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【採択者が語る助成金獲得のコツ】富山県立大学研究協力会 奨励研究:看護工学連携分野 - vol.6

【採択者が語る助成金獲得のコツ】富山県立大学研究協力会 奨励研究:看護工学連携分野 - vol.6

2026.01.17

看護学分野の大学教員である筆者は、熟練者と初学者の視認機能結果の比較による新生児蘇生法(NCPR)実施における看護職の視認機能の研究に取り組んでいます。

本助成金は、看護と工学の連携を目的としているため審査員には工学系の企業関係者も含まれており、非専門家に対してわかりやすく記述する必要がありました。

本記事では、医療・看護分野に特有の背景や課題を、非専門家にも理解されやすいよう平易かつ具体的に記述する具体的ヒントが記載されています。

異分野連携型の助成金申請時に、非専門家へ現状の課題や本研究の社会的意義を適切に伝えて採択へとつながるコツを紹介します。

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この記事のまとめ

この記事を読むと分かること

  • 看護と工学の異分野連携型助成金において、非専門家に研究の意義をどのように伝えればよいか

  • 研究の新規性・社会的意義・実行可能性を、限られた分量の申請書の中で効果的に示す具体的な考え方

  • 継続的な研究実績や既存データが、助成金採択においてどのように評価につながるか

この記事は誰に向けて書いているか

  • これから民間助成金に申請しようとしている方

  • 看護・医療分野の研究を、工学系・企業関係者など非専門家が含まれる審査に提出する必要がある方

  • 異分野連携型の助成金において、研究の価値をどう言語化すべきか悩んでいる方

獲得ノウハウシリーズ

【研究助成金】

  • vol.1:科研費 スタート支援 - 社会医学、看護学およびその関連分野

  • vol.2:科研費 基盤(C) - 生涯発達看護学関連

  • vol.3:古川医療福祉設備振興財団研究助成 - 医療・福祉、リハビリ分野

  • vol.4:科研費 若手研究 - 高齢者看護学および地域看護学関連

  • vol.5:科研費 スタート支援 - 基礎医学研究およびその関連分野

  • vol.6:富山県立大学研究協力会 奨励研究 - 看護工学連携分野(本記事)

【奨学金】

  • vol.1:吉田育英会 海外プログラム

  • vol.2:JEES・三菱商事 科学技術学生奨学金

申請者情報

氏名:小林絵里子
所属:富山県立大学看護学部
職位:常勤教員
専門分野・領域:看護

助成金情報

助成金名

富山県立大学研究協力会 奨励研究

助成団体の種類

外郭団体

助成団体名

富山県立大学研究協力会

助成制度・助成団体の理念

富山県立大学研究協力会は、富山県立大学と県内産業界との産学連携を進めるための産業界によるサポート組織です。富山県立大学を拠点とした研究交流を通じて、産学協働による知的資源の創造と地域経済の活性化を図ることを目的として、平成16年4月に設立しました。

URL

https://www.pu-toyama.ac.jp/kyouryokukai/about/outline2.html

応募対象の条件

所属属性に条件あり、研究分野に条件あり

最大助成金額・期間

50万円 / 1年間

実際に支給された助成金額・期間

50万円

募集頻度・時期

毎年決まった時期に公募

研究内容

申請時の研究タイトル

新生児蘇生法(NCPR)実施における看護職の視認機能の特徴 - 熟練者と初学者の視認機能結果の比較から

研究概要

新人看護職の新生児蘇生モデルを用いた人工換気実施時の特徴を明らかにすることを目的として、原則卒後3年目以内の助産師4名を対象に視線計測を行った。

視線計測のほかに、人工換気手技終了後に手技の自己評価を行った。さらに、蘇生モデルについての感想を自由記載で求めた。視線計測記録では、概ね頭から足元に向けた直線的な移動がみられた。手技の自己評価では、人工呼吸の回数が低かった。

新生児モデルについては、簡易のものより高機能シミュレーターの方が緊張感を持てた一方で、高機能シミュレーターの方が固く扱いにくいと述べていた。

熟練者と初学者の視認機能の特徴の差異については、初学者で測定できたデータが少なかった。そのため、熟練者と初学者のデータの統計学的比較までには至らなかった。

申請までの経緯

助成金を知ったきっかけ

所属機関の公募情報

この助成金を選んだ理由

本助成金の公募案内は、学内教職員全体に向けてメールで一斉配信されました。

しかし、当初は研究テーマとの直接的な関連性が明確でなかったことや、申請準備に要する時間や手間を考慮し、申請する予定はありませんでした。

しかしその後、学内地域連携センター業務を担当の教員から助成対象としての可能性が高いとの指摘や、本助成金を提供する団体の趣旨に合致しているのではないかとの助言を受けました。

さらに、同年度に申請していた科学研究費が不採択であったこともあり、研究継続のための新たな資金確保手段として本助成金に申請することを決意しました。

応募に至るまでのストーリー

本助成金の公募案内は学内の教職員全体に対してメールにて一斉配信されましたが、当初は自身の研究テーマとの関連性や申請準備の負担を考慮し、申請する予定はありませんでした。

しかし、その後学内で地域連携センター業務を担当しており、本助成金を提供している団体との窓口業務も担っている教員から、研究内容が助成の趣旨に合致する可能性があるとして申請を打診されました。

また、同年度の科学研究費補助金の申請が不採択となったこともあり、研究の継続と発展を図るために本助成金への申請を決意しました。

申請ノウハウ

募集要項で特に注目した点

助成対象となる研究領域

申請準備で実施したこと

他者への研究計画書添削依頼

申請書に記載が求められる項目

研究目的・背景, 研究方法、スケジュール、研究の独自性・新規性, 研究の社会的意義、予算の使用用途、実用化の見通し

各項目の記入分量

各項目の記入にあたっては、A4用紙2ページ以内という制限があるものの、具体的な文字数や各項目ごとの記入割合についての明確な指定はありませんでした。

そのため、分量のバランスが難しく、書きすぎても冗長になり少なすぎても説得力に欠けるおそれがありました。

特に、内容の重複を避けつつ、研究の独自性や意義をどの部分で強調するかについては慎重な検討が必要でした。重要な点を効果的にアピールするための表現方法に苦慮しました。

構成・ストーリーについて意識したポイント

構成・ストーリーを考える際には、まず現在の周産期医療における新生児蘇生の実態を冒頭で明確に示すことを意識しました。

新生児蘇生はすべての分娩で必ず行われるものではなく、限られた状況で求められる高度な対応です。そのため、多くの看護者にとって日常的な実践機会は少なく、突然直面した際の不安や対応力の差が問題となります。

特に地域の小規模施設や分娩件数の少ない医療機関では、実践的な経験を積む機会が限られています。その結果、新生児蘇生の重要性や難しさが実感されにくい現状があります。

さらに、こうした貴重な経験を得たとしても、他の看護者と知識や経験を共有する場が少ないことも課題です。

そのため、現場のリアリティや看護者の学びの機会の乏しさをストーリーの中で強調し、対象者の理解と共感を得られるような構成を工夫しました。

独自性や社会的意義でアピールしたポイント

独自性や社会的意義のアピールとして、本研究では新生児蘇生における人工換気行為を対象に、視線分析を用いた介入および看護の解析を行う点を強調しました。

これまでに、新生児蘇生に関して視線計測や注視点の分析を導入した研究は報告されておらず、視線データに基づく客観的な行動解析は極めて新規性の高い試みです。特に、現在広く用いられているNCPRプログラムにおいても、こうした視線情報を活用した評価や教育は実施されていません。

本研究で得られる知見は、今後のプログラム改善高精度なシミュレーター開発に活用できる可能性があります。また、熟練者と初学者を比較し、昨年度に収集した既存データと照合することで、学習の進展過程の理解や教育方法の改善にも資する知見が得られると期待されます。

加えて、新生児蘇生は看護職が日常的に経験するものではなく、発生頻度も低いため実践経験が蓄積しにくい分野です。

本研究によって得られる経験知を視覚的かつ客観的に可視化することは、今後看護師同士の知識共有や教育支援の新たな手段としても意義があると考えられる点をアピールしました。

文章表現の工夫

記入が難しかった点とも重なりますが、本助成金は看護と工学の連携を目的としており、審査員に工学系の企業関係者が含まれている点が特徴です。

そのため、医療・看護分野に特有の背景や課題を、非専門家にも理解されやすいよう平易かつ具体的に記述する必要がありました。

特に医療系の研究では、成果が特許や製品といった「物」として明確に可視化されるものばかりではありません。ケアの質の向上や対人改善といった無形の効果が重視される場合も多く、工学的な「実用化」や「ものづくり」の観点とは、価値の置き方が異なります。

そこで、専門外の読者にも意義が伝わるよう抽象的な表現は避けました。現場のエピソードや実際に起きている課題を盛り込み、具体的な場面を想起しやすい構成を意識しました。

また、看護の研究が社会に与える影響や今後の展開についても、論理的かつ視覚的にイメージしやすい表現を心がけました。工学系の視点との接点を意識しながら、文章を構成しました。

記入が難しかった項目とその理由

記入が難しかった項目は、「研究の独創性および社会的意義」に関する欄でした。

申請書の記入においては、特に本助成金が看護と工学の連携を目的としているため、審査員には工学系の企業関係者も含まれており、医療・看護分野に特有の背景や課題を非専門家に対してわかりやすく記述する必要がありました。

医療系の研究は、その成果が「物」として具現化されるとは限らず、ケアの質や人間関係の改善といった無形の価値を重視するため、工学系審査員が期待する特許や製品化といった実用化の視点とは大きく異なります。

そのため、「物」にならない研究の必要性や意義をどのように説得的に伝えるかに苦慮しました。

実際には、医療現場における具体的な課題と、それに対する研究成果の波及効果を具体的かつ丁寧に記述し、異分野の審査員にも理解されるよう表現を工夫する必要がありました。

採択につながったと考えるポイント

申請の採択につながったと考えられるポイントとしては、まず本研究が継続性のあるテーマであり、2年前より学長裁量の学内研究資金を獲得して取り組んできた実績があることが挙げられます。

すでに前年度にも同様の研究を実施しており、研究体制やデータ収集方法が確立されていました。そのため、申請時点で研究遂行の見通しが立っている計画であると判断された可能性があります。

また、前年度には経験豊富な看護職を対象としたデータ収集および分析を行い、その成果を学会にて発表していました。一定の研究成果をすでに上げている点も、評価につながったと考えられます。

これらの実績により、研究の進捗状況が明確で、かつ実行力のある計画としての信頼性を示すことができたと推察されます。

研究テーマの新規性や社会的意義に加え、これまでの活動実績と蓄積されたデータが、採択判断において説得力を持ったものと考えられます。

採択後の成果

助成金の使用用途

データ収集・分析

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シリーズ一覧

獲得ノウハウシリーズ
【研究助成金】

  • vol.1:科研費 スタート支援 - 社会医学、看護学およびその関連分野

  • vol.2:科研費 基盤(C) - 生涯発達看護学関連

  • vol.3:古川医療福祉設備振興財団研究助成 - 医療・福祉、リハビリ分野

  • vol.4:科研費 若手研究 - 高齢者看護学および地域看護学関連

  • vol.5:科研費 スタート支援 - 基礎医学研究およびその関連分野

  • vol.6:富山県立大学研究協力会 奨励研究 - 看護工学連携分野(本記事)

【奨学金】

  • vol.1:吉田育英会 海外プログラム

  • vol.2:JEES・三菱商事 科学技術学生奨学金

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