
【採択者が語る科研費獲得のコツ】科研費 若手研究:内科学一般およびその関連分野 - vol.11
2026.03.18
博士号を持つ臨床医である筆者が、「機能画像の臨床応用」をテーマとした科研費若手研究の獲得経験を解説します。
本記事では、「業績不足を自覚しながらも科研費獲得を目指したい」というモチベーションの下、分野外の専門家にも研究の魅力を伝えるための歴史的背景を含めたストーリー作りや、図と文章の太字だけで研究計画調書全体の内容が把握できることを目指した資料作成について具体的にご紹介します。
これから研究を始める方々に向けて、科研費 若手研究申請についての具体的なヒントを共有します。
mMEDICI Library | ひらけ、叡智の扉
叡智の扉を、全ての人が開けるように——。
学びは、限られた豊かな人々だけの特権ではありません。
経済的困難に直面する人、地方で学習資源に恵まれない人、家事や育児・仕事に追われる人。
mMEDICI Libraryではそんな人々にこそ、最高の学びを届けるため、研究・キャリア・学習・受験のあらゆるテーマでパブリックヘルスの叡智を集めました。
隙間時間にスマホひとつで、誰もが「一流の知」に触れることを叶えていきます。
「ここを開けば、誰しもが悩みを解決できる」、そんなメディアを目指します。
- mMEDICI Library | ひらけ、叡智の扉
- この記事のまとめ
- この記事を読むと分かること
- この記事は誰に向けて書いているか
- 獲得ノウハウシリーズ
- 申請者情報
- 助成金情報
- 助成金名
- 助成団体の種類
- 助成団体名
- 助成制度・助成団体の理念
- URL
- 応募対象の条件
- 最大助成金額・期間
- 実際に支給された助成金額・期間
- 募集頻度・時期
- 研究内容
- 申請時の研究タイトル
- 研究概要
- 申請までの経緯
- この助成金を選んだ理由
- 応募に至るまでのストーリー
- 申請内容に関する考察と、具体的な作業内容
- 募集要項で特に注目した点
- 申請準備で実施したこと
- 申請書に記載が求められる項目
- 各項目の記入分量
- 構成・ストーリーについて意識したポイント
- 独自性や社会的意義でアピールしたポイント
- 文章表現の工夫
- 記入が難しかった項目とその理由
- 採択につながったと考えるポイント
- 採択後の成果
- 助成金の使用用途
- 研究成果
- キャリアへの影響
- これから応募する人へのエール
- 【オンラインスクール mJOHNSNOW入会受付中:7日間無料お試し】
- mJOHNSNOW講義紹介|あなたも獲れる100万円 ゼロからの科研費獲得講座
この記事のまとめ
この記事を読むと分かること
科研費若手研究の申請書作成において著者が実際に行った文章表現・構成・図の使い方などの工夫
業績や研究環境が十分でない状況で、どのように申請書の内容を補強したか
科研費採択につながったと考える実現可能性の示し方
この記事は誰に向けて書いているか
科研費特に「若手研究」への応募を検討している研究者
科研費申請書の書き方や構成の工夫を知りたい研究者
研究業績が十分でない状況でも科研費申請を考えている若手研究者
獲得ノウハウシリーズ
【研究助成金】
vol.1:科研費 スタート支援 - 社会医学、看護学およびその関連分野
vol.2:科研費 基盤(C) - 生涯発達看護学関連
vol.3:古川医療福祉設備振興財団研究助成 - 医療・福祉、リハビリ分野
vol.4:科研費 若手研究 - 高齢者看護学および地域看護学関連
vol.5:科研費 スタート支援 - 基礎医学研究およびその関連分野
vol.6:富山県立大学研究協力会 奨励研究 - 看護工学連携分野
vol.7:住友生命 子育てプロジェクト女性研究者支援 - 社会医学領域
vol.8:ななーる訪問看護研究助成プロジェクト - 在宅・訪問看護分野
vol.9:科研費 基盤(C) - 社会医学、看護学およびその関連分野
vol.10:科研費 スタート支援 - 社会医学、看護学およびその関連分野
vol.11:科研費 若手研究 - 内科学一般およびその関連分野(本記事)
【奨学金】
申請者情報
氏名:阪上 茉衣
所属:大阪公立大学 放射線腫瘍学
職位:後期研究医
専門分野・領域:放射線治療
助成金情報
助成金名
科学研究費助成事業 若手研究
助成団体の種類
公的機関(省庁・自治体など)
助成団体名
独立行政法人日本学術振興会
助成制度・助成団体の理念
科研費は、人文学、社会科学から自然科学まで全ての分野にわたり、基礎から応用までのあらゆる「学術研究」(研究者の自由な発想に基づく研究)を格段に発展させることを目的とする「競争的研究費」であり、ピアレビューにより、豊かな社会発展の基盤となる独創的・先駆的な研究に対する助成を行うものです。
URL
https://www.jsps.go.jp/j-grantsinaid/index.html
応募対象の条件
保有学位に条件あり
最大助成金額・期間
500万円以下 × 2~5年間
実際に支給された助成金額・期間
直接経費340万円、間接経費102万円・5年間
募集頻度・時期
毎年決まった時期に公募
研究内容
申請時の研究タイトル
機能画像の臨床応用による肺癌化学放射線治療後の効果予測と投与線量個別最適化の研究
研究概要
手術不能局所進行非小細胞肺癌への標準治療は化学放射線治療であり、durvalumab地固め療法が標準治療に加わった後も予後不良な疾患である。投与線量と局所制御率との関連は以前から示唆されてきたが、既報から一律の線量増加は推奨されていない。
MR-Linacの登場により、治療中の腫瘍および周囲正常臓器位置を確認しながらの、即時適応放射線治療が可能となった。併せて治療中に機能画像取得が可能であり、機能画像は腫瘍活性の評価に有用であることが近年報告されている。
本研究では、機能画像を含む臨床情報から局所再発リスクが予測可能か検討を行い、その情報を基にした投与線量個別化の可能性を探索し、患者予後の延長を目指す。
申請までの経緯
この助成金を選んだ理由
博士号取得後の「まずはここから」は科研費の若手研究と認識しており、特に他制度と比較したうえで選択したわけではありません。
弊大学では、「講師以上の職位を有する医師は科研費に応募すること」が、推奨される環境にあり、このまま大学に所属し続けるのであれば科研費申請は必ず通る道と認識していました。
「若手研究」は若手の名が付く通り、学位取得後8年間という制限があります。その分採択率が比較的高いことから、博士号取得翌年度の申請として妥当な選択肢と考えました。
応募に至るまでのストーリー
博士号取得後に、何らかの形で臨床研究を続けていきたいという漠然とした思いを抱いていました。その際、自分が興味を抱いている分野のサーベイを行い、knownとunknownの境界を探りました。
その結果、私が特に知りたいと感じた内容が現時点ではことごとく"unknown"であり、臨床におけるニーズも高いと感じました。そこで、これは自分で取り組みたい研究テーマであるという思いを抱きました。
まずは科研費申請を行おうと考え、教授にサーベイ内容を共有しました。そのうえで科研費申請について打診したところ、二つ返事で承諾頂いたため、研究内容について教授と議論を重ねたうえで応募しました。
申請内容に関する考察と、具体的な作業内容
募集要項で特に注目した点
審査基準、書式・文量について
申請準備で実施したこと
他者に研究計画書の添削を依頼、申請書に挿入用の図表の作成、助成金獲得に関するセミナー・書籍の購入
申請書に記載が求められる項目
研究目的・背景、研究方法、研究の独自性・新規制、予算の使用用途
各項目の記入分量
「研究目的・背景」は、(一)本研究の学術的背景と(二)研究課題の核心をなす学術的「問い」と本研究の目的として記載し、ここが申請書のうち約4割を占めました。
逆に「研究方法」は具体的な記載を必要最低限とし、約2割程度と、やや少ないかもしれないと感じながらの申請でした。
科研費で記載が求められる「学術的独自性と創造性」「着想に至った経緯」「国内外の研究動向と本研究の位置付け」で約3.5割、「本研究の目的を達成するための準備状況」で約0.5割程度の記載でした。
結果として、付けるべき参考文献すべてを紙面に納めることが出来ず、引用は厳選した3文献のみの記載となりました。
構成・ストーリーについて意識したポイント
科研費申請を行おうと決めた矢先に、弊大学で「科研費申請セミナー」が開催されました。その際の講師の先生が、「構成・ストーリー」=「伝え方」として、その重要性をレクチャーしてくださいました。
そのなかで、審査員は必ずしも同一の専門分野とは限らないため、分野外の研究者であっても短時間で理解できる分かりやすい研究ストーリーを練ることが重要であると強調されていました。
そこで教わった構成を、自身の研究計画調書にどのように当てはめるのが適当かを考えながら記載しました。
ストーリーを考える際には、「過去」導入・課題、「現在」目的・自身の強み、「未来」予想される結果・学術および社会への貢献の計6項目を、一目で視認可能な表として概要を記載し、自身のメッセージの明確化を図りました。
特に、分野外の専門家の目から見ても、自分の研究成果が得られた先の未来を期待してもらえるストーリーになることを目指して、研究計画書を作成しました。
独自性や社会的意義でアピールしたポイント
「独自性」を有することが科研費応募に至った動機であり、その独自性が自身の分野にとって魅力的であることは認知していました。そのため、分野外の専門家の方から見ても魅力的だと思って頂けるような、歴史的背景を含めたストーリー作りに尽力しました。
そのうえで、「今まで~した研究は存在しない」など、やや過剰にも感じられる言葉遣いでアピールしました。
社会的意義については、科研費では「創造性」という用語が用いられているため、概念理解のために科研費.comを参考にしました(研究計画調書作成にあたり、科研費.comの無料公開ページを一通り読んだうえで作成に取り掛かったことは有用だったと感じています)。
申請を行った研究内容は局所進行非小細胞肺癌を対象としていましたが、「他の悪性腫瘍における個別化放射線治療の実現に向けた取り組みに繋がる研究」と創造性の観点から記載しました。これは、あらゆる悪性腫瘍を対象とする弊科の強みをアピールできた点であったと考えています。
文章表現の工夫
文章表現について自ら工夫したことは特にありませんが、他科の医師である夫に事前に文章を読んでもらい、意味が分からない箇所がないか、説明なく放射線治療分野の専門用語が記載されていないかというチェックを受けました。
そのうえで、学内で制度化されている研究調書のレビューを受けました。
記載が必要と考えた内容の分量が多く、長い文章を読むことに辟易されないよう、太字だけを読んでも審査員に自身の伝えたい内容が十分受け取ってもらえるよう工夫しました。
また、先述の弊大学科研費申請セミナーでは研究概要図についてのレクチャーもあり、図と文章の太字だけで研究計画調書全体の内容が把握できることを目指して作成しました。
計画調書作成にあたっては、「伝わるデザイン」というHPを参考にすることがセミナーで推奨されており、HPやデザインに関する教科書を読んだうえで作成に取り掛かりました。
研究方法に関してどこまで具体的に記載するかは頭を悩ませましたが、紙面的にそこまで余裕はなく、結果的に必要最低限の記載に留めた形となりました。
記入が難しかった項目とその理由
弊科の強みは、国内稼働が3台しかないMR-Linacを有していることです。そこを環境面での強みとしてアピールすることは必須であるものの、「新しい治療装置で行う研究だから新規性・独自性がある」と主張していると審査員に判断されてしまえば、心証を大きく損ねてしまうことが懸念されました。そのため、そのバランスや表現方法を工夫しました。
また、弊科は設立から歴史が浅く、私個人の業績のみならず医局全体の業績不足の印象も否めず、研究環境が整っているとは主張し難い状況でした。
「若手研究」では業績の多寡が採択に影響しないと言われています。しかし、「応募者の研究遂行能力及び研究環境」欄の空白が多いことは避けたいと考えました。
そこで、存在する業績に加え、業績に該当しなくとも分野の発展のために行ってきた内容を申請する研究内容と関連付けて記載し、ぱっと見た際の不足感を感じさせないよう工夫しました。
なお、落合陽一氏は申請書記載時の心構えについて「余白は怠惰の証」と表現されており、「業績不足を自覚しながらも科研費獲得を目指したい」という意気で記載しました。
採択につながったと考えるポイント
「社会的意義の明確さ、独自性の強調、実現可能性の高さ、プレゼン力(申請書の書き方・構成)」すべてを挙げます。
それほど、自身では考え抜き、見栄えも工夫したうえでの応募であったため、これで無理なら現時点の私に科研費取得は難しく、業績を積んだうえで再挑戦するしかないと感じていました。
この中でどれか一つを問われたら、「実現可能性の高さ」を挙げます。
私の研究の目指す先は「投与線量個別最適化」であり、それが本研究においてアピールしたい独自性です。しかし、その前段階として研究内容を分割し、仮説①、仮説②として記載したうえで、それらを統合したものを仮説③「個別化放射線治療」としました。
仮説①と仮説②は、後は実施するのみという段階に近く、一歩間違えば「つまらない研究」と判断されうる内容でもあります。しかし、業績の乏しい若手が採択していただくためには、研究の手堅さと実現可能性を示すことが重要と考え、このような構成としました。
採択後の成果
助成金の使用用途
機器・ソフトウェア購入、旅費・学会出張費
研究成果
ようやく研究内容に関する倫理申請を行ったところで、具体的な研究はこれからです。
キャリアへの影響
特にありませんが、勤務日のうち週に1日を、臨床の手が足りていたら研究日として使っても良いと判断頂いています(弊医局は、大学院生以外は研究日なしの方針です)。
これから応募する人へのエール
自身がわくわくする研究テーマで、その知的裏付けのある期待感を申請者がうまく伝えられれば、「若手研究」における科研費の採択は十分叶うと考えます。
弊学開催のセミナーで学んだ内容ですが、科研費では審査員が他分野の専門家である場合も多く、伝え方の良し悪しが採択を大きく左右するようです。
使えるリソースを存分に活用して、自身の主張を適切に伝えられるよう表現方法を磨き、ぜひ研究費獲得につなげてください。
【オンラインスクール mJOHNSNOW入会受付中:7日間無料お試し】

mJOHNSNOWはスペシャリストが提供する医学研究講座にスマホで、スキマ時間にアクセスできる日本最大規模のオンラインスクールです。
継続率98.0%の高いクオリティで、累計1,631名を超える仲間が入会し、初学者向けの因果推論、疫学、統計学、データ解析、RWDなどをスペシャリストから学んでいます。
講義はすべてオンデマンド化されるので自分のペースで学びを進められ、研究・キャリアの悩みは24時間いつでもチャットで相談可能。安心の定額制で、満足いくまで学び放題です。
【参加者の声】
・地方在住で学ぶ場がなく困っていましたが、大学院に行かないと学べないようなことを仕事の合間に学ぶことができ大満足です(40代女性 医師)
・フォローアップが手厚く、オンデマンドで分かるまで学べるのが初学者にとってとても助かっています(30代男性 製薬企業社員)
・低価格なのに見切れないほど多くの講座が受講でき、どれも質が高いです(40代女性 大学研究者)
詳細を見る
mJOHNSNOW講義紹介|あなたも獲れる100万円 ゼロからの科研費獲得講座

「研究の情熱は誰にも負けない。でも、研究費の申請書が書けない…」
そう悩むすべての研究者のための研究費獲得講座です。
本講座では、日本を代表する疫学研究者である佐々木敏先生が、研究費獲得という難関を突破するために必要な知識と技術をゼロから体系的に解説します。
さまざまな研究費の基礎から、審査員の記憶に残る申請書作成の技術、そして予算設計に至るまで、研究費を勝ち取るための全プロセスを網羅します。
数多の研究を世に送り出してきたプロフェッショナルの視点とノウハウを学び、あなたの研究を社会に届けるための、最初の一歩を踏み出しましょう。
本講座について詳しく知りたい方はこちら
獲得ノウハウシリーズ
【研究助成金】
vol.1:科研費 スタート支援 - 社会医学、看護学およびその関連分野
vol.2:科研費 基盤(C) - 生涯発達看護学関連
vol.3:古川医療福祉設備振興財団研究助成 - 医療・福祉、リハビリ分野
vol.4:科研費 若手研究 - 高齢者看護学および地域看護学関連
vol.5:科研費 スタート支援 - 基礎医学研究およびその関連分野
vol.6:富山県立大学研究協力会 奨励研究 - 看護工学連携分野
vol.7:住友生命 子育てプロジェクト女性研究者支援 - 社会医学領域
vol.8:ななーる訪問看護研究助成プロジェクト - 在宅・訪問看護分野
vol.9:科研費 基盤(C) - 社会医学、看護学およびその関連分野
vol.10:科研費 スタート支援 - 社会医学、看護学およびその関連分野
vol.11:科研費 若手研究 - 内科学一般およびその関連分野(本記事)
【奨学金】
©mMEDICI Inc. ALL RIGHTS RESERVED.













