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「やりたい研究」を企業で実現する──信頼から始める研究者のキャリア戦略

企業で「やりたい研究」を実現するにはどうすればいい?信頼の築き方から提案の通し方、チームを動かす力まで、研究者が主導権を握るための実践的キャリア戦略を解説します。

2025.06.11

企業で研究職として働きながら、「本当はもっと自分のやりたい研究をしたい」「でも会社の方針とズレていそうだからできないよな」と感じていませんか?

本記事では、企業の中で“やりたい研究”を実現するための実践的なプロセスを紹介します。

ポイントは、「情熱を押し通す」ことではなく、自分の関心を会社にとって意味のある形に組み立て直し、信頼とタイミングを味方につけて企画を通すこと。

さらに、企画が通った後に求められるリーダーシップや、ビジネスとのギャップをどう乗り越えるかまでを、段階的に具体例とともに解説します。

企業の中に“自分の研究所”をつくるという発想を持ちたい方へ、確かなヒントを届けます。

この記事のまとめ

この記事を読むと分かること

  • 「やりたい研究」を企業の中で実現するための、信頼構築から提案までのプロセス

  • 自分の研究の関心ごとを、会社が価値を見出せる形に組み立て直すための視点とスキル

  • 研究者としてプロジェクトをリードし、ビジネスとの調整を図るための実践的マネジメント力

この記事は誰に向けて書いているか

  • 企業で研究職として働きながら、自分の専門性や関心をもっと活かしたいと感じている方

  • 組織内で研究提案を通したいが、どのように立ち回ればよいかわからずに悩んでいる方

  • 研究とビジネスの間で葛藤しながらも、プロジェクトを前に進める力をつけたい若手・中堅研究者

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執筆者

氏名:廣瀬直紀
所属:mMEDICI株式会社
専門性:保健学博士・公衆衛生学修士。東京大学・東京大学大学院を卒業後、外資系製薬企業の疫学専門家として薬剤疫学・リアルワールドデータ研究を専門とする。日本・グローバルの双方で活動したのちに、全ての人がアクセス可能な一流の知のプラットフォームを作り、「知に繁栄を、辺野に豊穣を」実現すべく、mMEDICI株式会社を創業。

はじめに

「企業に入ったら、やりたい研究なんてできないんだろうな」

研究職として企業に就職した方から、こんな言葉を聞くことがあります。

会社の目標や利益に貢献することが第一で、個人の探究心や研究テーマは“わがまま”とされるのではないか。そんな不安から、入社当初の高い志や情熱を、どこかに押し込めている方も多いかもしれません。

でも、それは誤解です。

たしかに、企業ではアカデミアのような“自由なテーマ選定”は難しいかもしれません。しかし、企業という環境には、アカデミアでは得られない資金・人材・データ・社会的影響力という、圧倒的なリソースがあります。

そして何より、会社の方向性と重なる形で自分の関心をうまく「翻訳」できれば、あなたの「やりたい研究」は企業の戦略的プロジェクトとして実現することができるのです。

問題は、「できるかどうか」ではありません。どうやって実現するかです。

この記事では、企業の中で“自分主体の研究”を実現したいと願うあなたに向けて、次のような戦略を紹介していきます。

①信頼を得るために、入社初期に何を積み重ねるべきか

②自分の関心を、どう企業の課題として「翻訳」するか

③上司の本音をどう引き出し、どのタイミングで提案すべきか

④提案後、どのようにチームを動かし、実行へとつなげるか

「会社に貢献すること」と「自分のやりたい研究をすること」は両立可能です。

企業を“自分の研究所”として活かしたいあなたへ──。 その一歩を、ここから一緒に踏み出しましょう。

第1章:信頼がすべての起点:まず「任された仕事」で勝ち取れ

企業に入って最初に立ちはだかる壁──それは、「自分がどんな研究をしたいか」を語る以前に、そもそも発言が“通る人”として見られていないという現実です。

研究職として企業に就職した方の中には、「これをやってみたいんですが!」と早々に意欲的な提案を持ちかけたものの、思ったように受け取ってもらえなかったという経験を持つ方も多いのではないでしょうか。

提案そのものは筋が通っていたとしても、返ってくる反応は「まずは目の前の仕事を丁寧に仕上げて」という、冷静な言葉──。それは決して冷淡なのではなく、企業の文化として“当然の前提”なのです。

企業では、「この人の提案なら聞いてみよう」と思われて初めて、提案内容が評価の土俵に乗るという構造があります。どれほど優れたアイディアも、「まだ信用できるかわからない人」からの発信であれば、組織は基本的にリスク回避の方向へ舵を切ります。

だからこそ、入社してから最初の半年〜1年間でやるべきことは、自分の専門性を語ることではなく、信頼を積み上げることです。

信頼は、目立つ成果よりも小さな期待に確実に応えることで育ちます。

  • 「このタスク、●日までにお願い」と言われたら、その通りに仕上げる

  • 報告や相談を欠かさず、進捗の見通しを共有する

  • 関係各所との調整を丁寧に行い、気持ちよく仕事が進むよう配慮する

これらはどれも、研究スキルとは一見関係のない「社会人としての基礎」かもしれません。しかし、企業ではこの基礎こそが提案の通りやすさを左右する土台なのです

実際、入社1年目の評価は非常に重要です。なぜなら、その評価がポジティブであれば、翌年以降「裁量を与える対象」として見られやすくなるからです。

裏を返せば、信頼が形成される前に「やりたい研究があります」と主張しても、聞き入れられにくいのは当然の話。これはあなたの研究アイディアが劣っているからではなく、まだ“任せて大丈夫な人”と認識されていないからに他なりません。

「まずは任された仕事で結果を出す」──この地味な努力が、のちの自由な提案活動の“許可証”になるのです。

あなたの“やりたい研究”を実現するために、まずは「この人なら任せられる」と周囲から思ってもらう必要がある。つまり、これは自分のやりたいことのための“準備フェーズ”なのです。

次章では、「やりたい研究」をいかにして“会社が求める研究”に翻訳していくか、その技術について掘り下げていきます。

信頼が土台に築かれた今、いよいよ本題に足を踏み入れましょう。

第2章:やりたい研究は「会社に伝わる形で組み立て直す」

企業の中で自分の研究テーマを実現したい──そう思ったときに必要なのは、ただ情熱を語ることではありません。

求められるのは、その研究を「会社の評価軸や戦略とつながる形で、組み立て直す」力です。

企業がプロジェクトに投資する際に重視するのは、「その研究がどれだけ面白いか」ではなく、「どれだけ自社にとって価値があるか」です。そこを意識せずに提案すれば、いくら熱意があっても通りにくいのは当然なのです。

では、どうすれば会社にとって意味ある形に組み立て直すことができるのでしょうか。

そのために活用できるのが、「公式KPI」「部署のKPI」「上司のKPI」という三つのKPI視点です。

これらについては、こちらの記事で詳しく解説しておりますのでご参照ください。

組み立て直しの実例:一つの関心を複数のKPIに接続する

仮に、あなたが「希少疾患Xの病態メカニズムを解明したい」と考えているとします。

これをそのまま伝えても、「それって面白いけど、今じゃないかな」という反応が返ってきて終わるかもしれません。

しかし、以下のように会社の評価軸に即して構成し直すことで、同じ関心が「今、取り組むべきプロジェクト」として映ります。

  • 公式KPI:新しい疾患領域でのエビデンス創出になるため、市場差別化に直結する。

  • 部署のKPI:来年度の重点投資部門と共同で動ける設計にする。

  • 上司のKPI:上司が以前から関係を築きたいと話していた研究機関との協業が可能である。

自分の研究が「誰の、どんな目的に貢献するか」を明示することで、企画は企業内でも“意味のある提案”として認識されるのです。

「自分の興味と会社の目的はズレている」と感じる方もいるかもしれません。

しかし、その多くは本当のズレではなく、「つながる可能性をまだ見つけられていない」だけです。

企業の中で“やりたい研究”を実現している人たちは、自分の関心を「会社が意味を見出せる形」で設計し直し、戦略的に提案しているのです。

次章では、実際に提案をする前段階として、上司の本音や“空気感”を読み取るための非公式アプローチ、つまり「雑談戦略」について解説します。

第3章:雑談で探れ:提案の前に“さりげなく”空気を読む

入社して、一定の信頼を得て、自分の研究テーマを会社に伝わる形で組み立て直した──。

ここまで来たら、いよいよプロジェクトを提案…と行きたいところですが、まだもう一段階、大切なステップが残っています。

それが、「雑談で探る」というアプローチです。

企業文化の中では、企画を成功に導く最大の鍵は、いきなりの“本番提案”ではなく、その前段階での“空気読み”と“根回し”です。

研究者が見落としがちなのがこの部分。いくら論理的に正しく、会社にとって意味のある企画であっても、「タイミング」や「上司の意向」に合っていなければ、簡単に見送られてしまいます。

なぜ雑談なのか?

企業では、会議の場や公式な場面では、上司は基本的に“建前”で話します。

「やりたい研究があるんですが…」と真正面から相談しても、「今は他の案件もあるからね…」とぼんやりかわされることも。

しかし、非公式な場面=雑談では、上司のちょっとした本音や関心が顔を出します。

「最近このテーマ、気になってるんだよね」
「実は●●大学の先生と何か一緒にできないかと考えててさ」

…そんな言葉の中に、あなたの企画が“刺さる”ヒントが隠れているのです。

雑談で探るための三つのポイント

① 話題の出し方は「さりげなく」

企画提案の“予告”をする必要はありません。むしろ、日常会話の流れでさりげなく研究領域や外部の話題を持ち出すのがコツです。

「最近、希少疾患Xって国内でも注目され始めてますよね。うちとしては何か動いてるんでしょうか?」

このように質問として出すことで、あくまで“情報収集の一環”という形がとれます。

② 相手の反応をよく観察する

返ってくるのは、言葉だけではありません。

表情、声のトーン、身振りの変化などを含めて「温度感」を読み取りましょう。

  • 「それ、来年の重点テーマ候補なんだよね」:強い関心あり。Goのサイン。

  • 「まぁ、悪くはないんだけどね」:優先度は低い。無理に押すと逆効果。

  • 「今はちょっと…」:撤退すべきタイミング。

ここで焦って「でもこれは会社にとって意味があるんです!」と押し返してしまうのはNGです。あくまで、引き際の美しさが信頼を保つ鍵です。

③ 熱意を“抑える”のが好印象につながる

提案を温めてきた分、つい熱くなりたくなる気持ちはわかります。しかしこの段階では、熱意を見せすぎないことが逆に重要です。

  • 「ですよね〜、ちょっと気が早かったですかね」

  • 「一応、情報収集だけしておこうと思ってただけなので」

と、軽やかに引ける柔軟さがあることで、「この人は状況を読める人だ」という印象になります。

多くの研究者が、提案書を完璧に仕上げてから「勝負」に出ようとしますが、それでは準備が遅いのです。

提案の成功は、「出すタイミングが整っているかどうか」で8割決まっているといっても過言ではありません。

雑談で得られる“小さなYes”が、あなたの企画に「いけるかもしれない」という手応えを与えてくれます。

さて、雑談という“探り”のステップを経て、上司や関係者の意向やタイミングが明確になったら、いよいよ提案へと移行します。

ここでも注意が必要なのは、「研究の詳細を詰め込んだ論文」のような提案書はNGということ。

企業に伝わる形の“提案書”とは何か?どんな要素が揃っていれば承認されやすいのか?次章では、企画を通すための“構成と説得”の技術をお届けします。

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第4章:研究提案は「プレゼン」ではなく「投資判断」の材料を出すこと

雑談や日々の仕事を通じて、上司の信頼も得ている。関係者の温度感もつかめてきた。「そろそろ提案してみようかな」と思ったとき、ふと手が止まります。

——どうやって伝えれば、企画が通るのだろう?

この問いは、実はとても深いものです。なぜなら、研究者の多くが「論文を書く頭」で企画を説明しようとしてしまうからです。

でも、企業の中での提案は、それとはまったく違う“構造”で動いています。

研究者であれば、アイデアを論理的に構成する力には自信があるはずです。

背景、仮説、方法、検証計画、予想されるインパクト…。ついつい、そうした順序で企画を説明しようとしてしまう。

でも、企業で求められるのは、「その研究に、会社が投資する意味があるかどうか」です。つまり、読み手が経営や事業の視点で“納得できる”構造になっているかどうかがカギになるのです。

「面白い」ではなく「進める意味がある」と思わせるには

企業において、提案が通るかどうかは、あなたの中にある熱意ではなく、読み手の中にある「今ならやってもいいかも」というスイッチが押されるかどうかで決まります。

そのスイッチが押される瞬間は、

  • 上司の置かれている戦略や目標に一致しているとき

  • 他部門との調整がしやすそうな設計になっているとき

  • 万一失敗しても損害が小さいと判断できるとき

といった、“合意しやすさ”の条件が揃ったときです。

そのためには、以下の三つの視点を意識する必要があります。

① ビジネス上のメリットを明示する

これは単に「売れる」だけではありません。

  • 新領域に参入する足がかりになる

  • 他部門との連携を強化できる

  • 特定の外部機関との共同関係を深められる

上司や組織が置かれている状況にフィットした“便益”を、具体的に描くことが重要です。

② 実現可能性を伝える

「できそうかどうか」は、多くの場合、話し手への信頼だけでは不十分です。

どのくらいの期間で、どのくらいの人員やコストで進められそうか。
それを聞いた上司が、「これなら今のチームで回せそう」と感じられる水準に落とし込むことがポイントです。

③ 想定外への備えがあることを見せる

どんなに魅力的な提案でも、「もしうまくいかなかったら?」という問いへの備えがなければ、不安は残ります。

リスクを見越した設計(たとえば中間で止める判断基準や代替プラン)を添えることで、読み手に安心感を与えましょう。

どんなに魅力的な研究計画でも、それが「今、この会社、この状況でやる理由」になっていなければ、後回しにされて終わります。提案書は科学を語るものではなく、意思決定を助けるための資料なのです。

次章では、晴れてプロジェクトが動き出したあと、研究者が「チームのリーダー」としてどう立ち回るかに焦点を当てます。研究の“質”を支えるのは、実はマネジメントスキルかもしれません。

第5章:プロジェクトが通ったその先:研究者から“リーダー”へ

企画が承認された瞬間、あなたの役割はひとつ大きく変わります。

それまでのあなたは「提案者」でしたが、これからは「リーダー」として見られる存在になります。

ここで誤解しやすいのは、「研究の専門家としての力を発揮すればいい」と思ってしまうこと。

しかし企業における研究プロジェクトは、アカデミアのような“専門家集団”とは異なり、異分野・異職種の混成チームによって成り立っています。

つまり、研究の中身だけを考えていてもプロジェクトは動きません。必要なのは、異なる立場の人を巻き込み、目的に向けてチーム全体を動かす力です。

企業研究は「異種格闘技」

企業での研究チームには、研究者だけでなく、以下のようなメンバーが関わります。

  • プロジェクトの納期を守ることに責任を持つプロジェクトマネージャー

  • 外部との契約・予算を管理する財務や法務

  • 製品の出口を見据えるマーケティング部門

  • データ解析・システム整備を担うエンジニアデータマネージャー

それぞれの職種が、異なる関心・価値観・言葉を持って動いています。

その中で、あなたが「このプロジェクトの科学的な骨格」を担う存在になるとすれば、求められるのは科学と他部門の“通訳者”としての機能です。

研究者がリーダーになるために必要な三つの視点

① 「伝える」ではなく「伝わる」ことを目指す

非研究職のメンバーに専門用語を多用して説明しても、話は進みません。

彼らが知りたいのは、「今どんな状態なのか」「次に何をすればいいのか」ということです。

  • 複雑な説明をシンプルな言葉に変換する

  • 専門用語には一言で背景を添える

  • 専門外のメンバーにこそ、丁寧に状況を説明する

これらは、リーダーとしての信頼を積み上げる上でとても大切な習慣です。

② 正しさの前に「優先順位」を見る

マーケティング担当は「納期とリリース計画」を重視し、財務は「予算超過」を懸念します。

そうした中で「科学的にはこのステップが必要です」と主張しても、全体から浮いてしまうことがあります。

大切なのは、相手の優先順位を理解した上で、科学的に守るべきラインをどこに引くかを判断すること。それができると、Win-Winの落とし所を見つけやすくなります。

③ 逃げずに、決める

リーダーには決断が求められます。

研究者は「仮説を立て、検証する」スタンスに慣れていますが、企業では「実行するか否かを決める」場面が頻繁に訪れます。

  • 複数の選択肢を示したうえで、方針を明示する

  • 判断の根拠を、言語化して共有する

  • 責任があるからこそ、メンバーが安心して動ける

意思決定から逃げない姿勢が、チーム全体の推進力につながります。

プロジェクト初期にやっておきたい「信頼の仕込み」

チームが始動した直後は、関係性構築のゴールデンタイムです。このタイミングで意識的に以下のアクションを取ることで、後々の推進力が大きく変わってきます。

①メンバー全員と1on1で対話する

  • 何にモチベーションを持っているか

  • どんな成果を期待しているか

  • どんな働き方にストレスを感じるか

これらを把握しておくだけで、巻き込み方・配慮の仕方が変わります。

②プロジェクトの“変えられない条件”を明示する

  • 納期/予算/合意済みの方針 などを明文化することで、途中でのブレや責任の押し付け合いを防げます。

③誰が何を担うかを「RACIチャート」で整理する

RACIチャートは、業務やプロジェクトにおける役割分担を明確にするツールです。

各タスクに対して関係者の役割を「R(Responsible):実行する人」「A(Accountable):最終責任を持つ人」「C(Consulted):相談する人」「I(Informed):情報共有を受ける人」で整理します。

これにより、誰が何をするかが明確になり、誤解や重複作業を減らすことができます。その結果、スムーズな連携と意思決定ができるのです。

企業では、専門性を、チーム全体が使えるリソースに変換できる人がリーダーとして信頼されます。

次章では、このチーム運営を通じて必ずぶつかる課題——
「サイエンス」と「ビジネス」のすれ違いを、どう乗り越えるかに焦点を当てていきます。

研究者としての信念と、企業の現実。そのはざまでどう立ち回るかを、一緒に考えていきましょう。

第6章:科学とビジネスのはざまで──調整力こそ研究者の武器

企業で研究を進めていると、ある壁にぶつかる瞬間が訪れます。それは、「科学としてはこうあるべきなのに、ビジネスの都合でそれができない」という場面です。

  • 時間が足りない

  • 予算がつかない

  • 社内の政治的事情でストップがかかる

  • グローバルチームとの方針がかみ合わない

研究を深めようとすればするほど、現実の制約がじわじわと立ちはだかる。

このときに必要なのは、研究者としての信念を曲げることではありません。必要なのは、“調整する力”です。

調整力は「妥協力」ではない

「調整」と聞くと、「妥協して丸く収めること」と誤解されがちですが、そうではありません。

ここで言う調整力とは、科学的に許容できる範囲を自分で理解し、その中で現実と折り合いをつけていく力です。

たとえば:

  • 統計的に理想的なサンプルサイズが確保できない
    → 代替手法で精度を担保する

  • 社内レビューの締切が早すぎる
    → 最低限のデータを優先的に可視化する

  • 複数部門から異なる期待が寄せられている
    → 成果物を段階的に分けて調整する

これは決して「質を下げる」のではなく、質を守るための再設計です。

さらに、事前に“相手の優先順位”を見ておけば、こちらの譲れないラインも事前に設定できるのです。

  • 相手の部門は何を重視しているか?

  • 上司は何を評価しているか?

  • このタイミングで何を出せば喜ばれるか?

これらを先に押さえておくだけで、「衝突」は大きく減ります。

こうした立ち回りができる研究者は、「理想を持ちながら現実も動かせる人」として信頼されます。

それは論文には書かれないし、履歴書にも直接は書けない。けれども、プロジェクトを前に進めるうえで、この力ほど現場で効くスキルはありません。

サイエンスの精度と、ビジネスの速度。

この二つの狭間で、「どちらか」ではなく「どちらも」を目指す立ち回りができる人こそ、企業研究者として頭ひとつ抜け出す存在になっていきます。

最終章では、これまでの話を振り返りながら、改めて「企業でやりたい研究を実現するとはどういうことか」を整理しましょう。

まとめ:企業の中に“自分の研究所”をつくるという発想

「やりたい研究ができない」と感じたとき、それは本当に“できない”のでしょうか?

もしかすると、「まだその形に整えられていない」だけかもしれません。

企業で研究を進めるとは、与えられた枠に自分を合わせることではありません。むしろ、自分の関心や専門性を、会社の中で活かしきるための構造をつくっていくこと

それこそが、企業研究者にとってのキャリア戦略であり、自己実現の方法でもあります。

本記事ではそのための具体的なステップとして、

  • まずは信頼を積み重ね、「任せられる人」になる

  • 自分の関心を、会社にとって意味ある形に組み立て直す

  • 提案前に雑談で空気を読み、「今いけるか」を見極める

  • 論文的ではなく、「判断しやすい構成」で提案書をつくる

  • プロジェクトが通ったら、チームを率いるマネジメントへ

  • ビジネスとのギャップを“調整力”で乗り越える

という一連のプロセスをお伝えしてきました。

このプロセスを通じて大切にしてほしいのは、企業で自分のやりたい研究するということは、“自分の研究所を会社の中につくる”ということです。

その環境は、誰かが用意してくれるわけではありません。けれど、戦略さえあれば、それは着実につくっていける。

自由は、待つものではなく、信頼と設計と提案によって獲得していくものです。

あなたの関心は、会社にとっての価値にもなり得る。そう信じて、まずは最初のステップから踏み出してみてください。

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