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【RWD1000本ノック】なぜあなたの医療データベースは売れないのか、「食材」を売るな、「料理」を売れ - vol.03

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【RWD1000本ノック】なぜあなたの医療データベースは売れないのか、「食材」を売るな、「料理」を売れ - vol.03

2026.01.08

あなたは医療データベースの販売担当です。莫大な時間と、莫大なお金をかけてようやく完成した医療データベース。

期待とともにいざ製薬企業に売り込みにいったものの、「ふーん」という反応で終わってしまい、まったく売れません。なぜでしょうか。

この記事のまとめ

この記事を読むと分かること

  • 医療データベースを売るにはどうすれば良いのか

この記事は誰に向けて書かれているか

  • 企業でRWDに関する業務に取り組んでいる人

  • 企業の疫学専門家になりたい人

すきとほる先生のRWD1000本ノック

Vol.1 そのRWD研究、企業でやると痛い目みませんか?
Vol.2 その製造販売後データベース調査、失敗します
Vol.3 なぜあなたの医療データベースは売れないのか - 「食材」を売るな、「料理」を売れ(本記事)
Vol.4 RWD事業の成否は「1人目」で決まる - 採用すべきは“論文が書けるだけの研究者”ではない理由
Vol.5 なぜ製薬企業のRWD研究のプロトコールは40ページもあるのか
Vol.6 RWD研究で速やかにグローバル承認を獲得する方法を元グローバル疫学専門家が解説
Vol.7 製薬企業が買いたいRWDって、どんなRWD?
Vol.8 RWD研究の外注で失敗しないために - 外注先を見極めろ

執筆者の紹介

氏名:廣瀬直紀
所属:mMEDICI株式会社
専門性:保健学博士・公衆衛生学修士。東京大学・東京大学大学院を卒業後、外資系製薬企業の日本・グローバルにおいて疫学専門家として薬剤疫学・リアルワールドデータ研究に従事。その後、全ての人がアクセス可能な一流の知のプラットフォームを作り、「知に繁栄を、辺野に豊穣を」実現すべく、mMEDICI株式会社を創業。

廣瀬直紀著.企業研究者の教科書

こんにちは、疫学専門家のDr. すきとほるです。

本日は少し過激なテーマでお送りします。 ズバリ、「なぜ、あなたの医療データベースは売れないのか」についてです。

私自身、製薬企業に在籍していた頃は、疫学専門家として「どのデータを購入すべきか」という意思決定に深く関与していました。そして独立した現在は、複数のデータベース事業者様のマーケティングやセールス支援を行っています。

「買う側」と「売る側」、双方の実情を知る私だからこそお話しできる、医療データベースビジネスの「不都合な真実」と「生存戦略」について、今日は徹底的に解説していきます。

RWD戦国時代:データは集まった、しかし...

ここ数年で、医療データベース事業のプレイヤーは劇的に増えました。

ほんの少し前までは、大手の2〜3社が市場を独占している状態でしたが、現在では「データが集められる」こと、そして「製薬企業がそれを高値で買ってくれる」という認識が広まり、多くの企業が参入しています。


現在のデータベース事業者は、大きく2つのタイプに分かれます。

  1. ToB(医療機関・保険者)由来型: 病院や保険者に対して経営改善コンサルティングなどを提供し、その対価としてデータを収集。二次利用として製薬企業へ販売するタイプ。

  2. ToC(個人)由来型: 健康管理アプリやウェアラブルデバイスなどを通じて、一般生活者(患者さん)から直接データを収集し、それを販売しようとするタイプ。

どちらのタイプも「貴重なデータ」を持っています。しかし、私の元には「データはあるのに売れない」「商談が次に進まない」という相談が後を絶ちません。

なぜか? 理由は大きく分けて二つあります。「データの質(作り方)」の問題と、「マーケティング(売り方)」の問題です。

理由1:データの性質「逆算」なきデータは研究に使えない

まず一つ目の壁は、そもそも「製薬企業のリサーチクエスチョン(RQ)に応えられるデータになっていない」という点です。

データベース研究は「逆算の美学」である

多くの方が誤解していますが、データベースビジネスは「データが集まったから、さあ売ろう」で成立するほど甘い世界ではありません。


製薬企業がデータを買うとき、そこには必ず明確なリサーチクエスチョンが存在します。

  • 「ある抗がん剤の、日本国内でのリアルな使用実態を知りたい」

  • 「自社の抗がん剤と、他社の薬剤を比較して、安全性や有効性の優劣を見たい」

研究とは、この「問い」からすべてが始まります。

問いがあるからこそ、「どんな解析(デザイン)が必要か」が決まり、そこから逆算して「どんな変数(データ)が必要か」が定義されるのです。

「薬のデータ」だけでは無価値?

例えば、「抗がん剤Aを使っている人のデータ6m6k、、、、、、fm」が大量にあったとしても、それだけでは売れません。 なぜなら、厳密な比較研究を行うためには、以下のような周辺データが不可欠だからです。

  • 併存疾患: 他にどんな病気を持っているか?

  • 重症度: 病気のステージは?

  • 検査値: 投与前の腎機能や肝機能はどうだったか?

  • 前治療歴: 病院に来る前にどんな治療を受けていたか?

これらが欠けていると、統計的な「交絡(Confounding)」の調整ができず、科学的に信頼できる結果が出せないのです。

もしあなたがデータベース事業を立ち上げるなら、データを集め始める前に「製薬企業はどんなリサーチクエスチョンを持っているのか?」を徹底的に分析し、そこから逆算して収集項目を設計しなければなりません。

特に、ToC向けのアプリやデバイスからなんとなく集められたデータは、この「逆算」が不足しており、いざ研究に使おうとすると「肝心な変数が足りない」という事態に陥りがちです。

理由2:マーケティングの致命的ミス「レストランで食材を出していませんか?」

さて、ここからが今日の本題です。

「データの内容は悪くない。必要な変数も揃っている。それなのに売れない。」というケース。 これは、営業のアプローチ(マーケティング)に致命的なボタンの掛け違いがあります。

よくある「売れない」プレゼン

多くのデータベース事業者の営業担当者は、商談で次のような説明をしてしまいます。

「まず、我々のデータソースは〇〇保険者と〇〇病院です」

「現在のサンプルサイズは〇〇万人で、来年には〇〇万人まで右肩上がりで増える計画です」

「格納されているデータは、レセプト、DPC様式1、そして一部の検査値です」

「すでにこれだけの論文が出ています。……さあ、いかがでしょうか?

しかし、これでは売れません。

これは、レストランに来たお客様に対して、「最高級の牛肉と、採れたてのニンジンがあります。さあ、食べてください」と言って、生の食材をテーブルにドンと置いているのと同じだからです。


お客様(製薬企業)は、レストラン(あなたの会社)に「美味しい料理」を期待して来ています。それなのに、「素材」だけを見せられても困惑するだけです。

「データがあること(食材)」と、「それを研究に使えること(料理)」の間には、天と地ほどの差があります。

製薬企業の担当者は「シェフ」ではない

ここで、皆さんはこう思うかもしれません。 「いやいや、製薬企業の担当者は専門家なんだから、食材(データ)さえ渡せば、自分で料理(解析)できるでしょう?」

ここに最大の誤解があります。

データを購入する窓口となるのは、多くの場合、PV(安全性情報)やMA(メディカルアフェアーズ)といった部署の方々です。 彼らは「循環器」や「オンコロジー」といった疾患領域(ドメイン)のプロフェッショナルですが、疫学や生物統計学という「調理技術」のプロ(シェフ)ではないことがほとんどです。


もちろん、大手製薬企業で社内に疫学専門家が潤沢にいれば別ですが、多くのケースでは、担当者は「食材(データのスペック)」を見せられても、自分の頭の中で「これで自分が知りたいリサーチクエスチョン(料理)が作れるのか?」を判断できません。

その結果、どうなるか? 「良さそうなデータだけど、本当に使えるか自信がないから、とりあえず見送ろう」となってしまうのです。

解決策:「その場で調理」して提供せよ

では、どうすればデータは売れるのでしょうか。 答えはシンプルです。セールス担当者が、その場で「食材」を「料理」に変換して提案すればいいのです。

「御社のリサーチクエスチョンは何ですか?」から始める

データベースのスペック説明から入るのはやめましょう。 すべての商談は、以下の問いから始まるべきです。

「我々のデータの説明は後回しで構いません。まずは、御社が今抱えているリサーチクエスチョン(課題)を教えていただけませんか?」

顧客のニーズを聞き出し、それを聞いた瞬間に、営業担当者の頭の中で高速で「調理」を行います。

  1. ニーズの把握: 「なるほど、他剤との安全性比較をしたいのですね」

  2. 脳内シミュレーション: 「そのRQなら、うちのデータの『変数A』と『変数B』を使って、こういう研究デザインを組めばバイアスを調整できるな……」

  3. 提案(料理の提供): 「そのリサーチクエスチョンでしたら、我々のデータベースが適任です。なぜなら、この変数を使って、このようなデザインで解析すれば、科学的な回答が出せる可能性が高いからです」

ここまで言われて初めて、製薬企業の担当者は「なるほど!それなら実現可能性(Feasibility)を確認してみよう」と、具体的な検討フェーズに進むことができます。

「何が食べたいか」を聞き、その場でメニューを提案し、「それならこの食材が必要です」とセットで売る。 これが、データビジネスにおける正しいセールスの姿です。

まとめ:データ販売は「ソリューション」販売へ

まとめます。

  1. データビジネスは「逆算」: リサーチクエスチョンから逆算して設計されていないデータは、どんなに量があっても研究には使えない。

  2. スペック説明は「食材」の押し売り: 顧客(製薬担当者)は必ずしも「調理(解析設計)」ができるわけではない。素材だけ渡しても価値は伝わらない。

  3. 売れる営業は「翻訳」する: ビジネスニーズを聞き出し、その場で「研究デザイン」という料理に翻訳して提案することで初めて、データは購入対象となる。

とはいえ、これを自社の営業担当者だけで実践するのは非常にハードルが高いのも事実です。

これを行うには、「製薬企業のビジネスニーズ」を理解し、それを「リサーチクエスチョン」に翻訳し、さらに「適切な研究デザイン」を瞬時に組めるという、疫学専門家のスキルセットが必要になるからです。

もし、「素晴らしいデータを持っているのに、その価値を製薬企業の文脈に合わせて翻訳・提案できていない」とお悩みであれば、ぜひ一度ご相談ください。

私自身、製薬企業の中で「買う側」の意思決定をしてきた経験と、疫学専門家としての知見を活かし、御社のデータを「売れる料理」に変えるお手伝いをさせていただきます。

それでは、また次回の「1,000本ノック」でお会いしましょう。

RWDでお困りの企業さんへ

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お問合せ先:naoki.hirose@mmedici.co.jp(廣瀬個人アドレス)



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以下に私の実績を記載させて頂きます。

  • 大手外資製薬2社にて、部門唯一の疫学専門家として活動をリード

  • 「RWDビジネスの教科書」の書籍を出版(サイドバーをご覧ください)

  • 企業でのRWD研究の経験は50本以上

  • 製造販売後データベース調査のリード経験多数

  • これまで製薬、CRO、コンサル、総合商社、ヘルステックなど10社以上の企業のRWD研究・RWDビジネスを支援

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無料相談では、以下のような内容を含め企業様の「RWD」と名のつく相談でしたら全て対応させて頂きます。

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