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【初学者にも書ける医学英語論文】生成AIで進める英語論文執筆の全体戦略:プロンプト付きで即実践! - vol.7

【初学者にも書ける医学英語論文】生成AIで進める英語論文執筆の全体戦略:プロンプト付きで即実践! - vol.7

2025.08.20

英語論文執筆というと、多くの研究者が「時間がかかる」「英語表現に自信がない」といった壁に直面します。

そんな中で、「生成AIを論文執筆に活用してみたいけれど、正直どう使えばいいのか分からない」「一度試してみたけれど、なんだか微妙だった…」と感じていませんか?

実はそれ、AIの性能の問題ではなく、使い方や関わり方に少し工夫が足りなかっただけかもしれません。


本稿では、大学講師として教育・研究に携わりながら、生成AI活用の黎明期から全国で延べ1,000名以上が受講したセミナーを開催してきた講師が、ChatGPT、Geminiといった主要な生成AIツールの特徴や強みを活かした論文執筆支援の方法を紹介します。

草案レベルからの文章化、アカデミック英語への翻訳、STROBEやCONSORTといった報告ガイドラインへの適合確認、さらには“プレ査読”としての活用まで――生成AIは単なる翻訳ツールではなく、論文執筆のあらゆる工程で研究者を支える強力なパートナーとなり得ます!

具体的なプロンプト例や実践ステップも多数紹介しているため、これまで「うまく使えなかった」と感じていた方でも、きっと手応えを感じられるはずです。

少しの工夫とコツを知ることで、生成AIは「あると便利」から「無くてはならない存在」へと変わります。

あなたの研究成果を英語で世界に届ける、その第一歩を、生成AIとともに踏み出してみませんか?

この記事のまとめ

この記事を読むと分かること

  • ChatGPTやGeminiなど主要な生成AIツールの特徴と、論文執筆における効果的な使い分け方

  • 思考の整理、英文化、構成のブラッシュアップまでを支える実践的なプロンプトの活用法

  • 剽窃チェックやガイドライン準拠、プレ査読など、論文品質を高めるためのAI活用の工夫と注意点

この記事は誰に向けて書いているか

  • 英語論文執筆に苦手意識があり、効率的に質の高い原稿を仕上げたい研究者

  • 生成AIを試してみたものの、思うように活用できなかった/使いこなせていないと感じている方

  • 具体的なプロンプト例や活用ステップを知り、生成AIを実践的に論文執筆に取り入れたい方

英語論文執筆シリーズ

  • vol.1:東大大学院生を指導してきた医師が語る - 英語論文執筆の心理的ハードルを下げよう

  • vol.2:東大大学院生を指導してきた医師が語る - たった三つを意識すれば論文構成は完成する

  • vol.3:東大大学院生を指導してきた医師が語る - 学会発表を論文化する最短ルート

  • vol.4:東大大学院生を指導してきた医師が語る - 投稿から査読対応までの基本プロセス

  • vol.5:
    (前編)東大大学院生を指導してきた医師が語る - AI時代に求められる論文リテラシーとは?
    (後編)東大大学院生を指導してきた医師が語る - AI時代に求められる論文リテラシーとは?

  • vol.6:
    (前編)東大大学院生を指導してきた医師が語る - 論文の量産を可能にする習慣×統計手法
    (後編)東大大学院生を指導してきた医師が語る - 論文の量産を可能にする習慣×統計手法

  • vol.7:生成AIで進める英語論文執筆の全体戦略 - プロンプト付きで即実践!(本記事)

  • vol.8:研究テーマの見つけ方と投稿先選び - 日常から着想を得て論文に育てるステップ

  • vol.9:短時間で“使える論文”を探す文献検索の手順 - PubMed×AI活用で効率化

  • vol.10:型で攻略するIMRADの書き方 - 読者に伝わるIntroductionを書くコツ

  • vol.11:型で攻略するIMRADの書き方 - 再現性の高いMethodsを書くコツ

  • vol.12:型で攻略するIMRADの書き方 - 過不足のないResultsを書くコツ

  • vol.13:型で攻略するIMRADの書き方 - 一貫性のあるDiscussionを書くコツ

  • vol.14:IMRADを要約する論文の顔 - 印象に残るTitleとAbstractを書くコツ

執筆者の紹介

氏名:澤村彰吾
所属:平成医療短期大学リハビリテーション学科理学療法専攻 講師 / 広島大学大学院 人間社会科学研究科 研究員 / 広島大学 ダイバーシティ&インクルージョン推進機構 客員研究員
自己紹介:理学療法士・博士(医学)。秋田大学卒業後、岐阜大学大学院医学系研究科にて博士号を取得。神経系理学療法を専門とし、臨床と研究を通じて脳卒中リハビリテーションや脳画像解析に関する研究に携わってきた。現在は、生成AIを活用した研究支援や教育実践に注力。黎明期から生成AIの可能性に着目し、自らもオタク的熱量で技術を探究。医学教育や学術活動におけるAI応用をテーマに全国でセミナーを多数開催、受講者は累計1000名を超える。人とテクノロジーの橋渡し役として、次世代の学びと研究のあり方を模索している。

編集者

氏名:菊池祐介
所属:mMEDICI株式会社
専門性:作業療法学修士。首都大学東京(現東京都立大学)・東京都立大学大学院を卒業後、病院勤務を経て専門学校・私立大学にて作業療法教育、地域共生社会の醸成に向けたリハビリテーション専門職の支援に関する研究に従事。現在は心身の健康とその人らしさの実現に向け、保険内外でのクライアント支援を展開している。作業療法の社会的意義向上を信念に、mMEDICI株式会社に参画。

監修者

氏名:廣瀬直紀
所属:mMEDICI株式会社
専門性:保健学博士・公衆衛生学修士。東京大学・東京大学大学院を卒業後、外資系製薬企業の疫学専門家として薬剤疫学・リアルワールドデータ研究を専門とする。日本・グローバルの双方で活動したのちに、全ての人がアクセス可能な一流の知のプラットフォームを作り、「知に繁栄を、辺野に豊穣を」実現すべく、mMEDICI株式会社を創業。

1. なぜ生成AIが論文執筆を支援できるのか?

英文化という最大の壁を乗り越える

英語で論文を書く――これは多くの日本人研究者にとって、研究そのものよりも高い壁と感じられることがあります。私自身も大学院で英語論文の書き方を簡単に学んだ程度で、正直なところ英語に堪能とは言えません。

文法や語彙の問題だけではなく、ネイティブならではの自然な表現や論理展開に悩む場面は数え切れません。

こうした時に、頼りになるのが生成AIです。ChatGPTなどの生成AIは、日本語と英語の表現力の差を埋め、論理的で自然な英文を提示してくれます。

特に、論文の中でもMethodやResultといった「型」が明確なセクションでは、参考になる論文の文章をプロンプトに組み込む「Few-shotプロンプト(※参考にして欲しい文章をプロンプトに組み込む)」が有効です。

また、最近ではAI自体の性能が飛躍的に向上しているため、Few-shotがなくても比較的質の高い英文が生成できるようになっています。


一方で、IntroductionやDiscussionのように創造性やオリジナリティが求められるセクションでは、いきなり文章作成を任せるよりも、まずアウトラインをAIに提示する方法が効果的です

文章の全体像を先に把握させることで、筋道が明確で説得力のある下書きを引き出せるようになります。

生成AIは単なる翻訳ツールではありません。研究者が自身の考えやアイデアを最大限に引き出すために寄り添い、論文執筆という長く険しい道のりを支えてくれる、頼れる“伴走者”なのです。

2. 論文執筆に適したAIツールとは?

生成AIを論文執筆に活用したいと考えた時、まず迷うのが「どのツールを使えばいいのか?」という点ではないでしょうか。

結論から言えば、ChatGPT、Gemini、Claudeなどの主要な生成AIサービスは、いずれも論文執筆に活用可能です。ただし、それぞれ得意分野が異なるため、ツールの特徴を理解し、目的に応じて使い分けることが効果的です。

①ChatGPT

以前までChatGPTは、用途に応じて複数のモデルを使い分ける必要がありましたが、ChatGPT-5ではそれらが統合され、状況に応じて最適な応答スタイルを自動で切り替えられるようになりました。

例えば、複雑なデータ分析や研究計画の立案といった場面では、深く考えて精緻な結論を導く「Thinking」モードが威力を発揮します。

一方、情報を素早く整理したい場合や簡潔な文章を生成したい場合には、高速応答に特化した「Fast」モードが便利です。


また、プロンプトに「よく考えてください」といった文言を加えると、自動的にThinkingモードが発動し、この場合はモードの回数制限を受けません。ただし、Thinkingモードにはいくつかのグレードがあり、より高度な推論が求められる場合は、手動でモードを選択するほうが確実です。

さらに、すべてのモードで入力トークン数が増加し、以前よりも長文に対応できるようになった点も大きな進化と言えます


また、ChatGPTは単なる文章作成にとどまらず、解析コードの生成や統計データの整理など、専門的な作業にも安定して対応できるため、総合力の高いツールと言えるでしょう。

そして、特に注目したいのが、最近搭載されたAIエージェント機能「Deep Research」です。これは、AIが自動で複数のウェブサイトや文献を横断的に検索・分析し、わずか数分〜30分ほどで詳細かつ包括的なレポートを生成してくれるという画期的な機能です。

先行研究のレビューや研究手法の選定に役立つほか、このレポートを元に論文のIntroductionやDiscussionの下書きを効率よく作成することも可能です。


さらに、ChatGPTは世界中で非常に多くのユーザーが利用しているため、ネット上に活用事例やノウハウが豊富に存在しています。「こんな使い方ができないかな?」と思った時も、検索すればすぐに役立つ情報にアクセスできます。

ただし、生成AIサービスは日々目まぐるしく進化しているため、数か月前の情報ですら古くなることがあります。最新の情報やアップデートは、公式サイトやSNSなどでこまめにチェックしておくと安心です。


また、ChatGPTには用途別にカスタマイズされた「GPTs」と呼ばれる機能もあります。翻訳や校正など、研究に特化した多彩なカスタムGPTが簡単に利用できる点も大きな魅力です。

特におすすめのGPTsは以下の通りです:

  • 英文校正GPT
    幅広く活用できるGPTsです。専門分野の選択や校正のレベルを選ぶことができます。

  • Rephrase Master
    パラフレーズ(言い換え)用のGPTsです。剽窃対策にも活用できます。

②Gemini

一方、GeminiはGoogleが提供する生成AIサービスであり、特に長文処理能力とGoogle関連サービスとの高度な連携が魅力です。

ChatGPTの場合、論文全文など非常に長い文章を入力すると内容が省略されたり、精度が落ちたりする傾向がありますが、Geminiは比較的安定して良好に処理できます。


また、Geminiの大きな強みはNotebookLM」をはじめとしたGoogleの各種サービスとシームレスに連携できる点です。

NotebookLMでは事前にアップロードしたPDFや論文を基に、出典を明確に示した回答や要約を生成できます。そのため、情報の信頼性を保ちながら、一貫性のある文章作成が可能です。

さらに、NotebookLMにはちょっとユニークな機能もあり、入力した複数の論文の要点をPodcast風のラジオ音声として再生できます。論文をじっくり読む時間が取れない場合でも、隙間時間を使って耳から概要を掴んだり、興味があるテーマを「耳学」することも可能です。


GeminiにはChatGPTと同様の「Deep Research」機能も搭載されていますが、Geminiのほうが利用可能回数が多いというメリットもあります。試行錯誤や気軽な情報収集を頻繁に行いたい方にとって、Geminiは非常に使いやすいツールと言えるでしょう。

③Claude

Claudeは、もともと学習データにアカデミックな文献が多く含まれているため、細かなプロンプトや特別な指示を与えなくても、自然にアカデミックライティングができるのが特徴です。

生成される文章は、論理的で洗練された表現が多く、論文や研究レポートなどの専門的な文章作成において特に役立ちます。


また、ChatGPTやGeminiと同様に「Research機能」も備えており、文献調査や情報収集といった場面でも力を発揮します。論文執筆において、安定したクオリティのアカデミックな英文を手軽に得たい時には、Claudeが頼れる選択肢の一つとなるでしょう。

④その他

補助的なツールとしては、PerplexityElicitのような検索特化型AIも優秀です。

これらは、質問に対して最新の論文やデータベースから根拠を示して回答してくれるため、先行研究のリサーチや文献探しに力を発揮します。

私自身は、ChatGPTとGeminiに課金しつつ、文献調査ではPerplexityを活用しています。大切なのは、ひとつのツールに拘らず、「慣れたツール+目的別の併用」で使い分けること。そうすることで、AIの力を最大限に活かすことができます。

(続きはページの後半へ)

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3. 実践例とプロンプトの工夫

― 平凡な文章から脱却する“魂の込め方”

生成AIを使えば、論文の“叩き台”は十分作成可能です。実際、私自身も、原稿の草案や言い回しの調整など、多くの部分をAIに任せています。

ただし、ここで一つ重要なのは、AIの出力はあくまで「平均的」な文章であるということです。

生成AIは、過去に学習した大量のデータから「もっともよく見かけるパターン」を組み合わせて文章を生成します。つまり、自然で読みやすい文章は作れても、読者の心に残るような強いインパクトや個性までは生み出しにくいのが現実です。

そのため、AIの出力をそのまま使うのではなく、自分自身の意図やメッセージを込める「加筆・修正」が不可欠です。いわば、AIが作ったキャンバスに、自分の“魂”を描き込むような作業です。


私自身が日常的に実践している、生成AIを活用した英語論文作成のステップは、次のような流れです。

①日本語でストーリーや草案を構築

まずは、自分の考えや論文の流れを、日本語でざっくりと書き出します

この段階では、内容の整理や主張の軸を明確にすることが目的で、文の完成度にはこだわりません。場合によっては箇条書きなどで、大まかなストーリー構成のみでも問題ありません。

②AIと対話しながら内容を文章化&ブラッシュアップ

日本語草案をもとに、生成AIで文章化してもらいます。この段階では日本語で構いません。

その後、「構成が論理的か?」「表現が曖昧ではないか?」といった観点でチェック・提案をしてもらいます。AIからのフィードバックを受けて、自分でも修正や加筆を重ねる――人とAIによる共同作業です。

③アカデミック英語への翻訳

内容が固まったら、ChatGPTやGeminiなどを使って英訳します。

ここでは文法的な正確さはもちろん、論理構造や文体の自然さにも注意を払い、アカデミックな英語になるようトーン調整もAIに依頼します。

④自分の目で再修正・加筆

生成された英文を鵜呑みにせず、自分の言葉として意味やニュアンスを確認・再構築します。

「自分が本当に言いたいことになっているか」を軸に、文章を磨き上げていきます。

⑤ガイドラインチェック・プレ査読による仕上げ

最終段階では、STROBEやCONSORTなどの報告ガイドラインに沿って記述内容を確認し、AIに「疑似査読」を依頼してブラッシュアップを図ります。論理の飛躍や表現の弱さに気づかせてくれる貴重な工程です。


個人的には②「AIと対話しながら内容を文章化&ブラッシュアップ」の工程が最も重要だと考えており、生成AIで一発出しした文章は、論理が曖昧だったり、表現にメリハリがなかったりすることが少なくありません。

やはり生成される文章は平均的です。また、場合によっては、自身が意図しない内容になっていることも少なくありません。

ここで活躍するのが生成AIとの“対話的なやり取り”です。

単に文章を出力してもらうのではなく、「自分が何を強調したいのか」「逆にどこは控えめにしたいのか」といった意図をAIに伝えることで、文章の輪郭がはっきりし、読者に届く主張へとブラッシュアップされていきます。


また、「現状のストーリー構成に不備はないか?」「この順序で論点を展開して問題ないか?」といった問いかけも重要です。

自分の中では筋が通っていると思っていても、客観的に見ると論理の飛躍や説明不足があるケースは少なくありません。AIは、そうした“見落としがちなズレ”を浮き彫りにしてくれる貴重なフィードバック役になります。


さらに、文章の説得力を高めるために、「もっと強い言い回しにできないか?」「この主張を後押しするような統計的表現はないか?」とAIに相談することで、より引き締まった文体を目指すことができます。

ここでのポイントは、“理屈”だけでなく“印象”まで意識することです。論文だからといって無味乾燥でよいわけではなく、読み手の関心を引きつけ、納得させる表現力もまた、重要なスキルです。

ここでおすすめしているのが、いわゆる「パワハラプロンプト」と呼ばれるフィードバックスタイルの活用です。

例えば以下のように入力します:

「以下の文章は現在60点です。論理の一貫性、説得力、英語としての自然さ、構成の明快さの観点から、100点を目指してリライトしてください」

「まだ70点です。修正案を提示してください。納得いくまでリテイクを繰り返します」

このように“厳しめの注文”を出すと、AIもそれに応じて文章を練り直してくれますし、こちらも「完成に近づけるぞ」という主体的な気持ちになれます。AIにいくらパワハラしても訴えられることはないので安心してください!笑


むしろ一発で完璧な文章を出すのではなく、修正を繰り返す中で自分の思考も整理されていく――これこそがAIと共に書く醍醐味だと感じています。

こうしてAIと何度も“リテイク”を重ねることで、文章の質は確実に高まっていきますが、実はその精度を大きく左右するのがプロンプトの書き方そのものです。

特に日本語でプロンプトを作成する場合、AIが意図を正確に理解できるように、いくつかのポイントを意識することが重要です。


まず基本となるのが、主語と述語をはっきりさせることです。日本語では「〜している」「〜と考えられる」など主語が省略されやすいですが、AIにとっては誰が何をするのかを明示することが不可欠です。

例えば「患者の満足度が高かった」は、「本研究に参加した患者の満足度は高かった」と具体的に言い換えると、より的確な出力につながります。

次に、曖昧な表現や比喩的な言い回しは避けることです。日本語にはニュアンスや行間を重視する文化がありますが、AIにとっては明示されていない情報は読み取れません。「なんとなく分かるだろう」は通用しないと考えてください。


また、1文1情報を原則とし、なるべく短く・簡潔な文章で構成することも大切です。長文で複数の主張や条件が含まれると、AIは焦点を絞れず出力がぶれやすくなります。

さらに、プロンプトの可読性と指示の明確化のために、Markdown記法を活用して構造化するのも効果的です。Markdown記法とは、簡単な記号で文章に見出しや箇条書き、強調などの“装飾”や“構造”を加えるための軽量マークアップ言語です。

例えば、行頭に # をつければ見出しになり、- や * を使えば箇条書きができます。シンプルながら視覚的に情報を整理できるため、生成AIとのやり取りにも相性が良いフォーマットです。


例えば以下のように整理すると、AIに意図がより伝わりやすくなります。

# 指示内容

以下の文章を論文のDiscussionとして適切な表現に修正してください。

## 現在の文

本研究の結果は〇〇を示唆しており、□□との関連も見られた。

## 気をつけてほしい点

- 専門的な語彙の使用

- 文法の正確さ

- 論理の一貫性

## 出力形式

修正後の文章+簡単な修正意図の解説


このように、内容を見出しごとに整理し、要点を箇条書きにすることで、AIが理解しやすくなるだけでなく、自分自身の考えの整理にもつながります。プロンプトの設計そのものが、AIとの“共同執筆”をより深く、効果的なものにしてくれるのです。


続いて③「アカデミック英語への翻訳」ですが、②で生成した日本語文章が論理的に整理され、主張が明確になっていれば、そのまま生成AIに「アカデミックな英語に翻訳してください」と依頼するだけでも、かなり自然な英文が得られることが多くなってきました。

近年の大規模言語モデルは、日本語から英語への翻訳精度が向上しており、とくに医学系論文のように語彙や構文がある程度定型化されている文章では、比較的スムーズな英文を出力してくれます。


とはいえ、さらに質を高めたい場合には「Few-shotプロンプト」を組み合わせるのが効果的です。これは、翻訳してほしい文と共に、“参考となる英文”を例示しておくことで、AIがそれらのスタイルやトーンに近づけて訳文を生成してくれるという方法です。

具体的なプロンプト例は以下の通りとなります。

# 役割

あなたは、英語に堪能で経験豊富な研究者です。査読付き国際誌への投稿を前提とした、明確かつ論理的な英文を書いてください。

# 指示

以下の「#例」を参考にしつつ、「#入力」の文章を自然なアカデミック英語にしてください。

※#例と#入力は、論文の【Introduction】に該当します。

※不要なサブタイトルは入れず、出力は一連の段落として提示してください。

# 例

[参考にしたい文章をコピペ]

# 入力

[自身で作成した英文or日本語などを入力]

このように「望ましい文体・語彙の例」をあらかじめ提示しておくことで、AIは「どのような文章を目指せばよいか」を理解しやすくなり、翻訳というより“模倣”に近い形で高精度な英文を出力してくれます。

最後に、論文執筆の最終段階である「⑤ガイドラインチェック・プレ査読による仕上げ」では、内容の「正確さ」と「説得力」を高めるための仕上げ作業が欠かせません。

ここで有効なのが、報告ガイドライン(Reporting Guidelines)に基づくチェックと、生成AIによる“プレ査読”の活用です。


まず、研究の種類に応じたガイドラインを参照することで、記載すべき情報の「抜け」や「偏り」を客観的に確認できます。

例えば、観察研究なら【STROBE】、無作為化比較試験なら【CONSORT】などが挙げられます。

これらのチェックリストをAIに読み込ませたうえで、「この論文がガイドラインに沿っているか?」と問いかけることで、記載漏れや曖昧な点に気づかされることも多々あります。

さらに、仕上げの段階では、AIに「査読者のつもりで論文を読んで、改善点を指摘してほしい」と依頼する「プレ査読」も非常に有効です。

これは、まさに“リハーサル査読”のような工程で、論理展開の飛躍、説得力の弱い表現、文構造の単調さといった、細部の弱点を浮かび上がらせてくれます。

例えば、以下のようなプロンプトが有効です。

# 役割

あなたは、[公衆衛生学]を専門とする査読付き英文誌のレビュワーです。

# 指示

以下のDiscussionを査読し、以下の観点でコメントをください:

- 記述の妥当性・過不足
- 表現の説得力
- ロジックの整合性
- 結論との一貫性

# 出力形式

コメント+修正提案(できれば簡潔な改善例)

# 対象本文

(ここに査読対象の英文を貼り付け)

今回は、#役割として「公衆衛生学の専門家」を設定しました。もちろん、論文のテーマに応じて、「リハビリテーション分野の専門家」や「脳神経外科分野の専門家」など、役割を自由に変更することが可能です。

設定を変えるだけで、異なる専門的視点から多角的に査読してもらえるのが、この方法の大きな魅力です。

4. 生成AI活用における倫理的な観点と注意点

生成AIは、論文執筆における強力な補助ツールですが、その使用には研究倫理や出版倫理に関する配慮が不可欠です。便利さの一方で、「うっかり」や「知らずに」倫理的な問題を引き起こしてしまうケースも少なくありません。

以下に、論文執筆で生成AIを活用する際に注意すべきポイントをまとめます。

①個人情報を入力しない

生成AIに学習データとして使われる可能性があるため、患者情報、施設名、調査対象者の属性などの個人情報は絶対に入力しないようにしましょう。特に匿名化が不十分な情報をうっかり含めてしまうと、プライバシー侵害や個人特定につながるリスクがあります。

②剽窃チェックは必須

生成AIの出力内容は、独自に構成されたものであっても、既存の論文や公的文書に酷似している場合があります。これはAIが過去の文章スタイルや構造を参考にして生成しているためです。

したがって、最終稿では剽窃チェックツールを用いて、オリジナリティを確認することが重要です。

③生成AIの使用を明記する

多くの国際誌では、生成AIの使用が論文の一部であっても、それを謝辞や方法に明記することを推奨または義務化しています。

どのツールを、どのような目的で使用したかを透明性をもって記述する必要があります。

④出典のない情報に注意する

生成AIはもっともらしい情報を自然に出力できますが、「出典のない事実」や「実在しない論文」を提示することもあります(いわゆる“ハルシネーション”)。

AIの出力は必ず人間が確認し、必要に応じて出典を調査・修正することが必須です。

⑤最終的な責任は執筆者にある

どれだけAIを活用したとしても、論文の内容に対する最終責任は人間(=執筆者)にあります。

AIはあくまで補助的な存在であり、その出力を鵜呑みにするのではなく、自らの判断と責任で確認・修正・加筆する姿勢が求められます。

終わりに

生成AIは、あなたの論文執筆を支える頼れる副操縦士(Copilot)です。しかし、ハンドルを握るのは、あくまであなた自身です。

創造性と判断力という「人間ならではの力」と、AIのスピードや正確性を組み合わせて、より効率的で、より豊かな研究ライフを楽しんでください。

論文執筆は、もっと自由に、もっとスマートに。AIとともに、あなたの知をカタチにしていきましょう!

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  • vol.5:
    (前編)東大大学院生を指導してきた医師が語る - AI時代に求められる論文リテラシーとは?
    (後編)東大大学院生を指導してきた医師が語る - AI時代に求められる論文リテラシーとは?

  • vol.6:
    (前編)東大大学院生を指導してきた医師が語る - 論文の量産を可能にする習慣×統計手法
    (後編)東大大学院生を指導してきた医師が語る - 論文の量産を可能にする習慣×統計手法

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