
【初学者にも書ける医学英語論文】東大大学院生を指導してきた医師が語る:たった三つを意識すれば論文構成は完成する - vol.2
2025.05.29
臨床論文を英語で執筆してアクセプトを勝ち取るまでには、たくさんの高い壁が立ちはだかるように感じる人も多いでしょう。
良きメンターにめぐり会うか、よほどの能力の持ち主でないと、これまではその壁を乗り越えることは困難だったかもしれません。
どのようなステップを踏めば最初の論文執筆を成功させることができるか、東大大学院で多くの後輩の英文論文を指導する中で見えてきた、その最適解とも言える指導法のエッセンスを全6回に渡り公開します。
第2回では、効果的なIMRADの書き方と、アメリカ人が小学校でならうトピック・センテンスとパラグラフ・ライティングについて触れていきます。
日本人にはあまりなじみがないこの書き方により、ネイティブにも理解しやすい英語論文執筆が可能になります。
本稿を読んで、私達とともにワンランク上の英文論文執筆法を身につけましょう。
- この記事のまとめ
- この記事を読むと分かること
- この記事は誰に向けて書いているか
- 英語論文執筆シリーズ
- 執筆者の紹介
- 編集者
- 監修者
- 医学臨床論文の体裁を学ぶ方法
- パブリッシュされた論文は論文執筆のお手本
- 雑誌横断の国際ルールEQUATOR networkを参照してみよう
- 効果的なIMRADの書き方
- Introductionの書き方
- Methodsの書き方
- Resultsの書き方
- Discussionの書き方
- 講座紹介|【ゼロからの】英語で書ける医学論文執筆講座
- パラグラフ・ライティングとトピック・センテンス
- 一段落には一つのメッセージという原則
- トピック・センテンスとは
- トピック・センテンスはDiscussionの書き方の神髄
- 実践エクササイズ
- 次回予告
- 研究計画・医療統計から、英語論文執筆・アクセプトまでトータルサポートならmJOHNSNOW!
- 【YouTubeラジオコンテンツ 耳から学ぶシリーズ】
この記事のまとめ
この記事を読むと分かること
惰性でない効果的なIMRADの書き方
ネイティブにも通じるDiscussionの書き方
アメリカでは小学生で習うtopic sentenceとparagraph writing
この記事は誰に向けて書いているか
医学英文を書きたい人・書いている方(first author)
医学英文論文を後輩に指導したい方(second or last author)
一歩上を行くパラグラフ・ライティングを学びたい方
英語論文執筆シリーズ
vol.1:東大大学院生を指導してきた医師が語る - 英語論文執筆の心理的ハードルを下げよう
vol.2:東大大学院生を指導してきた医師が語る - たった三つを意識すれば論文構成は完成する(本記事)
vol.3:東大大学院生を指導してきた医師が語る - 学会発表を論文化する最短ルート
vol.4:東大大学院生を指導してきた医師が語る - 投稿から査読対応までの基本プロセス
vol.5:
(前編)東大大学院生を指導してきた医師が語る - AI時代に求められる論文リテラシーとは?
(後編)東大大学院生を指導してきた医師が語る - AI時代に求められる論文リテラシーとは?vol.6:
(前編)東大大学院生を指導してきた医師が語る - 論文の量産を可能にする習慣×統計手法
(後編)東大大学院生を指導してきた医師が語る - 論文の量産を可能にする習慣×統計手法vol.7:生成AIで進める英語論文執筆の全体戦略 - プロンプト付きで即実践!
vol.8:研究テーマの見つけ方と投稿先選び - 日常から着想を得て論文に育てるステップ
vol.9:短時間で“使える論文”を探す文献検索の手順 - PubMed×AI活用で効率化
vol.10:型で攻略するIMRADの書き方 - 読者に伝わるIntroductionを書くコツ
vol.11:型で攻略するIMRADの書き方 - 再現性の高いMethodsを書くコツ
vol.12:型で攻略するIMRADの書き方 - 過不足のないResultsを書くコツ
vol.13:型で攻略するIMRADの書き方 - 一貫性のあるDiscussionを書くコツ
vol.14:IMRADを要約する論文の顔 - 印象に残るTitleとAbstractを書くコツ
執筆者の紹介
氏名:畑啓介
所属:東京大学医学部非常勤講師・日本橋室町三井タワー ミッドタウンクリニック
専門性:医師・医学博士(外科学)・英検1級・全国通訳案内士(英語)・ECFMG certificate取得。東京大学医学部医学科・東京大学大学院医学系研究科外科学専攻卒業、米国サンタモニカ John Wayne Cancer Institute留学・東京大学がんプロフェッショナル養成プラン元特任講師を経て現職。医学英文論文執筆・執筆指導多数。著書に『学会発表・医学英語論文執筆のトリセツ』『初めての症例報告!外科医のためのケースレポートのトリセツ』
編集者
氏名:菊池祐介
所属:mMEDICI株式会社
専門性:作業療法学修士。首都大学東京(現東京都立大学)・東京都立大学大学院を卒業後、病院勤務を経て専門学校・私立大学にて作業療法教育、地域共生社会の醸成に向けたリハビリテーション専門職の支援に関する研究に従事。現在は心身の健康とその人らしさの実現に向け、保険内外でのクライアント支援を展開している。作業療法の社会的意義向上を信念に、mMEDICI株式会社に参画。
監修者
氏名:廣瀬直紀
所属:mMEDICI株式会社
専門性:保健学博士・公衆衛生学修士。東京大学・東京大学大学院を卒業後、外資系製薬企業の疫学専門家として薬剤疫学・リアルワールドデータ研究を専門とする。日本・グローバルの双方で活動したのちに、全ての人がアクセス可能な一流の知のプラットフォームを作り、「知に繁栄を、辺野に豊穣を」実現すべく、mMEDICI株式会社を創業。
医学臨床論文の体裁を学ぶ方法
パブリッシュされた論文は論文執筆のお手本
執筆に最も大事なのは、関連論文を読むことです。
これは、拙著『学会発表・医学英語論文執筆のトリセツ』にも記載している事項ですが、「書くことの多くの作業は実は読むこと」といえます。
第1回でも述べた通り、AIを使って論文をタイパよく読むというのも時代の流れでアリだと思いますが、少し苦労して自力で英文論文を読む工程は、英文執筆の時に必ず役に立ちます。
作家のスティーヴン・キングも著書『書くことについて』の中で作家になるために絶対にしなければいけないこと二つとして、「たくさん読み、たくさん書くこと」を挙げています(「書くことについて」小学館文庫 スティーヴン・キング 田村義進訳)。
読んだ論文を参考にしながら執筆してみるというOJTがとても大事なわけですが、論文の文章はたとえ1センテンスであってもコピペは絶対にしてはいけないといわれています。
統計表現などは意図していなくてもまったく同じ表現になってしまうこともあると思いますが、大学でも博士論文は教室側でコピペ検出ソフトによるチェックを必須としていたり、出版社側でもソフトを使用してチェックしていたりします。
現在の所、AIに論文を書かせるのもダメと考えておいた方がよいでしょう。雑誌NEJM AIでは、今後はAIを使って論文を書いていくようになる可能性も示唆していることは拙著でも触れました。AIと英文論文執筆に関しては文字通り日進月歩であり、第5回で扱う予定です!
ある程度のインパクトファクターがある雑誌にパブリッシュされた論文は、内容的にも体裁的にもその雑誌の厳しい基準をクリアし、査読者や編集者によるチェック・リバイズを経て改善された後に出版されています(この工程に関しては第4回で説明する予定です!)。出版された論文以上に、論文執筆の際の良い見本はありません。
パブリッシュされた良質な英文論文の精読を続けていくと、大まかな論文の構成を理解することができるようになります。
たとえば、IMRAD(Introduction, Methods, Results And Discussion)と略される原著論文の構成があることは、何度か英文論文を読んだことがある人ならば気づいているでしょう。
さらに読み続けていると見よう見まねで英文論文を書けるようになるかもしれません。
私も最初のころはある意味、見よう見まねで論文を書いていました。でも、これから論文を書こうという人には見よう見まねではない方法をおすすめします。
論文の書き方に関するガイドのようなものがあるのはご存じでしょうか。
一つは雑誌の投稿規定。これは雑誌毎の体裁を整えるためのいわばローカルルールです。もう一つはEQUATORというサイトにまとめられている雑誌横断の国際的な統一規定です。
最近では多くの医学雑誌がこのEQUATORに従って、ある程度共通のフォーマットを目指しています。
雑誌横断の国際ルールEQUATOR networkを参照してみよう
論文と一口にいっても様々な種類の論文がありますが、論文の種類毎に執筆方法に関する報告ガイドラインやステートメントがあり、それらがEQUATOR networkにまとめられています。
例えば、ランダム化比較試験ではCONSORT、メタ解析ではPRISMAといった文字を論文で目にしたことがあるかもしれません。観察研究ではSTROBE、症例報告ではCAREがそれに相当します。
原著論文として多くの人が最初の方に挑戦するのは観察研究だと思いますので、STROBEに関して少し説明します。
STROBEには22項目のチェックリストがあり、論文のタイトルや抄録の他、IMRADに関して明記すべき内容がリスト化されています。原著は英語ですが、日本語訳も用意されていますので英語のハードルが高いようであれば日本語訳をみて全体像をつかむと良いでしょう。
研究を始めようと決めたら早い段階で一読することをおすすめします。
そして、もう一つ参照すべきものとして、超一流誌による統計などのガイドラインやガイダンスがあります。有名どころではNEJMやAnnals of Internal Medicineなどのものがありますので、参考までに以下に記載しておきます。
ちなみにEQUATORやSTROBEはphraseの頭文字などを取った略語でもありますが、前者は赤道、後者はカメラのストロボという意味があります。
効果的なIMRADの書き方
原著論文は多くの場合、IMRADの順番で構成されています。執筆していく順番は、論文が最終的に書きあがるのであれば、どのような順番で執筆してもよいともいえますが、王道とされる執筆順が存在します。
拙著『学会発表・医学英語論文執筆のトリセツ』では
❶ Results
❷ Methods
❸ Discussion
❹ Introduction
の順番が王道としています。
これは、私の専門領域である消化器分野のTOPジャーナルGastroenterologyやGUTの編集長が来日して行った論文執筆法の特別レクチャーでもそのように説明していました。
しかし、執筆順は実際には著者がどの段階から執筆を始めるか、どのような研究計画かなどにも依存します。
例えばResultsは結果が出ていない段階から書くのは難しいですが、仮説がしっかりした研究であればたとえ後向き研究でもMethodsやIntroductionから執筆を進めることも可能です。
第1回でもおすすめした症例報告の執筆順の場合、拙著『学会発表・医学英語論文執筆のトリセツ』では迷わず症例提示部分から書くことを勧めています。
それに対し、mJOHNSNOWのアンバサダーである佐藤香澄先生の御著書『正攻法ではないけれど必ず書き上げられる はじめてのケースレポート論文』ではIntroductionとDiscussionから書き始めるとされています。
つまり、症例報告もその人の好みにより書きやすいところから書けば良いとも言えます。
IMRADの詳しい書き方については本シリーズの別稿で扱う予定となっていますが、本稿では簡潔にIMRADの順番で私の考える執筆方法に触れたいと思います。
ちなみにこれからの説明ではあるレトリック(表現のテクニック)を使用しています。
後ほど種明かししますので、どのようなレトリックが使われているか考えながら読んでみてください。
Introductionの書き方
Introductionは、比較的手短に以下の3点を3段落で記載します。
❶ 既知のこと
❷ 未知のこと
❸ 論文の目的
手短にと書いたのは、多くの雑誌で文字数制限が設けられているからです。
論文の構成としては❶→❷→❸の順に並べて記載しますが、英文論文を書くのが初めての人にとっては❸→❷→❶の順に執筆するとハードルが低くおすすめです。
❸の「論文の目的」はConclusionに呼応するので、最も伝えたいメッセージともいえる「主要評価項目とアウトカムの関係を明らかにすること」がその論文の目的になります。
RCTなどの前向き研究の場合には、この主要評価項目は研究計画段階からすでに決めることになっており、その内容はプロトコール・ペーパーとして前もって論文化することが多いです。
最近流行りのRWD研究では、RCTと同様に、研究計画段階から論文の青写真ができていて、既存の後向きデータを用いてその仮説を証明することも多くなっています。
このようなproactiveな論文の書き方ができるようになってくると、研究を立案した段階でIntroductionを書けてしまうこともあります。
一方で、初めての研究として行うことの多い探索的な研究では、解析をしながら論文の結論部分が決まっていくことが多いでしょう。
したがって、そのようなreactiveな方法で論文を書いている場合には、解析がある程度進み、論文の結論部分が固まって初めて、❸の論文の目的を書くことになります。
❷の「未知のこと」には、❸の内容がこれまでにあまり知られていないことを記載します。これまでにまったく報告されたことのない大発見を論文にするという可能性は少ないので、このような観点では報告されていない、などと記載することが多いでしょう。
具体例を挙げてみると、「海外からの報告は散見されるが、これまでに本邦では同様の報告はない」とか「20~65歳を対象としたエビデンスはあるが、高齢者を対象とした報告はない」といった具合です。
❶の「既知のこと」は教科書的なことまで既知のことを書くと冗長(redundant)になってしまうので、その雑誌の読者が常識と思っていることは必ずしも触れる必要はなく、その読者層が理解できる点からスタートしてもかまいません。
❷の「未知のこと」につながるように既知のことを記載します。この段落には文献の引用が必須になります。
Methodsの書き方
Methodの主な構成要素としては以下の三つが挙げられます。
❶ 患者選択方法
❷ 解析・統計手法
❸ 倫理的事項
このうち初学者が最も書きにくいのは恐らく❷の「解析・統計手法」になると思います。具体的な解析内容・統計手法や使用した統計ソフトなどを記載します。
この統計手法の部分に関しては、mJOHNSNOW に入って統計講座を勉強していけば、自然と身につくのでおすすめです。
❶の「患者選択方法」では対象疾患名や採用した診断基準などの情報に加えて、除外基準に関しても記載します。また、病院名・データ収集期間・データ抽出方法などを記載します。この部分はある程度、研究立案段階から書くことができるパートと言えます。
具体的な患者の選択や除外のフロー・患者数などに関しては、MethodsではなくResultsの冒頭に記載するRCT式のフォーマットが後向き研究でも好まれる傾向があります。
❸の「倫理的事項」には倫理委員会の承認に関する情報(例:倫理委員会名や倫理審査番号など)、患者からの同意取得方法(例:written informed consent)やオプトアウトの方法などを記載します。
その他、グラントの情報の記載をMethodsに記載する場合もありますが、雑誌によってはmanuscriptのタイトルページや論文投稿時にmanuscriptとは独立した箇所に記載を求められる場合があるので、雑誌の投稿規定に従います。
Resultsの書き方
Resultsは主に以下の三つの項目を記載していきます。
❶ 患者背景
❷ 主要評価項目の結果
❸ 副次評価項目の結果
❶の「患者背景」では必要に応じて、患者選択の結果をFigure 1としてフロー・ダイアグラムで示します。そして、選択した患者の背景を表にしてTable 1で示します。
文章でも簡潔にその人数などを記載しますが、Figure 1やTable 1に記載されていることは詳細には述べません。査読の段階でも重複や冗長性をそぎ落とすように指示されることも多いです。
このTable 1はデータベースができていれば、RやEZRで瞬時に作成することができます。
mJOHNSNOWではこのTable 1の作成の仕方も懇切丁寧に動画で提供されています。
タイパという意味合いだけでなく、間違いを避けるためにも手作業でなく自動化することが極めて重要です。
❷と❸の結果は、Methodsに書いてある解析項目を基本的には全て記載していくことになります。特に❷の「主要評価項目の結果」に関しても通常FigureかTableで示すことになります。このデータがこの論文のキーポイントになるからです。
文章で記載する際には最も伝えたいメッセージに該当する結果から先に記載するようにします。つまり、主要評価項目の結果を患者背景説明後の最初の段落として記載します。
そして必要時には統計的なデータを記載しますが、P値を示す際には、平均値とSDや中央値と範囲、オッズ比またはハザード比と95%CIなどを付記するようにします。
パーセント表示をするときにはその分母と分子も記載することが多くの雑誌で求められています。
表にはタイトルと脚注(footnote)が必要です。これは通常表の中に記載します。
図の場合には図のタイトルとFigure Legendsと呼ばれる図の説明が必要です。全ての図に対するタイトルとFigure Legends を図とは別に、Wordなどのテキストで本文の最後の方に列挙します。
図・表ともに使用した略語に関しても明記します。
Discussionの書き方
Discussionの主な構成要素としては以下の三つが挙げられます。
❶ 得られた結果に関する考察
❷ 研究の限界(limitation)
❸ 結論(conclusion)
既に解析が終わっていれば❷❸が書きやすいのに対し、❶は時間を費やして十分に推敲した上で記載する必要があるパートです。
❶の考察部分では過去の重要論文の結果と照らし合わせて、自分の研究との共通点や相違点に関して説明することになります。MethodsやResultsとは大きく異なり、引用文献の選択がDiscussionを執筆する上での重要な作業になります。
Discussionに文献を引用する際には、第1回で説明したとおり、最初から文献管理ソフトを使用して記載していくことを強くおすすめします。
文献選びは以下の三つの軸で選んでいきます。
❶ エビデンスレベルが高い論文
❷ ランドマークとなるような重要な論文
❸ 比較的新しい論文
です。
多くの雑誌の査読チェックリストにも、新しい論文や重要な論文が引用されているかどうかという項目が含まれています。もし含まれていなければ、十分な考察ができず良い論文にはなり得ないからです。
この考察部分はこの後で述べるトピック・センテンスやパラグラフ・ライティングの手法がとても大事になるセクションです。
❷の研究の限界 limitationは型が決まっています。まず「この論文にはlimitationがあります」と段落の冒頭で宣言します。これはトピック・センテンスの一つです。
そしてfirst, second, thirdなどをつかって第一に第二に第三にと列挙していきます。ちなみにfirst, second, thirdなどの文と文の関係を明示する言葉はtransitional wordsなどと呼ばれ、これらを上手に使うことで論理展開を読み手にわかりやすく示すことができます。
理由を表すbecauseや追加を示すin addition、強調の際に使うnotablyなどもtransitional wordsの例です。
❸の結論 Conclusionでは、最後に「目的と呼応するように」主要評価項目の結果から得られる結論を短い文章で記載することになります。
Discussionの最後に書く場合には“In conclusion,”というtransitional wordsに続いて結論を簡潔に記載します。
雑誌によってはDiscussionとは独立して最後にConclusionというセクションとして記載する雑誌もあります。
(続きはページの後半へ)
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パラグラフ・ライティングとトピック・センテンス
一段落には一つのメッセージという原則
段落は英語ではパラグラフ(paragraph)です。世の中にはパラグラフ・ライティングに関する本がたくさん出版されていますが、それほど大事な概念です。
日本語でも英語でも一つの段落には一つのメッセージを書きます(本稿のような、Webコンテンツは見やすさ優先なので例外です)。
本多勝一は著書『<新版>日本語の作文技術』の中で、段落は「かなりのまとまった思想表現の単位」としていて、「段落のいいかげんな文章は、骨折の重傷を負った欠陥文章といわなければならぬ」とまで言っています。
前述のスティーヴン・キングも著書『書くことについて』の中で、単語・文・段落の中で最も大事なのは段落といっています。
私自身はパラグラフ・ライティングを日本の学校教育では体系的に習った記憶がありません。
一方で、アメリカ留学時には、公立小学校の子供達がハンバーガーの絵を使ってパラグラフ・ライティングを教わりながら作文の練習をしているのを目の当たりにしました。
そして、その中でも非常に大事だと考えられる要素が、次にお話しするトピック・センテンスです。
東大大学院で、私よりもずっと優秀な後輩達の指導にあたっていた際に、トピック・センテンスを意識したパラグラフ・ライティングで書かれていた英文論文の初稿はほぼ皆無でした。
この書き方が常識となっている査読者にレビューが回れば、トピック・センテンスがない文章は、教養のない、理解しにくい文章として読んですらもらえない可能性もあります。
このトピック・センテンスの書き方を是非マスターして、ワンランク上の論文執筆を目指しましょう。
トピック・センテンスとは
パラグラフは一つのメッセージをまとめたものと説明しましたが、パラグラフの最初に段落で伝えたい内容を簡潔に述べるのがトピック・センテンスです。
例えば新聞はトピック・センテンスを用いたパラグラフ・ライティングの良い例です。タイトルと出だしの最初の文を読むと、内容がだいたい理解できるように構成されていることが分かると思います。
さらには、記事の段落構成も最初の段落に重要なことを述べるようになっています。これは最近ピラミッド・ストラクチャーとも言われています。
記者のためのスタイルブックであるAPスタイルには、例えば数字の書き方であれば、1桁はスペルアウト、2桁以上はアラビア数字といった細かいルールの他に、トピック・センテンスやピラミッド・ストラクチャーと共通するような記事の書き方が含まれています。
日本語と英語の文章を比較してみると、いいたいことを日本語は後に、英語は先に書くという傾向があります。これは文sentenceの単位でも、段落paragraphの単位でも当てはまります。
例えば、否定の言葉は日本語では文章の最後に出てくるのに対し、英語では主語のすぐ次に示されます。同様に、日本語では最後に伝えたいメッセージを最後に置くような段落構成を多く見かけます。
一方、英語では最初に伝えたいメッセージであるトピック・センテンスで始め、その後にその理由や具体的な説明などのサポーティング・センテンスを続けます。そして必要があれば、最後にまた、伝えたいメッセージを繰り返して段落を締めます。
最初と最後に伝えたいことで具体的な説明を挟むハンバーガー構造。これがパラグラフ・ライティングの基本です。
トピック・センテンスはDiscussionの書き方の神髄
Discussionでは、段落内の構成として最初に大事なことをトピック・センテンスとして述べ、段落自体の配置も大事な段落から先に配置するピラミッド・ストラクチャーが推奨されます。時系列で述べるのではなく、大事なことを先に持ってくるのです。
Discussionで記載する内容は最終的にConclusionにつながっていきます。
そういうと、
❶ AなのでB
❷ BなのでC
❸ よって結論が導かれる
といった書き順が望ましいと考えるかもしれません。
科学論文のDiscussionではそうではなく、まず結論を最初に書き、次にその根拠をサポーティング・センテンスとして続けます。
段落としては主要評価項目とその考察、その次に副次評価項目とその考察、そして最後に研究のウィークポイントである研究の限界 limitationを示しながら “言い訳”を記載し、最後にまた結論で結びます。
医学論文のような論理的な文章では、日本語であってもこのトピック・センテンスやピラミッド・ストラクチャーを用いたパラグラフ・ライティングが必須です。この型を身につけるようにしましょう。
さて、IMRADのはじめに質問していたレトリックは見抜けましたでしょうか。これはThe rule of 3と呼ばれるもので、はじめに話すトピックを大きく三つに分けて明示する手法です。本稿ではIMRADそれぞれ三つの項目に割り切って説明しています。
拙著『学会発表・医学英語論文執筆のトリセツ』ではさらに網羅的に執筆方法を記載していますが、まずは本稿の内容をおさえて論文執筆すれば、わかりやすい論文骨格ができあがるはずです。
ちなみにスティーブ・ジョブスはThe rule of 3の使い手として知られていますが、スタンフォード大学での超有名なスピーチもThe rule of 3を意識した導入になっています。
“Today I want to tell you three stories from my life.”
という出だしのものです。このスピーチを聞いたことがある人も多いと思いますが、是非もう一度確認してみてください。
実践エクササイズ
この記事で学んだこと3つをThe rule of 3の手法で説明してみてください!次回予告
第3回では、学会発表を論文化する方法に関して触れていきます。
英文論文をたくさん執筆している臨床家は、多くの場合、学会発表の内容を英文論文化しています。
もっというと英文論文を仕上げ、状況によっては投稿しながら、パブリッシュされる直前に、その内容を学会で発表しているのです。多くの英文論文を執筆する方法についても今後触れていく予定ですので、お楽しみにお待ちください。
研究計画・医療統計から、英語論文執筆・アクセプトまでトータルサポートならmJOHNSNOW!

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(前編)東大大学院生を指導してきた医師が語る - AI時代に求められる論文リテラシーとは?
(後編)東大大学院生を指導してきた医師が語る - AI時代に求められる論文リテラシーとは?vol.6:
(前編)東大大学院生を指導してきた医師が語る - 論文の量産を可能にする習慣×統計手法
(後編)東大大学院生を指導してきた医師が語る - 論文の量産を可能にする習慣×統計手法vol.7:生成AIで進める英語論文執筆の全体戦略 - プロンプト付きで即実践!
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vol.9:短時間で“使える論文”を探す文献検索の手順 - PubMed×AI活用で効率化
vol.10:型で攻略するIMRADの書き方 - 読者に伝わるIntroductionを書くコツ
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