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【初学者にも書ける医学英語論文】型で攻略するIMRADの書き方:再現性の高いMethodsを書くコツ - vol.11

【初学者にも書ける医学英語論文】型で攻略するIMRADの書き方:再現性の高いMethodsを書くコツ - vol.11

2025.09.22

英語で医学論文を執筆するのは大変そうですよね。初めての方は「一体何から始めれば良いの?」と思うはずです。私も昔はそうでした。

先行研究を参考に見よう見まねで執筆してみるものの最初の数本は見向きもされず、Rejectの連続でした。今では良い思い出であり、その経験があるから今があると思っていますが、当時はめちゃくちゃ辛かったです。

その後、図書やセミナーで論文の書き方におおよその「型」があることを学び、徐々に査読者に内容が伝わっていないなということが減るのを実感しました。

その論文執筆の型を含む書き方を、筆頭著者・共著者として100本以上の論文に携わり、最近は査読者や編集者を務めているなかで感じたエッセンスを全5回(第10~14回)に渡り公開します。


第11回の今回は、研究の核心に位置し、科学において大切な要素――「再現性」が最も重要視されるMethodsについて解説します

Methodsは明確な型があり、各種のReporting Guidelinesに沿って執筆すれば、誰でも必要な情報を漏れなく記載することができます。経験者にとっては、それほど執筆の難易度が高いパートではないでしょう。

ただし、このセクションに不備があると、査読をパスすることは困難です。

では、どのように記載すれば再現性を担保でき、査読もパスできるのか。本稿でそのポイントを一緒に学んでいきましょう。

この記事のまとめ

この記事を読むと分かること

  • Methodsの意義が分かる

  • Methodsへ書くべきことが理解できる

  • Rejectやトンデモ査読を回避するMethodsの書き方が分かる

※「トンデモ査読」とは、論文の内容を十分に理解していないと思われる査読者から寄せられる、的外れな要求や指摘を指します。

この記事は誰に向けて書いているか

  • Reporting Guidelinesを知らずに論文を書いていた方

  • 論文執筆の指導をしたい方

  • トンデモ査読をもらった経験のある方

英語論文執筆シリーズ

  • vol.1:東大大学院生を指導してきた医師が語る - 英語論文執筆の心理的ハードルを下げよう

  • vol.2:東大大学院生を指導してきた医師が語る - たった三つを意識すれば論文構成は完成する

  • vol.3:東大大学院生を指導してきた医師が語る - 学会発表を論文化する最短ルート

  • vol.4:東大大学院生を指導してきた医師が語る - 投稿から査読対応までの基本プロセス

  • vol.5:
    (前編)東大大学院生を指導してきた医師が語る - AI時代に求められる論文リテラシーとは?
    (後編)東大大学院生を指導してきた医師が語る - AI時代に求められる論文リテラシーとは?

  • vol.6:
    (前編)東大大学院生を指導してきた医師が語る - 論文の量産を可能にする習慣×統計手法
    (後編)東大大学院生を指導してきた医師が語る - 論文の量産を可能にする習慣×統計手法

  • vol.7:生成AIで進める英語論文執筆の全体戦略 - プロンプト付きで即実践!

  • vol.8:研究テーマの見つけ方と投稿先選び - 日常から着想を得て論文に育てるステップ

  • vol.9:短時間で“使える論文”を探す文献検索の手順 - PubMed×AI活用で効率化

  • vol.10:型で攻略するIMRADの書き方 - 読者に伝わるIntroductionを書くコツ

  • vol.11:型で攻略するIMRADの書き方 - 再現性の高いMethodsを書くコツ(本記事)

  • vol.12:型で攻略するIMRADの書き方 - 過不足のないResultsを書くコツ

  • vol.13:型で攻略するIMRADの書き方 - 一貫性のあるDiscussionを書くコツ

  • vol.14:IMRADを要約する論文の顔 - 印象に残るTitleとAbstractを書くコツ

執筆者の紹介

氏名:宮田一弘
所属:茨城県立医療大学
自己紹介:博士(保健学)。大学卒業後、理学療法士として病院勤務を経て、現在は医療系大学にて教育および研究に従事している。専門はアウトカムメジャーの検証・解釈や予測モデルの開発などの臨床研究であり、データ駆動型アプローチによる臨床意思決定支援の実現を目指している。これまでに臨床家と協同し100本以上の論文執筆に携わるとともに国際学術誌の査読を多数担当。現在は、国際誌のEditorial Board Memberも務めている。

編集者

氏名:菊池祐介
所属:mMEDICI株式会社
専門性:作業療法学修士。首都大学東京(現東京都立大学)・東京都立大学大学院を卒業後、病院勤務を経て専門学校・私立大学にて作業療法教育、地域共生社会の醸成に向けたリハビリテーション専門職の支援に関する研究に従事。現在は心身の健康とその人らしさの実現に向け、保険内外でのクライアント支援を展開している。作業療法の社会的意義向上を信念に、mMEDICI株式会社に参画。

監修者

氏名:廣瀬直紀
所属:mMEDICI株式会社
専門性:保健学博士・公衆衛生学修士。東京大学・東京大学大学院を卒業後、外資系製薬企業の疫学専門家として薬剤疫学・リアルワールドデータ研究を専門とする。日本・グローバルの双方で活動したのちに、全ての人がアクセス可能な一流の知のプラットフォームを作り、「知に繁栄を、辺野に豊穣を」実現すべく、mMEDICI株式会社を創業。

Methodsの役割・重要性

研究の再現性

Methods(研究方法)セクションの役割は、以下の二つを読み手に丁寧に説明することです。

・研究対象(データソース)

・研究手順

学術論文は「研究者同士のコミュニケーションツール」です。そのため、自分がデザインし、実施した研究手法を丁寧に読み手へ説明することは、研究結果そのものを報告する以上に重要であるとも言えるでしょう

Methodsで重要な点は、研究の再現性(reproducibility)を確保できるよう、できるだけ具体的に記述することです。

実験研究であれば、他の研究者が同じ手法で実験を再現できるほど詳細に手続きを書く必要があるでしょう。

一方で、本記事で扱うようなヒトを対象とした臨床研究では、厳密な意味での再現はほぼ不可能です。そのため、データの性質や対象者の選定方法、収集した測定項目、分析手法について、その利点や限界が読み手に伝わるよう丁寧に説明することが求められます。


第10回のIntroductionでは「読み手を導く魅力的なストーリー」が大切とお伝えしました。これに対しMethodsは、「決められた場所に決められたことをきちんと記述する」ように、まさに漏斗の先のように一本道なセクションなのです。

IntroductionとMethodsの構造

Methodsが原因でReject?

初めて英語論文を書く方の中には、「Methodsは実際にやったことを書くだけだから難しくない」と考える方もいるかもしれません。確かに「やったことを書く」という点は正しいのですが、実際には一定のルールがあり、決して単純ではありません

私自身もこれまでに何十本と論文を執筆してきましたが、初めて扱う研究デザインや手法に取り組む時には、報告ガイドラインを確認しながら進めるため、それなりの時間を要します。

執筆経験のある方の中には、Methodsが原因でRejectされた経験をお持ちの方もいるのではないでしょうか。私も数え切れないほど経験があります。実際、査読者を対象に行われた調査でも「問題の多いセクション」と「Rejectの原因になったセクション」の両方で、最も多かったのはMethodsでした(後者は圧倒的な差をつけて)。

その主な理由としては、研究デザイン上の致命的な欠陥、重大な未測定交絡因子の存在、症例数の不足による検定力の欠如、統計解析における稚拙な誤りなどが挙げられます。いずれも、それだけでRejectの直接的な理由となり得るものでした。


つまり、Methodsセクションの出来が論文の採否を左右するといっても過言ではないのです。

さらに最近では、国際誌の中には論文のインパクト(新奇性など)よりも、方法が適切で科学的に妥当かどうかを重視する雑誌もあります。その背景には、論文の重要性や意義は出版後に研究コミュニティの議論によって評価される、という考え方があります。

このような現状を踏まえると、学術論文においてMethodsの適切性・妥当性がいかに重要かがよく分かります。

Methodsを読めば手堅い研究が行われたかどうかが分かる

繰り返しになりますが、結果の再現性こそが科学の核心であり、その責任を担っているのがMethodsです。だからこそ、Introductionのように華やかである必要はなく、情報に過不足なく丁寧に説明されていれば、それで十分なのです。

手堅い研究とは何か?」と思う方もいるかもしれません。私自身は、それは“飛躍していないこと”だと考えています。今でこそ一定の研究経験と論文執筆の積み重ねがありますが、初めの頃はRejectの連続で、まったく相手にされませんでした。

さらに、査読に回ったとしても、コメントが的外れに思えて「なぜ伝わらないのか?」と悩んだこともあります(いわゆる“トンデモ査読”です)。振り返れば、その一因は自分の未熟さ、特にMethodsの書き方にあったのだと痛感しています。

著者にとっては、長い時間をかけて取り組んだ研究を多くの人に知ってもらいたいという思いもあり、その熱量が文面ににじみ出やすいものです。しかしMethodsでは、感情に流されず、冷静に、そして淡々と必要なことだけを記載することが大切です。

それでは次に、具体的に「何を」「どのように」書けばよいのかを解説していきましょう。

Methodsの基本構成

型通り書く

Methodsの書き方は定型的です。基本的なルールや慣習に従い、型通りに書けば問題ありません。

その型の一つは、各雑誌の執筆規定です。これは投稿前に必ず確認しましょう

もう一つは、第2回でも紹介されていた報告ガイドラインです。臨床研究には様々な研究デザインがあり、それぞれに対応するガイドラインが存在します。

これらはEQUATOR Networkに整理されていますので、論文執筆時には必ず参照してください。


代表的なものには、以下のようなものがあります。

・CONSORT(ランダム化比較試験)

・STROBE(観察研究)

・TRIPOD+AI(診断・予測モデル研究)

・PRISMA(システマティックレビューとメタ解析)

報告ガイドラインは文字通り「報告のための」ガイドラインやステートメントですが、必要事項が網羅されています。そのため、論文執筆時でなく、研究計画の立案段階から確認し、実際の研究に反映できるとより効果的です。


ここまでは領域を限定せず「臨床研究」全般を扱ってきました。しかし、Methodsの詳細は分野ごとに異なるため、ここからは後藤先生の著書『僕らはまだ、臨床研究論文の本当の読み方を知らない。』にある四つの研究目的のうち、観察研究かつ私の経験のある「関連性の研究」と「診断・予測の研究」に焦点を当てます。

・記述研究

・リスク因子の研究(関連性の研究)

・治療・介入の研究(因果推論)

・診断・予測の研究

1.研究デザイン、セッティング、倫理的配慮、報告ガイドライン

Methodsの最初のパラグラフでは、いくつかの「宣言」をしておくことが大切です。

まずは研究デザインの宣言です。

最初にデザインを明示しておくことで、読み手は研究の骨格を把握でき、この先に何が書かれているのかを予測しながら安心して読み進めることができます

観察研究であれば、前方視的(prospective)か後方視的(retrospective)か、コホート研究(cohort study)か症例対照研究(case-control study)か横断研究(cross-sectional study)か、といった点を具体的に示します。

ただし、研究デザインの判断は一見すると簡単そうに見えて、実は意外と難しいものです。理解が不十分だと適切に記載できません。

私自身、国際誌の査読をしていても、研究デザインの記載と実際の手法・解析に齟齬があり、確認が必要になることをしばしば経験します。


次にセッティングの記載です。

使用したデータがどのような環境から収集されたのかを明確にします。例えば、単施設か多施設か、大学病院か市中病院か、入院患者か外来患者か、といった情報です。さらに、基準となる日付(データ収集期間など)も記載しましょう。

また、私はこの段階で倫理的配慮についても記載するようにしています。倫理審査委員会の承認やインフォームド・コンセントの取得有無などです。

倫理的配慮の記載場所に決まりはありませんが、Methodsの冒頭に記載すると読み手に分かりやすいでしょう。


最後に、準拠したReporting Guidelinesの宣言を行います。論文によっては必要な事項が抜けているケースもありますが、どのガイドラインに沿って執筆したかを明示することで、「少なくとも一度は確認しているのだろう」という安心感を査読者に与えることができます。

2.適格基準(研究対象となった方)

次に、対象者を明記します。

適格基準(eligibility)は、組み入れ基準/除外基準(inclusion / exclusion criteria)に分けて記載することがあります。この基準は独自に定めるのではなく、先行研究やガイドラインを参考にして決定していることが重要です。

適格基準を明記する意義は、研究結果の一般化可能性を示すことにあります。つまり、結果を適用できる人と適用が難しい人を明確にする、ということです。

ここで常に意識したいのは「母集団」です。臨床研究で現実に得られるデータは、知りたい集団(母集団)の一部であるサンプルに過ぎません。サンプルを統計学的に分析し、その結果から母集団における関連を推定する――これが臨床研究の基本的な目的です。

適格基準が曖昧だと選択バイアスが疑われ、査読者から厳しく指摘されます。なぜその基準にしたのかを説明できるよう、臨床・研究の両面から十分に検討し、根拠をもって示せる形に整えておきましょう。

3.候補となる因子(変数)

ここでは、研究目的に応じて候補となるリスク(関連)因子や予測因子を列挙します。これらの変数は、先行研究の知見や臨床的なドメイン知識を基に選定し、その定義や収集の方法――いつ、誰が収集したのか――を明記します。

特に、その領域で特有の評価尺度を用いた場合には、その尺度に関する情報(妥当性や信頼性)と、測定を行った人物に関する情報(専門家か、あるいは測定トレーニングを受けた者か)を記載することを推奨します。

こうした点を丁寧に書くことで情報バイアスのリスクを減らし、データの信頼性を高めることができます。

事細かな説明までは不要ですが、「質の悪いデータから良い結果は得られない」という点を忘れず、再現性を意識して丁寧に記載することが望ましいでしょう。

(続きはページの後半へ)

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4.アウトカム

アウトカム(outcome)は「帰結」「結果」と訳され、「関連性の研究」や「診断・予測の研究」においても「何に」に該当する、研究の核心部分にあたります。

基本的には一つの主要アウトカム(primary outcome)を設定します。その際に大切なのは、「臨床的に対象者にとって本当に意味があるか」という視点です。

具体例としては、死亡/生存、疾病発症の有無、入院の有無、転倒の有無などが挙げられます。近年では、患者報告アウトカム(PRO)の重要性も高まっています。

アウトカムについても、変数と同様に定義や収集方法――いつ、誰が収集したのか――を丁寧に記載しましょう。診断・予後研究の場合には、アウトカムを測定した人が候補因子の情報を知っていたかどうか、つまりブラインドの有無を明記することも重要です。

また、分野によっては量的変数をカテゴリー化してアウトカムとする場合もあります。その際には、妥当性が示されているカットオフ値などに基づいて分類したことを示してください。決して、データを見てから事後的に分類することがあってはなりません

5.サンプルサイズ

サンプルサイズ計算の重要性は、観察研究においても年々高まっており、各報告ガイドラインにもチェック項目として明記されています。

サンプルサイズは多ければ多いほど望ましいのは確かですが、既存データベースを用いる研究以外では、データ収集の労力との兼ね合いもあり、適切な数を事前に設定しておくことが大切です。

サンプルサイズは統計解析と密接に関連しています。パワーや推定の頑健性を担保できる数を見積もることが求められます

近年ではサンプルサイズを計算できるソフトウェアも普及しており、さらに各解析にはRule of thumb(経験則)もありますので、それらを確認すると良いでしょう。

先に述べたように、MethodsがRejectの最も多い原因となるセクションですが、その中でも第一の理由は「サンプルサイズの不足」です。

それほど大切な要素ですので、統計解析を選ぶ際には、サンプルサイズの範囲で実行可能な方法を心掛けることが重要です。

6.統計解析

最後に、統計解析について記載します。

統計解析は、観察研究において論文の核となる重要な部分です。「統計解析」と聞いただけで拒否反応を示したり、論文を読む時に思わず読み飛ばしてしまう方もいるかもしれません。

ですが、論文を執筆する以上、避けて通ることはできません(論文を執筆している時点で、既に立ち向かった後だとは思いますが)。

解析の詳細については多数の専門書があるので、まずはそちらを参照してください。また、不安がある場合は専門家に相談することを強くお勧めします。本来は研究開始前に相談するのが理想ですが、執筆段階であっても相談しないよりははるかに有益です。妥当な解析を選ぶことで、いわゆる“トンデモ査読”に遭うリスクも大きく減らせます

ここでは、論文執筆にあたり統計解析のパートに書くべき事項を整理します。観察研究の場合、概ね以下を記載する必要があります。

①対象者の特性を記述するための記述・要約統計

② ‐ 1 因子とアウトカムの関連性を推測する推測統計(関連性研究)

② ‐ 2 予測因子からアウトカムを予測するモデル構築(診断・予測の研究)

③感度分析、内的検証

④有意差の定義

⑤使用した統計ソフトウェア

①の記述統計は、ほとんどの論文で似たように書かれています。参考になるものを探して真似すれば十分です。Word数の制限が厳しい場合には簡潔にまとめるか、省略することもあります。


②が統計解析のメインとなります。ここは必ず、下図のように結果ときちんと対応していることがとても重要です。「どの解析の結果がどこに示されているか」が明確に分かるように記載してください。

MethodsとResultsの対応関係図

② - 1 の関連性研究の主な目的は、一つのアウトカムと関連する複数の因子を探索することです。

この研究が行われる前提は、その領域に十分な知見がまだ蓄積されていないことにあります。その点については、すでにIntroductionで上手く絞り込めているはずです。

最もよく用いられる手法は回帰分析(regression analysis)で、特定の因子がアウトカムと関連しているかどうかを明らかにします。こうした関連性研究の成果が積み重なり、次のステップとして因果推論や診断・予測研究へと発展していきます。


② ‐ 2 の診断・予測の研究では、関連性研究で特定された因子を基に予測モデルを構築します。

アウトカムが二値の場合はロジスティックス回帰分析が良く用いられますが、近年では機械学習を活用した手法も数多く報告されています。

予測モデルは、いずれの手法を用いるにせよ予測性能が十分に高いことが求められます。簡潔に記載しましたが、この部分には非常に多くのバイアスが生じる可能性があります。

診断・予測の研究のためには、バイアスリスクを評価するツールとしてPROBASTが存在します。統計解説は九つの項目で評価され、多くのシステマティックレビューでこのドメインが「ハイリスク」と判断されることが少なくありません。ぜひご一読をお勧めします。


③は、メイン解析の結果がどれだけ頑健で一貫しているかを評価する重要な部分です。補足的な解析ではありますが、各報告ガイドラインにも項目が設けられており、近年は実施されることが増えています。

私自身も査読の際、必要なのにこれらの解析が行われていない場合は実施を促しています。

感度分析(sensitivity analysis) は、結果の頑健性を示すために行います。観察研究における因果推論では必須とされ、その他の研究目的でも活用される機会が増えています

具体的には、対象集団(サブグループを含む)やアウトカムの定義を変更するなど、条件を変えて解析を行います。

内的検証(internal validation) は、予測モデルを開発した段階で、そのデータセットを使って行う検証です。予測モデルは用いたデータに最も適合するよう作られるため、そのデータにだけ当てはまりのよい過適合(overfitting)が生じやすくなります。

そこで、少なくとも手元のデータセットで過適合が生じていないかを確認するために、交差検証やブートストラップ法といった解析を用いて検証します。

このような③の批判的な視点は、研究を行う上で常に意識しておくことが非常に大切です。

④と⑤は①と同様にほぼ定型文ですので、先行研究を参考に、定まった形で記載してください。

補足資料の活用

ここまでMethodsに記載すべき事項を並べてきましたが、論文には各雑誌ごとに決められたWord数があります。

Introductionは凡そ500 words程度が目安であるとお伝えしました。一方、Methodsには明確な目安はなく、研究の再現性を担保するために必要な内容であれば、すべて記載することが求められます。そのため、どうしても長くなりがちです。

とはいえ、初回投稿では規定のWord数を守らなければなりません。もしスペースが足りなくなってしまった場合には、Supplemental materialやAppendixを活用しましょう

内容を削ってしまうよりも、補足資料として移動させて残しておく方が望ましいです。ただし、説明が冗長な場合は適宜整理・削除することも必要です。

よくあるミスと改善策

必要な情報を提供しないこと

これまで解説してきたように、Methodsは研究の核心部分であり、再現性を担保するうえで最も重要なセクションです。

そのため、必要な情報は漏れなく記載されていなければなりません。実際に査読の場面では、「なぜこの除外基準を設けなかったのか?」「この情報はいつ、どのように取得したのか?」といったコメントを受けることも珍しくありません。

ただし、これらは単なるミスの指摘ではなく、研究結果の妥当性を高めるために必要な確認です。したがって、指摘を受けた段階で適切に修正や追記を行えば問題ありません

必要以上に詳細な情報を提供すること

これまでとは逆のことを言うようですが、こちらは著者が気をつけることで改善できる点です。因子やアウトカムの定義、統計解析などを必要以上に冗長に記載してしまうと、かえって読みづらくなってしまいます。

論文の読み手は、あなたの研究に関心を持ってくれた専門家が中心です。ですから、過度に丁寧に説明する必要はありません。適切なバランスを意識しましょう

ここまで記事をお読みいただき、ありがとうございました。臨床研究におけるMethodsの書き方について、少しイメージが掴めたでしょうか。

研究を再現可能にするMethodsを書き、Rejectを回避していきましょう!

次回予告

第12回では、IMRADのR:Resultsについて解説します。

学術論文におけるResultsは、Methods以上に事実を淡々と書くパートです。TableやFigureとの関連を踏まえ、シンプルかつ明快に書くためのポイントをお伝えします。

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