2025.10.4

【初学者にも書ける医学英語論文】型で攻略するIMRADの書き方:過不足のないResultsを書くコツ - vol.12

    英語で医学論文を執筆するのは大変そうですよね。初めての方は「一体何から始めれば良いの?」と思うはずです。私も昔はそうでした。

    先行研究を参考に見よう見まねで執筆してみるものの最初の数本は見向きもされず、Rejectの連続でした。今では良い思い出であり、その経験があるから今があると思っていますが、当時はめちゃくちゃ辛かったです。

    その後、図書やセミナーで論文の書き方におおよその「型」があることを学び、徐々に査読者に内容が伝わっていないなということが減るのを実感しました。

    その論文執筆の型を含む書き方を、筆頭著者・共著者として100本以上の論文に携わり、最近は査読者や編集者を務めているなかで感じたエッセンスを全5回(第10~14回)に渡り公開します。


    第12回の今回は、実験や観察によって得られた発見を示すResultsについて解説します。

    このセクションはMethodsと完全な一対一関係があり、図表を駆使して読み手に分かりやすく伝えることが大切です。

    本稿を読んで、過不足のないResultsの書き方を身につけましょう。

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    この記事のまとめ

    この記事を読むと分かること

    • 学術論文におけるResultsの意義と役割

    • Resultsへ書くべき内容

    • Resultsにおける図表の重要性

    この記事は誰に向けて書いているか

    • Study flowやTable1という言葉を知らなかった方

    • Resultsを実験や観察の順番通り書いていた方

    • 論文執筆の指導をしたい方

    英語論文執筆シリーズ

    • vol.1:東大大学院生を指導してきた医師が語る - 英語論文執筆の心理的ハードルを下げよう

    • vol.2:東大大学院生を指導してきた医師が語る - たった三つを意識すれば論文構成は完成する

    • vol.3:東大大学院生を指導してきた医師が語る - 学会発表を論文化する最短ルート

    • vol.4:東大大学院生を指導してきた医師が語る - 投稿から査読対応までの基本プロセス

    • vol.5:
      (前編)東大大学院生を指導してきた医師が語る - AI時代に求められる論文リテラシーとは?
      (後編)東大大学院生を指導してきた医師が語る - AI時代に求められる論文リテラシーとは?

    • vol.6:
      (前編)東大大学院生を指導してきた医師が語る - 論文の量産を可能にする習慣×統計手法
      (後編)東大大学院生を指導してきた医師が語る - 論文の量産を可能にする習慣×統計手法

    • vol.7:生成AIで進める英語論文執筆の全体戦略 - プロンプト付きで即実践!

    • vol.8:研究テーマの見つけ方と投稿先選び - 日常から着想を得て論文に育てるステップ

    • vol.9:短時間で“使える論文”を探す文献検索の手順 - PubMed×AI活用で効率化

    • vol.10:型で攻略するIMRADの書き方 - 読者に伝わるIntroductionを書くコツ

    • vol.11:型で攻略するIMRADの書き方 - 再現性の高いMethodsを書くコツ

    • vol.12:型で攻略するIMRADの書き方 - 過不足のないResultsを書くコツ(本記事)

    • vol.13:型で攻略するIMRADの書き方 - 一貫性のあるDiscussionを書くコツ

    • vol.14:IMRADを要約する論文の顔 - 印象に残るTitleとAbstractを書くコツ

    執筆者の紹介

    氏名:宮田一弘
    所属:茨城県立医療大学
    自己紹介:博士(保健学)。大学卒業後、理学療法士として病院勤務を経て、現在は医療系大学にて教育および研究に従事している。専門はアウトカムメジャーの検証・解釈や予測モデルの開発などの臨床研究であり、データ駆動型アプローチによる臨床意思決定支援の実現を目指している。これまでに臨床家と協同し100本以上の論文執筆に携わるとともに国際学術誌の査読を多数担当。現在は、国際誌のEditorial Board Memberも務めている。

    編集者

    氏名:菊池祐介
    所属:mMEDICI株式会社
    専門性:作業療法学修士。首都大学東京(現東京都立大学)・東京都立大学大学院を卒業後、病院勤務を経て専門学校・私立大学にて作業療法教育、地域共生社会の醸成に向けたリハビリテーション専門職の支援に関する研究に従事。現在は心身の健康とその人らしさの実現に向け、保険内外でのクライアント支援を展開している。作業療法の社会的意義向上を信念に、mMEDICI株式会社に参画。

    監修者

    氏名:廣瀬直紀
    所属:mMEDICI株式会社
    専門性:保健学博士・公衆衛生学修士。東京大学・東京大学大学院を卒業後、外資系製薬企業の疫学専門家として薬剤疫学・リアルワールドデータ研究を専門とする。日本・グローバルの双方で活動したのちに、全ての人がアクセス可能な一流の知のプラットフォームを作り、「知に繁栄を、辺野に豊穣を」実現すべく、mMEDICI株式会社を創業。

    Resultsの役割

    事実を客観的かつシンプルに書く

    Results(結果)セクションの役割は、研究目的を明らかにするために行われた実験や観察によって得られた発見・事実を示すことです。

    Resultsを書く時のポイントや注意点はいくつかありますが、Resultsの役割というのは上述に尽きます。何よりも重要なのは、事実を客観的に淡々と書くことです。

    本稿の執筆にあたり参考書を数多く参照しましたが、それ以上のことは書かれていませんでした。私も自身の論文執筆で、Resultsに書く内容を悩んだり迷ったりすることはあまりなかったと思います。

    ただし、共著論文の添削や査読をしているとやや読みにくいResultsに遭遇することがあります。そこで、そうした事例を踏まえて書き方のポイントを紹介していきます。


    また、とある参考書(『国際誌にアクセプトされる医学論文 第2版』)には、以下の文章とともにResultsには熱意を込めるべきだと書かれていました。

    研究者なら誰しも、自分の研究結果に心躍る思いを抱くものですが、それをうまく表現できずに退屈な書き方に終わっている論文が少なくありません。

    言いたいことは理解できますが、具体的にどのように表現すれば熱意が伝わるのかは私も模索中です。その表現ができるよう日々精進したいと思います。

    時系列的でなく論理的に

    Resultsは事実を淡々と書くわけですが、行ったことを順番に記述してしまうと読み手には分かりにくい文章となってしまうことがあります。

    著者としては自分が実施したプロセスを「せっかく苦労して行ったのだから」と全て記述したくなってしまう気持ちも分かります。

    しかし、全てのプロセスを把握している著者とは異なり、読み手は同じようには理解できません。時系列的な情報の羅列よりも、結果がリサーチクエスチョンに答える形でストーリーとして記載されている方が、はるかに理解しやすいのです。

    言い換えると、Resultsの記載では、Introductionで提起した問題(リサーチクエスチョン)との関連を論理的かつ読み手に分かりやすく示す必要があるということです。

    図表は論文の第二の顔

    論文の顔は「Title」と「Abstract」です。これについて異論はほとんどないでしょう。本文を読むことが有料であっても、この二つだけは必ず無料で読むことができます。

    論文のもう一つの顔は図表でしょう。プレスリリースなどで紹介される際には、必ず目を引く図が取り上げられます。

    さらに最近では、論文の内容を簡潔に示すビジュアルアブストラクトを要求する雑誌も増えてきています(ハードルが年々高まり、私のような絵心のない研究者にとってはなかなか厳しい環境になりつつあります)。

    そのため、Resultsで図表を示す際は、十分な時間をかけて分かりやすく仕上げることが大切です。Rejectの理由として「データのまとめ方が不適切あるいは稚拙」が上位に挙げられることからも、図表の完成度はAcceptに深く関わると言えるでしょう。

    ビジュアルアブストラクト

    Resultsの基本構成

    Methods(Reporting Guidelines)に沿って書く

    vol.11のMethodsでも提示した通り、現在は研究デザインごとに報告ガイドラインが整備されており、その項目を必ず満たすよう記述する必要があります。

    観察研究の報告ガイドラインであるSTROBEチェックリストのResults部分には、以下の項目が挙げられています。

    ①参加者

    ②記述的データ

    ③アウトカムデータ

    ④おもな結果

    ⑤他の結果

    Resultsの執筆で特に注意すべき点は、Methodsと一対一に対応させて記述することです(下図参照)。時々、Methodsに書かれていない内容を突然Resultsに示してしまう方もいますが、これは適切ではありません。

    MethodsとResultsの対応図

    Resultsの長さに明確な規定はありませんが、全体で約3000 wordsの論文の場合、Results部分はおよそ2ページ分(約600 words)が目安となります。

    分量が多くなる場合は、Methodsと同様に補足的な結果をSupplemental materialに記載するのが望ましいです。

    逆に、記述が少なすぎると、どれだけ図表で説明できていても印象は好ましくありません。したがって、少なくとも400 words程度は記述することが適切と考えられます。

    対象者の選択過程(Study flow)

    臨床研究では、最初にStudy flow(Patient flow)を示し、研究の各段階における人数を明らかにします。Study flowは患者の流れを表すもので、一般的には以下のような人数を示します。

    ・潜在的な適格者数(調査期間全体の人数)

    ・研究に組み入れられた人数(組み入れ基準を満たし除外基準で外された人数)

    ・フォローアップを完了した人数

    ・分析された人数

    これは研究報告において重要な情報であるため、本文には必ず記載します

    ただし、各段階での人数と理由を詳細に記述すると読みにくくなるため、多くの場合は下図のようなフロー図が用いられます。

    フロー図の一例

    フロー図を用いると流れが一目で把握できるため、非常に有用です。治療や介入の研究では本文に掲載することが望ましいですが、観察研究などその他の場合はSupplemental materialに置いても問題ないと考えられます。


    また、査読の過程では、一見分かりやすくても人数の整合性が欠けたフロー図にしばしば遭遇します。ここで誤りがあると、「これ以降の結果は信頼できるのか?」と査読者に疑念を抱かせてしまうため、人数の整合性は必ず確認することが大切です。

    対象者の特性(Table 1)

    次に、最終的に解析の対象となった方がどのような集団であったのか、その特性を記述します。いわゆるTable 1です。特別な場合を除き、「Table 1=対象集団の特性を示す記述統計」と考えて問題ありません。

    Table 1には、人口統計学的(年齢、性別、人種など)、臨床的・社会学的特徴を中心に記述し、変数(曝露)の情報が含まれることもあります。各変数に欠測データがある場合は、その数と割合(%)を示します。

    また、Table 1に対象者特性の全ての情報が示されるため、本文に詳細を記載する必要はありません。本文では、特に重要な情報を要約として1〜2パラグラフに簡潔に記載するのが適切です。


    そして、Resultsの冒頭にStudy flowとTable 1が配置されるのには合理的な理由があります。それは、研究結果の一般化可能性を考えるための対象集団の特徴が示されているからです。

    読み手はTable 1を参照しながら、「自分の臨床現場の患者に適用できるかどうか」を考えます。

    これらの点を踏まえ、過不足なく見やすいStudy flowとTable 1を作成することが重要です。

    ※Table 1の具体的な作成方法については、CEOの廣瀬さんのブログを参照してください。

    メイン解析結果

    ここは非常に重要なパートですが、書き方に関する決まった型はありません。それは、記述の幅やバリエーションが多すぎるためです。Methodsとの一対一に対応させることを意識して、図表を交えながら淡々と書きましょう。

    報告ガイドラインでは、このパートについて以下のようなチェックリストが存在しています。

    【STROBE】

    ・調整前の推定値と交絡因子での調整後の推定値(該当する場合)、そしてそれらの精度を記述する

    ・連続変数がカテゴリー化されている時は、カテゴリー境界を報告する

    ・意味のある場合は、相対リスクを、意味をもつ機関の絶対リスクに換算することを考慮する

    【TRIPOD+AI(モデル開発部分を抜粋)】

    ・モデルの開発(各分析における参加者とアウトカムイベント数を明確に述べる)

    ・モデルの仕様(完全な予測モデルの詳細を記載する)

    ・モデルの性能(主要サブグループを含む、モデルの性能の推定値を報告する。図表での可視化を検討すること)

    また、投稿先の雑誌ごとに定められた投稿規定に、結果の記載方法が指示されていることがあるため、必ず確認しましょう。よく見られるのは、P値や標準偏差の記述方法、図表の表現や制約などです。

    メイン解析は、本文・図・表で示すことが可能です。図表の重要性は先に述べた通りですが、この三者の関係には注意が必要です。

    特に図表は原則として、それ単独で内容が理解できるように作成する必要があります。本文に戻らなければ理解できないような図表は避けるべきです。

    加えて、初心者が陥りやすいミスとして、本文と図表の重複があります。原則として、図表で示した内容は本文に繰り返し記載しません。

    例外として、新たに得られた特に重要な結果(key results)のみを簡潔に記述します。冗長な説明は避けましょう。


    また、結果である以上、主観的な意見や解釈は記載しません。重要なのは、読み手や査読者に余計な労力を強いないことです。

    図表と本文の順序が一致しているか、主語が明確か、数値に誤りがないか等を、投稿前に丁寧に確認してください。

    感度分析結果

    感度分析を行う理由は、結果の頑健性を示すことにあります。感度分析には様々な方法があり、サブグループ解析を行ったり、アウトカムの定義(カットオフ値)を変更して、結果の一貫性を確認します。

    一貫性が示された場合、本文には「メイン解析と類似の結果であった」と簡潔に記載し、詳細な結果はSupplemental materialに掲載すれば十分です。

    (続きはページの後半へ)

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    分かりやすいResultsを書くポイント

    文章より図表を活用する

    上述の通り、学術論文において図表は第二の顔と言えるでしょう。特に基礎研究では、視覚的に明快な図を示した論文が多く見られます。

    一つの図表には一つの明確なメッセージを示し、それを補足・説明する形で本文を書くのが基本です。

    特に、Study flow(Figure 1)とTable 1の後に配置されるFigure 2またはTable 2が主要な結果を示すことが多いため、その作成には十分な気合と丁寧さで臨んでください。

    そして、投稿規定で図表の数を合計5〜6点までと定めている雑誌が多いため、それを超える場合はSupplemental materialに掲載しましょう。

    Tableの基本的な書き方や注意点については、後藤匡啓先生の臨床研究論文作成マニュアルの「Table作成と脚注」を参照してください。

    ちなみに、論文をどこから書き始めるかについてはさまざまな議論がありますが、私は得られた発見を明確に示す図表が完成すると気持ちが高まるため、解析完了後は図表の作成から取りかかっています。

    図と表で悩んだら表を優先

    同じ結果を図と表のどちらで示すか悩んだ経験のある方も多いと思います。私は研究を始めた当初は「図の方がカッコいいから」という理由で、できるだけ図で示していました。

    しかし、多くの論文を読み、自身でも執筆を重ねる中で、表の方がより多くの情報を提示できることに気づきました。そのため現在は表を中心に構成しており、図の点数が表を上回ることはほとんどありません

    また、査読の際には「この図に意義(必要性)はあるのか?」と感じる場面にしばしば出会います。結果をどの形で示すと読み手に最も伝わりやすいかを検討し、図・表・本文のいずれで提示するかを適切に選択しましょう。

    最低限のルールを守る

    ResultsはMethods同様、ルールに従って定型的に執筆します。Introductionのような魅力的なストーリーにする必要はありません。

    そのため、多くの論文を読むと、類似の目的やデザインの研究では、同じような表現が繰り返し用いられていることに気づくでしょう。

    デザインごとにすべてを説明することは難しいため、以下にポイントを列挙しました。

    ・過去形、能動態で書く

    ・目的・リサーチクエスチョンと対応させる

    ・Methodsに記載していないことは書かない

    ・統計用語は適切に使用する

    一つ補足すると、Methodsに記載した事項は全て結果として書くことが重要です。これはネガティブな結果であっても例外ではありません。

    現在では、観察研究であっても研究開始前に試験登録を行うことが一般的になりつつあり、今後は統計解析計画書(SAP:statistical analysis plan)の作成も進むでしょう。

    これらは研究の透明性を担保し、次の発展につながる基盤となります。そのため、ネガティブな結果であっても適切に記載する必要があります

    優秀な査読者であれば必ず気付きますし、むしろネガティブな結果は前向きに評価されることも少なくありません。

    よくあるミスと改善策

    図表の内容を本文で繰り返す

    繰り返しにはなりますが、重要な点なので再度強調します。これは特に初学者が見落としがちな部分です。

    まず、図表のみで結果が十分に理解できるものを作成しましょう。その上で、本文ではKey resultsを除き、図表を見れば分かる数値を繰り返すべきではありません。代わりに、図表から読み取れる傾向や要点をまとめ、読者が理解しやすいよう記述することが重要です。

    図表と本文のバランスは難しいため、執筆にあたってはメンターなど第三者にチェックしてもらうと良いでしょう。

    解釈は書かない

    最後に、結果には解釈や価値判断をするようなことは書きません。当たり前と思われる方も多いと思いますが、案外書かれていることがあります。

    Resultsは得られた発見を記述するパートであるため、その解釈についてはDiscussionへ書きましょう。

    一方で、非常に複雑な実験や解析から得られた発見については、結果のあとに「結果に関するコメント」を加える論文も見られます。その内容は、研究結果がIntroductionで提起した問題やリサーチクエスチョンとどのように関係するのかに関するものです。

    ただし、これは上級者向けのテクニックであるため、初学者は事実を淡々と記載することに徹すれば十分です。

    次回予告

    第13回では、IMRADのD:Discussionについて解説します。学術論文におけるDiscussionは研究から得られた知見の「意味」や「価値」について説明するパートになります。

    執筆難易度の高いパートですが、ストーリーを理解し読み手に伝わるDiscussionが執筆できるよう、一緒に学んでいきましょう。

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    • vol.6:
      (前編)東大大学院生を指導してきた医師が語る - 論文の量産を可能にする習慣×統計手法
      (後編)東大大学院生を指導してきた医師が語る - 論文の量産を可能にする習慣×統計手法

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