2025.6.12

【初学者にも書ける医学英語論文】東大大学院生を指導してきた医師が語る:学会発表を論文化する最短ルート - vol.3

    臨床論文を英語で執筆してアクセプトを勝ち取るまでには、たくさんの高い壁が立ちはだかるように感じる人も多いでしょう。

    良きメンターにめぐり会うか、よほどの能力の持ち主でないと、これまではその壁を乗り越えることは困難だったかもしれません。

    どのようなステップを踏めば最初の論文執筆を成功させることができるか、東大大学院で多くの後輩の英文論文を指導する中で見えてきた、その最適解とも言える指導法のエッセンスを全6回に渡り公開します。

    第3回は、学会発表から英文論文にする方法やはじめての論文執筆に向いているケースレポート・記述統計に関して、肩肘張らずにOJTで医学英文論文執筆を目指す方法についてに触れていきます。

    完璧主義に徹すると論文執筆は完成しないので、少しゆるく統計や英文法の知識を再確認します。

    本稿を読んで、私達とともに英文論文執筆の第一歩を踏み出してみませんか。

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    この記事のまとめ

    この記事を読むと分かること

    • 完璧を目指しすぎない執筆方法

    • 沼にはまりすぎない統計知識

    • 気にしすぎない英文法

    この記事は誰に向けて書いているか

    • 学会発表の経験はあるけど、論文執筆はこれからという方

    • ケースレポートや記述統計による観察研究を目指す方

    • 論文にしたい内容はあるけど、英語が不安な方

    英語論文執筆シリーズ

    • vol.1:東大大学院生を指導してきた医師が語る - 英語論文執筆の心理的ハードルを下げよう

    • vol.2:東大大学院生を指導してきた医師が語る - たった三つを意識すれば論文構成は完成する

    • vol.3:東大大学院生を指導してきた医師が語る - 学会発表を論文化する最短ルート(本記事)

    • vol.4:東大大学院生を指導してきた医師が語る - 投稿から査読対応までの基本プロセス

    • vol.5:
      (前編)東大大学院生を指導してきた医師が語る - AI時代に求められる論文リテラシーとは?
      (後編)東大大学院生を指導してきた医師が語る - AI時代に求められる論文リテラシーとは?

    • vol.6:
      (前編)東大大学院生を指導してきた医師が語る - 論文の量産を可能にする習慣×統計手法
      (後編)東大大学院生を指導してきた医師が語る - 論文の量産を可能にする習慣×統計手法

    • vol.7:生成AIで進める英語論文執筆の全体戦略 - プロンプト付きで即実践!

    • vol.8:研究テーマの見つけ方と投稿先選び - 日常から着想を得て論文に育てるステップ

    • vol.9:短時間で“使える論文”を探す文献検索の手順 - PubMed×AI活用で効率化

    • vol.10:型で攻略するIMRADの書き方 - 読者に伝わるIntroductionを書くコツ

    • vol.11:型で攻略するIMRADの書き方 - 再現性の高いMethodsを書くコツ

    • vol.12:型で攻略するIMRADの書き方 - 過不足のないResultsを書くコツ

    • vol.13:型で攻略するIMRADの書き方 - 一貫性のあるDiscussionを書くコツ

    • vol.14:IMRADを要約する論文の顔 - 印象に残るTitleとAbstractを書くコツ

    執筆者の紹介

    氏名:畑啓介
    所属:東京大学医学部非常勤講師・とよしま内視鏡クリニック
    専門性:医師・医学博士(外科学)・英検1級・全国通訳案内士(英語)・ECFMG certificate取得。東京大学医学部医学科・東京大学大学院医学系研究科外科学専攻卒業、米国サンタモニカ John Wayne Cancer Institute留学・東京大学がんプロフェッショナル養成プラン元特任講師を経て現職。医学英文論文執筆・執筆指導多数。著書に『学会発表・医学英語論文執筆のトリセツ初めての症例報告!外科医のためのケースレポートのトリセツ

    編集者

    氏名:菊池祐介
    所属:mMEDICI株式会社
    専門性:作業療法学修士。首都大学東京(現東京都立大学)・東京都立大学大学院を卒業後、病院勤務を経て専門学校・私立大学にて作業療法教育、地域共生社会の醸成に向けたリハビリテーション専門職の支援に関する研究に従事。現在は心身の健康とその人らしさの実現に向け、保険内外でのクライアント支援を展開している。作業療法の社会的意義向上を信念に、mMEDICI株式会社に参画。

    監修者

    氏名:廣瀬直紀
    所属:mMEDICI株式会社
    専門性:保健学博士・公衆衛生学修士。東京大学・東京大学大学院を卒業後、外資系製薬企業の疫学専門家として薬剤疫学・リアルワールドデータ研究を専門とする。日本・グローバルの双方で活動したのちに、全ての人がアクセス可能な一流の知のプラットフォームを作り、「知に繁栄を、辺野に豊穣を」実現すべく、mMEDICI株式会社を創業。

    論文執筆を視野に入れて学会発表をする

    第1回ではproactiveという言葉を紹介しました。英語ではreactiveの反対語としてproactiveという言葉があります。

    reactiveは何かに反応して行動することで、例えば上司に言われて学会発表する、学会の締め切りに追われて仕方なく発表するといった感じでしょうか。

    それに対してproactiveは前もって(pro)行動(act)することで、医学論文で言えば普段の診療中から症例報告できそうか網を張る、学会発表のネタは論文執筆を視野に入れて考える、ということになります。

    本稿では初学者向けに学会発表した内容を英文論文化する際に知っておくと良い点を以下の三つに絞って説明していきます

    ❶ 完璧を目指しすぎない執筆

    ❷ 沼にはまりすぎない統計

    ❸ 気にしすぎない英文法

    完璧を目指しすぎない執筆

    英文論文を書くときに、おそらく最初から完璧な論文を書ける人はいないと思います。その分野の常識を勉強して、統計的な知識も一から勉強して、英語も含めて完璧にする、なんて考えていたら英文論文1本目を執筆するのに途方もなく時間がかかってしまいます。

    完璧主義に徹しすぎると論文はなかなか書きあげることができません。


    東京大学の外科系の大学院では、少なくとも私が所属していた2001年から2020年まではピア・レビュー付きの英文雑誌に原著論文2編または原著論文1編と症例報告2編のアクセプトが学位審査を提出する必要条件でした。

    大学院生活は4年とはいえ、3年弱で論文2編の投稿が最低限終わっていないと学位申請に間に合わないことになります。2年生が終わるころに論文投稿できていない大学院生は焦るようになります。

    多くの大学院生を指導してみて感じたことは、最初の1編目の論文は症例報告でもよいので、完璧を目指しすぎずに早めに執筆・投稿することがとても大切ということです。

    心理的に楽になる上に、投稿の手順を一度経験することで2編目からはぐっとハードルがさがるからです。これは自分自身の経験にも合致します。


    中にはバリバリの基礎の教室に入って、いきなりNatureやCellといった超一流誌を目指すことを要求されて、しかもそれを成し遂げる強者もいますが、それはかなり例外的でよほどの才能がないとできることではありません。

    1本目の英文論文執筆としては症例報告または記述疫学研究をおすすめします。もし、これまでに学会で症例報告や観察研究などの発表をしたことがあれば、英文論文化できないか考えてみましょう。

    論文化できる内容とは

    症例報告でも観察研究でも英文論文化可能な条件として共通するのは「読者が知りたい明確なメッセージがあるかどうか」です。

    論文を執筆するのに必要とされる要素のアクロニムとしてFINERというものがあります。

    以下の頭文字をとったものです。

    Feasible

    Interesting

    Novel

    Ethical

    Relevant

    FINERを知っている方も知らない方もCEO廣瀬さんの『耳から学ぶ医学研究デザイン』を聞くことをおすすめします。

    たったの10分で理解が深まります。


    この最後のRelevantは多義語で和訳するのは少し難しい単語ですが、「臨床的に重要な、役に立つ」といった訳がもっとも当てはまると思います。

    ケースレポートやケースシリーズの場合には、同じような症例に出会ったときに役立つ情報です。


    例えば、他の疾患と似ていて紛らわしい鑑別疾患(いわゆるmimicker)、めずらしいが知っておくべき有害事象、巨大・多発病変などで治療困難な症例の治療成功例などが症例報告にしやすいパターンです。

    観察研究の場合には役立つ情報に加えて統計上の問題がないか、ということが問われます。


    症例数が多い方が論文にしやすいですが、稀少疾患や二つの病態の掛け合わせなどで珍しい病態であれば、たとえ症例数が二桁程度でも、P値にこだわらずに記述統計で記載すれば論文化の可能性が十分にあります。

    学会発表と英文論文の違い

    学会発表された研究のうち、英文論文化される割合を流行りのDeep Researchを使って調べてみました。

    後者は驚愕の数字ですが、それでも4分の3の研究は、英文論文化されていないということになります。


    学会発表と英文論文との違いはいろいろありますが、英文論文では、学会発表と比べて査読のシステムがより厳しく、リバイズという査読者の要求に応じて論文を改善していくプロセスが重要になります。


    論文を投稿した後の流れに関しては、次回の第4回で詳しく述べる予定ですが、大まかには以下の三つの工程を経て、最初の判決(First decision)が言い渡されます。

    ❶ フォーマットチェック

    ❷ エディター(編集者)によるファーストチェック

    ❸ レビュワー(査読者)による査読

    査読を依頼されるようになると分かることですが、エディターもレビュワーも最初から論文全てに目を通すことはまずなく、抄録や図などをざっと眺めて、さらに細かく読む価値があるかどうかを判定します

    そして、面白くない(not interesting)と思えば、レビュワーは落とす理由を探して文章化していきます。


    統計手法の決定的な間違えがある場合にはレビュワーからするとリジェクトの文章を簡単に書くことができます。また、症例数やイベント数が少ない場合には、よほど希少性が高い疾患や状況でない限りはリジェクトされる可能性が高くなります

    そのような意味でも、統計の知識はとても重要といえますので、少しだけ本稿でも触れてみたいと思います。

    沼にはまりすぎない統計

    統計の重要性

    統計・疫学の先生はよく「研究をスタートする前に相談してください」とおっしゃいます。最初の設計段階で間違ってしまうと、データ集めやスクリーニングを最初からやり直す必要がある場合もあるからです。

    しかし、論文執筆をはじめようという初学者が、忙しい統計疫学の先生に相談するチャンスは従来ほとんどなかったように思います。

    自分自身も統計の先生とコンタクトして、論文を執筆に携わることができるようになったのは、その当時の教授のRCTを手伝ったときが初めてで、医者になってから20年以上経っていました。

    自分のfirst authorの論文で統計の先生にお願いすることなど恐れ多くてできなかったです。mJOHNSNOWのフェローは複数の統計の専門家に比較的気軽に安価で相談できるシステムがあるので、そのようなリソースを使わない手はないと思います(笑)。

    すこし複雑な統計手法を用いるときには、論文の共著者に生物統計家が入っていないと太刀打ちできなくなります。特に、一流誌では査読者に生物統計家が入るのでなおさらです。


    一方で、比較的一般的な統計手法を用いる場合には、そこまで厳密な方法でなくても大きな間違いがなければ論文化されているのが現状です。

    統計の先生と相談するリソースのない方の場合には、あまり高度な統計学的な知識を必要としない(統計の先生にはそんなことはないと怒られそうですが)、でも重要な記述疫学研究的な論文を書くと良いと思います。

    また、珍しい病態や疾患の場合には症例報告や少数例のケースシリーズにすれば統計手法を用いずに論文化することが可能です。

    記述統計とは

    佐々木敏東大名誉教授のゼロから極める医学研究デザインシリーズ第1回をまだご覧になっていない方は是非見ていただきたいのですが、

    その中で主な研究の流れは

    ❶記述疫学研究 ❷分析疫学研究 ❸介入研究 ❹統合研究

    という説明が出てきます。


    それぞれの研究が明らかにしようとしていることの私なりの解釈は以下の通りです。

    ❶ 記述疫学研究 どうなっているの?

    ❷ 分析疫学研究 原因はなんなの?

    ❸ 介入研究   変えることができる?

    ❹ 統合研究   本当にそう?

    症例数の限られたケースレポートやケースシリーズでは、その症例の「特殊性」を見出すのが目的になることが多く、すべての症例の特徴を書き出した表を用います。


    一方で症例が数十例以上の場合には、特殊性ではなく「共通点」をまとめる必要があります。この際に使うのが記述統計です。すべての症例を表にすると情報量が多すぎるので、代表値などでまとめるようにします。


    例えば、それぞれのデータの代表値としては以下のようなものがあります。

    • カテゴリーデータ:パーセンテージ

    • 正規性のある連続データ:平均値とSD

    • 正規性のない連続データ:中央値と四分位範囲

    これらの書き方は以下の統計ガイダンスの最初に“1. presentation”の表としてまとめられていますので、一読をおすすめします。

    ちなみに、このガイダンスにはFigureに関するsimple rules of thumbの記載もあります。

    円グラフや3次元棒グラフの使用を避けた方がよいことは、拙著『学会発表・医学英語論文執筆のトリセツ』でも触れていましたが、このガイダンスにも同じことが書かれていて安心しました。

    ケースシリーズ・記述統計を用いた観察研究

    記述疫学研究とはどのような研究デザインかをもう少し具体的にみてみましょう。

    ここでは例として、糖尿病合併の大腸癌手術について調べることを考えてみます(この例はあまりにメジャーな2疾患なので、実際にはこのテーマでは論文化のハードルはとても高いです)。

    糖尿病が重篤な感染症のリスクであるという因果関係を調べるには、糖尿病非合併の大腸癌も含めて調査を行い、さまざまな交絡を含めたバイアスをできる限り排除してその率を比較する必要があります。

    これは厳密に調べようとすると実はかなり難しいです。因果推論などの統計学をしっかりと学ぶ必要があります。


    一方で、糖尿病合併の大腸癌手術症例で、重篤な感染症が起きる確率が5%なのか、10%なのか50%なのかは、たとえ糖尿病非合併の大腸癌手術症例のデータがなくても、日常臨床的には重要な情報になるでしょう。

    術前のHbA1cの値で糖尿病コントロールの状況を分けて、重症感染症の率を記述してみてもよいかもしれません。このような例が記述統計の一つの出番になります。どうなっているのかを代表値などを用いて記述するのです。


    また、糖尿病合併の大腸癌手術後に重篤な感染症になり最終的に救命可能であった症例を経験した場合には、一例で症例報告ができるか既報をしらべてみてもよいでしょう。

    同じ病院の症例データベースをあたって、同様の症例が見つかった場合には、例えばHbA1cや年齢、他の合併疾患などの術後感染症に関連しうる因子をまとめてケースシリーズにできるかもしれません。

    ケースシリーズでは、すごく稀な疾患や二つの病態の掛け合わせで稀な病態を数例まとめて、その特徴を報告します。ケースレポート同様に既報の文献検索を行い、診断・治療上の有用な情報をまとめることになります。

    Consecutiveに症例を集計しよう

    後ろ向き研究ではRCTとは異なり、様々な交絡が存在するので、その影響をできるだけ少なくする努力が必要です。

    以下の三つの方法は比較的よく行われる方法です。

    ❶ Cox回帰などの多変量解析

    ❷ 症例対照研究 Matched Case-Control Study

    ❸ 傾向スコアなどを用いたTarget Trial Emulation

    その詳細は本稿では詳しくは触れませんが、いずれの場合にも患者選択の際に大事なことがあります。

    consecutiveという単語はご存じでしょうか。オンライン英語辞書weblioでは「英検:1級以上の単語学校レベル:大学院以上の水準TOEIC® L&Rスコア:950点以上の単語」とされていますので、知らなくてもまったく恥じることはありません。

    ただし、観察研究をしたことがある人なら、おそらく使ったことのある単語のはずです。

    例:Patients’ data were consecutively collected.

    これは「連続で」というような意味ですが、観察研究で患者データを集めるときには必ず一定期間の患者データをもれなく連続で集計する必要があります。

    そして除外する症例はしっかりと基準を決めた上で一律に除外します。これは一例報告以外ではケースシリーズでも観察研究でも必須になる考え方です。

    都合の悪いデータだけ除くといった不正がないようにするためです。


    また、❶〜❸のいずれの場合も、アウトカムに影響するような因子を既報で十分に調べることも重要です。

    分析疫学研究などの観察研究を行う場合は、学会発表の時点から研究デザインを練って、proactiveに論文を書くのが望ましいです。


    対照症例数が数十例あるようであれば、その特徴が他の病態と比べてどのような特徴があるか比較することになるのですが、比較をするときには様々なバイアスが潜んでいるのでかなり疫学的な知識を深く学ぶ必要があります。

    中級者であれば、❷や❸に挑戦してもよいと思いますが、初学者がいきなりそのような解析を行うのはハードルが高いのではないかと思います。


    私自身は学部学生(20代)・大学院生(30代)・留学時(40代)・mJOHNSNOW(50代)と4回にわたってかなり良質な疫学・統計の授業を受けてきたはずなのですが、それでも欠損値の補完imputationや傾向スコアマッチングの際には疫学の先生の助言がほしいと感じます。

    mJOHNSNOWのコンテンツは初学者にも上級者にもあったコンテンツが用意されていておすすめです。

    統計に関しては、今回はこのあたりにしておきたいと思います。また、第6回でももう少しだけadvancedな内容に触れたいと思います。

    (続きはページの後半へ)

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    英文校正と校正者に伝わる英語の書き方

    英語がネイティブ言語でない著者の場合は、現段階ではプロの英文校正に依頼するのをencourageするというのが多くの医学雑誌のスタンスで、執筆要項にもそのような指示が記載されています。

    このあたりは生成AIの進歩により、近い将来変わってくる可能性が十分にあり、第5回で触れる予定です。



    逆に言うと、細かい英文法や英語表現にこだわりすぎて、あまりに時間がかかるような場合には、一層のことプロの英文校正に任せてしまった方がよいともいえます。

    細かい英文法の規則よりも、むしろ大事なのは理論構成です。これは英文論文と和文論文どちらにもあてはまることで、執筆しながら学んでいくのが大切です。

    何度か英文校正を依頼していると自分の英語のくせがわかってきて、それらを次の執筆の際には修正していくことで英語のライティング技術が上達していきます。


    重要なのは、曖昧な表現やmisleadingな表現を避けて、できるだけ簡潔に書くことです。そのためには、第1回で触れたように単文を使って主語と述語を対応した形で文章を完成させることが大事です。

    また、第2回で説明した、文と文の間に使用するtransitional wordとよばれる接続詞などの使い方が重要になります。


    mJOHNSNOWで因果ダイアグラム(DAG: Directed Acyclic Graph)を学んでいるフェローにとっては簡単かもしれませんが、順接、逆接、理由など文と文の関係をはっきりさせることで、英文校正者や読者にわかりやすく伝えることができます。

    そうはいっても、はじめのうちはプロの英文校正者から返ってきた原稿にたくさん修正が入り、がっかりすることもあるかもしれません。

    違う意味に変えられてしまうほどの大幅な修正が入った場合には、元々の文章が伝わらない文章になっていた可能性が高いと考えた方がよいので、読者の気持ちになって書き直すことが必要です

    気にしすぎない英文法

    英文法というとアレルギー反応を起こす人も多いと思います。

    その中でも難解な仮定法・複数形・冠詞・時制・関係代名詞に関して、「あまり神経質にならないでよい」というスタンスで少しだけ触れてみます。

    仮定法

    医学論文では難解な仮定法はほとんど使うことがありません。

    「もしあの時~していたら、」What if …

    「~できたらよかったんだけど」I wish I could.

    といった表現は科学論文では、それほど見かけないと思います。

    ちなみに、mJOHNSNOWの専門書輪読会で使用する因果推論の金字塔 Causal Inference What Ifは、タイトルからしてすでに仮定法で、反事実(counterfactual)という概念の説明で「もし治療Aを受けていなかったら」といった仮定法が続出しますが、それはさておき。

    複数形、冠詞

    冠詞や複数形は当然ながら医学英文論文でも頻出します。

    正しく執筆できるに超したことはないですが、プロの英文校正者が直してくれますので神経質になりすぎる必要はありません

    最低限知っておいた方が良い知識としては、

    数えられる名詞countable nounの場合には、複数形でなければ、冠詞(a / an / the)または所有代名詞(his / her / its)などが必要だということです。

    海外留学の時に気づいたことですが、抽象的な名詞がcountableかどうかはUCLA卒の優秀なネイティブでも迷うことが多く、オンラインのサイトなどで調べながら文章を校正していました。

    ネイティブにとっても難解な冠詞のルールですが、定冠詞theを使うルールは、まずは以下の二つをおさえておき、あとはプロの校正に任せるとよいと思います。

    ❶ 既出で特定の名詞

    ❷ 解剖学的な用語

    複数形の名詞に関してはよほど特定したい内容でない限り、定冠詞theは不要です。

    時制

    医学英語論文ではある程度基本的なルールがありますのでそれに従います。細かい間違いを恐れずに言えば、基本的に過去形で記載し、周知の事実は現在形を用いるというルールです。

    また、表や図の本文中の説明は以下のように現在形で表現することになっています。

    例: Patients’ demographics are shown in table 1.

    どうしてもベースの話よりも過去の話をしたい場合だけ過去完了を使います。これもプロの英文校正者に直してもらえるので過度に神経質になる必要はありません。

    関係代名詞

    大学入試の長文読解で出てくるような難解な関係代名詞はむしろ避ける必要があります。あくまでも比較的単純で誰もが勘違いしない程度の関係代名詞を用いるようにします。

    例:Patients who underwent gastrectomy

    複雑な構造になってしまう関係代名詞の場合には、二つの文に分けられることが多いはずです。


    英文法もこのあたりにしておきたいと思います。

    次回予告

    第4回では、論文投稿前後の対応に関して説明予定です。論文執筆のハードルを上げる意図は全くないのですが、論文投稿は初めの一歩にすぎず、むしろその後の方が時間も労力もかかることが多いです。第4回を読んで、心の準備をしておきましょう。

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