
【疫学専門家監修】因果効果の基本を徹底解説 - 個人因果効果と平均因果効果の違いとは? - ゼロから学ぶ因果推論 vol.2
2024.10.28
シリーズ紹介|ゼロから学ぶ因果推論
「医学研究は難しい」、きっと多くの方がそう感じているでしょう。
因果推論は、そんな複雑怪奇な医学研究にスッと一本の軸を通してくれる、まさに医学研究の原理原則とも言える学問です。
因果推論を学ぶことで、複雑に散らばっていた知識の断片が見事なまでに因果推論という幹へと体系立てられていきます。そしてきっと「論文、読めるようになってきたかも」、そんな気持ちになれるはず。
「ゼロから学ぶ因果推論」シリーズは、疫学専門家の監修のもとで「はじめて学ぶ人の気持ち」に寄り添い、具体例や図解を使用して「日本でいちばんわかりやすい因果推論の解説」を目指しました。あなたの歩幅で一歩ずつ。ゼロからの学びをはじめしょう。
はじめに
因果関係があることで暴露・介入がもたらすアウトカムである「因果効果」は、個人と集団に分類されることはご存知ですか?
この記事では、「個別因果効果(Individual Causal Effect)」と集団における「平均因果効果(Average Causal Effect)」の違いと、因果推論に必要な仮定である「一致性(Consistency)」についてイラスト付きでわかりやすく解説します。
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- シリーズ紹介|ゼロから学ぶ因果推論
- はじめに
- mMEDICI Library | ひらけ、叡智の扉
- この記事のまとめ
- この記事を読むと分かること
- この記事は誰に向けて書いているか
- 因果推論シリーズ
- 執筆者の紹介
- 編集者
- 監修者
- なぜ因果推論が必要なのか?
- 個別因果効果と平均因果効果とは
- 個別因果効果とは?
- 個別因果効果を数式で表してみると
- 平均因果効果とは?
- 平均因果効果を数式で表現してみると
- 個別因果効果と平均因果効果はどう違うのか
- 一致性(Consistency)
- 平均因果効果の推定に必要なその他の仮定
- まとめ
- 参考文献
- 因果推論を学ぶならオンラインスクールmJOHNSNOW
- 【YouTubeラジオコンテンツ 耳から学ぶシリーズ】
- シリーズ紹介|ゼロから学ぶ因果推論
この記事のまとめ
この記事を読むと分かること
この記事では、因果推論の基本的な用語である「Individual Causal Effect(個別因果効果)」と「Average Causal Effect(平均因果効果)」の違いについて学べます
この記事は誰に向けて書いているか
因果推論に興味があるが、今まで何となく手を出せなかった方
因果推論で求める因果効果が何なのかを知りたい方
個別因果効果と平均因果効果の違いを知りたい方
因果推論シリーズ
vol.1:因果推論の出発点 - 因果と関連の違いとは? -
vol.2:因果効果の基本を徹底解説 - Individual Causal Effect(個人因果効果)とAverage Causal Effect(平均因果効果)の違いとは? -
vol.3:初心者のためのTarget Trial Emulation(TTE)
- Part 1 ; ETAFOCAフレームワークについて
- Part 2 ; 三つの時点で考えるバイアスとその対処法
- Part 3 ; 論文の実例で理解を深めるTTEvol.4:Exchangeability(交換可能性)を徹底解説 - Randomization(ランダム化)が実現する因果推論の必須条件 -
vol.5:Standardization(標準化)を徹底解説 - 交絡調整の基本をわかりやすく図解 -
vol.6:Inverse Probability Weighting(逆確率重み付け)を徹底解説 - 交絡調整の基本をわかりやすく図解 -
vol.7:Consistency(一致性)を徹底解説 - 観測データと反事実アウトカムを一致させよ -
vol.8:Positivity(正値性)を徹底解説 - 因果推論の落とし穴を回避せよ -
vol.9:Immortal time biasを徹底解説 - 臨床研究に潜む「不死の時間」の罠 -
vol.10:効果修飾を徹底解説 - 私たちは「どの集団における」効果を見ているのか? -
vol.11:交互作用を徹底解説 - 複数の介入による相乗効果 -
vol.12:DAGを徹底解説
vol.13:交絡を徹底解説 - 結果を歪める、因果推論の最重要課題 -
vol.14:選択バイアスを徹底解説 - 消えた患者が結果を歪める?-
執筆者の紹介
氏名:岩倉正浩(resaerchmap: https://researchmap.jp/iwakuramasahiro)
所属:秋田大学大学院医学系研究科 衛生学・公衆衛生学講座・助教
経歴:理学療法士として急性期病院に約10年勤務し、2023年9月より現職。専門分野はリハビリテーション(主に呼吸・がん)やシステマティックレビュー。現在はリアルワールドデータ研究にも取り組んでいる。
編集者
氏名:菊池祐介
所属:mMEDICI株式会社
専門性:作業療法学修士。首都大学東京(現東京都立大学)・東京都立大学大学院を卒業後、病院勤務を経て専門学校・私立大学にて作業療法教育、地域共生社会の醸成に向けたリハビリテーション専門職の支援に関する研究に従事。現在は心身の健康とその人らしさの実現に向け、保険内外でのクライアント支援を展開している。作業療法の社会的意義向上を信念に、mMEDICI株式会社に参画。
監修者
氏名:廣瀬直紀
所属:mMEDICI株式会社
専門性:保健学博士・公衆衛生学修士。東京大学・東京大学大学院を卒業後、外資系製薬企業の日本・グローバルにおいて疫学専門家として薬剤疫学・リアルワールドデータ研究に従事。その後、全ての人がアクセス可能な一流の知のプラットフォームを作り、「知に繁栄を、辺野に豊穣を」実現すべく、mMEDICI株式会社を創業。
なぜ因果推論が必要なのか?
治療効果を考える際、因果推論は重要です。なぜなら、因果推論という枠組みを使わなければ、治療や介入が患者の健康にどのような影響を与えるかを推定することができないからです。
例えば医療関係者であれば、臨床現場で「この治療は本当に効果があるのか?」と疑問に思うことが多いと思います。

熱中症患者Aさんに治療として輸液をした状況を考えてみましょう(図1 上部)。
仮にAさんが治療後に回復したとしても、Aさんのデータからだけではその回復が治療のおかげかどうか判断することはできません。
なぜなら、Aさんはもしかすると「治療を受けずとも自然に回復していた」可能性があるからです。
この「治療をした、回復した、だから治療効果があった」という考え方は「3た論法」と呼ばれ、治療法の誤解の形として有名です(図1 上部)。
つまり、因果関係があったかは定かではないにも関わらず、誤って「治療が効いた」と判断してしまうということです。
本当の因果効果を知るためには、タイムマシンを使って過去に戻り、Aさんが治療を受けなかった場合の結果も確認し(図1 下部)、治療した結果と治療しなかった結果を比べる必要があります。
しかしこれは現実には不可能であり、実際のデータから知ることができるのは治療した場合か、しなかった場合のどちらかの結果だけです。
では、私たちは治療効果を知ることはできないのでしょうか?
ここで因果推論(Causal Inference)が登場します。因果推論とは「観察されたデータから、どのように因果関係を推定するか」という思考の枠組みを言います。
そして、因果関係があることで曝露・介入がもたらすアウトカムを「因果効果(Causal Effect)」と言います。
この因果効果ですが、個人における個別因果効果(Individual Causal Effect)と集団における平均因果効果(Average Causal Effect)に分類されます。
この際に留意すべき点が2点。
因果推論において推定できるのは平均因果効果のみであり、個別因果効果の推定はできない
平均因果効果を推定するためにはいくつかの仮定を満たさねばならない
次のセクションからは,個別因果効果と集団における平均因果効果の定義とその違い、因果推論に必要な仮定である「Consistency(一致性)」について解説していきます。
個別因果効果と平均因果効果とは
個別因果効果とは?
個別因果効果は、特定の個人における因果効果のことを指します。これは、ある個人に対して「治療が行われた場合」と「行われなかった場合」の結果を比較することで分かります
先ほどの例で考えてみましょう。

Aさんが熱中症で、ある病院を受診し輸液を受け、熱中症が重症化しなかったとします(図1上部)。
一方、もしAさんが輸液を受けなかった場合、熱中症が重症化してしまったと仮定できた場合(図1下部)、輸液はAさんの熱中症改善の原因だったと考えられます。
このように、「治療・介入(ここでは輸液)が特定の個人に対して結果を引き起こしたかどうか」、というのが個別因果効果です。
この考え方は、反事実(counterfactual)モデルに基づいています。
反事実モデルでは、仮想の世界で反事実の結果(反事実アウトカム・ポテンシャルアウトカムなどと呼ばれます)、つまりある個人が「もし輸液を受けた場合」と「もし輸液を受けなかった場合」の結果を比較することで、個別の因果効果を評価します(図1右側)。
例えば、輸液した時の結果は「重症化なし」で、しなかった時の結果が「重症化あり」で一致しなければ、両者の差異は「輸液をしたかどうか」のみになりますので、輸液による因果効果があったと判定します。
一方、どちらの場合も結果が「重症化なし」または「重症化あり」で一致していたなら因果効果はなかったと判定できます。
しかし、現実には反事実アウトカムの両方を観察することはできません。なぜならば現実世界ではAさんは既に輸液を受けてしまっているので、「輸液を受けなかった場合」のAさんの結果を観察することは不可能です。
これが個別因果効果を推定することができない理由です。
そのため因果推論では、個別因果効果ではなく、ある集団における平均因果効果を推定することを目指します。
次に、平均因果効果の説明に移る前に、個別因果効果を数式で考えてみます。
数式と聞くと少し尻込みしてしまうかもしれませんが、この数式を理解できるようになると因果推論の本や論文を読むのがとても楽になるはずです。
個別因果効果を数式で表してみると
はじめに、因果推論を数式で考えるために重要な数字の表現を確認します。本記事では以下のように変数を定義します。
治療(輸液):A(1: 治療あり,0: 治療なし)
アウトカム(熱中症の重症化):Y(1: 重症化,0: 重症化なし)また、反事実世界の仮想の状況は以下のように表されます。
治療あり:a = 1
治療なし:a = 0【治療ありにおけるアウトカム】
重症化あり:Y^{a=1} = 1
重症化なし:Y^{a=1} = 0
【治療なしにおけるアウトカム】
重症化あり:Y^{a=0} = 1
重症化なし:Y^{a=0} = 0ややこしく感じますが、Y^{a=0}のようにYに上付き文字がついているときは「反事実アウトカムのことを言っている」目印だと思って下さい。
また、個人の反事実アウトカムは「Yia」と表記されることもあります。これはある個人「i」における反事実アウトカム「Ya」という意味で、「i」は個人を示す「individual」の頭文字です。
図2の上部のAさんの場合を例に反事実アウトカムを考えてみると、もし治療を受けた時は重症化していないため「Y^{a=1}=0」と表されます。もし治療を受けなかったときは重症化しているため「Y^{a=0}=1」と表記できます。

もう一人の患者、Bさんがいたとして、もし治療を受けた時と、もし受けなかった時の結果が、どちらも重症化だったとします(図2 下部)。この場合、Bさんの反事実アウトカムは「Y^{a=1} = 1」、「Y^{a=0} = 1」と表されます。
個別因果効果はこの以下のように反事実アウトカムの差(もしくは比)で定義されます。
Y^{a=1} ≠ Y^{a=0}:治療には個別因果効果がある
Y^{a=1} = Y^{a=0}:治療には個別因果効果がない図2では、Aさんは「Y^{a=1}=0」かつ「Y^{a=0}=1」なので「Y^{a=1}≠ Y^{a=0}」が成り立ち、個別因果効果はあったと判断できます。
Bさんは「Y^{a=1} = 1」かつ「Y^{a=0} = 1」なので「Y^{a=1} = Y^{a=0}」が成り立つため、個別因果効果はなかったとなります。
これでみなさんは、個別因果効果を数式で表せるようになりました。では、次のセクションでは、平均因果効果の定義を確認していきましょう。
平均因果効果とは?
平均因果効果は、ある治療・介入が集団全体にどのような影響を与えるかをみる指標です。これは患者個人に対する因果効果ではなく、集団全体の平均的な因果効果を示します。
個別因果効果を考える際には以下の3つが必要でした。
興味のあるアウトカム(今回は重症化のあり・なし)
比較する介入(今回は輸液と治療なし)
反事実アウトカムを比較する個人(Aさんなど)
一方で、平均因果効果を考える際には、①と②は個別因果効果と共通ですが、3つ目は個人ではなく③反事実アウトカムを比較する十分に定義された集団(Well-defined population)が必要になります。
具体的に考えてみましょう。表1のように15人の対象者で構成される集団を考えます。

もし全員が輸液を受けた場合(表1の右側:Y^{a=1})、15人中8人で熱中症の重症化が生じ、残りの7人では重症化しませんでした。
一方、もし全員が輸液を受けなかった場合(Y^{a=0})も同様に15人中8人で熱中症の重症化が生じ、残りの7人が重症化しなかったと仮定します。
この場合、輸液を受けたかどうかにかかわらず、重症化した患者の割合は53%(8/15)と同じであるため、平均因果効果は「ない」ということになります。
つまり、集団全体で見た場合には、熱中症に対して輸液が行われても、重症化の割合に変化はなかった(= 因果効果はなかった)という結論になります。
では、これも数式で考えてみましょう。
平均因果効果を数式で表現してみると
まず、集団の反事実アウトカムを数式で表します。先ほどの表1の例では、もし全員が輸液を受けた場合(Y^{a=1})と、もし全員が輸液を受けなかった場合(Y^{a=0})の重症化の割合(リスク)を比較していました。
この時、以下のように表記します。
全員が輸液を受けた場合の重症化リスク:Pr[Y^{a=1} = 1]
全員が輸液を受けなかった場合の重症化リスク:Pr[Y^{a=0} = 1]![図3.平均因果効果のイメージと数式の対応 治療した(a=1)場合の重症化リスクPr[Ya=1 = 1]と、治療なし(a=0)の場合の重症化リスクPr[Ya=0 = 1]がリスクが一致していることから平均因果効果は「なし」と示されている](https://storage.googleapis.com/studio-cms-assets/projects/BmqMB7NQaX/s-720x509_v-fs_webp_ff6f2f59-cd66-467d-aa17-14baf21eeb0e.png)
これを用いて、平均因果効果は表されます。
平均因果効果が「ある」場合:Pr[Y^{a=1} = 1] ≠ Pr[Y^{a=0} = 1]
平均因果効果が「ない」場合:Pr[Y^{a=1} = 1] = Pr[Y^{a=0} = 1]もう一度、表1を見直してみると、Pr[Y^{a=1} = 1]とPr[Y^{a=0} = 1]はどちらも、8/15 = 0.53です。
よって、この例ではPr[Y^{a=1} = 1] = Pr[Y^{a=0} = 1]が成立するので、平均因果効果は「なかった」ということになります(図3右側)。
なお、平均因果効果は「Pr」ではなく、平均や期待値を示す「E」を使って表記することもあります。Eを使った場合、先ほどの式は以下のように変形することができます。
E[Y^{a=1}] ≠ E[Y^{a=0}]
E[Y^{a=1}] = E[Y^{a=0}]これでみなさんは、個別因果効果と平均因果効果の定義と数式を理解できました。
次のセクションでは、この2つの因果効果の違いを確認していきましょう。
個別因果効果と平均因果効果はどう違うのか
個別因果効果と平均因果効果の主な違いは以下の3つです。
個別因果効果は個人ごとの因果効果であり、平均因果効果はある集団における平均的な因果効果である
観察データから個別因果効果を知ることはできないが、平均因果効果は一定の仮定を満たせば推定可能である
平均因果効果がないことは、必ずしも個別因果効果もないことを示すわけでない
1.と2.についてはすでに説明済みですので、3.について解説します。
先ほどの表1・図3の例では、集団全員が輸液を受けた場合の重症化リスクと、集団全体が輸液を受けなかった場合の重症化リスクは等しく、平均因果効果は「ない」という結果でした。
しかし、その集団の構成員であるAさんとBさんの個別因果効果をみると、Aさんは個別因果効果「あり」、Bさんは個別因果効果「なし」です。
このように、平均因果効果がない(ある)ことは、必ずしも個別因果効果がない(ある)ことを示すわけでない、という点は重要です。
これらの違いを理解することは、患者やご家族などに期待される治療効果を説明する際に役立つはずです。また、因果推論を使った論文の結果は、基本的に平均因果効果であるという点を意識することは、結果を解釈するときにとても大切です。
では、次のセクションでは因果効果を推定する上で重要な仮定の一つ、一致性について説明していきます。
一致性(Consistency)
因果推論が成立するための重要な仮定の一つが一致性です。一致性とはつまり、「どのような治療・介入や曝露の因果効果をみたいのか?」が十分に定義されているかという問題です。
具体的には、「もしある個人(i)が実際に受けた治療・介入・曝露(Ai)と反事実世界における治療・介入・曝露(a)が等しければ(Ai = a)、その個人(i)の反事実アウトカム(Yia・YiA)は、その個人(i)の実際に観測されたアウトカム(Yi)と等しい」という仮定です(図4上部)。

この説明だけだとまだイメージが掴みにくいでしょう。
図4下部の例のように、一致性とはAさんが輸液を受けて(A = 1)重症化しなかった(Y = 0)という観察された結果は、反事実世界で仮にAさんが輸液を受けたときの反事実アウトカム(Y^{a=1} = 0)と一致するという仮定です。
Bさんの例でも、反事実アウトカムと実際に観測されたアウトカムは一致しています。
つまり、「実際に輸液を受けた(または、受けなかった)人の重症化の有無は、反事実世界でもし仮に輸液を受けた(または、受けなかった)時の重症化の有無と一致する」という意味です。
「そんなのは当たり前だろう」と思うかもしれませんが、この仮定が成り立たない場合があり、だから一致性の仮定が大切なのです。
今回は「輸液」を治療として考えていますが、一口に輸液と言っても様々なバージョンが存在し得ます。
例えば、輸液の種類や量、刺入部位、発症から輸液開始までの時間など無数のパターンが考えられます。また、輸液を行う者の職種なども輸液のバージョンに関わる要素として挙げることができるかもしれません。
このように単一の介入に対して複数の治療(介入・曝露)バージョンが存在する状態をMultiple versions of treatmentと表現します。
この中で「輸液」の種類や量、発症から輸液開始までの時間などが異なっていた場合、同じ「輸液」という介入を行ったとしても、重症化するかしないかが変わる可能性があります。
このような状況では、一致性の仮定が崩れ、因果効果を推定できなくなります。
そのため一致性を担保せねばならないわけですが、実際には完璧な一致性が成立することは現実的にはほぼ不可能です。
現実的には研究目的や専門知識に基づいて、Multiple version of treatmentが存在したとしてもアウトカムへの効果が一定とみなせる場合には、一致性が成立すると仮定して因果推論を行います。
例えば、輸液を行う医療従事者の職種(医師・看護師)の違ったとしても、輸液のアウトカムへの効果が一定であるとみなすというように。
平均因果効果の推定に必要なその他の仮定
平均因果効果を推定するためには、他にも様々な仮定が満たされている必要があります。その中でも特に重要な仮定が「Exchangeability(交換可能性)」と「Positivity(正値性)」です。
一致性と合わせて、これら3つの仮定が満たされていることが、観察データから平均因果効果を導き出す前提条件となります。ExchangeabilityとPositivityについての詳細はまた別の記事で解説しますのでお楽しみに!
まとめ
治療・介入・曝露が患者にどう影響を与えるかを考える時には関連ではなく因果関係を知ることが大切であり、因果推論はこれを可能にする強力な手段です。
個別因果効果は個人ごとの因果効果であり、観察データから推定することができません。一方で、平均因果効果は、ある集団の平均的な因果効果であり、一定の仮定を満たせば現実のデータから推定できる点が大きな特徴です。
本記事が、因果推論の重要な前提条件を理解する、さらには患者やそのご家族とのコミュニケーションの一助となれば幸いです。
参考文献
Hernán MA, Robins JM (2020). Causal Inference: What If. Boca Raton: Chapman & Hall/CRC.
KRSK. データから因果関係をどう導く?:統計的因果推論の基本、「反事実モデル」をゼロから. URL: https://www.krsk-phs.com/entry/counterfactual_assumptions (2024年10月20日閲覧)
KRSK. Consistency:「●●の効果」が1つに決まらない? ~見過ごされがちな因果推論の仮定~. URL: https://www.krsk-phs.com/entry/consistency (2024年10月20日閲覧)
参考図書:『Causal Inference: What If』
Causal Inference: What Ifとはハーバード大学のSPHで教鞭をとるMiguel Hernan氏とJames Robins氏によって執筆された因果推論の金字塔的書籍です。
mJOHNSNOWでは、こちらの書籍を用いて輪読会を行い因果推論をゼロから学んでいます。
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