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【初学者にも書ける医学英語論文】東大大学院生を指導してきた医師が語る:投稿から査読対応までの基本プロセス - vol.4

【初学者にも書ける医学英語論文】東大大学院生を指導してきた医師が語る:投稿から査読対応までの基本プロセス - vol.4

2025.06.25

臨床論文を英語で執筆してアクセプトを勝ち取るまでには、たくさんの高い壁が立ちはだかるように感じる人も多いでしょう。

良きメンターにめぐり会うか、よほどの能力の持ち主でないと、これまではその壁を乗り越えることは困難だったかもしれません。

どのようなステップを踏めば最初の論文執筆を成功させることができるか、東大大学院で多くの後輩の英文論文を指導する中で見えてきた、その最適解とも言える指導法のエッセンスを全6回に渡り公開します。

第4回は、いよいよ論文投稿から査読システムとその対処方法について触れていきます。

論文投稿は実は論文アクセプトまでの第一歩にすぎません。査読が戻ってきてからの方がむしろ労力も時間もかかります。

本稿を読んで、私達とともに英文論文執筆の正念場を乗り越えていきませんか。

この記事のまとめ

この記事を読むと分かること

  • エディターやレビュワーの立場からみた査読システム

  • エディターキックを避けるためのTIPS

  • Point-by-point responses作成の考え方

この記事は誰に向けて書いているか

  • 論文をこれから執筆しようとしている方

  • 論文投稿をひかえている方

  • 何度か論文投稿をしたことがある方

英語論文執筆シリーズ

  • vol.1:東大大学院生を指導してきた医師が語る - 英語論文執筆の心理的ハードルを下げよう

  • vol.2:東大大学院生を指導してきた医師が語る - たった三つを意識すれば論文構成は完成する

  • vol.3:東大大学院生を指導してきた医師が語る - 学会発表を論文化する最短ルート

  • vol.4:東大大学院生を指導してきた医師が語る - 投稿から査読対応までの基本プロセス(本記事)

  • vol.5:
    (前編)東大大学院生を指導してきた医師が語る - AI時代に求められる論文リテラシーとは?
    (後編)東大大学院生を指導してきた医師が語る - AI時代に求められる論文リテラシーとは?

  • vol.6:
    (前編)東大大学院生を指導してきた医師が語る - 論文の量産を可能にする習慣×統計手法
    (後編)東大大学院生を指導してきた医師が語る - 論文の量産を可能にする習慣×統計手法

  • vol.7:生成AIで進める英語論文執筆の全体戦略 - プロンプト付きで即実践!

  • vol.8:研究テーマの見つけ方と投稿先選び - 日常から着想を得て論文に育てるステップ

  • vol.9:短時間で“使える論文”を探す文献検索の手順 - PubMed×AI活用で効率化

  • vol.10:型で攻略するIMRADの書き方 - 読者に伝わるIntroductionを書くコツ

  • vol.11:型で攻略するIMRADの書き方 - 再現性の高いMethodsを書くコツ

  • vol.12:型で攻略するIMRADの書き方 - 過不足のないResultsを書くコツ

  • vol.13:型で攻略するIMRADの書き方 - 一貫性のあるDiscussionを書くコツ

  • vol.14:IMRADを要約する論文の顔 - 印象に残るTitleとAbstractを書くコツ

執筆者の紹介

氏名:畑啓介
所属:東京大学医学部非常勤講師・とよしま内視鏡クリニック
専門性:医師・医学博士(外科学)・英検1級・全国通訳案内士(英語)・ECFMG certificate取得。東京大学医学部医学科・東京大学大学院医学系研究科外科学専攻卒業、米国サンタモニカ John Wayne Cancer Institute留学・東京大学がんプロフェッショナル養成プラン元特任講師を経て現職。医学英文論文執筆・執筆指導多数。著書に『学会発表・医学英語論文執筆のトリセツ初めての症例報告!外科医のためのケースレポートのトリセツ

編集者

氏名:菊池祐介
所属:mMEDICI株式会社
専門性:作業療法学修士。首都大学東京(現東京都立大学)・東京都立大学大学院を卒業後、病院勤務を経て専門学校・私立大学にて作業療法教育、地域共生社会の醸成に向けたリハビリテーション専門職の支援に関する研究に従事。現在は心身の健康とその人らしさの実現に向け、保険内外でのクライアント支援を展開している。作業療法の社会的意義向上を信念に、mMEDICI株式会社に参画。

監修者

氏名:廣瀬直紀
所属:mMEDICI株式会社
専門性:保健学博士・公衆衛生学修士。東京大学・東京大学大学院を卒業後、外資系製薬企業の疫学専門家として薬剤疫学・リアルワールドデータ研究を専門とする。日本・グローバルの双方で活動したのちに、全ての人がアクセス可能な一流の知のプラットフォームを作り、「知に繁栄を、辺野に豊穣を」実現すべく、mMEDICI株式会社を創業。

まずは投稿する雑誌を決めよう

投稿先の雑誌の選択に関しては、何度か論文を投稿するようになると関係する分野の雑誌に目を通すことも多くなり、目標とする雑誌ができたり、自分の研究内容がアクセプトされる現実的な雑誌のレベルも分かったりするようになります。

しかし、最初に投稿するときには、指導者の意見を聞きながら決めるのが現実的です。

あまりに現実離れしたインパクトファクターの高い雑誌を選ぶのは得策ではありません。現実的にアクセプトされそうな雑誌よりも、少しだけ上の雑誌を第一志望としてリジェクト覚悟で投稿していくのがおすすめです。

そして、滑り止めとなりそうな雑誌も含めて第三候補ぐらいまでは最初の投稿時点で選択しておくとよいでしょう。


ちなみに原稿を書いて論文を掲載してもらうと、原稿料をもらえても良さそうなのですが、多くの場合、逆に費用を請求されます。

紙媒体の雑誌が主流であった頃は、個人や図書館による雑誌の購入費が出版社の収入源だったと思われます。私もNEJMの定期購読をして積読をしていたことがあります。

雑誌が紙からWeb主体となり、以前にもまして著者が費用を負担するシステムに代わってきています。

例えば、誰もが無料で論文を読むことができるOpen Access(OA)の場合には、多くの場合Article Processing Charge(APC)という形で著者が出版コストを負担します

雑誌によってはすべての論文がOA指定で、アクセプトされるとAPCの支払いが必ず必要ということもあります。そのほか、投稿時に必要なSubmission Fee, Color Figure Fee, Page Fee, 英文校正費といった形で料金を課す雑誌もあります。


なお、査読システムもはっきりせず、アクセプトされた際に請求される費用が法外に高い悪徳ジャーナルの存在が問題となっています。

このようなハゲタカジャーナルなどと呼ばれる雑誌は避けた方がよいとされているのですが、NatureでもオープンアクセスのためのAPCが100万円を超えるようになっている現在、この見極めは難しくなっていると感じます。

参考までに悪徳雑誌を見極めるためのサイトを以下に二つご紹介しておきます。

まずは投稿まで漕ぎつけよう

雑誌を決めたら投稿規定を見よう

投稿する雑誌を決めるタイミングは、論文を書き始める前が効率的です。雑誌によって多少フォーマットが違うからです。

そして、少なくとも文献の引用が必要なDiscussionやIntroductionを書くときまでには文献管理ソフト導入して使用しながら執筆するようにします。

EndnoteやZotero、Paperpileなどが有名どころですが、CEOの廣瀬さんのブログにはPaperpileの使い方が懇切丁寧に書かれています。


投稿先の雑誌を決めたら、次にすることはInformation for authorsやGuide for authorsといった雑誌毎の投稿規定のチェックです

雑誌横断の報告ガイドラインと雑誌毎のローカルルールである投稿規定の二つがあることに関しては第2回で触れていますので、是非ご参照ください。

雑誌毎の投稿規定は、多くの場合、雑誌のウェブサイトから見ることができます。

最終的には投稿規定に細かく目を通す必要がありますが、論文を書き始める際に特に注目する点は以下の三つの数字です。

❶本文の文字数

❷FigureやTableの数

❸文献数

同じ雑誌でも論文の種類がoriginal articleなのかreviewなのかcase reportなのかにより、❶~❸も異なることがほとんどですので、自分の投稿しようとしている論文の種類に従って、よく確認するようにします

報告ガイドラインはEQUATOR networkにまとめられています。


原著論文の中でも観察研究に挑戦する方の報告ガイドラインはSTROBEですが、日本語版のSTROBEも用意されています。

さらには、第2回IMRADやトピック・センテンスを使ったパラグラフ・ライティングは、是非目を通していただきたい内容です。


症例報告を目指す方にはBMJ Case Reportsのひな形が参考になると思います。

このひな形は非常に教育的で項目を埋めていくと論文ができあがるようになっています。

症例報告の報告ガイドラインはCAREを参照します。


総説・レビューreviewは初学者というよりは論文執筆経験のある中・上級者向けといえます。レビューにはナラティブ・レビュー(narrative review)と系統的レビュー(systematic review)があります。

ナラティブ・レビューは専門家が物語のように述べるものであるのに対し、系統的レビューは文献の検索方法をしっかりと定義し、その質の評価も一定の基準で行います。

さらにはメタアナリシスの論文はよく目にすると思いますが、これは複数の研究結果を統合して量的な評価を行うものです。


Lancetでは原著論文であってもDiscussionに、既存の関連研究に関するsystematic reviewを独自で行うか引用するかして、記載することが要求されます。また、診療ガイドライン作成の際もよくメタアナリシスが行われます。

診療ガイドラインのポータルサイトともいえるMindsのホームページには「Minds診療ガイドライン作成マニュアル2020 ver.3.0」が公開されています。この第4章にはメタアナリシスの方法が記載されており、参考になります。

系統的レビューの報告ガイドラインはPRISMAを参照します。

ローマ字はヘップバーン式で?

ローマ字の記載方法はいくつかの方式があります。

有名なのはヘボン式、実はその「ヘボン」は『ローマの休日』で有名な俳優のオードリー・ヘップバーンのHepburnと同じ綴りです。同じ綴りで複数のカタカナがあるように、同じ読み方でも複数のローマ字表記があります。

例えば、二刀流の大谷翔平選手のローマ字はどうでしょうか?

❶Shouhei Otani

❷Shohei Ohtani

❸Shoohei Ootani

実際には❷が使われていますが、パスポートでは複数の表記が許されるようです。

このように共著者の名前に複数のローマ字候補がある場合、英文論文の時にどのローマ字を使用するかは共著者本人に確認する必要があります。また、所属に関しても本人に確認してもらうと間違いがありません。

論文を回覧して内容を確認してもらう際に、所属と名前の間違いがないかも確認してもらうとよいでしょう。

英語が第二言語であれば英文校正を

多くの雑誌で英語が第二言語の場合には、プロの英文校正者による英文校正をencourageしています。

あまり英文法の間違いが多い状況で共著者に回すのも失礼ではないかと心配になる一方で、英文校正を先にかけるとその後に共著者から内容の訂正が入る可能性があるため、どのタイミングで英文校正をかけるかはやはり指導者と相談して決めるのがよいでしょう。

ちなみに私は英文校正をかけてから、共著者に回覧するようにしています。

(続きはページの後半へ)

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知っておくべき論文投稿後の流れ

ここからは、論文を投稿した後の流れについて説明します。

論文投稿をこれまでにしたことがない人は、投稿するための初稿を書くだけでもかなり大変と感じることが多く、投稿作業が完了すると安心してしまうと思います。

しかし、論文投稿は初めの一歩にすぎず、むしろその後の方が時間も労力もかかることが多いのです。これは雑誌のレベルがあがれば、よりその傾向が強まります。


論文投稿後の流れに関しては詳しくは拙著『学会発表・医学英語論文執筆のトリセツ』にも記載しておりますので、よろしければ参照していただけると幸いです。

ここでは大きく以下の三段階にわけて、論文投稿後の流れをお示しします。

❶フォーマットチェック

❷エディター(編集者)によるファーストチェック

❸レビュワー(査読者)による査読とファーストデシジョン

時間的に❶❷は1〜2週間で終わることも多いです。それに対して❸の査読が戻ってくるまでの時間は通常月の単位で、その後のやりとりも含めて複数回リバイズが続くとアクセプトまでは1年以上かかる場合もあります。


❸のfirst decisionがなかなか戻ってこない時には、メールで催促をします。催促をすると印象を悪くするのではないか心配するかもしれません。しかし、査読のためにレビュワーに与えられる時間は通常2週間程度です。

レビュワー探しやエディターの取りまとめに時間がかかる場合もありますが、投稿から2~3か月も経過すればeditorial officeに丁寧なメールを送って催促をしても通常問題ありません(生成AIに失礼のない丁寧なメールに直してもらうとよいでしょう)。

それでは、この三段階をもう少し詳しくみていきましょう。

1回でパスしたいフォーマットチェック

フォーマットチェックは投稿規定に沿って正しく論文が記載されているかをチェックするもので、論文投稿時の第一チェックポイントになります。雑誌によってフォーマットがさまざまですので、投稿規定に沿って論文のフォーマットを整える必要があります。

そして、投稿規定に沿った論文形式になっていないと、つれなくブーメランのように著者の元にそのまま論文が戻ってきて、フォーマットを正しく調整して再投稿しなくてはなりません

このフォーマットチェックは多くの雑誌で医療職ではない担当者が行うので、エディターの判断には大きな影響があるとは思えませんが、時間のロスが大きいので投稿時にしっかりと確認した上で、1回で通過するように心がけたいものです。


例えば、引用論文数(リファレンスの数)やその体裁、論文全体の文字数やアブストラクトの文字数、FigureやTableの数、著者の役割に関する記載などがチェックされます。

第一志望の雑誌がダメで別の雑誌に投稿するときにも、フォーマット変更をする必要があります。英文校正サービスの中にはこれらのフォーマットまで行ってくれるサービスもありますので、金銭的に余裕のある方は検討しても良いと思います。

未発表原稿をAIに読ませるのはアイディアを盗まれてしまうリスクがあるかも知れませんが、生成AIはフォーマットチェックなども得意とするところだと考えられます。

個人的にはまだ試したことはありませんが、秘匿性を確実に保てるような生成AIが出てくれば、今後そのような方向になっていくのは間違いないでしょう。

もしかすると、投稿サイト自体にAIによるフォーマットチェック機構が実装されるような時代が来るのもそう遠い未来ではないかも知れません。

エディターによるファーストチェック ― キックをかわそう

エディターは論文の内容をざっとみて、レビュワーに回すかどうかを判断します。どんなに良い内容が書かれていてもエディターがディテールにまでは目を通さずに、リジェクト(いわゆるエディター・キック)に決まってしまう場合もあるのです。

最終的にアクセプトにたどり着くのには中身が大事ですが、エディターの目にとまらなければ、たとえ良い内容であってもリジェクトされてしまう可能性があるということです。


では、エディターは忙しい中、投稿論文のどこをみて判断しているのでしょうか?よく言われているのは、抄録とFigureやTableを一つか二つ見ることでまずは判断しているということです。

また、論文上には書かれないようなアピールポイントはカバーレターに記載するべきといわれていて、多くのエディターが目を通すとされています。

カバーレターとは、論文に添える編集長(Editor-in-Chief)宛ての短い手紙のことです。抄録は通常エディターが目を通しますので、抄録以外の情報でエディターキックされないために必要な情報を盛り込みます。

具体的には

❶宛先 Editor-in-Chiefと雑誌の名前

❷論文タイトルをいれて投稿する旨の枕詞

❸Abstractでは伝えきれない論文のアピール

❹雑誌の読者にとって興味深い内容であるという決まり文句

❺雑誌によりCOIなど雑誌から指示された情報

❻自分の名前・所属

といった構成になります。

この中で、一番大事なのは❸です。この研究がなぜ重要であり、どのように新しいのかを短くまとめます。Editorは本文すべてには目を通さないことが多いので、抄録に入らない重要な数値を本文から引用するのも効果的です。

また、「症例数は少なくみえるが、希少疾患なので既報と比べても十分な症例数」「欧米とは違いアジアではメジャーな疾患で喫緊の課題となっている」などといったアピールをします。


ちなみに、NEJMでは、最近カバーレターはoptionalとなっています。

おそらくNEJMでアクセプトされるようなRCTなどの研究では、どのような点で臨床的に重要かが論文自体で自明なことが多いため、論文には記載されないようなカバーレター上のアピールポイントは重要視していないのではないかと推察されます(個人の見解です)。

紙で投稿していた時代には、その施設のロゴなどをヘッダーとして印刷したカバーレターを論文の一番上において封をしてFedExなどで郵送していました。

今でもPDFでカバーレターをアップロードする場合にはそのようなスタイルも残ってはいますが、最近はオンラインでベタ打ちのテキストフォーマットで投稿する雑誌が主流になっています。


もう一点、エディターが判断している項目は、その論文内容が雑誌のスコープ(雑誌が扱う研究分野やテーマの範囲)に合っているかどうかです。

良い論文であっても雑誌のスコープに合っていなければ、採用されない可能性が高いといえます。雑誌のスコープは、通常ウェブサイトに掲載されています。

また、その雑誌に載っている論文にも目を通して、雑誌の好みとしている分野と合致しているかどうか確認するとよいでしょう。

レビュワーによる査読とfirst decision

エディターのファーストチェックを通過すると、通常2~3人程度のレビュワーに査読が回ります。

このシステムはピア・レビューシステムといって、同じような研究分野の研究者同士(peer)で論文内容の問題点や改善点を指摘することで、論文の妥当性を担保する査読システムを多くの雑誌が採用しています。


雑誌のポリシーとして論文の採択の方針は二極化していると感じます。

査読を依頼される際に、エディターからは査読の仕方について以下のような指示がくることがあります。

❶採択率はわずか〇〇%なので、そのつもりで厳しく査読してください

❷厳しく採点するのではなく、教育的に査読してください

インパクトファクターが高い雑誌は大抵❶の方針になります。また、多くの雑誌がインパクトファクター獲得や向上を目指して、他の論文から引用されるような論文を掲載しようとします。

そのため、症例報告を排除したり、その分野のオーソリティーによる総説Review論文をインバイトしたりする雑誌もあります。


一方で、学会公認の症例報告雑誌などでは、教育的な側面も担っているため、❷のような査読方針になることもあります。

レビュワーはコメントと共に以下のような四つのdecisionから選択することを求められます(雑誌によりその呼び方はバリエーションがあります)。

❶Accept

❷Major revision

❸Minor revision

❹Reject

複数のレビュワーの判断を参考にエディターがfirst decisionを決定します。いきなり❶のアクセプトというのは、雑誌のレベルにもよりますが頻度はあまり高くありません。通常、❹のリジェクトの場合には再投稿のチャンスはないので別の雑誌への投稿を考えます。

改善すればアクセプトのチャンスがあるとエディターが考えた場合に❷または❸の判断がなされます。

ここからはfirst decision後の流れをみていきましょう。

エディターキックやリジェクトは想定内

論文投稿したことがある方なら、その結果がどうなっているか気になって何度もメールをチェックしたり、投稿ステータスが気になって投稿サイトに毎日ログインしたりしたことがあると思います。

そして、メールの返事があまりに早く来ると、あまりいい知らせではないことが多いです。メールが来るタイミングと最初の数行で、最後まで読まなくても大体エディターキックということがわかります。


“We regret to inform you…“ regretという単語は本当に嫌ですね。

私自身のメールの受信箱をこのフレーズで検索すると50件以上もヒット!でもこれは黒歴史ではなく、これまでの挑戦の軌跡です。

Regretの一文のあとには通常、「雑誌にはとてもたくさんの論文が投稿されていて、一握りの論文のみがアクセプトされます」…というような文章が続きます。

これはエディターキックやリジェクトの定型文コピペです。


ただし、姉妹雑誌でOA(open access)雑誌へのtransferの案内が記載されていたり、ごくごくまれに大幅な変更により再投稿OKといったMajor revisionの場合があったりするので、一応最後までざっと目を通します。

エディターは全くregretしていないので、我々もregretする必要はありません。これは想定内ですので、粛々と次の候補雑誌への投稿を進めます。


レビュワーやエディターから査読コメントがついている場合には、アドバイスに従って修正するか考慮します。その上で、次の候補の雑誌の体裁に合わせて投稿しなおします。

その際に変更することが多い項目を以下に挙げておきます。

  • Cover letter中の雑誌名とEditor-in-Chiefの名前

  • FigureやTableの数(多い場合にはsupplementに載せます)

  • 本文の文字数

  • Abstractの体裁

  • 文献数と文献の体裁

効果的・効率的なリバタルの仕方

Major revisionやMinor revisionという区別をしている雑誌もありますが、いずれにしてもrevisionになったということは、それらに適切に対応すればアクセプトのチャンスがあるということです。

ここでスタート地点に立ったともいえます。箸にも棒にもかからなければ、エディターがrejectの判断をするはずですので、エディターとしては状況によりアクセプトを考えている状況です。


査読に対する回答はrebuttal letterとも呼ばれ、エディターやレビュワーからのコメントに対して、一つ一つ答えて行く必要があります。これをpoint-by-point responsesといいます。

エディターとレビュワーからのコメントをコピーペーストして一つ一つインラインで回答を記載していきます

ファーストステップはそれぞれのコメントにざっと目を通して、以下に分類することです。

❶すぐに対応できるマイナーな訂正

❷対応するのが難しいメジャーな訂正

❸元々正しいがレビュワーが勘違いした内容

❹少し大変だが頑張れば追加・訂正できる内容

❶は表現のマイナーな変更や文字数を短くするための重複の削除の指示など

❷はどうやっても手に入らない臨床情報が一例です。 この場合は、丁寧にLimitationに記載をして、point-by-point responsesでもその旨説明します。

❸は2パターンあって、レビュワーが全文をしっかりと読んでいなくてどこかにしっかりと説明されている場合と、他の人が読んでも勘違いしやすい書き方である場合です。 特に後者の場合には、読者の立場に立って曖昧な表現などをなくすように書き直します。

❹は頑張りどころです。特にその追加情報により論文が改善する場合はなおさらです。

一般的にMinor revisionの場合にはレビュワーは訂正内容をもう一度チェックすることなく、エディターに一任となります。Major revisionでレビュワーがもう一度訂正内容をチェックする希望を出している場合にはレビュワーの査読に再度回ることになります。


論文の訂正方法に関しては、ワードの校閲を使うよう指示される場合や、変更点を赤字で記載するよう指示される場合などがあります。そして変更した点をpoint-by-point responsesの中でも言及するようにします。

このリバイズ作業は複数回になることもありますが、粘り強く対応します。時には統計家による統計手法に対する査読が来て、その対応に統計家の助けが必要なこともあります。

ちなみにNatureでは透明性を高めるため、今後アクセプトされた論文のピアレビューとリバタルのやり取りがすべてオープンになるようです(https://www.nature.com/articles/d41586-025-01880-9)。

アクセプト後の対応

アクセプトの報告が来れば、ほっと一息というところですが、もう少し以下のような事務作業が続きます。各雑誌の指示に従って行えばよいので、簡潔にだけ触れます。

❶ゲラ校正 gallery proof

❷Video abstractやgraphic abstractの提出

❸掲載料などの支払い

❶は印刷のフォーマットになったゲラに間違いがないかチェックするものです。最終チェックとなるのでしっかりと目を通してチェックしましょう。

自分自身の経験では、一段落すっかり抜けた形でのゲラが送られてきたときがありました。

❷のビデオアブストラクトやグラフィックアブストラクトを採用する雑誌が増えています。これは一仕事ですが、論文掲載が決まっているので、楽しんで作成するとよいでしょう。

❸掲載料の支払いをしてからpublishとなることが多いです。

次回予告

さて、私の担当部分は残すところあと2回となりました。次回、第5回は生成AIと論文作成について、現状に加えて今後の可能性についても述べてみたいと思います。

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