
こんにちは、mMEDICI株式会社代表取締役の廣瀬直紀です。
私は看護師として病棟で働いた後に、イーライリリーやジョンソン・エンド・ジョンソンなどの外資系製薬会社で疫学に関する仕事に携わってきました。現在はmMEDICIを経営しながら、医療職・研究職の方々が企業へ転職する際のキャリア支援も行っています。
この記事では、企業で働く営業職の1日について解説していきます。
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医療機器営業のリアルな1日のスケジュールと具体的な働き方(直行直帰、手術・処置への立ち会い、医師や代理店との商談など)
職種別(看護師・理学療法士・臨床工学技士・薬剤師・医師)にみる臨床経験の活かし方と営業職の適性
医療職から企業営業へ転職することで変わる「評価(数字・成果主義)」「患者との距離」「働き方(ノルマ・夜勤等の疑問)」のリアル
【疫学専門家】
【生物統計家】
【看護師】
・vol.1:企業で働く看護師の年収とは?!専門家が職種別に解説
【医師】
・vol.1:企業で働く医師の年収とは?!専門家が職種別に解説
【薬剤師】
・vol.1:企業で働く薬剤師の年収とは?!専門家が職種別に解説
「企業で働く医療職」シリーズ
・vol.2:企業で働くCRAのリアルな1日を徹底紹介
・vol.2:企業で働く営業職のリアルな1日を徹底紹介
氏名:廣瀬直紀
所属:mMEDICI株式会社
専門性:保健学博士・公衆衛生学修士。東京大学・東京大学大学院を卒業後、外資系製薬企業の疫学専門家として薬剤疫学・リアルワールドデータ研究を専門とする。日本・グローバルの双方で活動したのちに、全ての人がアクセス可能な一流の知のプラットフォームを作り、「知に繁栄を、辺野に豊穣を」実現すべく、mMEDICI株式会社を創業。

「病院ではなく企業で働いてみたいけれど、自分に営業なんてできるんだろうか。」
看護師、理学療法士、薬剤師、臨床工学技士、医師など、医療職として臨床で働いてきた方から、こうした相談を受けることがあります。
営業と聞くと、初対面の人に商品を売り込む仕事、ノルマに追われる仕事、とにかく話が上手な人が活躍する仕事、そんなイメージを持っている方もいるかもしれません。
しかし、医療・ヘルスケア企業の営業職は少し違います。
特に医療機器の営業では、医師や看護師などの医療従事者と話しながら現場の課題を聞き、製品を提案し、導入時には使い方を説明し、製品によっては手術や処置の現場までサポートを行うこともあります。そのため、臨床で身につけた医学知識や、医療現場の動き方を知っていることが、思わぬところで大きな強みになります。
一方で、企業の営業職になれば、売上目標を持ち、自分で担当エリアや顧客を管理し、価格や契約について話し、社内外の人を動かすことも必要になります。医療職として優秀だったからといって、そのまま営業でも活躍できるわけではありません。
今回は、医療機器メーカーの営業職を中心に、企業で働く営業職が朝から夜までどのように働いているのかを見ながら、医療職から企業営業へ転職すると何が変わるのかを紹介していきます。
医療職のキャリアは、病院とクリニックだけではありません。製薬企業、CRO、医療機器メーカー、ヘルステック企業など、企業の中にも医療の専門性を活かせる仕事があります。
しかしながら、企業の求人票を眺めていても、「転職したら実際にどんな毎日になるのか」はなかなか見えてきません。
そこで「企業で働く医療職」シリーズでは、企業で活躍する医療職の仕事を一つずつ取り上げ、仕事内容だけでなく、朝から夜までどのように働いているのかまで紹介していきます。
今回取り上げるのは営業職です。
一口に営業職といっても、医療・ヘルスケア業界には様々な営業があります。
製薬企業で医薬品の情報提供を行うMR、医療機器を病院やクリニックへ提案する医療機器営業、医療ITやヘルスケアサービスを病院や企業へ提案する法人営業など、扱うものによって仕事内容はかなり違います。
今回中心に紹介する医療機器営業では、病院やクリニックを訪問し、医師、看護師、臨床工学技士をはじめとした医療従事者に自社製品を提案します。
例えば新しい手術用デバイスを扱っているなら、現在どのような手技が行われているのか、医師がどこに課題を感じているのかを聞き、その製品によって何が変わるのかを説明します。
大型の医療機器であれば、製品を導入する医師だけでなく、看護部、臨床工学部門、事務部門、購買部門など、多くの人との調整が必要になることもあります。製品によってはデモンストレーションや医療従事者向けの勉強会を開催したり、実際に手術や処置が行われる際に立ち会ったりします。
導入して終わりではなく、その製品を現場で安全かつ適切に使ってもらうところまで支援する営業も少なくありません。
つまり、医療機器営業は単に「売る人」というより、医療現場と企業の間に立ち、製品を通じて現場の課題を解決する仕事と考えた方が実態に近いでしょう。
朝7時半、自宅でパソコンを開きます。営業職では直行直帰を取り入れている企業も多く、毎朝必ずオフィスへ出社するとは限りません。今日は最初の訪問先が病院なので、そのまま自宅から向かいます。
まず確認するのはメールと今日のスケジュールです。病院から製品について問い合わせが届いていないか、代理店から連絡が来ていないか、今日予定されている症例や面談に変更がないかを確認します。
営業職になると、「今日は誰に会い、何を話し、どこまで仕事を前に進めるのか」を自分で考えて一日を組み立てることが増えます。臨床にいた頃は、勤務表を見て出勤し、その日の患者さんや病棟の状況に応じて仕事をしていたかもしれません。企業営業では、自分自身が一日の予定を設計する側になります。
車や電車で最初の病院へ向かいます。医療機器営業では、担当するエリアの複数の病院やクリニックを受け持つことがあります。
そのため、毎日同じ場所に通勤する生活から、1日の中でいくつもの施設を移動する生活へ変わることがあります。営業車で移動する企業も多いため、営業職によっては普通自動車免許が事実上必要になることもあります。
病院へ到着したら、その日に使用される製品や医師との面談時間を改めて確認します。手術や処置に関わる製品の場合は、予定どおり機器や必要な製品が準備されているかも重要です。
患者さんを見るために病院へ来たのではなく、医療を提供する人たちを支えるために病院へ来たのです。医療職から営業へ転職すると、同じ病院という場所が少し違って見えてきます。
扱う製品によっては、朝から手術や処置に立ち会うことがあります。もちろん、営業担当者が医療行為を行うわけではありません。自社製品の仕様や適正な使用方法について情報を提供し、必要に応じて医療従事者からの製品に関する質問へ対応します。
例えば整形外科、循環器、眼科などでは、医療機器営業が手術や処置の現場に入ることがあります。商材によっては一日に複数の症例を担当することもあります。
ここは、医療職としての経験がかなり活きる場面です。手術室に入った経験がある看護師や臨床工学技士なら、手術室の空気やスタッフの動き方を知っています。理学療法士であれば、整形外科領域の疾患や術後のリハビリテーションまでイメージできることがあります。薬剤師であれば、薬剤や治療に関する知識が製品理解の助けになる場面があります。
ただし、「医療を知っている」ことと「自社製品を説明できる」ことは別です。
営業担当者として働くなら、その製品の構造、特徴、競合製品との違い、使用方法、エビデンスまで理解し、医療従事者から質問されたときに正確に答えられる必要があります。
これまで自分が医療機器を使う側だった人が、今度はその機器について誰より詳しい人になることが求められます。
手術や処置が終わった後、医師と少し話せる時間が取れることがあります。しかし、いきなり製品を売り込んではいけません。
「今日の使用感はいかがでしたか」
「今使われている製品で困っていることはありませんか」
「この手技で時間がかかっているところはありますか」
そんな会話から、現場の課題を理解していきます。
営業というと「話す力」が大切だと思われがちですが、実際にはそれよりも「聞く力」の方がよほど重要です。顧客が何に困っているのかを理解できなければ、良い提案はできません。
これは医療職が元々持っている力ともつながります。患者さんが何を訴えているのかを聞き、医師が何を考えているのかを理解し、多職種との会話から今どこに問題があるのかを考える。臨床で当たり前にやっていた「相手を観察し、話を聞き、本当の課題を見つける」という行為は、営業でもそのまま重要です。
違う点は、その課題に対して自社の製品やサービスを使った解決策を提案し、最終的に購入という意思決定まで動かす必要があることです。
午前中の仕事を終えたら、次の病院へ移動します。
営業職の昼食は日によってかなり変わります。訪問先近くのお店に入る日もあれば、時間がなくて移動の途中で済ませる日もあります。
病院勤務では休憩室で昼食を取ることが多かった人にとって、今日はA病院の近く、明日はB市のサービスエリアという生活は新鮮に感じるかもしれません。一方で、外回りが好きではない人には負担になることもあります。
営業は一日中人と話しているように見えますが、実際にはかなりの時間を一人で移動します。この時間に次の面談内容を考えたり、電話で代理店や社内のメンバーと話したりすることもあります。
自分で一日のリズムを作れる自由さがある一方、自分で管理しなければ一日が簡単に崩れてしまう仕事でもあります。
午後は別の医療機関へ向かいます。今日は新しい製品に興味を持っている診療科で、デモンストレーションを行う予定です。
製品の特徴を説明し、実際に機器を触ってもらいながら、現在使っている製品との違いや、臨床でどのように使えるのかを説明していきます。
ただし、単にスペックを読み上げるだけでは不十分です。例えば医師が知りたいのは、「従来製品より3mm小さい」という事実そのものではなく、「それによって自分の治療がどう変わるのか」です。看護師が知りたいのは、「新機能が搭載されている」ことより、「準備や片付けがどう変わるのか」かもしれません。
営業の仕事は、製品の言葉を顧客の言葉へ翻訳する仕事でもあります。
臨床を経験している人なら、「メーカーはこう説明しているけれど、実際に病棟や手術室で使う人が気になるのはこっちだろう」と想像できることがあります。この視点は、医療職から企業営業へ転職した人が持てる大きな強みです。
医療機器の販売では、メーカーが医療機関へ直接製品を届けるだけではなく、販売代理店と協力して営業することも少なくありません。そこで午後には、担当する代理店の営業担当者と話す時間を取ります。
「あの病院では誰が意思決定をしているのか」
「来年度に機器の更新予定はあるのか」
「競合製品はどこまで入っているのか」
「次は誰に製品を紹介するべきか」
こうした情報を共有しながら、担当エリアでどのように営業していくかを考えます。
ここは臨床とはかなり違う仕事です。
企業では、良い製品だから自然に売れるとは限りません。誰に、いつ、どんな価値を伝え、どのように意思決定してもらうのかを考える必要があります。医療知識だけではなく、市場を見る力や営業戦略を考える力が必要になってきます。
午後も病院を回ります。必ずしも毎回大きな商談をするわけではありません。
導入した製品に問題がないかの確認、以前受けた質問への回答の持参、新しい情報の提供、次の症例についての相談など、こうした小さなやり取りの積み重ねで、医療従事者との関係を作っていきます。
医療機器営業では、一度商品を売ったらその顧客とはお付き合いが終わりというケースばかりではありません。同じ医師や病院と何年も付き合うことがあります。そのため、短期的に売ること以上に「この人に聞けば大丈夫」と思ってもらうことが重要になる領域があります。
病院勤務をしていると、メーカーの営業担当者が診療科に来る姿を見たことがある人もいると思います。毎回新製品を売り込んでいるように見えたかもしれません。しかし、その背景では、質問へ回答し、製品のトラブルを解決し、次の症例へ向けた準備をしながら、少しずつ信頼関係を積み重ねています。
医療機器営業の特徴の一つが、顧客である医師の時間に合わせる必要があることです。医師は日中、外来、手術、検査などをしています。そのため、営業担当者がじっくり話せるのが外来終了後になることもあります。
今日は17時半から医師との面談です。新しく導入を検討している機器について、現在の課題を聞きながら提案します。製品の機能だけでなく、導入コスト、院内での運用、既存機器との違いなどについて話すこともあります。
企業営業へ転職すれば必ず毎日17時に仕事が終わる、というわけではありません。商材によっては朝の手術が早い日もありますし、診療終了後の面談で夜まで仕事をする日もあります。その代わり、直行直帰やフレックスなどを取り入れ、自分でスケジュールを調整しやすい企業もあります。
大切なのは、「病院より楽かどうか」ではなく、自分にとってどの働き方が合っているかを見ることです。
最後の面談を終えたら、そのまま直帰します。
ただし、仕事はもう少し残っています。今日誰と話したのか、どんな課題があったのか、次に何をする必要があるのか、見積作成や製品デモの手配が必要かといった情報を、CRMなどの社内システムへ記録します。
営業では、「たくさん人に会った」だけでは仕事になりません。その活動が、次の提案や売上へつながるよう管理していく必要があります。
医療職として働いていた時にも記録はしていたと思いますが、その目的は患者さんの診療やケアを継続するためでした。営業では、顧客との関係や商談を前へ進めるために記録します。
19時半ごろ、今日の仕事を終えます。病院には一日いましたが、患者さんへ直接医療を提供することは一度もありませんでした。それでも、自分が提案した製品が医療現場で使われ、その先に患者さんがいます。
それが企業営業として医療に関わるということです。
ここまで一つの営業日を紹介しましたが、医療機器営業の働き方は商材によって大きく異なります。
例えば手術で使うインプラントやカテーテルなどを扱う営業では、症例に合わせて朝から病院へ入り、手術や処置に立ち会う機会が多くなります。医師との関係性だけでなく、症例スケジュールを中心に一日が動くため、日によって勤務時間が変わりやすい領域です。
一方、MRIや検査装置など大型機器を扱う営業では、1件の商談が数カ月から数年に及ぶことがあります。医師だけではなく、病院経営層、事務部門、放射線部門、購買部門など多くの関係者と調整しながら、予算化から導入まで進めていきます。
クリニック向けの医療機器や消耗品なら、1日に複数施設を訪問するルート型の営業に近い働き方になることもあります。
ヘルステック企業なら、病院へ行くよりもオンライン商談やWeb会議が多くなる場合もあります。
つまり「営業職」という職種名だけで、自分の働き方を判断することはできません。どんな顧客を担当するのか、何を売るのか、手術立ち会いがあるのか、担当エリアはどこまでなのか。企業転職では、職種名だけでなく商材まで見ることが非常に重要です。
医療機器営業は、医療資格がなければできない仕事ではありません。実際には、医療業界未経験から活躍している営業も多くいます。一方で、医療職として働いた経験が大きな強みになることもあります。
最大の強みは、顧客である医療従事者の世界をすでに知っていることです。
病院では何時頃が忙しいのか、医師はどんなタイミングなら話しやすいのか。看護師が製品を使う時に何が負担になるのか、手術室では誰がどのように動いているのか、医療機器のトラブルが患者さんの治療へどれほど影響するのか。
こうしたことは、臨床で働いてきた人にとっては当たり前かもしれませんが、営業ではその「当たり前」が顧客理解になります。
また、疾患や治療の知識を持っていることで、製品がどこで使われるのかを理解しやすくなります。医師との会話にも入りやすく、医療従事者が何を気にしているのかを想像しやすくなります。
一方で、臨床経験があることに安心しすぎないことも重要です。医療を知っていることと、営業ができることは別だからです。
顧客の課題を聞き、提案し、競合と比較され、価格について話し、意思決定を促し、最終的に売上を作ります。この一連の力は、企業に入って新しく身につける必要があります。
看護師の企業転職では、医療機器メーカーの営業職は一つの選択肢になります。
特に手術室、救急、ICU、循環器、整形外科など、医療機器を日常的に扱ってきた経験は製品によって強みになります。これまで自分がユーザーとして使っていた機器を、今度はメーカー側から医療現場へ届ける立場になります。
看護師としての強みは製品知識だけではありません。医師とのコミュニケーション、看護師が製品を使う時の動線、患者さんへどのような影響があるのかなど、臨床側の視点を持っています。
一方で、「患者さんと話すのが得意だから営業にも向いている」と単純に考えるのは危険です。営業では売上目標を持ち、断られる経験もあり、顧客へこちらから働きかけなければなりません。看護師とは違うコミュニケーション能力が必要になります。
それでも、臨床経験に加えてビジネスを学びたい人にとって、看護師から営業職への企業転職はキャリアを大きく広げる選択肢になります。
理学療法士の企業転職でも、医療機器メーカーの営業職は検討できます。
特にリハビリテーション機器、整形外科関連製品、義肢装具、歩行支援機器、運動機能評価機器など、理学療法士としての知識と近い製品では臨床経験が強みになります。
理学療法士は、患者さんの動作を観察し、問題を見つけ、どのような介入が必要かを考える仕事です。この「相手を観察し、課題を特定し、解決策を考える」という考え方は営業にもつながります。
また、整形外科医やリハビリテーション科医、多職種と仕事をしてきた経験も、病院営業では役立ちます。
一方で、営業職になれば一人の患者さんに時間をかけるのではなく、担当エリア全体を見ながら、どの施設へどれだけ時間を使うのかを判断する必要があります。医療職としての専門性を深めるキャリアから、専門性を使って事業を広げるキャリアへ移る点が大きな違いです。
臨床工学技士は、医療機器メーカーとの親和性が高い医療職の一つです。人工呼吸器、透析装置、補助循環装置、カテーテル治療、不整脈治療など、病院で直接機器を扱ってきた経験が、そのまま商材理解につながる領域があります。
企業の営業として病院へ戻った時、医師や臨床工学技士がどんな点を気にするのかを理解しやすいことは大きな強みです。
一方、病院では機器を安全に使うことがゴールだったのに対して、営業では自社製品を採用してもらい、担当エリアの売上を伸ばすことまで責任を持つことになります。
技術が分かるだけでなく、その価値を説明し、人を動かし、結果につなげる力が必要になります。この変化を面白いと思える人には、非常に相性の良い転職先になり得ます。
薬剤師が企業の営業職を考える場合、医療機器メーカーだけではなく、製薬企業のMRなども選択肢になります。
薬剤師の強みは、薬理、疾患、薬物治療について体系的な知識を持っていることです。医師や薬剤師へ科学的な情報を説明する仕事では、この知識が役立ちます。病院薬剤師であれば、多職種と連携しながら治療を考えてきた経験も企業で活かせます。
ただし、薬剤師だから営業職が最も適しているとは限りません。
製薬企業には安全性、メディカルアフェアーズ、学術、薬事など、薬剤師の専門性をより直接使える職種もあります。「薬について深く探求することが好き」なのか、「人に会って関係を作り、自分の提案でビジネスを動かすことに面白みを感じる」のかによって、向いているキャリアは変わります。
薬剤師の企業転職では、営業職だけでなく複数の職種を比較して決めることをおすすめします。
医師から企業へ転職する場合、営業職そのものが代表的な転職先になるケースは多くありません。医師には、メディカルドクター、メディカルアフェアーズ、臨床開発、事業開発など、医学的専門性をより直接活かせる職種が存在するからです。
一方で、医療機器企業の事業や営業戦略に関わったり、顧客である医師とのコミュニケーションを担ったりする中で、営業的な役割を持つことはあります。医師の企業転職では「営業ができるか」よりも、「自分の医学的専門性を企業のどの部分で使うと最も価値が高いか」という視点から考える方が良いでしょう。
企業には、臨床とは違う形で医療へ大きな影響を与える仕事があります。営業はその一つですが、医師の場合は他の選択肢も十分に比較してから決めることをおすすめします。
医療職から営業へ移った時、最も大きな文化の違いの一つが「数字」です。営業には売上目標があります。
何施設で製品が採用されたのか、担当エリアでどれだけ売上を作ったのか、前年からどれだけ伸びたのか、どれだけ新規案件を作ったのか。会社によって指標は違いますが、自分の仕事の成果が数字で見えるようになります。
これは怖いことのように感じるかもしれません。臨床では、一生懸命患者さんに向き合った仕事を単純な売上で評価されることはありません。
一方で、自分が工夫したことが売上につながり、その結果が数字として見えることに面白さを感じる人もいます。「頑張っても評価されているか分からない」という環境より、「結果を出したら評価されたい」と思う人には、むしろ心地良い世界かもしれません。
医療職から企業営業へ転職する時には、自分がこの成果主義をどう感じるかも一度考えてみることをおすすめします。
もう一つ大きく変わるのが、患者さんとの距離です。
看護師、理学療法士、医師、薬剤師などとして働いていた時は、目の前に患者さんがいました。営業職では、患者さんと直接話す機会はほとんどありません。そのため、「患者さんから直接ありがとうと言ってもらえること」に仕事の喜びを感じていた人は、物足りなさを感じる可能性があります。
一方、自分が広めた製品が数十、数百の医療機関へ導入され、その先で何千人もの患者さんに使われることがあります。一人の患者さんに直接医療を届けるのではなく、医療の仕組みを動かすことで、多くの患者さんへ間接的に影響するのです。
だからこそ、企業転職では勤務条件だけではなく「自分はどの距離から医療に関わりたいのか」を考えることが大切です。
営業未経験の医療職を採用する企業やポジションはあります。特に商材と近い臨床経験を持っている場合、その知識が評価されることがあります。
一方で、全ての求人が未経験者を対象にしているわけではありません。営業経験を必須とする求人も多くありますし、年齢や経験年数、学歴、担当領域などによって応募できる求人は変わります。
重要なのは「医療職だから採用される」と考えず、自分の臨床経験がどの製品・診療領域なら価値になるかを考えることです。
営業職である以上、売上目標や活動目標を持つことが一般的です。
個人目標なのかチーム目標なのか、インセンティブがあるのか、どのくらい成果主義なのかは企業によってかなり違います。
「ノルマがあるから怖い」と一括りにするより、その会社で何をどのように評価しているのかを面接で確認する方が重要です。
病院勤務のような交代制の夜勤や医師の当直を前提にした仕事ではありません。一方で、扱う製品によっては早朝の手術、夜まで続く症例、緊急の問い合わせ、休日の対応などが発生することがあります。
営業だから必ず9時から17時で終わるわけではありません。特に手術に関連する製品では、勤務時間より症例の時間に影響を受けやすいため、転職前に確認した方が良いでしょう。
メール、資料作成、オンライン会議などは自宅で行える企業があります。一方、医療機器営業は顧客である病院へ訪問すること自体が仕事の大きな部分を占めます。
完全在宅勤務を期待する職種ではありません。ただし、毎日オフィスへ出社する必要がなく、直行直帰を中心に働ける企業もあるため、病院勤務とは違った自由さを感じる人もいます。
担当エリアや会社によりますが、営業車で病院を回る営業では普通自動車免許を求められることがあります。特に地方を担当する営業では車移動が中心になるケースがあります。
求人を見る際には、仕事内容だけでなく移動方法も確認しておくと良いでしょう。
国内の営業職であれば、必ずしも高い英語力が必要とは限りません。
一方、外資系医療機器メーカーでは、社内資料や研修、本社とのコミュニケーションなどで英語に触れることがあります。
営業として経験を積み、マネージャーやマーケティング、事業部のリーダーなどへキャリアを広げたい場合には、英語が使えることで選択肢が増えることがあります。
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