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 【採択者が語る助成金獲得のコツ】住友生命 子育てプロジェクト女性研究者支援:社会医学領域 - vol.7

 【採択者が語る助成金獲得のコツ】住友生命 子育てプロジェクト女性研究者支援:社会医学領域 - vol.7

2026.01.19

2年間海外ポスドクの権利を得た筆者は、医療情報における多様な人体表象がもたらす情報伝達効果の量的・質的検討の研究に取り組んでいます。

海外で研究とワンオペでの子育てを両立しながら研究に取り組んだ筆者が、民間助成金に採択された実体験をもとに、申請準備の考え方や工夫や本助成金のキャリアへの影響などを振り返ります。

限られた記載スペースで何を削り、何を伝えるのか。

研究の独自性や社会的意義を、あえて“直接書かずに”伝えるとはどういうことか。

育児や不安定な身分といった現実的な制約を抱えながらも、自分の研究を前に進めたいと考える方に向けて、助成金申請のヒントを共有します。

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この記事のまとめ

この記事を読むと分かること

  • 看護と工学の異分野連携型助成金において、非専門家に研究の意義をどのように伝えればよいか

  • 研究の新規性・社会的意義・実行可能性を、限られた分量の申請書の中で効果的に示す具体的な考え方

  • 継続的な研究実績や既存データが、助成金採択においてどのように評価につながるか

この記事は誰に向けて書いているか

  • これから民間助成金に申請しようとしている方

  • 看護・医療分野の研究を、工学系・企業関係者など非専門家が含まれる審査に提出する必要がある方

  • 異分野連携型の助成金において、研究の価値をどう言語化すべきか悩んでいる方

獲得ノウハウシリーズ

【研究助成金】

  • vol.1:科研費 スタート支援 - 社会医学、看護学およびその関連分野

  • vol.2:科研費 基盤(C) - 生涯発達看護学関連

  • vol.3:古川医療福祉設備振興財団研究助成 - 医療・福祉、リハビリ分野

  • vol.4:科研費 若手研究 - 高齢者看護学および地域看護学関連

  • vol.5:科研費 スタート支援 - 基礎医学研究およびその関連分野

  • vol.6:富山県立大学研究協力会 奨励研究 - 看護工学連携分野

  • vol.7:住友生命 子育てプロジェクト女性研究者支援 - 社会医学領域(本記事)

【奨学金】

  • vol.1:吉田育英会 海外プログラム

  • vol.2:JEES・三菱商事 科学技術学生奨学金

申請者情報

氏名:原木 万紀子
所属:Baltic Film, Media and Arts School, Tallinn University, Postdoctoral Fellow
職位:ポスドク
専門分野・領域:社会医学

助成金情報

助成金名

住友生命:未来を強くする子育てプロジェクト 女性研究者への支援

助成団体の種類

民間企業

助成団体名

住友生命

助成制度・助成団体の理念

育児のため研究の継続が困難となっている女性研究者および、育児を行いながら研究を続けている女性研究者が、研究環境や生活環境を維持・継続するための助成金を支給します。人文・社会科学分野における萌芽的な研究の発展に期待する助成です。

URL

https://www.sumitomolife.co.jp/about/csr/community/mirai_child/women/bosyu.html

応募対象の条件

研究分野に条件あり、未就学児を養育しているか否か

最大助成金額・期間

100万円×2年

実際に支給された助成金額・期間

現在1年目で100万円

募集頻度・時期

毎年決まった時期に公募

研究内容

申請時の研究タイトル

医療情報における多様な人体表象がもたらす情報伝達効果の量的・質的検討

研究概要

解剖図等、医療情報における人体表象は、筋肉質の白人男性が"標準"として用いられてきました。この標準を用いて学習した医師は、標準以外の患者に対して誤診の可能性が高いことが知られています。

こうした限定的な表象は医療の不平等の一因として指摘されており、医学教育におけるHidden Curriculumとしても論じられています(Karnieli-Miller et al. 2011)。

また、表象されないこと自体が、標準以外の人々のエンパワメントやウェルビーイングに影響することも指摘されています。

これらの議論は主に白か黒かという二元論で語られることが多く、中間色の肌色を持つアジア系が議論の対象に含まれているのかが不明確である点が課題として残されています。

さらに、アジア人の表象を人種差別的な表現を用いずに提示した場合、アジア人自身が自分達が表象されていることに気づかないという課題が、過去の事例から指摘されています。

本研究では、特にアジア人女性に焦点を当て、表象が与える影響の一端を質的に探ることで、医療情報における人体表象の多様性を目指す一助とすることを目的とします。

申請までの経緯

助成金を知ったきっかけ

学会・研究ネットワーク

この助成金を選んだ理由

自分の置かれた情報、すなわちワンオペで海外ポジションに就いていること、未就学児がいること、海外ポジションへ移るにあたり身分が不安定になったことの変化が、本助成金を選んだ大きな理由です。

他の助成金と異なっていた点として以下の三つが挙げられます。
人文社会学系の研究を支援する点
未就学児がいることが条件である点
身分が不安定な状況にある点

私の研究は社会医学研究に分類され、医学分野・社会学分野の両者に当てはめることができます。しかし、全体の研究者人口(パイ)が少ない社会学分野の特性を踏まえ、今回は文系寄りの研究として申請しました。

また、未就学児がいることを条件とする助成金はこれまで目にしたことがなかったことや、身分が不安定な状況という自身の背景が無理なく当てはまったことも、本助成金を選択した大きな理由です。

応募に至るまでのストーリー

所属学会のメーリングリストにて助成情報が流れてきたのを見て、応募を決めました。

本助成は条件をかなり限定した公募であったため、応募しても自身が採択される可能性があるのかを見極める必要があると考え、HPに掲載されている過去の受賞者情報を全て確認しました。

具体的には以下の点について勘案しました

  • 海外所属でも受給可能かどうか

  • 「身分が不安定な状態」とはどのような状況を指すのか

  • 子育てと仕事のバランスがどの程度求められているのか

その上で、過去の採択者の状況に自身が当てはまるか、あるいはそれ以上の負担が生じうる状況にあるかを検討し、応募を決めました。

また、本助成はこれまでの研究経歴よりも、申請内容と応募者が置かれた状況を重視するとされていました。そのため、上記の条件を細やかに確認した上で応募判断を行ったという背景があります。

申請ノウハウ

募集要項で特に注目した点

過去の採択者情報

申請準備で実施したこと

過去の採択例を収集・分析

申請書に記載が求められる項目

研究目的・背景、研究方法、スケジュール、研究の独自性・新規性、研究の社会的意義、予算の使用用途

各項目の記入分量

  • 研究テーマ:1ページ(研究上の課題および子育て上の課題の明記を含む)

  • 研究計画1年目とその年度の資金使用用途(1ページ)、研究計画2年目とその年度の資金使用用途(1ページ)

  • 研究者として将来のビジョン(半ページ)

  • 研究業績:2ページ以内

  • 推薦者の推薦状(2名分)

具体的には上記書類が必要です。

民間助成金のため公的助成金よりも記入内容は少なめですが、少ない中で簡潔に説明する必要があります。

構成・ストーリーについて意識したポイント

記入スペースが少ないため、簡潔な言葉を用い、研究全体のストーリーが分かりやすく伝わるよう工夫しました。

研究者は詳しく多く書くことに慣れている方が多いと思いますが、専門外の方にも分かりやすく、短い文章で伝えることには客観的な視点が必要です。そのため、いったん記載した後に数日置いてから編集する作業を何度か繰り返しました。

また、応募した助成金では研究遂行における課題の記載が求められていたため、どのような固有の課題が存在し、その解決に支援が必要であるのかが分かるように記載しました。

具体的には、「研究課題は新しく、実施する意義がある」→「しかし、子育てや身分が不安定であるという課題があり、遂行が難しい」→「だからこそ助成金による支援が必要である」というストーリー構築を意識して記載しました。

独自性や社会的意義でアピールしたポイント

研究内容自体が、日本国内では同様の研究を見たことがない点、また世界的に見ても問題として指摘され続けている一方で解決方法が確立されていない課題である点が特徴です。

これらについて直接的な表現は用いませんでしたが、課題に切り込める研究であることを強く意識してアピールしました。

また、医学分野の課題を社会学分野の枠組みに置き換えて記載したため、学際的な研究である点も強く打ち出しています。

社会的意義についても、問題点の指摘自体は既存研究でなされていることを踏まえ、本研究を実施することで解決につながる可能性があることを暗示的に示すにとどめました。

あえて再度強調するのではなく、研究計画書全体の構成が適切であれば、自ずと独自性や社会的意義は伝わると考え、「これが独自性である」「これが社会的意義である」といった項目立てや直接的な表現は行っていません。

文章表現の工夫

記載できる範囲が限られているため、課題の提示を端的に行い、それを裏付ける論文を数点示した上で、どのようなResearch Question(もしくはAssumption)を立て、何を実施するのか大きく二点に分けて記載しました。

この二点には①、②という数字を振り、その後に記載が求められる研究計画においても同様の数字表記を用いることで、どの時点で、どの実施項目の、どの段階の研究を行うのかを明確にしました。

その結果、申請書全体が秩序立てられ、内容のつながりが分かりやすくなることを意識しました。

申請書の記載内容が短い分、どこかに引っかかりや、つながりの不整合があると違和感を与え、魅力的な申請書にならないと考えたためです。

記入が難しかった項目とその理由

研究内容を純粋に記載できたのは半ページのみであったため、どこを省き、どこをアピールするのかについては、かなり時間を要しました。

個人的には、3分、15分、30分で自分の研究を説明する口頭発表を常に意識しており、今回は3分で口頭発表を行うという気持ちで申請書を作成しました。

省いた場合でも、他の項目とつながる箇所を必ず残すようにし、全体の構成を俯瞰しながら調整していきました。

また、本助成は民間助成として年間の助成金額が大きいため、資金計画の妥当性、どの用途にどの程度使用するのかについて、使用用途と金額を適切に算出して記載する必要があり、非常に骨の折れる作業でした。

蔑ろにされがちではありますが、資金援助自体が目的の一つである助成金であるため、支援が必要であることを資金計画の項目においてもアピールできるような内容を心がけました。

採択につながったと考えるポイント

採択につながった最大の要因は、財団が設定する条件に自分が当てはまっていた点だと思います。

過去の採択者の分析に時間をかけ、自分が申請書を提出すべきか否かを見極めるとともに、過去の採択者のストーリーに沿いながら、それをさらに強化できる材料は何かを考え、構成内容をデザインできたことが良かったのかもしれません。

申請書は数を打てば当たる可能性もありますが、助成先ごとに異なるフォーマットや要件に合わせて書く作業には多くの時間を要します。

そのため、どの助成財団が自分にとって最もマッチしているのかを見極め、手数を絞った上で、その中で採択率を高めていくという方法が、最も効率的ではないかと感じています。

特に、私のような学際研究においては、このような考え方で助成先を選択していくことが、採択率の向上につながると考えています。

採択後の成果

助成金の使用用途

旅費・学会出張費、データ収集・分析

キャリアへの影響

本助成金は、私のキャリアに大きな影響を与えました。

2年間の海外ポスドクの権利を得ましたが、滞在国には日本との社会保障協定が存在しませんでした。そのため、夫が日本の会社で働きながら帯同した場合、日本と滞在国の双方の社会保険料を支払う必要があり、負担額が膨大になることが判明しました。

結果として、夫は滞在を断念せざるを得ず、意図せぬ形で、いわゆる"ワンオペ"で未就学児と海外滞在をする状況となりました。

土日の出張時にはシッターへの依頼が不可欠であり、それらの費用は私の給与水準からすると大きな負担でした。

その中で、子育てにかかる費用にも助成金を充てられる点は非常に大きく、この助成金がなければ、常に金銭面の不安を抱えながら滞在せざるを得なかった可能性があります。

こうした状況を踏まえると、研究の質を高めるためにも本助成は欠かせない支援であったと感じています。

これから応募する人へのエール

自分が自信を持ってやりたい研究ができるように、ピッタリな助成が見つかりますように願っています。

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  • vol.1:科研費 スタート支援 - 社会医学、看護学およびその関連分野

  • vol.2:科研費 基盤(C) - 生涯発達看護学関連

  • vol.3:古川医療福祉設備振興財団研究助成 - 医療・福祉、リハビリ分野

  • vol.4:科研費 若手研究 - 高齢者看護学および地域看護学関連

  • vol.5:科研費 スタート支援 - 基礎医学研究およびその関連分野

  • vol.6:富山県立大学研究協力会 奨励研究 - 看護工学連携分野

  • vol.7:住友生命 子育てプロジェクト女性研究者支援 - 社会医学領域(本記事)

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  • vol.1:吉田育英会 海外プログラム

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