
2026.7.18
過去に研究活動スタート支援に採択された後、若手研究には一度不採択になったものの再挑戦して採択をつかみ取った大学の常勤教員である筆者が、「身体活動可視化ツールを用いた身体活動促進プログラムの効果検証」をテーマとした科研費若手研究の獲得経験を解説します。
本記事では、臨床課題と自分のこれまでの研究成果と結びつけて説明する意識、限られた医療資源の中でも患者の回復を後押しする新たな臨床実践につながる点の示し方、審査員の理解を手助けする工夫などを具体的にお伝えします。
若手研究に挑戦することで研究者としてのキャリアを形成したい方、自分の研究について改めて整理することで一歩上のステージへ進みたいと考える方にとって、実践的な示唆を得られ背中を押される内容です。
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専門外の審査員にも直感的に伝わる文章表現とアピールのコツ
採択率を劇的に高めるリアルな準備プロセスとキャリアへのメリット
審査員を納得させる申請書の構成案と工夫
若手研究者や新任大学教員
まだ研究実績が十分ではなく、自分の研究テーマの必要性や独自性をどのように調書へ落とし込めばよいか悩んでいる研究者
限られた学内研究費に危機感を持ち、自身の力で初めての外部資金を獲得して持続的な研究基盤を確立したい方
【研究助成金】
vol.3:古川医療福祉設備振興財団研究助成 - 医療・福祉、リハビリ分野
vol.4:科研費 若手研究 - 高齢者看護学および地域看護学関連
vol.9:科研費 基盤(C) - 社会医学、看護学およびその関連分野
vol.11:科研費 若手研究 - 内科学一般およびその関連分野
vol.12:フランスベッド・メディカルホームケア研究・助成財団 - リハビリテーション活動や機器に関する研究
vol.14:科研費 スタート支援 - 社会医学分野

2025年に1,891名が参加した、あの研究費獲得講座が帰ってくる!
どれほど強い熱意や優れたアイデアの研究でも、審査員を納得させる申請書を書けなければ採択には至りません。本講義では、数々の研究費を獲得し、自身も審査員を務めてこられた東大名誉教授の佐々木敏先生が、「審査員はどこを見て、なぜ不採択と判断するのか」という視点から、採択される申請書の書き方を分かりやすく解説。
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本講座について詳しく知りたい方はこちら
氏名:木村 鷹介
所属・職位:東洋大学生命科学部生体医工学科・常勤教員
専門分野・領域:リハビリ
科学研究費助成事業 若手研究
公的機関(省庁・自治体など)
独立行政法人日本学術振興会
科学研究費助成事業(以下「科研費」という。)は、人文学、社会科学から自然科学まで全ての分野にわたり、基礎から応用までのあらゆる「学術研究」(研究者の自由な発想に基づく研究)を格段に発展させることを目的とする「競争的研究費」であり、ピアレビューにより、豊かな社会発展の基盤となる独創的・先駆的な研究に対する助成を行うものです。
https://www.jsps.go.jp/j-grantsinaid/index.html
年齢に条件あり、保有学位に条件あり、所属属性に条件あり、博士の学位取得後8年未満、過去に「若手研究」で採択・受給されたことがある場合は通算2回まで
500万円×5年
455万円×4年
毎年決まった時期に公募
身体活動可視化ツールを用いた身体活動促進プログラムの効果検証
回復期脳卒中者では、日常生活動作の自立度向上のために身体活動の促進が重要です。
一方で、入院中の多くの時間を座位または臥位で過ごしており、身体活動量の不足が深刻な臨床課題となっています。身体活動を促進するためには、単に歩数などの総量を示すだけでなく、いつ、どの程度の強度で、どのくらい活動しているかを把握し、個別の活動パターンに応じた指導を行う必要があります。
本研究では、活動量計で得られた身体活動データを可視化するツールを用い、患者ごとの活動状況を分かりやすくフィードバックする身体活動促進プログラムを開発することを目的としました。
さらに、そのプログラムが身体活動量、歩行能力、日常生活動作の自立度の改善に及ぼす効果を検証し、臨床現場で実装するための有用性と課題を明らかにすることを目的としました。
所属機関の公募情報
科研費の獲得実績は、研究者としてのキャリアを形成する上で、論文数と並んで重要な指標であると考えていました。そのため、研究者として継続的に活動していく以上、早い段階で科研費に採択されることは重要な目標でした。
また、本研究では、身体活動可視化ツールを用いた介入プログラムの開発と効果検証を計画していました。パイロット研究で実現可能性や課題を確認した上で、介入研究へ展開するためには、複数年度にわたり安定して使用できる研究費が必要でした。
他の助成金と比べて、科研費若手研究は研究者としての自立性や継続的な研究展開を支える性格が強く、今回の研究計画とキャリア段階に合っていると感じました。
これまで私は、回復期脳卒中者の機能回復に関連する要因について研究してきました。その中で、歩数や車椅子駆動距離などの身体活動量が、退院後の生活範囲や機能予後と関連することを確認してきました。
一方で、臨床現場では、回復期脳卒中者の多くがリハビリ以外の時間を座位または臥位で過ごしており、極めて不活発であることが大きな課題であると感じていました。また、脳卒中者は症状や能力が多様であり、歩数などの総量を示すだけでは、「いつ、何を、どのくらい増やすべきか」を個別に伝えることが困難でした。
そこで、身体活動量計で得られたデータをもとに、活動の頻度、強度、時間、タイミングを可視化するツールを使用し始めました。
患者自身が活動パターンを理解しやすくなり、医療者も個別性に応じたフィードバックを行える点に、大きな可能性を感じました。
しかし、この可視化ツールを用いたフィードバックが、実際に身体活動量や日常生活動作の自立度改善につながるかは明らかではありませんでした。そこで、まずパイロット研究で実現可能性や課題を確認し、その後、介入研究として効果を検証する必要があると考えました。
書式・文量について
過去の採択例を収集・分析、他者に研究計画書の添削を依頼、申請書に挿入用の図表の作成、助成金獲得に関するセミナー・書籍の購入
研究目的・背景、研究方法、スケジュール、研究の独自性・新規性、研究の社会的意義、予算の使用用途
科研費若手研究の様式では、「研究目的、研究方法など」が4頁以内、「応募者の研究遂行能力及び研究環境」が2頁以内、「人権の保護及び法令等の遵守への対応」が1頁以内でした。
「研究目的、研究方法など」では、冒頭に研究全体の概要を記載しました。その後、学術的背景と研究課題の問いに約3割、研究目的、独自性・創造性、着想に至った経緯、国内外の研究動向と本研究の位置づけに約3割を充てました。
研究方法には約3割を充て、第1研究としてパイロットスタディ、第2研究として介入研究を行う流れを示しました。研究デザイン、対象者数、介入内容、アウトカムは具体的に記載しました。
準備状況は約1割とし、研究協力施設、身体活動量計、共同研究者、データ解析や介入研究の支援体制が整っていることを簡潔に示しました。
「応募者の研究遂行能力及び研究環境」は、これまでの研究活動と研究環境を概ね半分ずつ記載しました。研究実績と臨床フィールドとの協力体制が伝わるよう意識しました。
構成・ストーリーとしては、「臨床現場で実際に感じてきた深刻な課題」を出発点にし、それを自分のこれまでの研究成果と結びつけて説明することを意識しました。
まず、回復期脳卒中者では身体活動量が少ないことが臨床上の大きな問題であり、リハビリ以外の時間をどのように過ごすかが日常生活動作の自立度に関わる可能性があることを示しました。
その上で、これまで自分が行ってきた研究や論文を引用し、歩数や車椅子駆動距離などの身体活動量が機能予後と関連することを示してきた流れを説明しました。
一方で、単に歩数などの総量を示すだけでは、症状や能力が多様な脳卒中者に対して十分な指導が難しいという限界も示しました。そこから、身体活動の頻度・強度・時間・タイミングを可視化し、個別性に応じたフィードバックを行うという本研究の必要性につなげました。
また、研究協力施設や共同研究者との連携、これまでの多施設共同研究の経験も記載し、単なるアイデアではなく、実際に遂行可能な研究計画であることを伝えるよう意識しました。全体として、臨床的な問題意識、これまでの研究実績、今回の研究の独自性、実施体制が一貫してつながる構成にしました。
本研究の独自性として、身体活動量を単に「歩数」や「活動時間」の総量として捉えるのではなく、頻度、強度、時間、タイミングを含めて可視化しました。その上で、個別の活動パターンに応じたフィードバックにつなげる点を強調しました。
回復期脳卒中者では、症状や身体機能、生活動作能力が患者ごとに大きく異なります。そのため、一律に「もっと歩きましょう」と伝えるだけでは、実際の行動変容にはつながりにくいと考えました。
本研究では、活動量計のデータを用いて、「いつ、どのような活動を、どのくらい増やすべきか」を患者ごとに具体化できる点をアピールしました。
また、可視化ツールを用いることで、医療者だけでなく患者本人にも活動状況を直感的に理解してもらえる可能性があります。これは、単なる評価研究ではなく、臨床現場での指導や患者教育に直接つながる点で意義があると考えました。
社会的意義としては、回復期脳卒中者の身体活動量を増やし、日常生活動作の自立度や退院後の生活の質の向上につなげる可能性を示しました。
リハビリテーション時間以外の過ごし方に着目することで、限られた医療資源の中でも、患者の回復を後押しする新たな臨床実践につながる点をアピールしました。
文章表現では、過去の審査員に医師、理学療法士、工学系研究者など、様々な背景を持つ審査員が含まれていたことを踏まえ、誰が読んでも研究の要点が伝わる記述を意識しました。
そのため、専門用語を過度に使いすぎず、研究の背景、課題、解決策ができるだけ自然に伝わるように表現しました。
特に、回復期脳卒中者の身体活動量が少ないことや、従来の歩数などの総量だけでは個別性を十分に捉えにくいという限界を挙げました。その上で、可視化ツールを用いることで患者ごとの活動パターンに応じた指導が可能になる点を、文章の中心に据えました。審査員に「何が問題で、何を明らかにしたい研究なのか」が早い段階で伝わるよう意識しました。
また、限られた紙面の中で重要な点が埋もれないように、研究の核心となる部分や独自性を示す部分には太字を用いました。
さらに、活動量の可視化や介入の流れなど、文章だけでは伝わりにくい内容については図を使用しました。分かりやすい図を作るのは難しいですが、審査員が短時間で研究の全体像を把握できるよう、視覚的に補足することを意識しました。
記入が難しかった項目は、主に三つありました。
一つ目は図の作成です。研究の流れや可視化ツールの意義は、文章だけでは伝わりにくい部分が多くありました。一方で、複雑な内容をシンプルな図に落とし込むことは難しく、自分だけではなかなか納得できる形になりませんでした。
そのため、共同研究者に見てもらい、どこが伝わりにくいか、どの情報を削るべきかについて意見をもらいながら修正しました。
二つ目は、冒頭の概要です。限られた分量の中で、研究の背景、目的、独自性、社会的意義をまとめる必要がありました。特に、回復期脳卒中者では身体活動量不足がなぜ重要な課題なのか、可視化ツールを用いることにどのような意義があるのかを、短い文章で伝えることに苦労しました。
三つ目は、本研究の独自性の伝え方です。単に「独自の可視化ツールを使うこと」が新規性として受け取られるのではなく、その本質が伝わるように書く必要がありました。
重要なのはツールそのものではなく、身体活動の頻度、強度、時間、タイミングを把握し、それを患者ごとの具体的なフィードバックにつなげる点です。この意義を、専門外の審査員にも伝わるように言語化することが難しかったです。
採択につながった理由を正確に把握することは難しいですが、振り返ると、実行可能性を具体的に示せた点が大きかったのではないかと考えています。
まず、申請時点で、回復期脳卒中者の身体活動量に関する研究実績があり、自分自身の論文も引用しながら研究の背景や問題意識を説明できました。そのため、この研究テーマが思いつきではなく、これまでの研究の延長線上にあることを示せたと思います。
また、研究協力施設や共同研究者との連携体制がすでに整っており、臨床フィールドで実際に研究を進められる見通しを示せた点も重要だったと考えています。
若手研究では、研究の新規性だけでなく、申請者自身が本当に遂行できる計画かどうかも重視されるため、この点は強みになったと思います。
さらに、回復期脳卒中者の身体活動量不足は、臨床現場で日常的に直面する課題であり、日常生活動作の自立度や退院後の生活にも関わる重要な問題です。
本研究は、単に活動量を測るだけでなく、可視化したデータを患者への具体的なフィードバックにつなげる点に特徴があります。臨床上の課題、研究としての独自性、実装可能性が比較的一貫して伝わったことが、採択につながったのではないかと考えています。
人件費、機器・ソフトウェア購入、旅費・学会出張費
私は、科研費の研究活動スタート支援に採択された後、若手研究には一度不採択となり、民間助成金にも何度も落ちました。その度に落ち込みましたが、それでも研究者として生きていくのであれば、研究費申請は避けて通れないものだと感じています。
申請書を書く過程には大きな意味があると感じています。
目の前の研究をどう進めるかだけでなく、数年単位で何を明らかにしたいのか、自分はどの方向に研究者として進みたいのかを考える機会になるからです。申請書を書くことは、単なる資金獲得の手段ではなく、自分の研究キャリアを整理する作業でもあると思います。
不採択になると、自分の研究そのものを否定されたように感じることもあります。しかし、そこで考えた研究計画や書いた文章は、次の申請、論文、共同研究の土台になります。
これから応募する方には、ぜひ諦めずに挑戦して欲しいです。苦しい作業ではありますが、自分が本当に大事だと思う課題を、他者に伝わる形に磨いていくことは、研究者としての力になると思います。

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採択者が語る研究助成金・奨学金申請書書き方のコツ
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