
研究
【RWD1000本ノック】なぜあなたの医療データベースは売れないのか、「食材」を売るな、「料理」を売れ - vol.03
2026.01.08
あなたは医療データベースの販売担当です。莫大な時間と、莫大なお金をかけてようやく完成した医療データベース。
期待とともにいざ製薬企業に売り込みにいったものの、「ふーん」という反応で終わってしまい、まったく売れません。なぜでしょうか。
- この記事のまとめ
- この記事を読むと分かること
- この記事は誰に向けて書かれているか
- すきとほる先生のRWD1000本ノック
- 執筆者の紹介
- RWD戦国時代:データは集まった、しかし...
- 理由1:データの性質「逆算」なきデータは研究に使えない
- データベース研究は「逆算の美学」である
- 「薬のデータ」だけでは無価値?
- 理由2:マーケティングの致命的ミス「レストランで食材を出していませんか?」
- よくある「売れない」プレゼン
- 製薬企業の担当者は「シェフ」ではない
- 解決策:「その場で調理」して提供せよ
- 「御社のリサーチクエスチョンは何ですか?」から始める
- まとめ:データ販売は「ソリューション」販売へ
- RWDでお困りの企業さんへ
- RWDを学ぶならオンラインスクールmJOHNSNOW
- 講義紹介|実務者のためのリアルワールドデータ攻略講座
- 【YouTubeラジオコンテンツ 耳から学ぶシリーズ】
この記事のまとめ
この記事を読むと分かること
医療データベースを売るにはどうすれば良いのか
この記事は誰に向けて書かれているか
企業でRWDに関する業務に取り組んでいる人
企業の疫学専門家になりたい人
すきとほる先生のRWD1000本ノック
Vol.1 そのRWD研究、企業でやると痛い目みませんか?
Vol.2 その製造販売後データベース調査、失敗します
Vol.3 なぜあなたの医療データベースは売れないのか - 「食材」を売るな、「料理」を売れ(本記事)
Vol.4 RWD事業の成否は「1人目」で決まる - 採用すべきは“論文が書けるだけの研究者”ではない理由
Vol.5 なぜ製薬企業のRWD研究のプロトコールは40ページもあるのか
Vol.6 RWD研究で速やかにグローバル承認を獲得する方法を元グローバル疫学専門家が解説
Vol.7 製薬企業が買いたいRWDって、どんなRWD?
Vol.8 RWD研究の外注で失敗しないために - 外注先を見極めろ
執筆者の紹介
氏名:廣瀬直紀
所属:mMEDICI株式会社
専門性:保健学博士・公衆衛生学修士。東京大学・東京大学大学院を卒業後、外資系製薬企業の日本・グローバルにおいて疫学専門家として薬剤疫学・リアルワールドデータ研究に従事。その後、全ての人がアクセス可能な一流の知のプラットフォームを作り、「知に繁栄を、辺野に豊穣を」実現すべく、mMEDICI株式会社を創業。

こんにちは、疫学専門家のDr. すきとほるです。
本日は少し過激なテーマでお送りします。 ズバリ、「なぜ、あなたの医療データベースは売れないのか」についてです。
私自身、製薬企業に在籍していた頃は、疫学専門家として「どのデータを購入すべきか」という意思決定に深く関与していました。そして独立した現在は、複数のデータベース事業者様のマーケティングやセールス支援を行っています。
「買う側」と「売る側」、双方の実情を知る私だからこそお話しできる、医療データベースビジネスの「不都合な真実」と「生存戦略」について、今日は徹底的に解説していきます。
RWD戦国時代:データは集まった、しかし...
ここ数年で、医療データベース事業のプレイヤーは劇的に増えました。
ほんの少し前までは、大手の2〜3社が市場を独占している状態でしたが、現在では「データが集められる」こと、そして「製薬企業がそれを高値で買ってくれる」という認識が広まり、多くの企業が参入しています。
現在のデータベース事業者は、大きく2つのタイプに分かれます。
ToB(医療機関・保険者)由来型: 病院や保険者に対して経営改善コンサルティングなどを提供し、その対価としてデータを収集。二次利用として製薬企業へ販売するタイプ。
ToC(個人)由来型: 健康管理アプリやウェアラブルデバイスなどを通じて、一般生活者(患者さん)から直接データを収集し、それを販売しようとするタイプ。
どちらのタイプも「貴重なデータ」を持っています。しかし、私の元には「データはあるのに売れない」「商談が次に進まない」という相談が後を絶ちません。
なぜか? 理由は大きく分けて二つあります。「データの質(作り方)」の問題と、「マーケティング(売り方)」の問題です。
理由1:データの性質「逆算」なきデータは研究に使えない
まず一つ目の壁は、そもそも「製薬企業のリサーチクエスチョン(RQ)に応えられるデータになっていない」という点です。
データベース研究は「逆算の美学」である
多くの方が誤解していますが、データベースビジネスは「データが集まったから、さあ売ろう」で成立するほど甘い世界ではありません。
製薬企業がデータを買うとき、そこには必ず明確なリサーチクエスチョンが存在します。
「ある抗がん剤の、日本国内でのリアルな使用実態を知りたい」
「自社の抗がん剤と、他社の薬剤を比較して、安全性や有効性の優劣を見たい」
研究とは、この「問い」からすべてが始まります。
問いがあるからこそ、「どんな解析(デザイン)が必要か」が決まり、そこから逆算して「どんな変数(データ)が必要か」が定義されるのです。
「薬のデータ」だけでは無価値?
例えば、「抗がん剤Aを使っている人のデータ6m6k、、、、、、fm」が大量にあったとしても、それだけでは売れません。 なぜなら、厳密な比較研究を行うためには、以下のような周辺データが不可欠だからです。
併存疾患: 他にどんな病気を持っているか?
重症度: 病気のステージは?
検査値: 投与前の腎機能や肝機能はどうだったか?
前治療歴: 病院に来る前にどんな治療を受けていたか?
これらが欠けていると、統計的な「交絡(Confounding)」の調整ができず、科学的に信頼できる結果が出せないのです。
もしあなたがデータベース事業を立ち上げるなら、データを集め始める前に「製薬企業はどんなリサーチクエスチョンを持っているのか?」を徹底的に分析し、そこから逆算して収集項目を設計しなければなりません。
特に、ToC向けのアプリやデバイスからなんとなく集められたデータは、この「逆算」が不足しており、いざ研究に使おうとすると「肝心な変数が足りない」という事態に陥りがちです。
理由2:マーケティングの致命的ミス「レストランで食材を出していませんか?」
さて、ここからが今日の本題です。
「データの内容は悪くない。必要な変数も揃っている。それなのに売れない。」というケース。 これは、営業のアプローチ(マーケティング)に致命的なボタンの掛け違いがあります。
よくある「売れない」プレゼン
多くのデータベース事業者の営業担当者は、商談で次のような説明をしてしまいます。
「まず、我々のデータソースは〇〇保険者と〇〇病院です」
「現在のサンプルサイズは〇〇万人で、来年には〇〇万人まで右肩上がりで増える計画です」
「格納されているデータは、レセプト、DPC様式1、そして一部の検査値です」
「すでにこれだけの論文が出ています。……さあ、いかがでしょうか?」
しかし、これでは売れません。
これは、レストランに来たお客様に対して、「最高級の牛肉と、採れたてのニンジンがあります。さあ、食べてください」と言って、生の食材をテーブルにドンと置いているのと同じだからです。
お客様(製薬企業)は、レストラン(あなたの会社)に「美味しい料理」を期待して来ています。それなのに、「素材」だけを見せられても困惑するだけです。
「データがあること(食材)」と、「それを研究に使えること(料理)」の間には、天と地ほどの差があります。
製薬企業の担当者は「シェフ」ではない
ここで、皆さんはこう思うかもしれません。 「いやいや、製薬企業の担当者は専門家なんだから、食材(データ)さえ渡せば、自分で料理(解析)できるでしょう?」
ここに最大の誤解があります。
データを購入する窓口となるのは、多くの場合、PV(安全性情報)やMA(メディカルアフェアーズ)といった部署の方々です。 彼らは「循環器」や「オンコロジー」といった疾患領域(ドメイン)のプロフェッショナルですが、疫学や生物統計学という「調理技術」のプロ(シェフ)ではないことがほとんどです。
もちろん、大手製薬企業で社内に疫学専門家が潤沢にいれば別ですが、多くのケースでは、担当者は「食材(データのスペック)」を見せられても、自分の頭の中で「これで自分が知りたいリサーチクエスチョン(料理)が作れるのか?」を判断できません。
その結果、どうなるか? 「良さそうなデータだけど、本当に使えるか自信がないから、とりあえず見送ろう」となってしまうのです。
解決策:「その場で調理」して提供せよ
では、どうすればデータは売れるのでしょうか。 答えはシンプルです。セールス担当者が、その場で「食材」を「料理」に変換して提案すればいいのです。
「御社のリサーチクエスチョンは何ですか?」から始める
データベースのスペック説明から入るのはやめましょう。 すべての商談は、以下の問いから始まるべきです。
「我々のデータの説明は後回しで構いません。まずは、御社が今抱えているリサーチクエスチョン(課題)を教えていただけませんか?」
顧客のニーズを聞き出し、それを聞いた瞬間に、営業担当者の頭の中で高速で「調理」を行います。
ニーズの把握: 「なるほど、他剤との安全性比較をしたいのですね」
脳内シミュレーション: 「そのRQなら、うちのデータの『変数A』と『変数B』を使って、こういう研究デザインを組めばバイアスを調整できるな……」
提案(料理の提供): 「そのリサーチクエスチョンでしたら、我々のデータベースが適任です。なぜなら、この変数を使って、このようなデザインで解析すれば、科学的な回答が出せる可能性が高いからです」
ここまで言われて初めて、製薬企業の担当者は「なるほど!それなら実現可能性(Feasibility)を確認してみよう」と、具体的な検討フェーズに進むことができます。
「何が食べたいか」を聞き、その場でメニューを提案し、「それならこの食材が必要です」とセットで売る。 これが、データビジネスにおける正しいセールスの姿です。
まとめ:データ販売は「ソリューション」販売へ
まとめます。
データビジネスは「逆算」: リサーチクエスチョンから逆算して設計されていないデータは、どんなに量があっても研究には使えない。
スペック説明は「食材」の押し売り: 顧客(製薬担当者)は必ずしも「調理(解析設計)」ができるわけではない。素材だけ渡しても価値は伝わらない。
売れる営業は「翻訳」する: ビジネスニーズを聞き出し、その場で「研究デザイン」という料理に翻訳して提案することで初めて、データは購入対象となる。
とはいえ、これを自社の営業担当者だけで実践するのは非常にハードルが高いのも事実です。
これを行うには、「製薬企業のビジネスニーズ」を理解し、それを「リサーチクエスチョン」に翻訳し、さらに「適切な研究デザイン」を瞬時に組めるという、疫学専門家のスキルセットが必要になるからです。
もし、「素晴らしいデータを持っているのに、その価値を製薬企業の文脈に合わせて翻訳・提案できていない」とお悩みであれば、ぜひ一度ご相談ください。
私自身、製薬企業の中で「買う側」の意思決定をしてきた経験と、疫学専門家としての知見を活かし、御社のデータを「売れる料理」に変えるお手伝いをさせていただきます。
それでは、また次回の「1,000本ノック」でお会いしましょう。
RWDでお困りの企業さんへ

「RWD研究の支援をしてほしい」というご相談を多くの企業様から頂戴するので、企業様向けに正式に窓口を設置しました。
以下のアドレスに連絡頂ければ私に直通しますので、「1時間の無料相談」も含めてお気軽にご連絡ください(3営業日以内にお返事させて頂きます)。無料相談は大変ご盛況となっており、先着順にて対応させて頂いております。
お問合せ先:naoki.hirose@mmedici.co.jp(廣瀬個人アドレス)
私が経営するmMEDICI株式会社ではRWD利活用支援を事業の柱の一つとしており、以下の強みを有しています。「企業の」RWD研究においては日本トップクラスの解像度と経験値を有する自信がありますので、ぜひ無料相談でご体験くださいませ。
元大手外資の日本・グローバル出身の疫学専門家が全案件を担当するので、「企業の」RWD研究に高い解像度を有しています
ただ成果物を納品するだけでなく、グローバルやKOLとの合意形成、社内プレゼン、規制当局対応などRWD研究の「プロセス」も全てまきとれます
企業のRWD研究を幾度となく経験しており、企画立案から論文化までの全フェーズを一気通貫で対応できます
アカデミアのRWD研究者と広い繋がりを有しており、必要に応じた専門人材のアサインが可能です
RWD研究だけでなく、事業立案、マーケ、広報、営業などのRWDビジネスも全て対応可能です
以下に私の実績を記載させて頂きます。
大手外資製薬2社にて、部門唯一の疫学専門家として活動をリード
「RWDビジネスの教科書」の書籍を出版(サイドバーをご覧ください)
企業でのRWD研究の経験は50本以上
製造販売後データベース調査のリード経験多数
これまで製薬、CRO、コンサル、総合商社、ヘルステックなど10社以上の企業のRWD研究・RWDビジネスを支援
50組織以上にRWD研修を提供
全体統括・講師を勤めたJapan RWD Summitでは初回から約1,700名の集客を実現
無料相談では、以下のような内容を含め企業様の「RWD」と名のつく相談でしたら全て対応させて頂きます。
このテーマでRWD研究はできるの?
RWD研究っていくらくらいかかるの?
RWD研究ってどんなプロセスでやれば良いの?
製造販売後データベース調査のやり方を教えてほしい
RWD研究をするにはどんな専門家を雇えば良いの?
自社のRWDサービスを売りたいんだけど、強みはどこ?集客はどうすれば良い?
無料相談は先着順での対応となりますので、ご希望の企業様はぜひお早めのコンタクトをお願い致します!
お問合せ先:naoki.hirose@mmedici.co.jp(廣瀬個人アドレス)
RWDを学ぶならオンラインスクールmJOHNSNOW

この記事を読み、「もっとRWDについて学びたい!」と思われた方もいらっしゃるでしょう。
そんな方には弊社が運営するオンラインスクールmJOHNSNOWがお勧めです。
mJOHNSNOWはスペシャリストが運営する臨床研究・パブリックヘルスに特化した日本最大規模の入会審査制オンラインスクールです。運営・フェローの専門は疫学、生物統計学、リアルワールドデータ、臨床、企業など多岐に渡り、東大、京大、ハーバード、ジョンスホプキンス、LSHTMなど世界のトップスクールの卒業生も集まっています。
「実務者のためのRWD攻略講座」をはじめ、専門性を伸ばすためのコンテンツが目白押しです!
講義紹介|実務者のためのリアルワールドデータ攻略講座

リアルワールドデータ(RWD)という強力な武器を、正しく使いこなせていますか?
外資系製薬企業の日本・グローバルにおいて疫学専門家として薬剤疫学・リアルワールドデータ研究に従事した講師が、国際ガイドラインに則ったプロトコールの書き方から、曝露やアウトカムの難解な定義まで、実務で結果を出すための思考法と技術を徹底解説します。
【YouTubeラジオコンテンツ 耳から学ぶシリーズ】

YouTubeラジオコンテンツ「耳から学ぶシリーズ」は、仕事や育児で忙しい人が10分のスキマ時間に“ながら聞き”で学べる音声コンテンツです。
すべてのコンテンツを疫学専門家が監修し、完全無料で毎日投稿していきますので、ぜひチャンネル登録してお待ちください。
シリーズ一覧
すきとほる先生のRWD1000本ノック
Vol.1 そのRWD研究、企業でやると痛い目みませんか?
Vol.2 その製造販売後データベース調査、失敗します
Vol.3 なぜあなたの医療データベースは売れないのか - 「食材」を売るな、「料理」を売れ(本記事)
Vol.4 RWD事業の成否は「1人目」で決まる - 採用すべきは“論文が書けるだけの研究者”ではない理由
Vol.5 なぜ製薬企業のRWD研究のプロトコールは40ページもあるのか
Vol.6 RWD研究で速やかにグローバル承認を獲得する方法を元グローバル疫学専門家が解説
Vol.7 製薬企業が買いたいRWDって、どんなRWD?
Vol.8 RWD研究の外注で失敗しないために - 外注先を見極めろ
©mMEDICI Inc. ALL RIGHTS RESERVED.



















