
【初学者にも書ける医学英語論文】東大大学院生を指導してきた医師が語る:英語論文執筆の心理的ハードルを下げよう - vol.1
2025.05.12
臨床論文を英語で執筆してアクセプトを勝ち取るまでにはたくさんの高い壁が立ちはだかるように感じる人も多いでしょう。
良きメンターにめぐり会うか、よほどの能力の持ち主でないと、これまではその壁を乗り越えることは困難だったかもしれません。
どのようなステップを踏めば最初の論文執筆を成功させることができるか、東大大学院で多くの後輩の英文論文を指導する中で見えてきた、その最適解とも言える指導法のエッセンスを全6回に渡り公開します。
第1回では、初めて英文論文に挑戦する人がはじめの一歩として避けることのできない、英文論文の読み方と研究テーマの選び方に触れていきます。
特に英語にハードルを感じている人も多いと思いますが、医学英語論文の書き方には型があります。
型を覚えてまずはとにかく1本論文を書くことができれば、多くの後輩達がそうであったように、その後は自力で英語論文執筆ができるようになっていきます。
本稿を読んで、私達とともに第一歩を踏み出してみましょう。
- この記事のまとめ
- この記事を読むと分かること
- この記事は誰に向けて書いているか
- 英語論文執筆シリーズ
- 執筆者の紹介
- 編集者
- 監修者
- 英語論文執筆の心理的ハードルを下げよう
- 英語論文執筆のボトルネック
- なんといっても英語というランゲージバリア
- 医学英語論文執筆のための医学英語論文の読み方
- 臨床研究のアイディアと医学英語論文のリーディング
- 臨床論文リーディングの心理的ハードルを下げる方法
- 医学英語論文を読むことで執筆の心理的なハードルを下げる
- 講座紹介|【ゼロからの】英語で書ける医学論文執筆講座
- 論文執筆におけるOn the Job Training(OJT)の重要性
- 症例報告のすすめ
- 「●●×▲▲」という臨床論文テーマも有効
- 医学論文の英語ライティングに関するハードルを下げる
- 次回予告
- 研究計画・医療統計から、英語論文執筆・アクセプトまでトータルサポートならmJOHNSNOW!
- 【YouTubeラジオコンテンツ 耳から学ぶシリーズ】
この記事のまとめ
この記事を読むと分かること
英文論文執筆の初めの一歩の踏み出し方
論文執筆を念頭に置いた論文の読み方
初学者にも執筆しやすい論文テーマの選び方
この記事は誰に向けて書いているか
はじめて英文論文に挑戦する人
症例報告を書いたことがあるが、原著論文にはこれから挑戦する人
医学論文に挑戦したいが英語にハードルを感じている人
英語論文執筆シリーズ
vol.1:東大大学院生を指導してきた医師が語る - 英語論文執筆の心理的ハードルを下げよう(本記事)
vol.2:東大大学院生を指導してきた医師が語る - たった三つを意識すれば論文構成は完成する
vol.3:東大大学院生を指導してきた医師が語る - 学会発表を論文化する最短ルート
vol.4:東大大学院生を指導してきた医師が語る - 投稿から査読対応までの基本プロセス
vol.5:
(前編)東大大学院生を指導してきた医師が語る - AI時代に求められる論文リテラシーとは?
(後編)東大大学院生を指導してきた医師が語る - AI時代に求められる論文リテラシーとは?vol.6:
(前編)東大大学院生を指導してきた医師が語る - 論文の量産を可能にする習慣×統計手法
(後編)東大大学院生を指導してきた医師が語る - 論文の量産を可能にする習慣×統計手法vol.7:生成AIで進める英語論文執筆の全体戦略 - プロンプト付きで即実践!
vol.8:研究テーマの見つけ方と投稿先選び - 日常から着想を得て論文に育てるステップ
vol.9:短時間で“使える論文”を探す文献検索の手順 - PubMed×AI活用で効率化
vol.10:型で攻略するIMRADの書き方 - 読者に伝わるIntroductionを書くコツ
vol.11:型で攻略するIMRADの書き方 - 再現性の高いMethodsを書くコツ
vol.12:型で攻略するIMRADの書き方 - 過不足のないResultsを書くコツ
vol.13:型で攻略するIMRADの書き方 - 一貫性のあるDiscussionを書くコツ
vol.14:IMRADを要約する論文の顔 - 印象に残るTitleとAbstractを書くコツ
執筆者の紹介
氏名:畑啓介
所属:東京大学医学部非常勤講師・日本橋室町三井タワー ミッドタウンクリニック
専門性:医師・医学博士(外科学)・英検1級・全国通訳案内士(英語)・ECFMG certificate取得。東京大学医学部医学科・東京大学大学院医学系研究科外科学専攻卒業、米国サンタモニカ John Wayne Cancer Institute留学・東京大学がんプロフェッショナル養成プラン元特任講師を経て現職。医学英文論文執筆・執筆指導多数。著書に『学会発表・医学英語論文執筆のトリセツ』『初めての症例報告!外科医のためのケースレポートのトリセツ』
編集者
氏名:菊池祐介
所属:mMEDICI株式会社
専門性:作業療法学修士。首都大学東京(現東京都立大学)・東京都立大学大学院を卒業後、病院勤務を経て専門学校・私立大学にて作業療法教育、地域共生社会の醸成に向けたリハビリテーション専門職の支援に関する研究に従事。現在は心身の健康とその人らしさの実現に向け、保険内外でのクライアント支援を展開している。作業療法の社会的意義向上を信念に、mMEDICI株式会社に参画。
監修者
氏名:廣瀬直紀
所属:mMEDICI株式会社
専門性:保健学博士・公衆衛生学修士。東京大学・東京大学大学院を卒業後、外資系製薬企業の疫学専門家として薬剤疫学・リアルワールドデータ研究を専門とする。日本・グローバルの双方で活動したのちに、全ての人がアクセス可能な一流の知のプラットフォームを作り、「知に繁栄を、辺野に豊穣を」実現すべく、mMEDICI株式会社を創業。
英語論文執筆の心理的ハードルを下げよう
英語論文執筆のボトルネック
英文で医学論文を執筆するのって大変そうだな、と誰もが最初は感じると思います。私もそうでした・・・
なにが英語論文執筆の心理的なハードルになるのかは、その人のバックグラウンドによって感じ方が違うかもしれませんが、列挙してみれば
・英語
・研究のアイデア
・論文執筆の型
・解析・統計手法
・投稿の流れといったあたりがすぐに思いつきます。
本稿を読むことで、医学英語論文を書く際の心理的なハードル、不安がすこしでも少なくなれば嬉しく思います。
なんといっても英語というランゲージバリア
やはり、純ジャパ(準ジャパ)にとって、英語という言語がかなりの障壁になるのは間違いないと思います。その証拠として日本語で書くとなると多くの人はハードルが下がるのではないでしょうか。
英語の能力はしばしばスピーキング・リスニング・ライティング・リーディングの4技能に分けて評価されます。しかし、英文論文を書くことに特化した場合には、多くの日本人が苦手とするスピーキングとリスニングはほとんどいらない、ということになります。
「ほとんど」と言ったのは、最近ビデオ・アブストラクトなどの形でスピーキングが必要になることがあったり、ポッドキャストなどで英文雑誌の配信を聞くと英文論文執筆にも有利だったりするからです。
また、論文の内容を国際学会で英語でプレゼンテーションするとなれば、当然ながらスピーキングとリスニングが必須の技能になってきます。
しかし、シンプルに英語論文執筆だけにフォーカスすれば、医学論文に特化したライティングとリーディングが優先事項であり、スピーキングとリスニングの能力はあまり問われることはありません。後ほど、医学英語論文のライティングに関しては少し述べたいと思います。
早くライティングの仕方を知りたいと思う方も多いと思いますが、実は医学英語論文を書くためには、ある程度の量の医学英語論文を読むことがとても重要で、読み方にもコツがあります。そこでまずはリーディングから説明していきます。
医学英語論文執筆のための医学英語論文の読み方
臨床研究のアイディアと医学英語論文のリーディング
臨床研究のアイディアはどのように思いつくのでしょうか?
おそらく、臨床現場で感じるちょっとした疑問を調べることからはじまるケースが多いでしょう。そして、その疑問を論文にできるかどうか判断するには、これまでに出版されている関連論文やガイドラインなどを読み込むリーディングが必須です。
なぜなら、あなたがとても良いアイディアと思うことは、あなた以外にも他の人がすでに思いついている可能性が高いからです。似たような先行研究がないか、文献検索してよく調べる必要があります。
ただし、先行研究が見つかったからといって、必ずしもせっかく思いついたアイディアを諦める必要はありません。
同様の結論が違う母集団でも導けるかという、追試的な研究は常に必要ですので、多少先行研究よりは低いインパクトファクターの雑誌になるにしても、掲載の可能性は十分にあるのです。
逆に初めて論文を執筆する人のテーマとして、これまでに全く報告されていないような壮大なテーマを論文にするというケースは稀ともいえます。
同様の先行研究がすでに数編出版されている場合には、先行研究との違いをDiscussionで述べて、自分の研究の新規性を述べる必要があります。
また、先行論文研究が多数出版されていて、すでにいい意味でオワコンとなっているような場合には、総説ならば可能性があっても原著論文としてアクセプトされる可能性は極めて低くなります。そのような観点からまずは文献検索を行います。
それではどのくらいの論文を読む必要があるでしょうか。論文化が可能かどうかのサーチだけであれば、数編の比較的新しい論文に目を通せばある程度の判断ができるでしょう。
原著論文の場合には、リファレンスとして30~40編程度の文献の引用が認められます。したがって、そのテーマで論文執筆をすると決まった場合には少なくとも30~40編の英文論文を読み込む必要があるということになります。
臨床論文リーディングの心理的ハードルを下げる方法
論文を読めるようになるには、少し慣れが必要かもしれません。英文論文を自分自身が読み始めた時に、どのようにして論文を読めるようになったかは実はあまり記憶にありません。力ずくで読んでいるうちに慣れていった気がします。
NEJMの定期購読をした時期もありましたが、予想通り多くの号が積読になっていました(泣)。
それでもすぐ近くに雑誌があり、目次を見たり、ぱらぱらと中身を眺めたりするだけでも、多少の効果があったのかも知れません。
明らかに役に立ったのは抄読会です。英語ではJournal Clubとも呼ばれています。
英文論文を一人で読もうとしても、指導者がいないとなかなか読み進めるのは難しいので、三日坊主になってしまいがちです。その点、抄読会があるとペースメーカーとなり、その前に予習として少しは論文に目を通すようになります。
何度も同じ用語を耳にしたり、目にしたりするようになれば、門前の小僧ではありませんが、医学論文の英語の言い回しやその分野で使用される医学用語にも慣れてくるものです。
抄読会が開催されるコミュニティーに属していない方の場合には、mJOHNSNOWにも統計手法に注目しながら読んでいく抄読会があり、研究成果を知ることができるだけでなく、最近注目されている統計手法にも触れることができて一石二鳥です。
医学英語論文を読むことで執筆の心理的なハードルを下げる
医学論文を英語で書くためには英文論文をたくさん読まなければならない、と言われるともうすっかり書く気がなくなってしまうかもしれません。
しかし、うまく読めば先行論文には論文の書き方のヒントがたくさん込められているので、むしろ英文論文を読むことで医学英語論文執筆の心理的なハードルを下げることができるようになります。
また、その一部は生成AIの力を使ってもよいかもしれません。特にそのテーマの全体像をつかんだり、現段階で論文化されているエビデンスを調べたりするのには生成AIが力を発揮する可能性があります。
ただし、実際に英文で読むことによって、英文で書く力をつけることができますので、AIにすべて読ませて要約させるだけというのは得策ではありません。
先行する英文論文を読まずに英文論文執筆をしようとするのは、過去問を解かずに入試に挑戦するようなものです。
リーディングには
❶ 最初から最後まで熟読・精読する方法
❷ 必要な部分を中心に飛ばし読みする方法
の主に二つの方法があります。
❷の飛ばし読みは、ただ漫然と飛ばし読みをしても有効ではありません。
ある程度このテーマで論文を書こうという方針が決まり、キー論文を見つけた場合には、ただその論文の結論を理解するのみでなく、「論文を書くためにproactiveに読む」ことがとても大切です。
「何かに反応して」という意味のreactiveや受動的にというpassiveとは対照的に、proactiveは「先を見越して、積極的に、前もって」といった意味合いになります。
その時の状況に応じて例えば以下のような目的意識をもって読んでいくのが、proactive readingです。
❶ 関連する引用文献の検索 @Introduction&Discussion
❷ 対象集団の選択方法 @Methods (Patients & Methods)
❸ アウトカムに関連する因子(調査項目)@Methods&Table
❹ 解析・統計手法 @Methods
❺ 結果・結論 @Results&Abstract
そして、自分がその内容で英文論文を書くことをイメージして、必要な情報を既存の論文から抽出していくのです。
例えば、臨床データベースをカルテなどから構築する際には、集めてきた複数の関連論文のMethodsとTableを集中的にみて、アウトカムに関連する因子を抽出してリストアップするといった具合です。
時間が経過するとどの論文に書かれていたかわからなくなってしまうことが多いので、出典を含めてメモしながら読むことを強くおすすめします。その際には文献管理ソフトを使うと有効です。
文献管理ソフトには有料のものと無料のものがあります。好みのものを使用するとよいでしょう。有名どころではEndnoteやZotero、Paperpile(CEOの廣瀬さんはPaperpile推しのようです)などがあります。
私自身はEndnoteユーザーですが、Wordなどでメモ書きをして、Endnoteに取り込んだ文献情報をコピーペーストするとそのまま論文のように最後に文献リストをつけることができます(実際にこのような方法で論文を書いていきますが、これはまた続編でも触れる予定です)。
リアルワールドデータ(RWD)を用いたレトロスペクティブな研究には、因果推論といった手法もよくみられ、mJOHNSNOWのオンラインスクールでも学ぶことができます。
しかし、医学英文論文執筆に初めて挑戦する人には、異なる母集団、例えば欧米で少数例の報告がなされているような内容が日本人に当てはまるか(外挿できるか)といったテーマが向いているかもしれません。
カルテ(データベース)を丁寧に調べて、先行研究で触れられているような因子はできるだけ含めるようにします。稀な疾患や病態の場合には、複雑な統計を用いるほどの統計学的パワーがないため、記述統計を用いることとなります。これも立派な臨床研究です。
先行研究で関連や因果が報告されているデータ項目の情報が何らかの理由で得られない場合には、DiscussionにLimitationとして記載します(次稿でも触れる予定です)。
(続きはページ後半へ)
講座紹介|【ゼロからの】英語で書ける医学論文執筆講座

「英語論文を書き、アクセプトを勝ち取りたい」あなたへ
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論文執筆におけるOn the Job Training(OJT)の重要性
大学院生の医学英語論文執筆指導を通じて感じたことですが、英文で論文を書けるようになるために大切なこと、それは
「まずはとにかく1本論文を書いてみる」
ということです。
挑戦・実践を通してしか本当の執筆法は学べません。すべてを学んでから書くのではなく、書きながら覚えていく必要があります。とはいえ、まったく何も知識がなければ書き始めることはできません。その基礎知識や執筆の仕方はやはり良質な英文論文を読むことによって育まれていきます。
医学英語論文執筆は化学反応と似ていて、最初に一番大きな活性化エネルギーが必要です。それ以降は連鎖反応のように少ないエネルギーで執筆できることが多いです。
自分が英文論文を初めて書いた時を思い出してみても、最初の一編に取りかかる時が一番大変だった記憶があります。後輩指導の際も同様で、最初の一編が最も伴走が必要で、その後は多くの教え子たちは少しずつ自走していきます。
まずは論文投稿・アクセプトを1回経験することにより
❶ 英語の執筆要綱の読み方
❷ 投稿システムへの登録方法
❸ 査読に対する対応
❹ アクセプト後のゲラ校正
などといった論文投稿の流れを体感できるからです。
論文執筆の知識や統計・英語などを十分に勉強してから英文論文を執筆しようと考える人がいますが、おすすめしません。これではいくら時間があっても足りません。
ある程度の基礎知識を身につけたら実践で論文執筆しながら手法を覚えていくon the job trainingが英文論文執筆においても極めて重要です。石橋をたたいて渡る(壊す?)のではなく、石橋を作りながら渡っていくのです。
症例報告のすすめ
まずは1本論文を書くようにと言われても、何から書き始めたらよいかわからないという人には症例報告がおすすめです。
いきなり原著論文に挑戦する人も中にはいますがとてもハードルが高いため、学会報告をした症例報告を英文論文にするところから英文論文執筆をスタートする医師も多いです。
自分がこれまでに学会発表した症例報告を英語論文にできないか、考えてみるとよいでしょう(学会発表の内容を論文化する方法の詳細はまた別稿でも扱う予定です)。
症例報告では、基本的には統計処理を行うことはありません。症例が決まっていればテーマ選びも必要ありません。
臨床カンファランスなどで発表したことがある症例であれば、日本語ベースでは半分ほどはすでに論文が書きあがっていることになります。
学会で発表した内容であれば、論文として出版されている類似の症例報告もすでに検索し終わっているので、日本語ベースでは8割がたは完成している状況と言えます。冒頭に述べたハードルの中で、英語と投稿の流れ以外はほぼクリアされていると言えるでしょう。
そのため、症例報告であればハードルを低くして論文執筆のスタートを切ることができるのです。ただし、症例報告と原著論文は対照的な面も多くあるため、症例報告の執筆経験があっても原著論文を書く時にはまた別のハードルが存在します。
端的に言えば、症例報告は非典型像を具体的に述べていくのに対し、原著論文は典型像を明らかにして抽象化する作業が最も大事になります。
言い換えれば、症例報告は一例を突き詰めて詳細に書くのに対して、原著論文はある程度の数の症例をまとめて細かい点は省いて要約する、というある意味真逆の発想が必要になります。
それでも英文論文執筆のスタートとして、症例報告をおすすめする理由は、論文執筆・投稿の過程を俯瞰することができ、次の原著論文を書くときのハードル(必要な活性化エネルギー)をあきらかに下げることができるからです。
本稿を読んでいる方の中には、臨床に接する機会がないなどの理由で症例報告が難しい方もいるでしょう。
また、すでに症例報告を英文論文で執筆した経験はあっても原著論文執筆にはまだハードルを感じている人もいると思います。そのような場合には記述統計を使った臨床論文に挑戦するのも一つの手です。
記述統計の場合にはそれほど複雑ではない定型の統計処理で対応できることが多いため、取り掛かりやすいと言えます。
そして、1編目の論文を書きつつ、次のステップとしてmJOHNSNOWのコンテンツで最新の統計手法を学び、いつか論文執筆に応用できるようにイメージしていくのもよいでしょう。
「●●×▲▲」という臨床論文テーマも有効
研究テーマを考える時に壮大なテーマが浮かぶこともあると思いますが、特に最初の論文の挑戦にはいわゆるニッチな内容、つまり競争相手が少ないテーマを選ぶ方が、論文執筆のハードルが低くなります。
余談ですが、ニッチ (nicheニーシェまたはニッシェ)は「隙間」という意味ですが、医療用語としては胃潰瘍や十二指腸潰瘍でバリウムが潰瘍のスキマに溜まる所見をニッシェと言います。
メジャーな疾患のみで勝負するのはなかなか難しいです。例えば、「大腸癌では・・・」といったテーマで初めて論文執筆しようとしてもベテランの研究者にはとても太刀打ちできません。
最近よく見る「●●×▲▲」のような二つの病態を掛け合わせたテーマが必要です。マイナーな疾患のメジャーな病態か、メジャーな疾患のすこしマイナーな側面で、しかも臨床的に重要(relevant)な内容を探します。
その時代の流行の内容を絡めたテーマも一つの方法です。例えば、「大腸癌のロボット手術×△△」といった掛け合わせはよく見られるテーマの探し方です。
ロボット手術や腹腔鏡が流行しはじめた時に開腹手術に関するテーマだとリジェクトされやすいかもしれませんが、少し時間が経過して腹腔鏡やロボット手術の話題がある程度飽和してくると、逆に「開腹手術×△△」といった少し古い話題が逆に脚光を浴びるといったこともあります。
このあたりは音楽のバンドが本当は自分達の興味のあるジャンルの音楽や壮大なテーマを追求したくても、売れ線の曲をやらざるを得ないのに似ているかもしれません。
時には時流に乗って研究テーマを考えることもアクセプトの効率を高めるためには必要と言えます。そしてある程度時間が過ぎると再び昭和歌謡が流行ったりするのに似ているかもしれません。
医学論文の英語ライティングに関するハードルを下げる
日本語なら書けそうだけど、英語となった途端に「無理」と自己暗示をかけてしまい自らハードルを高く設定してしまっている人も多くみかけます。
英語論文執筆の初級者向けには、「基本5文型」を意識して短めの文で文章を構成することをおすすめします。
英文法は苦手だし、またSVOCとか覚えるの?と思った方、第5文型がどのような構成かということは覚えなくても大丈夫です!英語の基本5文型という概念があったことは、なんとなくは覚えていると思います。
特に大事なのは主語(S)と動詞(V)が対応しているセンテンスを作ることです。そんなことかと思うかもしれませんが、これができないことも実はとても多いのです。
日本語は主語がなくても成り立ってしまうので、気をつけないと主語がなかったり、主語と述語が呼応していなかったりする文章が簡単に作れてしまうのです。英語で執筆する時も、この日本語の癖が出てしまうことも多いのです。
余談ですが、私が所属していた東京大学腫瘍外科の学位は日本語で執筆する人がほぼ100%でしたので、日本語の文法もとても重要になります。大学院生の初稿の修正をする時は日本語の文法に関する赤ペン先生になった気分になります。
本多勝一さんの『<新版>日本語の作文技術』を一読することをオススメします。日本語のみならず英語でもどのようなことに気をつければ、的確に言いたいことを伝えられるかを学ぶことができるはずです。
最初から英語で書くか、日本語で下書きするかに関しては好みが分かれるところですが、英語で書くのに高いハードルを感じる人(活性化エネルギーが大きすぎて超えられない人)の場合には、日本語で書き始めてもよいと思います。
ただし、その際に英語の構造を意識して日本語で書かないと英訳する時に大変苦労することになります。
でも安心してください。
先ほどの主語(S)と述語(V)を意識した短いセンテンスでつないで文章を書けばよいのです。
ちなみに主語には名詞、述語には動詞が使われますが、「スタンド・バイ・ミー」「グリーン・マイル」「シャイニング」などの数々のヒット作品の原作で知られるスティーヴン・キングも「名詞と動詞は文章に不可欠の品詞である」と述べています(「書くことについて」小学館文庫 スティーヴン・キング 田村義進訳)。
次回予告
第2回は英文論文に関連する英文法やライティングの肝であるパラグラフ・ライティングとトピック・センテンス、IMRADの具体的な書き方に触れる予定です。トピック・センテンスという言葉を聞いたことがない人は必見です。
また、IMRADについてある程度知っている人も、知らない人も、そして拙著『学会発表・医学英語論文執筆のトリセツ』を読んだ人は復習として、第2回の内容を読むことでIMRADそれぞれのパートでどのような内容を書き進めればよいかがわかり、論文の書き方のハードルがぐっと下がるはずです。
研究計画・医療統計から、英語論文執筆・アクセプトまでトータルサポートならmJOHNSNOW!

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YouTubeラジオコンテンツ「耳から学ぶシリーズ」は、仕事や育児で忙しい人が10分のスキマ時間に“ながら聞き”で学べる音声コンテンツです。
すべてのコンテンツを疫学専門家が監修し、完全無料で毎日投稿していきますので、ぜひチャンネル登録してお待ちください。
シリーズ一覧
英語論文執筆シリーズ
vol.1:東大大学院生を指導してきた医師が語る - 英語論文執筆の心理的ハードルを下げよう(本記事)
vol.2:東大大学院生を指導してきた医師が語る - たった三つを意識すれば論文構成は完成する
vol.3:東大大学院生を指導してきた医師が語る - 学会発表を論文化する最短ルート
vol.4:東大大学院生を指導してきた医師が語る - 投稿から査読対応までの基本プロセス
vol.5:
(前編)東大大学院生を指導してきた医師が語る - AI時代に求められる論文リテラシーとは?
(後編)東大大学院生を指導してきた医師が語る - AI時代に求められる論文リテラシーとは?vol.6:
(前編)東大大学院生を指導してきた医師が語る - 論文の量産を可能にする習慣×統計手法
(後編)東大大学院生を指導してきた医師が語る - 論文の量産を可能にする習慣×統計手法vol.7:生成AIで進める英語論文執筆の全体戦略 - プロンプト付きで即実践!
vol.8:研究テーマの見つけ方と投稿先選び - 日常から着想を得て論文に育てるステップ
vol.9:短時間で“使える論文”を探す文献検索の手順 - PubMed×AI活用で効率化
vol.10:型で攻略するIMRADの書き方 - 読者に伝わるIntroductionを書くコツ
vol.11:型で攻略するIMRADの書き方 - 再現性の高いMethodsを書くコツ
vol.12:型で攻略するIMRADの書き方 - 過不足のないResultsを書くコツ
vol.13:型で攻略するIMRADの書き方 - 一貫性のあるDiscussionを書くコツ
vol.14:IMRADを要約する論文の顔 - 印象に残るTitleとAbstractを書くコツ
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