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 【RWD1000本ノック】 製薬企業におけるRWD研究のプロセスマネジメントを徹底解説 - vol.10

 【RWD1000本ノック】 製薬企業におけるRWD研究のプロセスマネジメントを徹底解説 - vol.10

2026.01.27

あなたは製薬企業のプロマネであり、新たにDB研究にアサインされることになりました。

しかし、DB研究のプロセスがわからず、予定していた1年のタイムラインを過ぎてもまだ解析すら終わっていません。

どうすればよかったのでしょうか?

この記事のまとめ

この記事を読むと分かること

  • 製薬企業でRWD研究を効率的に進めるノウハウ

この記事は誰に向けて書かれているか

  • 企業でRWDに関する業務に取り組んでいる人

  • 企業の疫学専門家になりたい人

すきとほる先生のRWD1000本ノック

Vol.1 そのRWD研究、企業でやると痛い目みませんか?
Vol.2 その製造販売後データベース調査、失敗します
Vol.3 なぜあなたの医療データベースは売れないのか - 「食材」を売るな、「料理」を売れ
Vol.4 RWD事業の成否は「1人目」で決まる - 採用すべきは“論文が書けるだけの研究者”ではない理由
Vol.5 なぜ製薬企業のRWD研究のプロトコールは40ページもあるのか
Vol.6 RWD研究で速やかにグローバル承認を獲得する方法を元グローバル疫学専門家が解説
Vol.7 製薬企業が買いたいRWDって、どんなRWD?
Vol.8 RWD研究の外注で失敗しないために - 外注先を見極めろ
Vol.9 なぜそのRWD研究の計画書は製薬からNGを出されるのか
Vol.10 製薬企業におけるRWD研究のプロセスマネジメントを徹底解説(本記事)

執筆者の紹介

氏名:廣瀬直紀
所属:mMEDICI株式会社
専門性:保健学博士・公衆衛生学修士。東京大学・東京大学大学院を卒業後、外資系製薬企業の日本・グローバルにおいて疫学専門家として薬剤疫学・リアルワールドデータ研究に従事。その後、全ての人がアクセス可能な一流の知のプラットフォームを作り、「知に繁栄を、辺野に豊穣を」実現すべく、mMEDICI株式会社を創業。

廣瀬直紀著.企業研究者の教科書

はじめに:RWD研究におけるプロセスマネジメントの重要性

今回は「企業のデータベース研究におけるプロセスマネジメント」についてお話ししていきたいと思います。

これは、製薬企業でデータベース研究を主導されている方は当然把握しておかなければならない必須事項です。

同時に、製薬企業をクライアントとして研究支援を行うデータベンダーやCROの皆様にとっても、このプロセスへの理解がなければ質の高いアウトプットを出すことは不可能です。

プロセスマネジメントは双方にとって、実務を遂行する上での「共通言語」として、しっかりと抑えておいていただきたいポイントになります。

では、具体的なプロセスマネジメントの要諦について、順を追って解説していきます。

1.事業目的(Business Objective)の確認:研究は「手段」に過ぎない

まず、プロジェクトの開始にあたって最も最初に行うべきことは、「事業目的は何なのか」を確認することです。

企業において実施されるデータベース研究というのは、純粋な科学的探究である「リサーチ」そのものが至上命題ではありません。

RQというのは、あくまでもその企業が抱える「事業目的」を達成するための一つの手段に過ぎないのです。

この研究を通じて、ビジネスとして何を達成したいのか。

ここに対する合意形成と深い理解がないまま進めてしまうと、その先にどんなに高度な解析を行おうとも、「これじゃない」「求めていたのはこういう結果ではない」という不幸な結末を迎えることになります。

したがって、研究計画の初期段階において、関連するステークホルダーを招集し、「我々の今回の事業目的はこれだよね」というアラインを徹底的に取ること。

これが全ての出発点となります。

2.チームアップ:疫学専門家の「ソロワーク」が基本

事業目的が定まったら、次はチームアップです。

DB研究は腕のある専門家によるソロワークです。

多様な専門家が集まり、民主的に意見を出し合って「みんなで協力して作り上げていく」というスタイルは、RWD研究においては機能しません。

基本的には、疫学専門家がスタディの最初から最後まで、上流から下流までを全て設計します。その思考プロセスの中で、「ここのパラメータは統計家に確認しよう」、「このクリニカルな解釈は専門医に聞こう」といった形で、必要なインプットを部分的に取りに行くだけなのです。

そのため、権限を分散させるのではなく、「リード・エピ」が誰なのかを明確に決める必要があります。

リードエピとは、その研究をプロセスおよびサイエンスの両面からリードしていく疫学の責任者です。

このリードエピが中核となり、指示を出す形でチームを動かしていくべきです。具体的には、リードエピの指揮下にプロマネを配置したり、スタットを入れたり、あるいはKOL(キーオピニオンリーダー)や臨床医をアサインしたりする構造になります。

推奨されるチーム構成

では、実際にどのようなメンバーでチームを組むべきか。最低限必要な「ミニマムセット」は以下の3名です。

  1. リード・エピ:研究の設計者であり司令塔。

  2. プロマネ:進行管理の実務を担う。

  3. スタット:解析面の専門的なサポート。

臨床医に関しては、社内・社外を問わず、必要に応じてコンタクトをとれば良いため、常設メンバーとしては「Nice to have(あれば良い)」という位置づけです。

まずは、リードエピ、プロマネ、スタットの3名体制で進めていくのが最適解であると考えます。

3.承認プロセスの把握

チームができたら、次は社内手続きの把握です。

これは特に、製薬企業とコラボするパートナー企業の方は絶対にやっておいた方が良い作業です。

そのクライアント企業における、データベース研究の「承認プロセス」を明確に理解することです。

一つの研究において、どのフェーズで承認が必要になるのか。一般的には、以下の四つのフェーズが存在します。

  1. 予算取り

  2. 研究計画

  3. 解析

  4. 学会発表・論文

それぞれのフェーズで誰の承認が必要なのかを明確にしておく必要があります。

ここの承認が取れなければ研究は一歩も前に進みません。

逆に言えば、「承認権者がOKを出してくれるためには、どのようなネゴシエーションが必要か」「どのようなレポートやアウトプットを用意すべきか」と逆算して考えていく必要があります。

グローバルの関与を見極める

承認者には、当然ながらその研究チーム全員が含まれますし、各メンバーが所属する部門長がレビュワーとして入ることもあります。

しかし、ここでプロセスを回す上でめちゃくちゃ重い要素となるのが「グローバル」の存在です。

外資系製薬企業であればグローバルエピがレビュワーに入ることもあれば、対象となる治療領域、例えば抗がん剤の研究であればグローバルのオンコロジーチームが入ってくることもあります。

このように「グローバルが入るかどうか」によって、プロセスの重さと難易度は劇的に変わります。

ですのでグローバルの関与具合は必ず事前に、早期に掴んでおくべきです。

もし対製薬企業のビジネスを行うのであれば、「その案件、グローバルはどんな感じで絡んできますか?」と事前にしっかりアセスメントしておくことを強く推奨します。

4.タイムラインとコンテクスト共有:プッシュバックを回避する技術

承認プロセスの地図ができたら、タイムラインを引いていきます。一般的なRWD研究の標準的なスケジュール感は以下の通りです。

  • リサーチ・クエスチョンの策定:1ヶ月

  • 実現可能性調査:2ヶ月(スタディコンセプト作成含む)

  • 研究計画書作成:3ヶ月

  • 解析実施:3ヶ月

  • 論文執筆:3ヶ月

トータルで、およそ1年から1年半ぐらいを見ておくと良いでしょう。

デッドラインに対する「逆算」の作法

ここで重要なのは、デッドラインの管理です。当然ですが、デッドラインになってからアウトプットを出してレビューを依頼していては手遅れです。デッドラインとはレビューに回す日ではなく「Approval」をもらう日なのです。

特にグローバルは動きが重く、クオリティが低いプロトコルの場合は2回、3回、4回と差し戻しが発生することも珍しくありません。

外資系製薬企業におけるApprovalとは、すなわち「グローバルマネジメントをどれだけ上手くやれるか」という世界そのものです。


グローバルからスムーズにApprovalを取得するためには、いきなり完成品をレビューに回してはいけません。

各フェーズの構想段階、あるいは中間段階で定期的にグローバルとミーティングを持ちましょう。

そして「今こう行こうと思っているんだけど、どう思う?」と巻き込んでいく。

そこで「いや、ここは違うんだよね」といったフィードバックをもらい、それを反映させていくのです。

「コンテクストの共有」で土台を整える

もう一つ、非常に重要なポイントがあります。

研究がスタートした段階で、グローバルや承認者全体に向けて「その研究のコンテクストを伝えるミーティング」を必ず開催してください。

  • この研究の事業目的は何か。

  • それにおける日本の臨床現場や規制の状況はどうなっているか。

  • 使用するデータベースは何か、そのデータの特徴や限界は何か。

こうした「前提知識」がない状態でいきなりレビューを回すと、全方位から「しっちゃかめっちゃか」なコメントが飛んできたりします。

日本の医療制度ではあり得ない指摘や、データの仕様を無視した要求などが来て、どうにもならなくなってしまうのです。

各フェーズの初手でこのコンテクスト共有を徹底して行っておくことで、強烈なプッシュバックを受けることなく、事前にスムーズに進めていくことが可能になります。

5.逆算の美学:ラストセンテンスまで見据えて一気に

最後に、RWD研究において最も大切なことをお伝えします。

それは、リサーチ・クエスチョンを固めた段階で、「その研究の結果がどうなるのか」を完全に読み切っておくことです。

研究の結果は、大抵は2パターンか3パターンぐらいに分類されるはずです。

そのそれぞれのパターンになった際に、

  • どのような結論を出し得るのか。

  • 企業として発信するメッセージはどうなるのか。

  • そのメッセージを支えるエビデンスははどう示すか。

  • ディスカッションをどう展開し得るのか。

ここまで想像しておかないといけません。

「とりあえずやってみて、結果はこうだったから、こういうメッセージにしよう」という行き当たりばったりのアプローチだと、想定外の結果が出た時に右往左往することになります。

シナリオプランニングによる「合意」

しっかりとコンクルージョンを数パターンに分け、論文のラストセンテンス、すなわち「インプリケーション」のところをパターンごとに明確に想像しましょう。

そして、そのラストセンテンスに到達するように、流れるように美しく研究を設計していくのです。

なお、これは決して恣意的に研究を操作しろということではありません。

そうではなく、

  • 「この研究で出得る結果はパターンA、B、Cのいずれかだよね」と分類し

  • それぞれに応じたメッセージをあらかじめ作成しておく

  • そしてそれぞれのメッセージが企業として許容できるのかどうかを事前に考えておく

ということです。

そうすれば、いざ解析をしてデータが出てきた際に、社内でハレーションが起きることはありません。

「あ、これはパターンAの結果が出たから、事前にディスカッションして合意を取った通り、このメッセージで行きましょう」と、粛々と進められるわけです。


企業のDB研究はこの逆算が全てと言っても過言ではありません。DB研究というのは、「逆算の美学」なのです。


事業目的を聞いた瞬間、リサーチ・クエスチョンを聞いた瞬間に、その研究のコンクルージョンのラストセンテンスが想像できるかどうか。

もしできないのであれば、それはまだ企業でデータベース研究をやる「腕」が足りていないということです。

その場合は、しっかりとした専門家をつけて実施しましょう。

おわりに

今日は、企業でリアルワールドデータ研究を行う際に、プロジェクトをスムーズに進めるためのプロセスについて解説してきました。

事業目的の徹底的な握り、リードエピを中心としたチーム設計、グローバル承認を見越したタイムライン管理、そして「逆算の美学」。

これらを意識するだけで、研究の質とスピードは劇的に向上するはずです。

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