2026.10.8

【採択者が語る助成金申請書書き方のコツ】村田学術振興・教育財団 研究助成:人文・社会科学分野 - vol.18

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    大学の常勤教員であり国際比較研究に取り組む著者、公益財団法人村田学術振興・教育財団の研究助成の獲得経験を解説します。

    民間財団への応募や人文・社会科学分野での研究費獲得、審査の視点に沿った申請書の書き方に悩む研究者に向けて執筆しました。

    本記事では、問いを軸にした構成の工夫や、予備調査による「実行できる証拠」の提示など、採択につながった具体的なアプローチを共有します。

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    この記事のまとめ

    この記事を読むと分かること

    • 審査の視点に対応した申請書の構成やストーリーの組み立て方

    • 民間財団と自身の研究テーマを接続させた具体事例の紹介

    • 予備調査の実績で「実行できる証拠」を示し、実現可能性をアピールして採択へつなげるポイント

    この記事は誰に向けて書いているか

    • 民間財団の研究助成金への応募を検討している研究者

    • 人文・社会科学分野での研究費獲得を目指している方

    • 審査の視点に沿った効果的な申請書の書き方に悩んでいる方

    獲得ノウハウシリーズ

    【研究助成金】

    • vol.3:古川医療福祉設備振興財団研究助成 - 医療・福祉、リハビリ分野

    • vol.7:住友生命 子育てプロジェクト女性研究者支援 - 社会医学領域

    • vol.8:ななーる訪問看護研究助成プロジェクト - 在宅・訪問看護分野

    • vol.12:フランスベッド・メディカルホームケア研究・助成財団 - リハビリテーション活動や機器に関する研究

    • vol.13:ファイザーヘルスリサーチ研究に関する研究助成公募 - 臨床医学分野

    • vol.17:AI for Science萌芽的挑戦研究創出事業(SPReAD) - 臨床科学分野

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    申請者情報

    氏名:鈴木 拓人
    所属・職位:筑波技術大学学長付IR室 講師・常勤教員
    専門分野・領域:教育学(高等教育論)

    助成金情報

    助成金名

    公益財団法人村田学術振興・教育財団 第42回(2026年度)研究助成(人文・社会科学分野)

    助成団体の種類

    公益財団・一般財団

    助成団体名

    公益財団法人 村田学術振興・教育財団

    助成制度・助成団体の理念

    わが国の学術および文化の向上・発展に寄与することを目的として、エレクトロニクスを中心とする自然科学分野、国際化に伴う法律・経済・社会・文化などの諸問題に関する人文・社会科学分野、さらに文理融合的な研究活動に対する助成を行います。(参照:公益財団法人村田学術振興・教育財団「第42回(2026年度)研究助成等募集要項」1. 助成の趣旨)

    URL

    https://corporate.murata.com/ja-jp/group/zaidan/

    応募対象の条件

    所属属性に条件あり、研究分野に条件あり

    最大助成金額・期間

    2年間(最長)で最大200万円(人文・社会科学分野は1件あたり100〜200万円、期間最長2年)

    実際に支給された助成金額・期間

    2年間で170万円

    募集頻度・時期

    毎年決まった時期に公募

    研究内容

    申請時の研究タイトル

    合理的配慮の義務化は高等教育機関の障害学生支援を変えたか - 日本・韓国・台湾における実施ギャップの国際比較

    研究概要

    日本では2024年に改正障害者差別解消法が施行され、私立大学を含むすべての高等教育機関で合理的配慮の提供が法的義務となりました。しかし、法律が変わったことで大学の教育現場や障害学生の経験が実際にどこまで変わったのかは、まだ十分に検証されていません。

    比較対象とする韓国・台湾は、同様の法的義務化を経験しており、かつ18歳人口の減少という構造的課題を日本と共有している社会です。

    本研究は、法制度、大学組織、学生経験という三つの層から、制度と実態の間の「実施ギャップ」を明らかにする国際比較研究です。

    各国・地域の複数の大学を訪問し、支援担当者・大学執行部・障害学生への半構造化インタビューを実施します。

    申請までの経緯

    助成金を知ったきっかけ

    学会・研究ネットワーク

    この助成金を選んだ理由

    この助成金を選んだ理由は3点あります。

    1点目は、人文・社会科学分野が明示的に助成対象とされており、国際比較研究がテーマとして正面から位置づけられることです。

    2点目は、1件100〜200万円・最長2年という助成規模で、韓国・台湾への複数回の訪問調査を伴う研究計画を現実的に設計できることです。

    そして最大の理由である3点目は、科研費や他財団の助成金との併用が認められていることです。

    私はすでに研究代表者・研究分担者として科研費による研究を進めており、テーマは異なるものの調査対象(台湾)が重なっています。

    併用が認められていることで、現地の研究者ネットワークや調査渡航の機会を複数の研究の間で効果的に組み合わせることができ、限られた研究費と時間を最大限に生かせると考えました。

    応募に至るまでのストーリー

    私の主たる研究テーマは、大学執行部のマネジメントなど大学経営に関する研究です。一方で、勤務校は聴覚障害・視覚障害のある学生のための国立大学であり、障害学生支援は日々の業務と地続きの領域として、かねてから問題意識を持ち続けてきました。

    2024年の合理的配慮の義務化を機に、「制度は変わったが、現場は本当に変わったのか」という問いを強く意識するようになりました。

    そして、同様の義務化を経験し、少子化のもとで多様な学生の受け入れが大学の課題となる点も日本と共有する韓国・台湾と比較することにしました。そうすることで、日本の課題がより明確に見えてくるのではないかと考えるようになりました。

    そこで、大学経営に関する調査で韓国・台湾を訪問した際に併せて本研究に関する予備調査を進め、現地の大学関係者、研究者との協力関係を築きました。

    こうした経緯から、国際比較の調査資金として本助成に応募しました。

    申請内容に関する考察と、具体的な作業内容

    募集要項で特に注目した点

    審査基準、助成対象となる研究領域、書式・文量について、過去の採択者情報

    申請準備で実施したこと

    過去の採択例を収集・分析、他者に研究計画書の添削を依頼

    申請書に記載が求められる項目

    研究目的・背景、研究方法、スケジュール、研究の独自性・新規性、研究の社会的意義、予算の使用用途、申請書内で使用する専門用語・略語の説明、財団が重きをおく点と研究テーマとのつながり、研究の実施状況、関連する研究実績・業績

    各項目の記入分量

    各項目の最大記入分量は財団の「応募の手引き」で定められており、手引きは財団HPで公開されています。上限頁数を超えると選考対象外になるため、まずこの規定の確認から始めました。

    全体は計7頁以内で、専門用語の説明と「財団が重きをおく点とのつながり」で1頁です。研究の目的から研究計画・実施状況・関連実績・内外の研究動向までの中核部分で4頁、使途内訳で1頁、研究略歴・業績で1頁という構成です。

    中核の4頁に研究の問い・方法・実現可能性の情報を凝縮し、上限頁数まで使い切る形で作成しました。

    構成・ストーリーについて意識したポイント

    募集要項に「審査の視点」が明記されているため、申請書の構成をこの視点に対応させることを最も意識しました。

    具体的には、「なぜ今この研究か」(制度改正など政策の動き)、「なぜこの比較か」(比較対象を選んだ理由)、「なぜ自分が行うのか」(申請者の強みと準備状況)という三つの問いを設定しました。また、読み進めるだけで順に答えが得られる構成にしました。

    併せて、全体を貫く軸として「制度は変わった。現場は変わったのか」という一文の問いを立てました。

    目的・方法・分析枠組み(法制度→大学組織→学生経験の三層モデル)をすべてこの問いに結びつけることで、国際比較を通じて日本固有の課題を明らかにするという研究の道筋が一読して伝わる申請書を目指しました。

    独自性や社会的意義でアピールしたポイント

    独自性としては3点を挙げました。

    1点目は、東アジアの障害学生支援を体系的に比較した研究が、国内外ともにほとんど存在しないことです。

    2点目は、法制度・大学組織・学生経験の三層を統合して「実施ギャップ」を分析する枠組みを示したことです。

    3点目は、従来の研究が支援室や実践レベルに集中してきたのに対し、大学執行部・組織論の視点を取り込んだことです。

    社会的意義としては、障害のある学生が増加する中で、合理的配慮の義務化が現場にもたらした変化を検証する必要があることをまず述べました。

    あわせて、比較から得られる知見を日本の制度や大学現場の改善につなげることで、多様な学生が学びやすい高等教育の実現に寄与しうることを示し、募集要項に示された「審査の視点」に沿う形でまとめました。

    文章表現の工夫

    審査委員が必ずしも障害学生支援の専門家ではなく、人文・社会科学の広い分野の先生方であることを前提に、専門外の審査委員がスムーズに読める文章を心がけました。

    専門用語や略語は様式冒頭の説明欄で先に定義し、本文では説明なしで読み進められる形にしています。

    また、課題の規模を伝えるために、障害学生数の増加などの統計数値を冒頭に置き、実施ギャップは個別の大学の問題ではなく、構造的な政策課題であることを数字で示しました。

    実現可能性については、予備調査の実績や渡航費の実績値など、裏づけのある、具体的な事実を挙げるよう努めました。

    さらに、各節の冒頭に要点を置き、重要な結論部には下線を付すことで、限られた審査時間でも要点が目に入る工夫をしています。

    記入が難しかった項目とその理由

    最も難しかったのは、申請書の様式で記載が求められる「当財団が重きをおく点と今回の研究テーマとのつながり」という項目でした。

    村田学術振興・教育財団はエレクトロニクスを中心とする自然科学の助成で知られており、教育学の障害学生支援というテーマをどう接続するかを考える必要があったためです。

    最終的には、財団が人文・社会科学分野で掲げる「国際化に伴う法律・経済・社会・文化などの諸問題」に着目しました。そして、障害者権利条約という国際規範が各法制度・大学組織・学生に浸透していく過程を扱う本研究を、国際化に伴う社会の課題の研究として位置づけました。

    もう一つは使途内訳です。

    上限200万円の中で日本・韓国・台湾での訪問調査を成立させるため、渡航回数・日程・謝金単価を過去の渡航実績値で積算しました。さらに1回の渡航で複数校を訪問する日程設計まで盛り込み、予算が研究計画に見合っていることを示しました。

    採択につながったと考えるポイント

    自己分析としては、実現可能性を具体的な事実で示せたことが最も大きかったのではないかと考えています。

    国際比較研究は構想としては魅力的でも、「本当にできるのか」が弱点になりがちです。本申請では、応募前に韓国・台湾で予備調査を済ませ、現地の大学関係者、研究者との協力関係を築いていたため、調査対象へのアクセスが構想倒れではないことを示せたと思います。

    加えて、2024年の合理的配慮の義務化の直後という時期を捉えた問いの設定や、審査の視点に構成を対応させた申請書の作りがありました。

    そして、障害のある学生のための大学に勤務する申請者がこのテーマを研究する必然性、といった要素が重なったことも評価につながったように思います。

    逆に言えば、予備調査なしで同じ申請書を書いていたら説得力は大きく下がっていたはずです。

    応募前の小さな一歩の積み重ねが効いたと感じています。

    採択後の成果

    助成金の使用用途

    旅費・学会出張費、データ収集・分析

    これから応募する人へのエール

    民間財団の助成は、科研費とは審査の視点が異なるように感じています。

    財団にはそれぞれ固有の理念や応援したい研究テーマがあるので、募集要項と財団HPを読み込み、自分の研究を財団の言葉で語り直すことが第一歩になると思います。

    一見、自分の分野と縁遠く見える財団でも、募集要項を丁寧に読むと接続できる場合があります。

    もう一つは、「実行できる証拠」を用意することです。

    小さな予備調査や協力者との関係づくりなど、応募前にできる小さな準備の積み重ねが、申請書の説得力を高めてくれるように思います。

    もし実績の少なさに不安を感じていても、若手の挑戦的な研究を歓迎してくれる財団は多くあります。

    まずは気になる財団の募集要項を開くところから、はじめてみてください。

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    採択者が語る研究助成金・奨学金申請書書き方のコツ
    【研究助成金】

    • vol.3:古川医療福祉設備振興財団研究助成 - 医療・福祉、リハビリ分野

    • vol.7:住友生命 子育てプロジェクト女性研究者支援 - 社会医学領域

    • vol.8:ななーる訪問看護研究助成プロジェクト - 在宅・訪問看護分野

    • vol.12:フランスベッド・メディカルホームケア研究・助成財団 - リハビリテーション活動や機器に関する研究

    • vol.13:ファイザーヘルスリサーチ研究に関する研究助成公募 - 臨床医学分野

    • vol.17:AI for Science萌芽的挑戦研究創出事業(SPReAD) - 臨床科学分野