
看護師として働き、CRCとして医療統計の業務に触れた筆者。データを通じて医療に貢献するため、広島大学のMPH受験を決めました。
子育てや仕事と両立できる学びの場をどう選び、限られた時間のなかで何を準備したのか。統計検定の学習やTOEIC対策、面接への向き合い方を振り返ります。
大学院で疫学や統計学を学びたい一方で、進学後の生活や受験準備に不安がある方へ。
自分に合う選択肢を見極めながら、少しずつ準備を進めた経験をお届けします。
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看護師・CRCの経験からMPH受験を決めるまでの進路の考え方
広島大学MPHを選んだ理由と、面接・英語を中心とした受験準備
限られた時間でも学びを続けるための工夫と、進学後のキャリアの描き方
MPHに興味があるものの、進学後のキャリアを具体的に想像できない方
子育てや仕事と両立しながら、大学院進学を検討している方
疫学や統計学を学び、医療にデータの面から貢献したい方
vol.29:【広島大学MPH受験】命のその先に挑む救急医:フルタイム勤務×育児×大学院の両立術
vol.27:【慶應大学MPH受験】ジェネラリスト看護師:看護実践の基盤となる知識を求めて
vol.41:【東大SPH受験】訪問診療医、東大SPHへー出産・育児と歩んだ、私の受験戦略
vol.31:【静岡SPH受験】キャリアに新しい軸を創造する:薬局薬剤師から医療データベース研究の道へ
vol.28:【ジョンズホプキンスMPH受験】働きながら、臨床と研究に深みを:血液内科医が選んだオンラインMPHという最適解
vol.8:【ジョンズホプキンスMPH受験】臨床と家庭の両立と断念した現地留学:オンライン海外MPHが拓く選択肢
氏名:R
所属:現在は子育てに専念
自己紹介:大学で生命科学を学んだ後、看護師免許を取得。急性期病院およびCROでCRCとして勤務してきた。家族の仕事の都合で退職し、現在は子育てに奮闘中。
MPHの存在を初めて知ったのは、看護師として勤務していた頃でした。
ただ、大学時代から私は「医療や研究にどう関わるか」を長く考え続けていました。生命科学を学んでいた大学では、大学院への進学を漠然と考えていました。
一方で、医学部医学科を目指す人が身近に多く、自分も医学部への再受験を選ぶべきなのではないかと悩んでいました。
けれども、医師として大きな責任を負うことへの覚悟も、受験勉強を続けるだけの強い意志も、自分には十分にないと感じていました。生物より化学が好きだったため、農学系や理学系の大学院への進学も検討しました。
しかし、将来の就職や学費には不安がありました。研究職を目指すなら博士課程まで進む必要があるのではないか、とも考えました。
当時の自分には、そこまでの進路を選び切るモチベーションはありませんでした。
迷った末に、私は看護師免許を取得する道を選びました。
研究室で予防医学に触れていたこともあり、まずは医療の現場を知り、そこで見つけた課題を研究につなげる道もあるのではないかと思ったからです。
保健師資格の取得も視野に入れていました。
しかし、看護師として働き始めると、臨床の仕事は自分にあまり向いていないと早い段階で感じました。改めて大学院進学を調べたものの、看護系大学院には自分が求める専門性を見いだせませんでした。生命科学系の大学院へ戻ることにも、就職やその先のキャリアを考えると踏み切れませんでした。
当時の私にとってMPHは、臨床を続けながら仕事にプラスアルファの価値を加えるために通う場所という印象でした。臨床を続けたい気持ちが強くなかったため、その時点では自分の進路とは少し違うように思えました。
転機は、CRCとして勤務していた時に受けた研修でした。そこで医療統計の業務を知り、「これが自分のやりたいことだ」と胸が高鳴りました。
私は、目の前の一人に直接ケアを届けるよりも、データを用いて医療をより良くし、統計の力で社会に貢献したいという思いが強かったのだと気づきました。保健師の仕事にも関心はありましたが、地域で人を直接支援することを主な役割とする働き方は、自分が目指す方向とは少し異なりました。
医療統計のスキルを身につけ、データの観点から医療に貢献したい。
自分の専門性を持って働きたい。
その思いが、ようやく一つの方向につながりました。京都大学の臨床統計家育成コースにも強く惹かれました。
ただ、中国地方に住み、子ども2人を育てながら通学することは現実的ではありませんでした。近隣で医療統計を学べる場所を探すなかで、広島大学のMPHにたどり着きました。
遠回りを重ねたからこそ、MPH受験は「なんとなく大学院へ進む」ための選択ではなく、統計を武器に医療へ貢献するための選択になりました。
広島大学を選んだ最初の理由は、住んでいる場所から通いやすかったことです。
子どもを育てながら大学院へ通うには、学びたい内容だけでなく、生活の中で無理なく続けられることが欠かせませんでした。岡山大学のMPHも検討しました。
ただ、ホームページから受けた印象では、研究室で過ごす時間が比較的多く、研究活動もタイトに進むのではないかと感じました。自分が子育てを続けながら学ぶ姿を具体的に想像すると、少し難しいかもしれないと思いました。
中国地方へ引っ越してきたばかりの頃は、知り合いも少なく、これからの人生をどうつくっていくかを考えていました。
そのなかで、せっかく広島にいるのなら、原爆に関わる活動や研究にもいつか関われたらいい、という思いが芽生えました。広島大学には、原爆に関わる研究があることにも魅力を感じました。
通いやすさを入口に探し始めましたが、広島という場所で公衆衛生を学ぶこと自体に、自分なりの意味を見いだせたことは大きかったと思います。
当初は、医療統計を専門的に学べる大学院を探していました。
一方で、統計を「がっつり数学として学ぶ」ことには、自分にとって少しハードルの高さも感じていました。調べるうちに疫学にたどり着きました。
疫学の参考書を見たことは以前にもありましたが、その時は自分の進路と結びついていませんでした。
改めて知ると、疫学こそ看護師やCRCとして得た経験を生かしながら、データを通じて医療に貢献するために学びたい分野かもしれないと思えました。
広島大学の研究室には社会人の方もおり、オンデマンド授業もあると知りました。子育てをしながらでも、工夫しながら学び続けられる環境かもしれないと感じました。
正直にいえば、せっかく大学院へ進むなら、東京大学や京都大学のMPHに行けたらよかったのではないか、と考えたこともあります。
ただ、距離のある大学へ通うには生活環境を大きく変える必要があり、受験に向けた勉強も相応に求められます。もちろん、広島大学を受験する場合も努力が必要であることに変わりはありません。
それでも、子育てと両立しながら学び続ける現実性を考えると、自分に合う選択肢を見極めることが必要でした。海外の著名なMPHも調べましたが、学費の高さから早い段階で候補から外しました。
けれども、広島で原爆に関する疫学を学べることは、この場所ならではの強みでした。また、志望した研究室の教授が、私が以前病院で勤務していた診療科と同じ領域の専門医であることも、研究テーマを考えるうえで心強く感じました。
臨床で得た経験を研究へつなげやすい環境だと思えたからです。
「近いから選んだ」だけではありません。
自分が関心を持つ研究テーマがあり、疫学という新しい軸を見つけられ、生活と両立する見通しも持てた。
それらが重なって、広島大学のMPHで学びたいという気持ちが固まりました。
ここでは、2026年度8月実施の一般入試を受験した際の経験を記載します。選抜方法や出願要件は年度によって変わり得るため、受験前には必ず公式の募集要項を確認してください。私が受験した一般入試では、当日の試験は面接のみでした。事前に志望理由書とTOEICのスコアを提出し、それらも含めて総合的に判断される形式でした。
筆記試験がないからといって、準備が不要ということではありません。むしろ、志望理由書に書いたことを自分の言葉で説明し、質問に対して筋道立てて答えられるようにしておく必要があると感じました。
志望理由書では、なぜ広島大学の希望する研究室で学びたいのかを、説得力と熱意をもって伝えることを意識しました。また、なぜ今になって疫学を学びたいと思ったのかも整理して記載しました。
英語は、いつか大学院を受験したいと考えていたため、受験直前だけではなく継続して勉強し、TOEICでスコアを提出しようと思っていました。
私が受験した際は、TOEICスコアの有効期限が試験日から2年だったため、出願時に有効なスコアを提出できるよう、出願に間に合う日程で受験しました。また、出願書類の不備で出願できなくなることを避けるため、半年前から前年度の募集要項に目を通し、必要書類を確認して準備を進めました。
自分では、高校生の頃から英語が得意だと思っていました。ただ、TOEICを受けるなかで、英単語力が足りないことや、リスニングが苦手なことをはっきり自覚しました。
特に、TOEICは試験形式に合わせた対策をしないとスコアにつながりにくい試験だと感じました。単語は『TOEIC L&R TEST 出る単特急 金のフレーズ』を使い、TOEICで頻出の語彙を重点的に覚えました。
リスニングはラジオ英会話を聞き、英語の音に耳を慣らすことから始めました。時間が取れる時はディクテーションにも取り組みました。学習アプリのスタディサプリも一通り使いました。
もともと勉強不足だった面もありますが、これらを続けた結果、TOEICのスコアは約200点伸びました。
受験英語で培った読解力は多少あったと思います。一方で、「英語が得意」という自己認識だけでは足りず、目的に合わせて弱点を見つけ、地道に補うことの大切さを学びました。
統計に興味を持ち始めた頃、たまたまXで京都大学の臨床統計家育成コースの投稿を見かけました。オンライン説明会に参加すると、受験には統計検定2級程度の知識が必要だと案内されました。
当時の私は医療統計からはまだ遠い立場にいると感じていたため、まずは統計検定の学習から始めようと考えました。
統計検定を受験し、統計の基礎を体系的に学び直したことは、その後に疫学や統計学を学びたいという思いを具体的な行動につなげる一歩になりました。
広島大学の研究室見学にあたり教授とやり取りした際には、「統計検定2級を持っているのですね」と声をかけていただきました。資格そのものだけで決まることではありませんが、統計を学ぼうとしてきた姿勢が伝わり、好印象につながったのではないかと感じています。
面接は重要な選考要素だと思います。一方で、研究室訪問での内諾や英語スコアなど、面接前の準備も大きいのではないかと感じていました。私が特に避けたかったのは、質問に詰まって黙ってしまうことでした。
試験科目は志望理由書と英語スコアの提出のみでしたが、面接で専門分野について聞かれる可能性もあると考え、疫学の参考書も読み進めました。
志望理由書をもとに、聞かれそうなことを考え、時間がある時に頭の中で回答を組み立てる練習をしました。ただし、回答を一語一句決めて覚え込むことはしませんでした。
あまりに細かく準備すると、想定外の質問が来た時にかえって動揺し、答えられなくなるのではないかと思ったからです。この方法が最善だったかは分かりません。
研究室見学では、疫学の研究をどのように進めていくのか、面接ではどのようなことを聞かれるのか、受験にあたってどのような勉強をするとよいのかを確認しました。
訪問時には、修了後にどのような進路を想定しているか、子どもが小さいなかで学業を続けられるかについても質問されました。それでも、自分がなぜMPHで学びたいのか、なぜ広島大学なのか、将来どのように専門性を生かしたいのかという軸だけは、何度も考え直しました。
受験対策として特別な戦略があったわけではありません。面接では第一印象も大切だと考え、スーツ、髪型、持ち物は奇抜にならないようにし、清潔感と落ち着いた印象を意識しました。
学力や経歴だけではなく、「ここで学びたい」という意思を、自然に伝えられる状態を整えることを心がけました。
子どもが起きている間は、基本的に勉強できませんでした。取り組めるのは、子どもが寝た後です。勉強時間は、平日・週末を問わず、確保できても1〜2時間ほどでした。
受験準備の時期には、学費や通学費をまかなうために仕事も始めました。毎日同じように時間を使えるわけではありません。前日は勉強できても、翌日は疲れてしまい、「今日は無理」と思う日もありました。
まとまった時間を確保できないことよりも、一定のペースで続けることが難しかったです。
そこで、「まとまった時間が取れたら勉強する」のではなく、少しでも時間があれば取り組むことを意識しました。まとまった時間を前提にすると、始めるまでのハードルが上がってしまいます。
短い時間でも参考書を開く、志望理由を考える。完璧にできない日があっても、少しずつ積み重ねようと考えていました。
受験時点で最も不安だったのは、子育てと大学院生活を本当に両立できるのかということでした。
受験前にもある程度はイメージしていましたが、詳しいシラバスや実際の生活リズムは、始まってみなければ分からない部分もあります。子どもが病気になった時にどうなるかも、今後の心配の一つです。
ただ、オンデマンド講義があり、働きながら通っている方も多いと知りました。想定外のことが起きた時には、自宅でできる範囲で学びや研究を進める方法を探していきたいと思っています。
夫は一般的に見ても忙しいと思いますが、できる範囲でサポートしてくれます。近くには義両親もいるため、どうしても必要な時には頼らせてもらいたいと考えています。
それぞれの生活があるため、できる限りは自分たちで何とかするつもりです。同時に、ファミリー・サポート・センターにも登録する予定です。
一人で抱え込まず、頼れる先をあらかじめ増やしておくことも、学びを続けるための準備の一つだと思っています。
私は、疫学や統計学を学び、専門性を身につけたいと考えています。疫学や統計学を深く学んだ人は、まだ多くはないように感じます。だからこそ、得た知識を生かし、卒業後は医療や社会に貢献できる仕事をしていきたいです。
MPHは、医療従事者が働きながら通う場所というイメージを持つ方も多いかもしれません。私自身も、興味はあっても「進学して、その先はどうなるのだろう」と考えていました。
しかし、MPHで学んだ知識を生かし、企業で働いている方もいます。たとえば、mMEDICIの廣瀬直紀さんのように、MPHで得た知識を企業での仕事に生かしている例を知り、専門性を軸に働く道もあるのだと感じました。
受験を考えるときは、「何のために学ぶのか」「入学後に何を学び、それをどう生かしていきたいのか」を、自分なりにイメージしてみることをおすすめします。目的が少しずつ言葉になると、準備へのモチベーションも上がるのではないかと思います。
学べることは当たり前ではなく、周囲の理解があってこそ得られる機会でもあります。私の場合、小さな子どもがいるなかで進学を決めました。
結婚前から大学院へ進学したいという思いを夫に伝え、学費のための貯金もしてきました。それでも、夫をはじめとする家族の理解と支えには感謝しています。
学びに力を注ぐ一方で、家族との時間も大切にしたいです。
オフの日には一緒に出かけるなど、感謝を行動で示しながら、学びを社会への貢献につなげていきたいと思っています。

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