス」になるように意識し、可読性を高めるために文章の途中で改ページしないように文字数を調節しました。

    レイアウトの面では文字の密度が高いと読みにくいので、適度に余白を取るように工夫をしました。


    また、内容についても専門外の人が読んでもわかるように、大学外の友人や知人にも読んでもらい、日本語として意味が成立しているかを確認しました。

    講座にはスタート支援を獲得した経験のある先輩が多く在籍していたので、過去の申請書を参考にしました。また、科研費を獲得した経験のある先輩たちに自分が書いた申請書を読んでもらい、多くの助言をもらいました。

    自分では様々な工夫をしたつもりでしたが、最終的には指導教官がかなり修正してくれました。

    記入が難しかった項目とその理由

    当時は申請書に白黒の画像しか挿入できなかったので、免疫染色の画像が白黒になってしまい、写真としてのビジュアル的な「強さ」があまり期待できませんでした。

    その代わりに、申請書の1ページ目には「概要の図」を目立つように配置しました。

    忙しい審査員が流し見でも理解しやすいように、表やグラフは複数挿入して、文章をきちんと読まなくてもある程度研究の内容や流れが分かるように意識しました。


    実験計画のスケジュールは、「見た人がイメージしやすく書くように」と指導教官から指導されました。研究のゴールの認識が曖昧だったので、スケジュールの項目に関する記載は苦労しました。

    最終的にはかなり指導教官に修正してもらいました。研究について改めて考えることができ、その後の研究活動の粒度が一段階上がったように感じました。

    一方、スタート支援では共同研究者について考えたり、相談したりする必要がなかったのはありがたかったです(基盤研究では申請書に共同研究者について記載する部分があります)。

    採択につながったと考えるポイント

    講座や教授のネームバリューが非常に強かったです。

    私は大学院の進学先を『一流の研究環境』という基準で選択しました。大学院の研究テーマに対する純粋な興味より、卒業後のキャリアの発展性に重点を置きました。

    具体的には、
    • 講座の研究費が多い
    • 医局員が高確率で科研費を所有している
    • 論文の出版が頻繁
    • 他大学の教員を多数輩出している
    • 海外留学先の選択肢が多い
    • 大学院中退者が少ない
    などに着目しました。

    実際に進学すると、とても研究するのに恵まれた環境で「研究のイロハ」を学ぶ経験ができました。

    研究費の獲得は継続的に研究するために必要不可欠です。医療者にとって大学院は初めて研究に触れる機会という人も少なくないと思います。

    自分がやりたい研究も大事ですが、初学者のうちに一流の指導者と研究環境で「研究のイロハ」を学ぶという経験は何物にも代えがたいです。

    また、海外留学や海外就職を選択する先輩や同期が複数人いたことも、海外へのハードルをかなり下げてくれました。

    大学院は学部と異なり中退する人も少なくありません。博士号を獲得しその後の就職先を見据えて研究者生活をスムーズにスタートするためには、大学院に進学する前からの「逆算の戦略」が非常に有効だと思います。


    スタート支援という科研費はその名の通り研究者の「スタート」を支援します。

    もちろん採択されるに越したことはありませんが、申請書を作成するという機会自体がとても貴重な経験です。ポスドクの皆さんは積極的に申請しましょう。

    採択後の成果

    助成金の使用用途

    実験のための試薬、培地、消耗品の購入など。学会参加費や書籍の購入。

    これから応募する人へのエール

    大学院卒業後に最初に申請する助成金の一つだと思います。

    私がスタート支援を申請した際には、mMEDICI Libraryの獲得ノウハウの解説記事医学研究オンラインスクールmJOHNSNOWの佐々木先生の「科研費セミナー」もありませんでした。もし今スタート支援を申請するという反事実仮想ならば、私は迷わずmJOHNSNOWを活用すると思います。

    スタート支援の後には、若手研究や基盤研究があります。助成金の申請は研究を続ける限り必ずついて回る課題です。

    mJOHNSNOWのフェローには、科研費を申請する仲間がたくさんいます。研究者の皆様、これからも一緒に頑張りましょう。

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    採択者が語る研究助成金・奨学金申請書書き方のコツ

    【研究助成金】

    • vol.1:科研費 スタート支援 - 社会医学、看護学およびその関連分野

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