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【疫学専門家監修】交互作用を徹底解説 - 複数の介入による相乗効果 - ゼロから学ぶ因果推論 vol.11

【疫学専門家監修】交互作用を徹底解説 - 複数の介入による相乗効果 - ゼロから学ぶ因果推論 vol.11

2025.04.04

シリーズ紹介|ゼロから学ぶ因果推論

「医学研究は難しい」、きっと多くの方がそう感じているでしょう。

因果推論は、そんな複雑怪奇な医学研究にスッと一本の軸を通してくれる、まさに医学研究の原理原則とも言える学問です。

因果推論を学ぶことで、複雑に散らばっていた知識の断片が見事なまでに因果推論という幹へと体系立てられていきます。そしてきっと「論文、読めるようになってきたかも」、そんな気持ちになれるはず。

「ゼロから学ぶ因果推論」シリーズは、疫学専門家の監修のもとで「はじめて学ぶ人の気持ち」に寄り添い、具体例や図解を使用して「日本でいちばんわかりやすい因果推論の解説」を目指しました。あなたの歩幅で一歩ずつ。ゼロからの学びをはじめしょう。

はじめに

この記事では「交互作用(Interaction)」について解説します。

例えば、ある治療法の効果が、別の介入の有無によって大きく変化することがあります。

こうした「複数の要因が絡み合って生じる効果の変化」は、単なる足し合わせでは説明できず、「交互作用」という視点から理解する必要があります。

本記事では、因果推論の枠組みを背景に、交互作用とは何か、なぜ考慮すべきなのかを具体例を交えて分かりやすく解説します。

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この記事のまとめ

この記事を読むと分かること

  • 交互作用(Interaction)とは何か?

  • 数式と図を用いて、因果推論における交互作用を表現する方法を習得できる

  • 臨床研究や現実世界の問題解決に、交互作用の視点を応用するための第一歩を踏み出せる

この記事は誰に向けて書かれているか

  • 交互作用という用語を初めて聞いた方

  • 因果推論の理解を深めたい方

  • 複数の介入を組み合わせた効果に関心のある方

因果推論シリーズ

  • vol.1:因果推論の出発点 - 因果と関連の違いとは? -

  • vol.2:因果効果の基本を徹底解説 - Individual Causal Effect(個人因果効果)とAverage Causal Effect(平均因果効果)の違いとは? -

  • vol.3:初心者のためのTarget Trial Emulation(TTE)
    - Part 1 ; ETAFOCAフレームワークについて
    - Part 2 ; 三つの時点で考えるバイアスとその対処法
    - Part 3 ; 論文の実例で理解を深めるTTE

  • vol.4:Exchangeability(交換可能性)を徹底解説 - Randomization(ランダム化)が実現する因果推論の必須条件 -

  • vol.5:Standardization(標準化)を徹底解説 - 交絡調整の基本をわかりやすく図解 -

  • vol.6:Inverse Probability Weighting(逆確率重み付け)を徹底解説 - 交絡調整の基本をわかりやすく図解 -

  • vol.7:Consistency(一致性)を徹底解説 - 観測データと反事実アウトカムを一致させよ -

  • vol.8:Positivity(正値性)を徹底解説 - 因果推論の落とし穴を回避せよ -

  • vol.9:Immortal time biasを徹底解説 - 臨床研究に潜む「不死の時間」の罠 -

  • vol.10:効果修飾を徹底解説 - 私たちは「どの集団における」効果を見ているのか? -

  • vol.11:交互作用を徹底解説 - 複数の介入による相乗効果 -

  • vol.12:DAGを徹底解説

    - 基礎編;因果推論の必須ツールで交絡因子を可視化する
    - 応用編;調整してはならない?コライダーと媒介変数の落とし穴

  • vol.13:交絡を徹底解説 - 結果を歪める、因果推論の最重要課題 -

  • vol.14:選択バイアスを徹底解説 - 消えた患者が結果を歪める?- 

執筆者の紹介

氏名:小林由幸 https://researchmap.jp/yoshiyuki_kobayashi
所属:星薬科大学 薬学部 医療データサイエンス研究室
自己紹介:博士(薬科学)、博士(経営学)。内資系製薬企業や内資系化学企業で研究開発に従事し、コンサルティング業界で新規事業や研究開発関連のコンサルティングを経験。その後、外資系化学企業で薬事関連業務を担当し、現職に至る。現在の専門はレギュラトリーサイエンスとデータサイエンスで、これらを融合した領域横断的な研究に取り組んでいる。

編集者

氏名:菊池祐介
所属:mMEDICI株式会社
専門性:作業療法学修士。首都大学東京(現東京都立大学)・東京都立大学大学院を卒業後、病院勤務を経て専門学校・私立大学にて作業療法教育、地域共生社会の醸成に向けたリハビリテーション専門職の支援に関する研究に従事。現在は心身の健康とその人らしさの実現に向け、保険内外でのクライアント支援を展開している。作業療法の社会的意義向上を信念に、mMEDICI株式会社に参画。

監修者

氏名:廣瀬直紀
所属:mMEDICI株式会社
専門性:保健学博士・公衆衛生学修士。東京大学・東京大学大学院を卒業後、外資系製薬企業の日本・グローバルにおいて疫学専門家として薬剤疫学・リアルワールドデータ研究に従事。その後、全ての人がアクセス可能な一流の知のプラットフォームを作り、「知に繁栄を、辺野に豊穣を」実現すべく、mMEDICI株式会社を創業。

1.交互作用とは

交互作用(Interaction)とは複数の介入が組み合わさることで、それぞれの効果が増強したり、または減弱する関係のことを指します。

医学研究では「単一の介入の効果」を評価することが一般的ですが、時には「複数の介入」が互いにどのように作用し合うのか、つまり「交互作用」に関心が向けられる場合もあります。

例えば「薬剤Aを服用すれば血圧が下がる」といった単独の介入の効果を調べる研究もあれば「薬剤Aと食事習慣の組み合わせが血圧に与える影響」を検証する研究もあります。

もしも、薬剤Aと食事習慣との組み合わせによって薬剤Aによる降圧作用が増強されたり反対に減弱してしまう可能性があるとすれば、交互作用について検証することで、より安全で効果的な薬剤Aの処方を考えることができますね。

この記事では交互作用の基本から丁寧に解説していきますので、ひとつひとつ理解を深めてきましょう。

2.交互作用のイメージ

交互作用について理解を深めるために、まずは日常生活のシンプルな例を用いてイメージをつかんでいきましょう。

想像してみてください。

ジリジリと太陽が照りつける夏の日。きっと多くの人が「強い日差しから肌を守りたい」と感じますね。

ここで、
①日焼け止めを塗る
②日傘をさす
➂日焼け止め & 日傘をさす  という3つの対策があるとしましょう。

日焼け止めで日差しを遮ることはできませんし、日傘では目に見えぬ紫外線を防ぐことはできません。

どちらかひとつの対策だけでは、十分に肌を守れず心もとなく感じられますね。

ここで、両者を組み合わせるとどうでしょうか?

日傘が直射日光を遮ることで、日焼け止めが肌を保護する効用が最大限に発揮され、日焼けなどの皮膚トラブルを未然に防ぐことができるかもしれません。


この例のように、日焼け止めの効果が「日傘をさすかどうか」によって変わる場合、日焼け止めと日傘との間に交互作用が存在することになります。

医療や疫学の分野でも同様に、二つの治療や介入(例:投薬と手術)が組み合わさることで、効果が増強したり、反対に減弱する場合を交互作用として捉えます。

交互作用のイメージ(複数の介入の組み合わせで効果が変化する)



より詳細な交互作用の説明
交互作用とは、2つの介入(または曝露)がそれぞれ単独で作用する場合と比べて、同時に適用された時に生じる効果の違いを指します。

これにより、ある治療法Aと治療法Bが、それぞれ単独では一定の効果しか示さないにもかかわらず、両方を同時に適用すると大幅に効果が増強される、あるいは逆に効果が減弱される場合、これを交互作用と呼びます。

さらに、交互作用には
相加的(synergistic)なものと拮抗的(antagonistic)なものがあります。


相加的交互作用は、二つの介入が互いに作用し合い、個別の効果を超えた増強効果を生む場合を指します。

例えば、ある抗がん剤と免疫療法の併用によって、単独治療では得られない腫瘍縮小効果が得られることがあります。

相加的(synergistic)交互作用

これに対し、拮抗的交互作用では、一方の介入がもう一方の介入の効果を減弱させる場合を指します。

例えば、同一の代謝経路を持つ複数の抗生物質の併用により、効果が低減するケースなどが該当します。

拮抗的(antagonistic)交互作用



交互作用の意義
交互作用を考慮することは、介入の効果を正しく理解し、適切な医療・公衆衛生政策を立案する上で重要です。

例えば、ある治療が単独では有効でなくても、別の介入と組み合わせることで大きな効果を発揮することがあります。

逆に、併用によって予期しない有害な影響が生じる場合もあるため、治療や政策の設計において交互作用の存在を考慮することが必要です。

例えば、新しい降圧薬Aが開発され、それを降圧薬Bと併用した場合の効果を評価するとします。

もしAとBの間に強い相加的交互作用が存在すれば、両者を併用することで予想以上に血圧が低下し、低血圧のリスクが増加する可能性があります。

このような場合、交互作用の存在を考慮しないと、安全性評価が不十分になり、患者に不適切な治療が提供されるリスクが生じます。


また、公衆衛生の分野でも交互作用を考慮することはとても重要です。例えば、「喫煙」「アスベスト曝露」の組み合わせが肺がんリスクに与える影響を考えてみましょう。

喫煙単独、またはアスベスト曝露単独では肺がんのリスクを上昇させることが知られていますが、両方の曝露を受けた場合、リスクは単なる足し合わせ以上に増大します。これは交互作用による相乗効果の一例です。


このような交互作用を無視してしまうと、リスクを正しく評価できず、不十分な対策や誤った公衆衛生政策につながる恐れがあります。

そのため、複数のリスク因子をあわせ持つ人たちに対して、より重点的な予防策や介入を行うことが、効果的な戦略になる場合もあるのです。

3.反実仮想の応答タイプと交互作用

交互作用をより深く理解するためには、「反実仮想の応答タイプ(Counterfactual response types)」という考え方が重要です。

これは、ある介入(A)がある時とない時で、個々の人の反応がどのように変わるかを分類する方法です。

私たちが観察するデータには、ある人が「介入Aを受けた場合の結果」か、「介入Aを受けなかった場合」の結果のどちらかしか含まれていません。

しかし、実際には両方の状況を考えることで、交互作用の本質をより明確にすることができます。

例えば、ある人が薬を飲んで病気が治ったとして、「もし薬を飲まなかったらどうなっていたか?」を考えるのが反実仮想の考え方です。

人は治療や行動に対して異なる反応を示します。例えば、ある薬がある人には効き、別の人には効かないことがあります。ここでは次の4つのタイプに分類して考えてみます。

Doomed(運命づけられた人):どんな治療をしても病気になる
(例:ある病気の進行が早すぎて、どんな薬も無効)

Immune(免疫がある人): どんな治療をしなくても病気にならない
(例:強い免疫を持つ)

Helped(助かる人): 治療すれば助かるが、しなければ病気になる
(例:インフルエンザの予防接種を受ければ感染しないが、受けなければ感染する)

Hurt(悪化する人): 治療を受けるとかえって悪化する
(例:薬の副作用で逆に体調が悪くなる)

一つの治療だけでなく、複数の治療を組み合わせた場合を考えると、反応タイプが増えます。例えば、「薬剤A」と「サプリB」の二つの治療を考えると、それぞれを飲む・飲まないの組み合わせで16種類の反応タイプができます。

例えば、

  • ある人は「薬剤A」だけで助かる

  • 別の人は「薬剤A」と「サプリB」を両方取らないと助からない

  • また別の人は「薬剤A」と「サプリB」の両方を取ると体調が悪くなる


このように、個人における反応は介入の組み合わせによって変化します。

つまり「どの介入が効くか」だけでなく「どの組み合わせが、どの人にとって有効か」を考える視点、つまり交互作用の視点が重要になるのです。

4.加法的交互作用と乗法的交互作用

加法的交互作用と乗法的交互作用は、因果推論において「二つの要因が一緒に作用する時、効果がどのように変化するか」を異なる尺度で評価する概念です。


加法的交互作用(Additive Interaction)
加法的交互作用は「リスク差(Risk Difference: RD)」の観点から、ある要因Aの影響が、別の要因Bの影響によってどのように変化するかを評価します。

数式での表現
ある疾患やイベントが発生する確率(リスク)をPr (Y=1)とし、要因A(例えば薬の服用)と要因B(例えば運動習慣)がある場合、それぞれのリスクを以下のように表します。

・AもBも両方なし(A=0, B=0)の場合のリスク
 Pr(Y∣A = 0, B = 0)

・Aのみ(A=1, B=0)の場合のリスク
 Pr(Y∣A = 1, B = 0)

・Bのみ(A=0, B=1)の場合のリスク
 Pr(Y∣A = 0, B = 1)

・AとBの両方あり(A=1, B=1)の場合のリスク
 Pr(Y∣A = 1, B = 1)

加法的交互作用がない場合、次の関係が成立します。

Pr (Y∣A = 1, B =1 )−Pr (Y∣A = 0, B = 1)
= Pr (Y∣A = 1, B = 0)−Pr (Y∣A = 0, B = 0)

つまり、交互作用がない場合、要因Aの効果はそれぞれ独立しており、単純な加算の関係になります。

例えば、ある集団において以下のようなリスク差が観察されたとします。

ビタミン投与を受けていない場合(E=0)
心臓移植なし(A=0)のリスク
Pr [Y^ {a=0, e=0} =1]

心臓移植あり(A=1)のリスク
Pr [Y^ {a=1, e=0} = 1]

心臓移植の因果リスク差
Pr [Y^{a=1, e=0} = 1]−Pr [Y^{a=0, e=0} = 1] = 0.2


ビタミン投与を受けている場合(E=1)
心臓移植なし(A=0)のリスク
Pr [Y^{a=0, e=1} = 1]

心臓移植あり(A=1)のリスク
Pr [Y^{a=1, e=1} = 1]

心臓移植の因果リスク差
Pr [Y^{a=1, e=1} = 1] −Pr [Y^{a=0, e=1} = 1] = 0.1

この場合、ビタミン投与を受けていない時の心臓移植の因果リスク差(0.2)と、ビタミン投与を受けている時の心臓移植の因果リスク差(0.1)が異なります。

つまり、ビタミン投与の有無によって心臓移植の効果が異なるため、加法的交互作用があると言えます。


乗法的交互作用(Multiplicative Interaction)
乗法的交互作用は「リスク比(Risk Ratio: RR)」の観点から、要因Aの影響が要因Bの影響によってどのように変化するかを評価します。

数式での表現
加法的交互作用の式と似ていますが、乗法的交互作用ではリスクの比を用います。

P (Y | A =1, B=1) / P (Y | A=0, B=1)≠P (Y∣A=1, B=0) / P (Y∣A=0, B=0)

(B=1の場合のリスク比)≠(B=0の場合のリスク比)

B=1の場合のリスク比とB=0の場合のリスク比が異なる場合に、乗法的交互作用があると言います。

乗法的交互作用の具体例
喫煙(A)が肺がんの発生リスクを2倍にするとします。また、アスベスト(B)が肺がんの発生リスクを3倍にするとします。

もし乗法的に効果が働くなら、両方の要因がある場合のリスクは単純に掛け算(2×3=6倍)されるはずです。しかし、実際には10倍になったとすると、乗法的交互作用があると言えます。


加法的交互作用と乗法的交互作用の違い

加法的交互作用と乗法的交互作用の違い

5.効果修飾因子(Effect modification)との違い

交互作用と似た概念に効果修飾因子(Effect modification)があり、しばしば混同されがちですが、明確に区別することが重要です。

効果修飾は、主に背景因子(年齢、性別、遺伝子型など)が介入の効果を変化させる現象を指します。これは「交互作用」と似ていますが、背景因子は介入の一部ではなく、変更できない特性である点が異なります。

どの集団で効果を見ているのか- 効果修飾を徹底解説 - What If で学ぶ因果推論 vol.10

効果修飾には以下のようなケースがあります。

  • ワクチンの効果が年齢によって異なる(若年者では有効だが、高齢者では効果が弱い)

  • 抗がん剤の効果が遺伝子型によって異なる(特定の遺伝子変異を持つ人では副作用が強く出る)

この場合、「年齢」や「遺伝子型」は治療の一部ではなく患者が持つ特性であり、介入の効果を変化させる因子(効果修飾因子)と解釈されます。

一方、交互作用は二つ以上の介入可能な要因が組み合わさることで、単独の効果とは異なる結果をもたらす現象です。

例えば、薬剤Aと薬剤Bの併用効果を考えた時、それぞれ単独で投与した場合の効果の単純な和とは異なる結果を示す場合、それは交互作用によるものです。

  • 薬剤Aと薬剤Bの併用によって、単独投与時とは異なる効果が現れる

  • 運動と食事改善の組み合わせで、単独よりも大きな健康改善効果が得られる

交互作用がある場合、単独の効果を足し合わせたものとは異なる影響が観察されるため、適切に解析しないと誤った結論を導く可能性があります。


効果修飾と交互作用の違いを整理すると次のようになります。

効果修飾と交互作用の違い

両者の違いは、解析や意思決定の観点からも重要です。

効果修飾は、異なるサブグループごとの治療効果を評価するのに役立ちます。

一方、交互作用の解析は、複数の介入を組み合わせた最適な治療戦略を立案する際に不可欠です。

6.実際の臨床場面における具体例

最後に、これまでに登場した解説を踏まえて、臨床場面における交互作用の具体例を列挙していきましょう。


①心臓移植とビタミン投与の併用による交互作用
ある重症心疾患患者群において「心臓移植」「マルチビタミン補給」を同時に行うかどうかの実験を考えます。

実験では、患者は以下の4群にランダムに割り付けられたと仮定します。

・ビタミン投与あり + 移植あり
・ビタミン投与あり + 移植なし
・ビタミン投与なし + 移植あり
・ビタミン投与なし + 移植なし

各群ごとに生存率(または死亡リスク)を計算すると、例えば以下のような結果が得られるとします。

・ビタミン投与あり + 移植なし:生存率90%
・ビタミン投与なし + 移植なし:生存率95%
・ビタミン投与なし + 移植あり:生存率80%
・ビタミン投与あり + 移植あり:生存率75%

この場合、移植の効果はビタミン摂取の有無で大きく異なっています。

ビタミン摂取があると移植の効果が弱まり、逆に非摂取の場合は移植の効果がより顕著に現れます。

ここでの交互作用は、介入可能な二つの治療(移植とビタミン摂取)が、単独の効果とは異なる相乗効果を生み出していることを示しています。


②2種類の降圧剤の併用による交互作用
降圧薬Aと降圧薬Bの併用効果
降圧薬Aと降圧薬Bは、それぞれ異なる作用機序で血圧を下げる薬です。ある臨床試験で以下のような結果が得られたとします。


薬剤A単独:平均して血圧が5mmHg低下

薬剤B単独:平均して血圧が5mmHg低下

薬剤AとBを併用:平均して15mmHg低下

この場合、薬剤AとBを併用したときの効果(10mmHg低下)が、薬剤A単独と薬剤B単独の合計(10 mmHg低下)を超えているため、薬剤AとBの間に交互作用が存在すると考えられます。

薬剤AとBが異なる作用機序で血圧を下げることで、単独使用では得られない強い降圧作用を生み出していると考えることができるかもしれません。


③喫煙とアスベスト曝露の交互作用
公衆衛生の分野でも、異なるリスク因子の組み合わせが相乗的な影響を及ぼすケースがあります。その代表例が喫煙とアスベスト曝露です。

  • 喫煙単独:肺がんのリスクが5倍に上昇

  • アスベスト曝露単独:肺がんのリスクが3倍に上昇

  • 両方の曝露:肺がんのリスクが25倍に上昇

このように、「喫煙」と「アスベスト曝露」が単独の場合よりも「両方に暴露」した際のリスクが高く、また「喫煙」と「アスベスト曝露」のリスクをかけた値(5×3=15倍)よりも大幅に大きい(25倍)ことが確認されています。

このケースでは、乗法的交互作用が存在すると考えられます。

まとめ

本記事では「交互作用(Interaction)」について詳しく解説しました。

複数の介入を組み合わせた結果、交互作用によってそれぞれの効果を単純に足し合わせたり掛け合わせたりした場合とは異なる結果が生じ得ることがわかりました。

時には治療効果が過大になったり、有害になる可能性もあるため、適切な治療選択や公衆衛生政策を考える上で交互作用について理解することは非常に重要であると理解できますね。

本記事を通じて、交互作用の概念とその重要性が明確になり、今後の研究活動や臨床場面に役立てていただければ幸いです。

参考文献

Corraini P, et al. Effect modification, interaction and mediation: an overview of theoretical insights for clinical investigators, Clin Epidemiol. 2017;9:331-338
doi: 10.2147/CLEP.S129728

ウェブサイト

KRSK.「交互作用」とはなにか:介入効果が一様でないときの統計手法~その目的と分類、解釈~ https://www.krsk-phs.com/entry/interaction (2025年2月25日閲覧)

統計ER 交互作用は文脈によって意味が異なるので意味合いを確認したほうが良い
https://best-biostatistics.com/toukei-er/entry/interaction-additive-multiplicative-synergism-antagonism/ (2025年2月25日閲覧)

de novo [What if][Statistics]CI: What If (Chap. 5) https://denovo2021.com/2024/09/21/what-ifstatisticsci-what-if-chap-5/(2025年2月26日閲覧)


参考図書:『Causal Inference: What If

Causal Inference: What Ifとはハーバード大学のSPHで教鞭をとるMiguel Hernan氏とJames Robins氏によって執筆された因果推論の金字塔的書籍です。

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