
【疫学専門家監修】Consistency(一致性)を徹底解説 - 観測データと反事実アウトカムを一致させよ - ゼロから学ぶ因果推論 vol.7
2025.02.04
シリーズ紹介|ゼロから学ぶ因果推論
「医学研究は難しい」、きっと多くの方がそう感じているでしょう。
因果推論は、そんな複雑怪奇な医学研究にスッと一本の軸を通してくれる、まさに医学研究の原理原則とも言える学問です。
因果推論を学ぶことで、複雑に散らばっていた知識の断片が見事なまでに因果推論という幹へと体系立てられていきます。そしてきっと「論文、読めるようになってきたかも」、そんな気持ちになれるはず。
「ゼロから学ぶ因果推論」シリーズは、疫学専門家の監修のもとで「はじめて学ぶ人の気持ち」に寄り添い、具体例や図解を使用して「日本でいちばんわかりやすい因果推論の解説」を目指しました。あなたの歩幅で一歩ずつ。ゼロからの学びをはじめしょう。
はじめに
皆さんは、「Consistency:一致性」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。
本記事では因果推論を行う上で、非常に重要な概念であるConsistencyについて、具体例を交えて初学者の方でも分かりやすく解説をしていきます。
記事を読み終える頃には、Consistencyについての理解がより一層深まることでしょう!
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この記事のまとめ
この記事を読むと分かること
Consistencyとは何か
Consistencyの構成要素
Consistency違反を避けるために注意すべきポイント
この記事は誰に向けて書かれているか
これから因果推論を学びたいと思っている方
因果推論を学び始めたばかりだが、参考書を読んでもよく分からない方
因果推論の識別3条件の1つ、Consistencyについて詳しく知りたい方
因果推論シリーズ
vol.1:因果推論の出発点 - 因果と関連の違いとは? -
vol.2:因果効果の基本を徹底解説 - Individual Causal Effect(個人因果効果)とAverage Causal Effect(平均因果効果)の違いとは? -
vol.3:初心者のためのTarget Trial Emulation(TTE)
- Part 1 ; ETAFOCAフレームワークについて
- Part 2 ; 三つの時点で考えるバイアスとその対処法
- Part 3 ; 論文の実例で理解を深めるTTEvol.4:Exchangeability(交換可能性)を徹底解説 - Randomization(ランダム化)が実現する因果推論の必須条件 -
vol.5:Standardization(標準化)を徹底解説 - 交絡調整の基本をわかりやすく図解 -
vol.6:Inverse Probability Weighting(逆確率重み付け)を徹底解説 - 交絡調整の基本をわかりやすく図解 -
vol.7:Consistency(一致性)を徹底解説 - 観測データと反事実アウトカムを一致させよ -
vol.8:Positivity(正値性)を徹底解説 - 因果推論の落とし穴を回避せよ -
vol.9:Immortal time biasを徹底解説 - 臨床研究に潜む「不死の時間」の罠 -
vol.10:効果修飾を徹底解説 - 私たちは「どの集団における」効果を見ているのか? -
vol.11:交互作用を徹底解説 - 複数の介入による相乗効果 -
vol.12:DAGを徹底解説
vol.13:交絡を徹底解説 - 結果を歪める、因果推論の最重要課題 -
vol.14:選択バイアスを徹底解説 - 消えた患者が結果を歪める?-
執筆者の紹介
氏名 M.A
所属 病院勤務
職業:理学療法士。広島の大学を卒業後、病院に就職し急性期・回復期のリハビリテーションに従事。心臓リハビリテーションに関わる中で、EBMに基づくリハビリを行うこと、より広い視野で人々の健康を支援することを考えるようになり、mJOHNSNOWへ入会。
編集者
氏名:菊池祐介
所属:mMEDICI株式会社
専門性:作業療法学修士。首都大学東京(現東京都立大学)・東京都立大学大学院を卒業後、病院勤務を経て専門学校・私立大学にて作業療法教育、地域共生社会の醸成に向けたリハビリテーション専門職の支援に関する研究に従事。現在は心身の健康とその人らしさの実現に向け、保険内外でのクライアント支援を展開している。作業療法の社会的意義向上を信念に、mMEDICI株式会社に参画。
監修者
氏名:廣瀬直紀
所属:mMEDICI株式会社
専門性:保健学博士・公衆衛生学修士。東京大学・東京大学大学院を卒業後、外資系製薬企業の日本・グローバルにおいて疫学専門家として薬剤疫学・リアルワールドデータ研究に従事。その後、全ての人がアクセス可能な一流の知のプラットフォームを作り、「知に繁栄を、辺野に豊穣を」実現すべく、mMEDICI株式会社を創業。
はじめに
今までの記事の繰り返しにはなりますが、今一度、因果推論とは何かを振り返っておきましょう。
因果推論(Causal Inference)の目的は、現実で観測された関連(Association)から、因果(Causation)を推測することです。

真の因果効果を測定するためには同一の集団に対して、同一の時点で、異なる介入を行い、結果を比較する必要があります。
しかし、タイムマシンで時を戻すようなことができなければ「同一の集団」に「異なる介入を行う」ということは不可能です。
現実では因果効果を直接的に測定することはできず、私たちにできるのは「観察された関連(Association)から因果(Causation)を推論する」ことでした。
関連(Associatio)と因果(Causation)については、こちらの記事で詳しく解説されているので、是非ご覧ください。
ここからは、因果推論を行う上で必要不可欠な条件の一つ、「Consistency」について解説していきます。
Consistencyとは
Consistencyの定義
まずは、Consistencyの定義を確認しましょう。

Consistency(一致性)とは、ある人が実際にA(特定の治療・暴露)を受けると、その人の実際の結果(Y)と反事実アウトカム(Y^a)は一致することを言います。
今、ブラウザを閉じようと思った方も、最後まで読めばConsistencyの概念を理解できるようになるはずです。一緒に紐解いていきましょう!
因果(Causation)とは
「ある介入や暴露(A)を受けた時の結果」
と
「ある介入や暴露(A)を受けなかった時の結果」
を比較することで、Aが結果に与える影響を指します。
この比較をするためには、「Aを受けた場合」と「Aを受けなかった場合」の両方の結果を観察する必要があります。
この時、観測されなかった方の結果を「反事実アウトカム(Counterfactual Outcome)」と呼び、実際に観測されたデータだけでなく、「もしこうだったら」という仮定の状況を考慮する点が特徴です。
一方で、関連(Association)とは
「現実に介入や暴露(A)を受けた場合の結果」
と
「現実に介入や暴露(A)を受けなかった場合の結果」
を比較することで、Aが結果に与える影響を指します。
関連(Association)では、実際の観測データのみに基づいて結論を導くため「もしこうだったら」という反事実的な視点は含まれません。
Consistencyとは
「もしAを受けた(受けなかった)時の結果」
と
「実際にAを受けた(受けなかった)時の結果」
が一致している、という仮定を指します。
この仮定が成り立つことで、観測データを因果推論に使用することが可能になります。

例えば、運動が健康に及ぼす効果を知るために「実際に運動する群」と「実際に運動しない群」の2群を比較するとします。
「実際に運動する群」で観察された結果は「もし運動していた時」の結果と一致しており、「実際に運動しない群」で観察された結果は「もし運動していなかった時」の結果と一致する、ということがConsistencyの概念です。
きっと、まだ「何を言ってるんだ」と思われる方もいらっしゃるはずです。
実際に運動した時の結果をみているのだから、それがもし運動した時の結果と一致するのは当たり前ではないか?と思う方もいらっしゃるかもしれません。
実は二つの結果が一致しない場合があります。
それを理解するために、まずはConsistencyという条件を深掘りしていきましょう!
Consistencyの構成要素
Consistencyの構成要素は、大きく二つに分けられます。
①介入に内容が十分明確に定義されていること。ここでいう「介入」とは、特定の行動や治療、曝露のことを指します。
例えば、「水を飲むことは健康に良いか?」という問いにおける介入は「水を飲む」になります。
介入Aを十分明確に定義するということは、その定義に基づいて介入する際、介入内容が「おおよそ一意に定まる」ということです。
例えば「水を飲む」と定義された介入は
「どんな水を?」「どのくらいの量を?」「どれくらいの頻度で?」「どのくらいの期間にわたって?」など、介入の定義が十分でないため、これらの介入から生じるアウトカムも一致しない可能性があります。
つまり、Consistencyが成立するためには「その研究で定義される介入が何なのか?」という問いに答えるため、介入内容が一意に定まるように定義し、反事実アウトカムが一致するようにしなければなりません。
②観察されたアウトカム(Y^A)と関心のあるアウトカム(Y^a)が関係していること
Consistencyのもう一つの重要な構成要素は、観察されたアウトカム(Y^A)が関心のあるアウトカム(Y^a)と対応していることです。
介入が十分明確に定義されていたとしても、実際に観察されたデータがその介入に対応していなければ、信頼できる因果推論を行うことは困難です。
例えば、介入Aが「毎食後に1Lの水道水を飲む」であったとします。
しかし、実際に行われた介入が「毎食後に500mLの水道水を飲む」だと、観察されたアウトカムは、介入Aと対応をしません。
この場合、観測された結果を基に「毎食後に1Lの水道水を飲む」介入の効果を推論することはできません。
なぜConsistencyが大事なのか
科学的な因果推論は、治療や介入がアウトカムにどの程度影響するのかを求めることを目的としており、その上でConsistencyを保つことは以下の2点において重要です。
①因果関係の特定
Consistencyを含めた因果推論の識別3条件が成立している場合、現実世界で観測された関連(Association)から因果(Causation)を推論することができるようになります。
識別3条件の一つであるExchangeability(交換可能性)についての解説はこちら
②観察データの有効活用
以前の記事で述べられていた、ランダム化比較試験が因果推論のゴールドスタンダードとされている所以は、十分にデザインされたランダム化比較試験は、理論的には因果推論の識別3条件を全て満たすことが出来るからです。
一方で、観察研究は種々の理由でこれらの条件を満たすことが難しいです。
しかし、厳格な基準を設定するランダム化比較試験は
• 因果効果が現実世界の対象者に当てはまりにくい
• 倫理的・実務的な理由から実施することが困難である
などの制約があり、そのような状況下では観察研究が用いられることもあります。
「観察研究はRCTよりエビデンスレベルが低いから意味がない」という意見を耳にすることもありますが、観察研究であってもConsistencyを含む因果推論の識別3条件を満たすことで、因果推論が可能となります。
Consistencyを具体的に考える
Consistencyをさらに理解するため、ここからは以下の文献を参照しながら肥満という介入を例に、十分明確な介入定義について考えていきましょう。
・CAUSAL INFERENCE What If (Miguel A Hernan and James M Robins 著)
・Does water kill? A call for less casual causal inferences (Miguel A Hernan 著)
肥満の例をもとに
Ver.1:肥満は寿命を短くするか?
この例における介入Aには「肥満」が該当します。
しかし、「肥満」とだけ定義された介入は漠然としており、十分明確に定義された介入とは程遠いものです。
どの程度か?なぜ肥満になったか?と具体的にブラッシュアップしていく必要があります
Ver.2:40歳時点でBMIが30以上であることは寿命を短くするか
「肥満」を「BMI30以上」と定義し直したことで、少し定義が明確になりました。
しかし、この定義で「BMI30以上」にあたる人の中には、10年以上前から肥満の人と1年前から肥満の人が混在しています。
「肥満に暴露した期間の違いが健康に影響を及ぼす」と考えられるのであれば、これらの人々が区別されていない定義は十分明確であるとは言えません。
Ver.3 :18歳時点でBMIが24であり、40歳でBMIが30に達するまで徐々に体重が増え、40歳から50歳の間にBMIが30以上を維持することは寿命を短くするか?
肥満に暴露した期間を18~50歳のBMI推移で定義することで、暴露の定義がより明確になりました。
しかし、この定義では「何と比べて寿命が短くなるか」という比較対象が明確ではありません。比較対象が明確でないとA=0とA=1を区別できなくなるため、ここも定義し直す必要があります。
Ver.4:18歳時点でBMIが24であり、40歳でBMIが30に達するまで徐々に体重が増え、40歳から50歳の間にBMIが30以上を維持することは、40歳まで同じ経過をたどった後、50歳でBMIが24に達するまで徐々に体重が減少するのと比べて寿命を短くするか?
18~40歳まで同様にBMIが推移した人の中で、40~50歳のBMI推移が異なる2群を定義することで、比較対象が明確になってきました。
この定義でも、「徐々に」という定義が曖昧です。
また、BMI30以上を「維持する」とはBMIがどの範囲に収まることを意味するのかが不明確で、十分明確に定義されているとは言えない点があります。
このように、Consistencyを保つためには、その定義を基に行われた介入が概ね一意に定まるレベルまで定義する必要があります。
Ver.4の定義はVer.1の定義よりは曖昧さが取り除かれていますが、場合によってはこれでも不十分と考えられます。
BMIの推移の他にも、どのような理由でBMIが変化したのかについても考えてみましょう。
肥満を引き起こす原因としては、運動不足、過食、遺伝子など様々なものが考えられます。
そのため、Ver.4に示したようにBMIが推移した人たちの中には、その主たる要因が運動不足である人もいれば、遺伝子である人もいます。
このとき、介入A(Ver4. のようにBMIが推移すること)に対応する反事実アウトカムは、
a’:運動不足によってBMIが推移すること
a’’:過食によってBMIが推移すること
a’’’:遺伝子によってBMIが推移すること
など、複数考えられます。
したがって、介入A(BMIの推移)に対応する治療のバージョンによって異なるアウトカム(Y^a’≠Y^a’’≠Y^a’’’)が生じると考えられるため、Consistency違反となります。
このように、状態や介入が何通りも考えられる場合をmultiple versions of treatmentといい、Consistencyの成立を妨げる一因と考えられています。

では、介入はどこまで明確に定義するべきでしょうか?
その答えは明らかではありません。
重要なのは「意味のある曖昧さが残らないこと」であり、治療が十分明確に定義されているかどうかは最終的には専門家の判断に依存します。
また、これは科学の進歩によって変わり得るものでもあります。
例えば、運動不足、過食、遺伝子それぞれが肥満に及ぼす影響が同じであることが将来的に証明されたとしたら、上のa’~a’’’を区別する必要はなくなるでしょう。
Consistency違反による弊害
介入定義を十分明確にしないまま観察データから因果推論を行ってしまうと、誤った解釈をしてしまう可能性があります。
先ほどの定義Ver.2とVer.4を比較しながら解説していきましょう。
まずはVer.4の定義を再掲します。
Ver.4:
18歳時点でBMIが24であり、40歳でBMIが30に達するまで徐々に体重が増え、40歳から50歳の間にBMIが30以上を維持することは、40歳まで同じ経過をたどった後、50歳でBMIが24に達するまで徐々に体重が減少するのと比べて寿命を短くするか?

この定義をもとに研究を行う場合、18歳から50歳までのBMIの推移を縦断的に追跡し、50歳以降での死亡発生割合を比較する必要があります。
このとき、暗に想定されている介入定義には、「12年かけて体重を増やし、その後10年かけて体重を維持または減少させる」という時間軸が含まれています。
次はVer.2について考えていきます。
Ver.2:
40歳時点でBMIが30以上であることは寿命を短くするか?
この定義では、ある時点でのBMIの違いによる死亡発生割合を検討しており、肥満になるまでの期間は考慮されていません。

これは、「40歳時点において一瞬で体重を減少させる」という介入を想定していることになります。
現実でそのような介入を行うことは出来ないため、この観察データから得られた結果を現実の治療に当てはめることはできません。
このように、介入の定義を十分明確に定めないまま、観察データから因果推論を行うと、得られた結果の解釈を大きく誤ってしまう可能性があります。
このような誤解を避けるためには、介入定義が何であるのかを注意深く考える必要があります。
まとめ
Consistencyとは、因果推論において「もしaした(しなかった)時」と「実際にAした(しなかった)時」の結果が一致しているという仮定のこと。
Consistencyの構成要素は
- 介入が十分明確に定義されている(Well-definedである)こと
- 観察されたデータY^Aと関心のある結果Y^aがリンクしていることWell-definedな介入定義を定め、Consistency違反を回避することで、観察データからも因果推論が可能となる
参考図書:『Causal Inference: What If』
Causal Inference: What Ifとはハーバード大学のSPHで教鞭をとるMiguel Hernan氏とJames Robins氏によって執筆された因果推論の金字塔的書籍です。
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